鉄面皮な少女提督と依存傾向の高い艦娘たち   作:未奈兎

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すっごく遅くなってしまったorz


少数精鋭と吹き荒れる暴風

ジャム島基地から帰還後。

 

麟達は鎮守府海域の完全制圧のために

日数を掛けて軍備と戦力開発を進めていた。

 

正直言って戦力不足だ、妖精に頼んで新戦力と装備を

建造してもらっているが資材を慎重に扱っている。

 

資材は支給されるが扱いを間違えれば

数日の間出撃できない提督も出てくるのだ。

 

しかし、その堅実さが功をなして、

対潜水艦装備や偵察機、艦載機の開発、

鎮守府正面海域の制圧に成功する。

 

だが開発用の開発素材も実は支給されているのが

主なため軍備強化が停滞する可能性もある。

 

その中でも艦娘の建造は群を抜いて

資材や開発素材を大きく消費する、

一隻建造するのに長期間の日数が取られるのも痛い。

 

「司令官、新しい艦が建造されたわ。」

 

鎮守府で書類仕事を片付けていると雷から

建造が完了した報告が入った。

 

「ん、すぐに行くよ。」

 

「新しい戦力ができ次第出撃するんですよね?」

 

「…その前に少し連携の確認もするけどね。」

 

「了解なのです。」

 

 

 

 

新しく建造された艦娘、第一印象は他の艦娘とやや違う。

そう、彼女は…。

 

「ほっほーう、君がうちの提督かいな?

うちは龍驤や、こんななりでも立派な軽空母なんやで、

よろしゅうな、提督さん?」

 

【空母・軽空母】

 

その役割は艦載機での敵艦攻撃や

制空権の確保、戦闘において多くのことを成す

多くの出撃の場で欠かせない重要な艦だ。

 

龍驤は軽空母だがそれでもこの局面では頼もしい存在だ。

 

(空母か、制空権が取れるようになるのは大きい。)

 

特に古鷹が弾着観測射撃を行う際に前回の演習のように

敵方から制空権が取れていなければ話にならない。

 

援護がなければ偵察機はあっという間に撃墜されてしまう。

 

そういう意味では龍驤の加入は麟たちには願ってもない

新戦力となったのだ。

 

 

「さて、龍驤も加わって、次の目標は

南西諸島沖となったけど…。」

 

実は麟は今出撃するのをためらっている。

まだ戦力は足りないと言ってもいいぐらいだ。

 

(うちの中だと古鷹の火力はたしかに高い、

でも、やっぱり一番高い火力は…戦艦。)

 

戦艦、まさにそれが足りないのだ。

しかし絶対的な火力を持つ分、

その建造は困難を極める。

 

今は空母は足りるが戦艦がなければいずれ

持久性火力も、耐久性能も全てが足りない状態になる。

 

(でも、このままだと陣容もつかめないし、

とりあえずは偵察がてら出撃するのもありか。)

 

「ねえ司令官、少しいいかしら?」

 

「なに、雷。」

 

「少し気になったんだけどね、私達が演習で

長月と島風相手に演習したじゃない?」

 

「そうだね、あの二人は強敵だったよ。」

 

「ほお、君達うちが配属される前にそんな

ことがあったんか。」

 

「そうよ、それでね、本来だったらあの二人って

艦隊を組んだらどんな役割だったの?」

 

「…一言で言ったら囮だね、あの二人が

攻撃を避けて戦艦や空母が攻撃、

更に夜戦で無事ならばあの二人は

戦艦すら屠る強襲部隊なんだよ。」

 

「はわわ、私達そんな人達にあそこまで

戦えたのですか、偶然でも驚きです。」

 

「まあ実践だったら確かに夜戦で終わりだったね。」

 

あれが本当の実戦ならば、確実に仕留められていた。

 

「気落ちしないの、遠くないうちに、いつか私達も

あの基地の艦のように強くなるんだから!」

 

「なんや君、随分と自信たっぷりやなぁ?」

 

「そんなの当たり前じゃない!

司令官と私達が居れば百人力よ!」

 

「現在火力が足りないんですけどね…。」

 

自信満々に胸を張る雷と苦笑いする古鷹、

それを微笑ましそうに見る電と麟だった。

 

尤も、麟は口元が微妙につり上がってしかいないのだが。

 

(ふーん、随分とのんびりとした場所やなぁ…。

それにしても、この提督かなり無表情やん、

表情筋が固定されとるんか?)

 

配属されて間もない龍驤は麟の艦隊をそう評した。

 

 

 

 

「さて、これからに向かうけど、

まずこの戦いは偵察であって、戦うわけじゃないよ。」

 

「どうしたんや、君ちょっち消極的やなぁ、

まあ、解らなくもないけどな。」

 

「提督、やはり戦艦…ですか?」

 

「…うん、さっき多くの資材を妖精に渡した。

見積だと、十中八九戦艦ができるらしいよ。」

 

大きな賭けになるが、停滞するよりはいいと判断した。

 

「戦艦ね!いよいよ艦隊らしくなってきたわね司令官!」

 

「う、うん、そうですね。」

 

「確かに、駆逐艦2隻から一気に艦隊らしくなったね。」

 

「せやけど規模が小さいのは確かやな、

少数精鋭って言えば聞こえはいいんやけどな。」

 

(そうなんだよねー誰が見たって私達の艦隊達は無茶苦茶

規模が小さいんだよね、龍驤は意見をズバリ言ってくれるよ。)

 

大抵ならば提督は6隻以上の分隊を編成して一部が遠征、

精鋭が出撃して、遠征した艦隊が帰投した後に補給を済ませ、

出撃した艦隊が休んでいる間に出撃のローテーションだ。

 

(必要なのは可動範囲の増大、なのに私はまだ4隻しか

所有艦が居ない…やばい、軽くへこんで来た。)

 

(やっぱり資材を一隻につぎ込みすぎなのかな?

うーむ、父に資材の運用方法を聞いておけばよかったかな、

って、大規模艦隊の資材運用方法を聞いてどうするんだ私、

いやいや、父にだってこんな時期があったはずだし、聞いてみても…。)

 

余りにも少数精鋭(建前)に麟は頭を抱える思いだった、

それでも、艦娘たちには鉄面皮故に全く伝わっていない現実。

 

(しかし今日の出撃、少し無理をするかもしれないな、

全員に気をしっかりと引き締めてもらわないとね。)

 

「司令官、どうかしたの?」

 

「ん、なんでもない、恐らく苦戦をするだろうから、

絶対に油断をしないでね、私は、指示と応援しかできないから。」

 

「はい!頑張るのです!」

 

「まあ、最初が肝心やしな、気張っていくで!」

 

「私も皆を守ります、この戦場を戦い切りましょう!」

 

 

 

 

四隻と母艦が鎮守府正面海域を通過して、

南西諸島沖へと出撃する、制圧した海域は

とても静かなもので、魚が一匹跳ねていた。

 

「静かですね、提督。」

 

「この海域はね、この海域の先は知らないけど。」

 

「そういや気になってんけど少し聞いてもええか?

なんで今回戦艦の建造を待たずに出撃したん?」

 

「…確かに本来なら戦艦の建造を待ってから

出撃するのが最良なんだけど、今日行く件の海域が

深海棲艦に荒らされてる報告が入ってるんだよ。」

 

「…!」

 

「いつまでも待ってると海域が荒れて出撃するのが困難になる、

陸地だって焦土になったら資源の回収もできないからね、

しかも敵の進軍先には製油所があるしこれが無くなったら不味い。」

 

「ままならいのです…。」

 

「だから今回の任務は制圧じゃなくて敵勢力の削減と、

戦力分析、やばそうだったら友軍に頼んで合同作戦を組もう。」

 

「わかったわ!」

 

 

 

 

【南西諸島沖】

 

先ほどの穏やかな海から一転、

突き刺さるような意思を感じた。

 

「殺気か…。」

 

「は、はわわ。」

 

純然とした殺意が揺れる海域。

周囲には無差別に暴れる深海棲艦。

 

「まさに地獄ってやつやな…。」

 

「最前線はこれより酷いと聞きますが、

それにしてもこの暴れ様は一体?」

 

【…い!憎…!!】

 

「ぐ…!」

 

麟が突然頭を抱え蹲った。

 

「司令官!?どうしたの!?」

 

「な、何でもない、それより奴らが気がついてる!

偵察なんて言ってられない、総員戦闘配備!」

 

「了解!重巡古鷹、抜錨します!」

 

「おおい古鷹、ちょい待たんかい!?

艦載機のみんな、お仕事の時間やで!」

 

龍驤が巻物を広げると数基の艦載機が出現して、

海上の敵艦へと攻撃を始める。

 

「負けてられない、雷出撃するわ!」

 

「電も行くのです!」

 

海面を駆けて麟艦隊は出撃する。

 

「皆、どうか無茶だけはしないで…!」

 

殺意と憎しみが広がる海域に身を投じた4隻を、

麟は母艦で見守ることしかできなかった。

 

 

 

 

「全艦隊、攻撃の手を緩めないで!

周囲をしっかり見渡さないと不意打ちされるよ!」

 

「了解なのです!」

 

「ああもう、いくら倒してもキリがないわ!?」

 

「艦載機も底が見えてきたで!?」

 

「弾薬も少しばかり心持たないです。」

 

戦場はまさに苛烈だった。

 

4席で持ち堪えられるのが不思議に思えるほどに、

深海棲艦の攻撃は激しさを増していた。

 

麟は戦況を見極めて的確な指示を、

電、雷は遊撃をしながら周囲の警戒、

龍驤は艦載機で巧みに哨戒と攻撃を担い、

古鷹は麟と同じく戦場の空気を機敏に反応していた。

 

既に麟の艦隊には被弾していない者はおらず、

しかし攻撃は止み始め、そろそろ引き際であった。

 

(そろそろ、撤退すべきだな、13隻も撃沈させたし十分だ。)

 

「全艦退いて、作戦成果は十分、これより撤退する。」

 

「了解です。」

 

「初陣にしてはえらい戦場やった…。」

 

「これからもこんな戦場が続くんでしょうか?」

 

「先のことなんてわからないわよ、今はとにかく撤退よ撤退!」

 

麟は艦隊が帰投する中、また【聞こえた】。

 

【逃…さ、ん!】

 

「うっ…!?」

 

今までで一番強い【感覚】が麟を襲った。

 

(これ、今まで【聞いた】中で一番…!?)

 

頭蓋を抱えるように手で抑える麟、

その麟の母艦を、一閃の閃光が襲った…。

 

 

◆ 

 

 

「…え?」

 

電は目の前のことが理解できなかった。

 

母艦を襲った一発の砲撃、威力は大きいものではないが、

それでも命中した箇所の近くには、司令官が、麟が居た。

 

母艦を狙ったのは一隻の深海棲艦【Elite潜水艦型】だった。

 

「潜水艦…なんで艦載機が探知できなかったんや!?

って、あかん!提督大丈夫か!?」

 

誰よりも一番早く帰投した龍驤は母艦に倒れる麟を起こす、

どこかにぶつけたのか気を失ってはいる、砲撃は被弾したが

目立った外傷はなく、ただ衝撃で吹き飛ばされただけのようだ。

 

「ふぃー寿命が縮まったで…ん?」

 

麟の無事を確認して安堵した龍驤が見たのは、

何故か撤退を始めた潜水艦型深海棲艦と、

その潜水艦に九四式爆雷投射機を発射していた

雷とそれを止める古鷹の姿だった。

 

 

 

 

「雷さん、止まってください!」

 

「なんでよ!あいつ司令官にあんな…許せない!」

 

「私だって同じ気持ちですし、雷さんの心情は痛いほどわかります!

ですがこれ以上留まると敵に更に増援が出てきてしまうんですよ!

それに、一番我慢をしている電さんの気持ちを無駄にするつもりですか!?」

 

「え…っ!?」

 

雷が見たのは、いつもは温厚で誰よりもやさしい、

そんな電が、今にも突撃したいのを必死に堪えている顔だった。

 

「…雷ちゃん、今は退こう。」

 

「はぁ、わかったわよ、そこまで怒ってるのに我慢してるなら私も我慢しなきゃね。」

 

赤く変色した機体の姿を忘れないように、次に会った時に、

この怒りを、司令官が受けた傷を何倍にも返すために、

だからこそ、今は司令官のために退く、間違いを犯さないために。

 

 

 

 

「現在撤退しとるわけやけど、敵艦はどんな感じや、

うちは艦載機が一基しかないから偵察しかできへんで?」

 

「駆逐型深海棲艦が数隻だけ追撃に来てますね、

一定の距離を保ったまま此方を追跡しているようです。」

 

「うーん、撃破して禍根を断っておきたいけど。」

 

「装備が厳しいね、このままだと本拠地まで

深海棲艦が、押し寄せてくるかもしれないのです。」

 

「あかんなぁ、提督もまだ目が覚まさへんし、

それはなんとしても避けたいんやけど。」

 

【問題ありません、私が倒します。】

 

「な、誰や!?母艦に通信なんて限られた奴しか…!?」

 

突然入ってきた通信、麟の泊地から勢い良く迫る一隻の艦。

 

「どんなに強敵でも、どんなに不利な状況でも。」

 

重巡よりも重厚な砲門、迫る速度はまさに高速。

 

「私は、榛名は大丈夫です。」

 

【榛名】、金剛や比叡の姉妹であり、

高速戦艦の名を持つ金剛姉妹艦。

 

「だから、私のこの砲門が届く範囲での…!」

 

追跡をしていた深海棲艦に一発の砲弾が直撃、

続けて二発、三発と容赦なく撃ち込まれていく。

 

「勝手は、榛名が、許しません!」

 

全砲門が撃ちだされた後には、深海棲艦の姿は、

既にどこにもいなかった。

 

「ふぅ、少々火力過多だったでしょうか?」

 

「す、すごいのです…。」

 

「あれが戦艦ですか、流石ですね。」

 

「いいところ全部持って行かれちゃったわね。」

 

「は、はは、なんや、別格にも程があるやろ…?」

 

「そんなことありませんよ。」

 

母艦へと着艦して柔らかく微笑む榛名。

 

「私には艦載機での攻撃はできませんし、

潜水艦には攻撃できません、適材適所ですよ。」

 

「…あなたは。」

 

「あ、司令官!目が覚めたのね。」

 

「うん、皆には少し迷惑をかけちゃったね。」

 

「ま、しゃあないやろ、母艦が攻撃を受けるなんて

あんましない事態だったわけやし。」

 

「そうですね、今までは私達のみに狙いを絞って

居たはずだったのに今回は潜水艦が提督を…。」

 

「なにか、怖いのです…。」

 

「ともかく榛名、これから頼りにしてもいいんだよね。」

 

「お任せください、全霊を持って提督をお守りします!」

 

この日、麟の艦隊に頼りがいのある戦艦が加わった。




AL作戦?
いいとこなく初戦敗退しましたorz
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