今回はそんな話をかいてみました。
ジャム島基地
演習の終了後、麟達は豪提督の基地に泊まり、
ジャム島基地で一夜を過ごすことになった。
ジャム島付近は電達がまだ到底敵わない
強力な敵艦隊が出没する危険もあるからだ。
既に入渠も済ませて服も着替え終わった頃、
麟の艦娘達は豪提督に呼ばれていた。
「済まないな、演習後で疲れていたろうに。」
豪の司令官室には麟の艦隊と、豪提督、
そして、長月と鳳翔が居るのみだった。
「別に気にしてないわ、話ってなんなの?」
「君たちをここに呼んだのは麟についてなんだ。」
「司令官さんですか?」
電が首を傾げると長月が口を開く。
「ああそうだ、これから麟と共に戦うお前たちに
伝えられるうちに伝えておきたいんだ。」
「麟様も提督も、次にいつ会えるか不明ですしね。」
「提督が居ないのは…なにか事情があるんですか?」
「居ても居なくてもいいが、麟は大丈夫だ。
麟は今他の皆と話をしているからな。
この基地には麟にも付き合いが長い艦娘も結構配属されているんだ。」
「ここの連中は麟にとって家族みたいなものだからな。」
「家族…。」
「…俺の妻は、麟を産んですぐに亡くなってな、だが
当時の俺は少佐になったばかりで死に目にも会えなかった。」
「え…!?」
「…当時は深海棲艦もそれほど活発的ではなかったが
居ないというわけでもなかった。」
「その頃は今のように艦娘を率いる将も希少でした。
そのため前線に居た豪様は帰還もできず…。」
「「「…。」」」
「その頃は今みたいに多数艦隊ではなく4艦隊ぐらい
でな、出撃していない艦娘たちが保護者代わりだった。」
「その中でも、今の主力艦隊たちは、
麟のことを家族のように接していたからな。
親の俺以上に艦娘のほうが付き合いは長い。」
「そんな…。」
「司令官さんにそんな事が…。」
提督親子の過去の話に言葉を失う電達。
「あの、少しよろしいですか?」
だが、ある事に疑問に思った古鷹は口を開く。
「ん、なんだい古鷹。」
「鎮守府での私達への的確な指揮や
演習の時の弾着観測射撃の作戦も、
麟提督の能力は確かなものですし、
何より私は提督のことを信頼しています。」
「…そうか。」
「だからこそ不思議なんです、彼女は
何故、あの幼さで【提督】なんですか?」
古鷹の疑問はある意味当然だった。
普通、少女とも言える人間が提督に
着任するなど前代未聞だろう。
「そういえばそうね、身長も私達ぐらいだし。」
麟たちとそんなに変わらない体躯。
しかし彼女たちは艦娘なのだ、
人間と変わらない体躯をしながらも
その力は人間からは逸脱しているのだ。
「やはりその疑問にたどり着くか…。」
長月が腕を組み壁に寄りかかる。
「…そうだな、君たちを呼んだのは
そのことも含めて話しておきたかった。」
◆
あてがわれたソファに座り、
鳳翔がお茶を淹れつつ
「本来異例とも言える麟の鎮守府着任だが、
周囲が文句も不満もなく認められる功績が
麟にはあるからなのだ。」
「功績ですか?」
「うむ…一年前のことだ、このジャム島基地がこのような
大規模な基地になり、視察も兼ねて元帥がこのジャム島基地に
少しの間滞在していたのだ。」
「げ、元帥…豪提督でも雲の上の人ね。」
元帥、数ある艦娘を率いる将の中でも
最高峰の実力を持つ最強艦隊だ。
「ああ、だが元帥が滞在していた時にタイミング悪く
深海棲艦が数隻の艦隊が攻撃を仕掛けてきたんだ。」
「…数艦隊、基地に向けて敵が襲ってきたんですね。」
「そうだ、だが、この襲撃は大した被害がなく
敵艦隊を退けられたんだ。」
「先ほど話に上がった元帥が退けたのですか?」
「いいえ、敵艦隊を退けたのは元帥殿でも
実は豪様でもないのです。」
鳳翔の言葉で少し思い当たったのか、
古鷹の顔が驚愕に染まる。
「…まさか!?」
「そうだ、当時、その基地に偶然居た麟が、
提督の主力の艦隊達であり、家族でもある、
金剛姉妹と赤城達を率いて撃退したんだ。」
「嘘…!?」
「司令官さんが!?」
これには雷も電も驚きを隠せなかった。
「これは後に知ったんだが、俺の娘には
ある力が宿っている、ある意味では
頼もしく危険な能力だ。」
「能力…。」
「…麟はなんとなくだが深海棲艦を補足できるらしい。
だから、敵の襲来を予知して、金剛達に知らせた。」
◆ 過去の回想 ◆
『比叡、敵の艦隊がこっちに来てる…。』
「麟、それは本当ですか?」
『…。』(コクリ)
「麟ちゃんは嘘はつきませんからネー…。」
金剛と比叡が頭を抱える、今、自らの提督と元帥が
視察の合間の会議中だ、報告はできても編成に時間が掛かる。
「金剛お姉さま、どうしましょうか?」
『実は、響と暁、それに赤城と加賀には知らせてある。
金剛達とこの編成で行けば、負けることはないと思う。』
「え!?麟、まさか私達を率いて出撃するの?」
驚く比叡だがそこに響達が割って入る。
「問題ない、私達の準備はできているし、
赤城と加賀も準備万端。」
「司令官も忙しいし、麟でも問題はないでしょ。」
「麟の作戦は、十分通用する、容易く行けるわ。」
「金剛、比叡、後はあなた達が頷いてくれれば、
不可能無く撃退できるわ。」
『お願い二人共、私達に力を貸して。』
その時、金剛達は見た、幼い身でありながら、
麟の瞳には戦いに行く覚悟の輝きがあった。
「…OK私の力、麟ちゃんに預けマース!」
「金剛お姉さまが行くなら微力ながら
この比叡もお供いたします!」
『ありがとう、皆の力があれば、絶対に勝てる…。』
麟の考えた作戦は、敵が本来戦闘区域に出現する前に
先制攻撃で仕留めることだった、結果突然の奇襲に
敵艦隊は混乱、麟の艦隊は敵を蹂躙した。
そして麟たちは敵の艦隊を退けた。
◆ 了 ◆
「正直、言葉が出ないわ…。」
麟の過去の功績を聞き絶句する電達。
「俺だって驚いたさ、戦闘音が聞こえたと思ったら、
自分の幼い娘が敵の艦隊相手に無双していたんだぞ?」
苦笑いをしながら語る豪。
「ですが、問題はそれからでした、当然その場に
元帥殿も居たのですが…。」
「元帥がえらく麟を気に入ってな、
恐らく麟の指揮に光るものを感じたのか、
未来への提督への投資かはわからんが、
麟に勲章を渡したんだ。」
「勲章ですか!?」
「それと、緊急時に数隻の艦娘を率いる権限を
麟は元帥から特例として与えられたんだ。」
「…あの時俺は正直言ってな、目眩がしたぞ?」
「心中お察しします…。」
頭を抱える豪を優しく気遣う鳳翔。
「続けるぞ、ある意味元帥からのお墨付きをもらった
麟は1年の間に一気に指揮能力に磨きをかけた。」
「元帥の眼鏡にかなったのもあって麟は鎮守府の
提督に任命されたんだ、俺も少し推薦したがな。」
「…何故ですか?」
「娘を危険に晒す親は居ないよ、だがあいつは、
麟は戦う覚悟はあった、だから、激戦区の中でも
余裕がある鎮守府にしてもらったんだよ。」
「私達は生憎ここから動くことはできないし、
こちらから戦力を割くわけにはいかなかったが、
だが今日の演習での作戦と信頼関係で確信した。
お前たちになら、麟を任せられる。」
「任せられる…。」
「麟は、普通の大人よりも大人びてはいるが、
まだまだ子どもなんだ、不安にもなるし緊張もする。
そんな麟を支えられるのは、隣で戦う艦娘だけだ。」
「だから頼む、電、雷、古鷹、俺の娘を
可能な限り、支えてやってくれ。」
「私からも頼む、あいつは私にとっても
可愛い妹分みたいなものだしな。」
「…まっかせなさい!最初は驚いたけど、
司令官を護って支えるのは私の役目よ!」
「雷ちゃんの言うとおりなのです。
私も司令官さんを支えて戦いたいのです。」
「先ほどの話を聞いてしまっては尚更、
ですね、私も二人と同じ意見です。」
「…ありがとう、麟の艦隊達よ。」
「私達の、家族を頼むぞ。」
「「「はい!!」」」
◆
電達が退室した後、司令室に暁が入室してきた。
「ねえ司令官、麟が入ってもいいかって。」
「ん、恐らくあの事だろう、俺が話すよ。」
「わかったわ。」
暁が部屋から出ると、入れ替わりで麟が入室する。
「…麟提督、恐らく聞きたいことは、響のことか?」
『…はい、ジャム島基地を探しても不在でしたし、
遠征に出た記録もなかったので。』
「響はな、半年前友好関係を結んだ海外の使者を
助けたのが切欠でな、海外に配属中なんだ。」
『…海外!?』
「あちらの海外艦の建造方法を教える代わりに
しばらく自分たちの所で腕をふるって欲しいそうだ。」
『父上は、その条件を飲んだんですか…?』
「誤解無いように言っておくぞ、俺だって反対したがな、
上層部の将達が海外戦艦のBismarckをえらく気に入ってな、
量産をする意味でも損はないと押し切られてしまった…。」
「権力の前では、ジャム島基地の少将でもこのザマさ。」
『父上…。』
自虐と苦痛が入り混じった顔に麟はそれ以上の追求をやめる。
響は豪にも麟にとっても大切な存在なのだ。
「心配しなくても近いうちに任期も終わり、こちらに
戻ってくるらしい、それまで待つしかないがな。」
『わかりました…。』
「それと響から麟に伝言があるぞあちらの言葉のようだがな。
【Viel Erfolg !】こちらでは『多くの成功・成果を』らしい。」
『すっかり馴染んでるじゃないですか…。』
「言葉を覚えるのが大変らしいぞ、
あちらで出来た友人が頼もしいらしいがな。」
『誰なんでしょうね、あちらでのお友達は。』
「帰ってきた時のお楽しみだとさ…。
麟提督もそろそろ寝たほうがいいな、
明日は朝早く鎮守府に戻るのだろう?」
『了解しました。』
その言葉とともに麟も退室する。
「…響、早く帰って来い、お前の義妹が寂しがっているぞ?」
椅子に寄りかかり天井を仰ぐ豪提督の言葉は、
誰にも聞こえること無く、空気に溶け込んだ。
改行がうまく言っているか少し心配。
なんかシリアスな感じで終わってしまった・・・。
次回はとある艦娘が着任するのに・・・。