恋柱さまの愛らしさときたら筆舌につくしがたいほどで、新米隊員の俺でさえ一目見た途端に心を奪われてしまった。あの大きな瞳。まろい頬。ふっくらした太腿。なにより、なにより、豊かな胸の山脈。どれをとっても愛くるしいという他ない。これらの要素の前では奇怪な髪色も気にならない。恋柱さまは最高にかわいい。これは普遍的事実である。
恋柱さまの絵姿の周りに、刃物をひとつ、ふたつ、並べる。恋柱さまはあんまり愛らしい方だから、俺たちのような新米隊員や下っ端の隠の間では、密かにこうしたものが流通している。いささか値は張ったが、精神的充足の対価と思えば安いものだ。肉切り包丁、剪定鋏。恋柱さまのお姿を刃物で飾る。大小の小刀を添えて笑う。なんておかわいらしい恋柱さま。あどけなく笑っていらっしゃるお姿はどうしようもなく無力だ。俺はその無力な有様に、ひどく興奮し、安堵する。
ああいつか俺がもっともっと強くなったらば。本物の恋柱さまで試してみたい。俺が柱になれたなら。恋柱さまのいとけないお顔の周りに刃物を置いて、満足したのち全て片付けて、翌日笑顔でご挨拶をするのだ。恋柱さまはきっと、とろけるような笑顔でもってお返事をしてくださるに違いない。なんて素敵な光景だろう。無論俺ごときでは叶うべくもない夢ではあるが、
「おい」
不意に、地を這うようなおぞましい声、ひとつ。ぞわりと身を圧する殺気、を認識した瞬間、衝撃、次いで激痛。声も発せられぬほどの。じたばたともがけば力が緩み、いいや緩んだのではない、仰向けに転がされた胸部に一撃、鉄の塊が降った。鈍い音、絶叫、は声にならなかった。
鉄の塊と思ったものは、人の足であった。
「貴様。甘露寺に対して、不埒なことを考えていたな」
みし、みし、と肉体が軋む。殺される。ころされる!
「貴様のような愚物の下らん懸想で汚れるほど、甘露寺はか弱くないが」
恐怖に見開いた目に、刃物の先端が突きつけられる。ヒィ、と俺の喉から情けない悲鳴が漏れる。
霞む視界の先に、蛇。
「俺が不快だ」
眼球に。切っ先、が。
「金輪際、二度と甘露寺を視界に収めるな」
ぶつり、と目の前が暗くなる。
「破れば、次こそ貴様の眼を抉る」
俺は、意識を、手放した。
目を覚まして、俺は目を刺すような朝日の眩しさに、心の底から安堵した。のろのろと周囲を見回す。鋏に小刀、散らばる刃物。
恋柱さまの絵姿がない。
奪われてしまったのだ。俺のささやかな楽しみを。俺の心の安寧を。俺はもはや恋柱さまを目にすることさえ許されない。禁を破ったが最後、俺の両眼は今度こそ光を失うだろう。どこまで逃げおおせようとも、執念深い牙がどこまでも追ってきて、俺の眼球を潰すのだ。
ああ。
蛇め。