上杉とバナナと五つ子   作:フェンネル

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犯人

「......最後はお前が動くんだ。上杉」

 

風太郎と五月が仲直りするよう願っていると、不意にレシピを思いついた。紙にメモをして材料をギリギリ空いていたスーパーで買い、これから作ろう、という時にPかの着信が来た。

 

「何だ。深夜だぞ」

 

『君は寝ないんだから関係ないだろ?用件を伝えるよ。ゲネシスドライバーを奪った犯人が見つかった』

 

料理の邪魔をされて若干不機嫌だったが、用件を聞いて戒斗の目付きが鋭くなる。

 

「......ほう」

 

『......今にも殺しに行きそうな声を出すのはやめてくれないか?個人的なトラウマが』

 

戒斗の普段よりさらに低い声を聞いて声を震わせるP。

 

「......で、犯人は?」

 

『もう消えたよ』

 

「は?」

 

見つかったのに消えた、この言葉が理解出来ず思わず呆けた声を出す戒斗。Pはとはいえ、と付け加えて緊急事態だと伝えた。

 

『どうやら向こう側は相当な技術を持っているらしくてね、ゲネシスドライバーを利用して戦極ドライバーを作り上げたらしいんだ。今私の元に1つある』

 

「何だと......」

 

『ただ、向こうはヘルヘイムのことは知らないらしい。だからといって安心出来る訳じゃないが......』

 

ヘルヘイムを知らない。それだけでも2人にとってはまだ救いだった。あんな物が悪人に知られれば、どう利用されるか分からない。

 

「戦極ドライバーを作り上げるということは、内部の構造まで理解しているということだ」

 

『ああ、時が進めばロックシード、ひいてはクラックやヘルヘイムの存在に気づくだろうね』

 

「......それだけは絶対に阻止する」

 

ギリ、と戒斗は歯を食いしばる。

声色も怒りだけでなく、焦りを含んでいた。それを聞いたPは手助けをすると言い出した。

 

『私も、「アーマードライダー・デューク」として世界を守ろうか』

 

「ハッ。前の世界では考えられないことを言うな、”戦極凌馬”」

 

『私はね、気づいたんだよ。君と争うくらいなら味方に付く方が懸命だと。実際致命傷を与えられたしね』

 

Pこと戦極凌馬は、その当時のことを思い出して身震いした。

戒斗は自業自得だと返し、吐き捨てるように言った。

 

「貴様のような狂人は、殺した方が世のためだ。それに───」

 

『弱いから負ける、だろう?分かっているよ』

 

言いたいことが言えず不服そうな戒斗だったが、話題が変わっていることに気づく。

 

「......それで、俺は何をすればいい?」

 

『君には、戦極ドライバーの回収又は破壊、そして製作所を破壊して欲しい。場所は地図を送るよ』

 

「任せろ」

 

心強い声を聞き、凌馬は君ならば安心だと告げた。

そして連絡を切った後戒斗はマンションを出た。

 

「ここから......なるほど、遠いな」

 

地図が示す方向へ、ローズアタッカーで走り出した。

戒斗がマンゴーロックシードを五月の部屋に忘れたのに気づくのは、まだまだ先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戒斗が走り出した頃、日本のどこかで2人の男が電話していた。

2人ともそろそろいい年なのだが、その外見は20代後半と言われても通じるほど若々しい。

 

『よおマルオ!なんか用か?』

 

「本当はかけたくないんだが、仕方ない。1度しか言わないからよく聞け」

 

その内の1人、マルオという男の真剣な声を聞き、相手の男もふざけずに話を聞いた。

 

「君の息子の周りに、変身者がいる。君の息子かもしれないし、僕の娘かもしれない。少なくとも、同じ学校であることは確かだ」

 

『......タチの悪い冗談だなオイ』

 

男は自身の耳を疑った。2人は、あのベルトの危険性をよく理解している。だからこそ、自分達以外の誰かが変身するなどということはあってはならない。ましてや学生が戦いに身を投じるなど。

そう思っていた。

 

「しかも、かなり戦い慣れている」

 

『......まだ10代かそこらのガキだろ?』

 

「......上級3体を1人で、しかも数十秒で倒す者を戦い慣れていない、と言うのか?」

 

『マジかよ......』

 

「まあ、錠前の力によるところが大きい。ただ、僕でも思いつかない立ち回り方だったよ。戦い方だけでなく、錠前の使い方も洗練されていた」

 

マルオは、マンションの屋上で戦っていた騎士の姿を思い出す。

変身を解除した時の顔は分からなかったが、戦闘力は凄まじいものだった。

 

「......僕達も、また戦う日が来るのかもしれない」

 

『そうなりゃそん時だ。もう二度と、失わねぇ』

 

「......ああ」

 

男達の目は、強い意志を宿していた。

話を終えたマルオは近くの椅子に座る。

そして、写真立てに映る女を見た。

 

「もう誰も死なせない......」

 

マルオは、”メロンエナジーロックシード”を強く握り締めてそう呟いた。

 

「......今度は、絶対に......」

 

そんな時、部下から緊急の連絡が入る。

 

「どうした?」

 

『な、何者かに工場が破壊されました!』

 

「......何だと」

 

予期せぬ報告に一瞬動揺したが、すぐに落ち着いた。そして詳しい状況を聞こうとしたが、すでに遅かった。

 

『つ、次は主任の所に行くと───うわっ!』

 

従業員から電話を奪ったのだろう、知らない男の声が聞こえた。

その声は低く若い声だった。

 

『......貴様か、戦極ドライバーを作っているという馬鹿は』

 

「随分な物言いだね。何者だい君は?」

 

『貴様のような奴に素性を教えるほど馬鹿ではない』

 

マルオの問いに男は苛立ちながら答えた。

声色から察するに10代かそこらと目星をつけ、電話の相手が謎の変身者であると決定づけた。

 

「なるほど、君があの変身者か」

 

『何の話だ』

 

知っていると思った単語を男に返され、マルオは少し思考が止まった。

そしてとりあえず用件を聞くことにした。

 

「なんでもないよ。それで、何の用だい?」

 

『ベルトの生産を今すぐに辞めさせろ』

 

「何故初対面の君そんなことを言われなければならない?」

 

『あれ危険性を分かった上でこんなことをしているのなら、俺は貴様を潰す』

 

「......言ってくれるね」

 

電話の相手の声はかつてないほど憤っていた。それは、マルオが寒気を感じるほどに大きな怒りで、それは戦極ドライバーの危険性を理解しているが故のものだと感じさせた。

 

「一応聞くが、従業員達は生きているかい?」

 

『ああ。全員外に追い出した。今ベルトを破壊している最中だ』

 

電話から聞こえる爆発音や打撃音はそういうことかと理解しながらも、マルオは相手の正体を探ろうとする。

 

「君は声を聞くに、10代かそこらだろう?」

 

『俺の正体を探ろうとするのはやめろ』

 

一瞬で看破され、マルオは匙を投げた。戦極ドライバーの危険性を知った上で破壊しようということは、根は善人なのだろうと考え、敵対は避けようとする。

 

「......一先ず、ベルトの生産は君が工場を破壊したので出来ない。そしてこれからもしないと約束しよう」

 

『ならいい』

 

「その条件として、君の名を教えて貰ってもいいかな?」

 

『バロンだ』

 

「......まさか君が......覚えたよ。縁があればその時にでも」

 

返答はなく、気づいた時には通話を切られていた。穏便に済ますことができて少なからず安心するマルオ。

そのあと先程の男にメールを送った。

 

「......やれやれ、備えが破壊されるとは」

 

突然過ぎる襲撃者に、ここ数年で1番のため息を吐いたマルオだった。

そして変身者について説明をするのを忘れていたが、特に気にする様子もなかった。バロンもすぐ忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事を終え、凌馬に報告を入れて帰ろうとする戒斗。

バイクを走らせている途中、凌馬からの報告が入った。

 

”調べてみたが、工場は1つだけだった”

 

それを聞いて戒斗は胸を撫で下ろした。

その後、二乃と行った場所で知恵の花を見ていた。

金の花びらが何枚にも重なってできたその形は、芸術品と何ら遜色ない。

 

「......ん?」

 

ふと、戒斗は違和感を感じる。

自分の体を触り、普段あるものが無いことに気づいた。

 

「......上着を貸したままだったか」

 

一花にベランダで貸したきり完全に忘れていた。

五月との話が終わった後すぐに凌馬から連絡が来たので、いっぱいいっぱいだったのだ。

 

「後でいいか」

 

しばらく日の出でも眺めようかと思い、早朝の寒空の中、昇る日を見ていた。

 

「......オレンジにしか見えんな」

 

そんなことを言っていると、二乃から電話がかかってきた。

どうせやたらと大きい声で暴言でも吐かれるのだろうと拒否のボタンを押した。

 

「......ん?」

 

そして急に景色が変わったと思えば、ヘルヘイムの森にいた。

だが、不思議と動揺はなかった。自分にとって決していい場所ではないものの、重要な出来事の多くあった場所。

 

「ここは......遺跡か」

 

そこはヘルヘイムの森の中でも王ロシュオ、レデュエやデェムシュといったフェムシンム、オーバーロードと出会った場所で、戒斗が初めてゲネシスドライバーで変身した場所でもあった。

 

「別に思い出深い所でもないが......」

 

戒斗は、遺跡の隅に不自然な膨らみを発見した。近くに行って観察してみると、何かが埋まっていた。

 

掘り出してみると、戒斗の愛用していた物が出てきた。

だが今は使い物にならなそうなので、丁重に保管することにした。

 

「まさか......こんな所で見つけるとはな。戦極凌馬には見せられんな」

 

そしてクラックを開き、ヘルヘイムの森から抜け出した。

外は既に昼くらいになっており、陽が少し眩しく感じる。。

だが、陽の光はとても気持ちの良いもので、戒斗は思わず寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───斗、起きて、戒斗」

 

誰かに頬をぺちぺちと叩かれ、戒斗は目を覚ます。

目を開くと、目の前に女の顔があった。

 

「おはよう」

 

色素の薄い髪と赤い右目のどこか神秘的な雰囲気を漂わせる女で、戒斗にとって見覚えがありすぎる顔だった。

 

「......舞、か?」

 

「うん、久しぶり」

 

にこやかに手を振る舞だが、戒斗は反応できなかった。理由は今舞がしている膝枕にあった。

普段の戒斗ならば飛び起きるが、陽の光の気持ちよさと起きようとした時の舞の顔を見て、起きるに起きられなかった。

 

「......葛葉はいないのか?」

 

辺りを見回しても、舞といるはずの紘汰が見当たらない。

 

「私は、紘汰じゃなくてあなたといた方の舞」

 

「......そういうことか」

 

「せっかくだからお話しましょ?」

 

「話すことなど無いが」

 

舞は膨れっ面になって戒斗の頬をつついた。

 

「あんなに楽しそうにしてるのに、私には教えてくれないの?」

 

「聞いても楽しいものでは......」

 

「それでもいい」

 

「......はぁ。仕方ない」

 

舞は戒斗の話を聞く時、とてもワクワクしていた。

話した時間は決して長くはなかった。だが、2人の間ではとても楽しく、長く感じる時間が流れていた。

 

「あいつらの相手は大変だ」

 

「ふふっ。でも、今の戒斗、すっごく楽しそうだよ」

 

「......気のせいだ」

 

「もう、素直じゃないな」

 

そう言いながらも楽しそうな舞は、戒斗の目を手で塞いだ。

 

「戒斗、目を閉じてくれる?」

 

「......分かった」

 

戒斗は、もう一度目を閉じた。

顔は見えないが、舞の声が聞こえてくる。

 

「戒斗、私ね、あなたと話してる時、本当に楽しいの。あの時間がとても好きなの」

 

「......そうか」

 

「だから、またお話しようね」

 

その言葉を最後に、舞の声は聞こえなくなった。

 

「起きなさい」

 

そしてまた頬を叩かれたので目を開くと、舞ではなく二乃の顔があった。

 

「......何をしている」

 

「何って、膝枕よ」

 

「何故だ」

 

「あんたね、石を枕にするなんて正気じゃないわよ」

 

仕方なくよ仕方なく、とあくまでも自主的にやった事ではなく、状況が状況だったと釘を刺す。

戒斗はそんな二乃を見て優しさを感じた。

 

「っ、ていうか起きたんなら離れなさいよ!」

 

「ああ、すまない」

 

意識を覚醒させ、わざわざこんな所まで来たのかと聞くと、気まぐれだと返された。

とはいえ偶然会ったのなら、と二乃に質問する。

 

「今日は暇か?」

 

「何急に」

 

「少し遊ぼうと思ってな」

 

「遊ぶって......私で......!?」

 

自分の体を守るようにして戒斗から距離を取る二乃。

的外れな行動に戒斗はついバカかと思ってしまった。

優しいバカはどこにでもいるのだと。

 

「......何を言ってるんだお前は」

 

「え、違うの?」

 

「あいつらは勉強しているんだろう?お前は1人で家を抜けてきたんじゃないのか」

 

二乃は何故か1人でここに来た。家族優先の二乃が自分に会いに来るとしたら、家族と遊べなくなった時、もしくはそうしたくない時だと考え、その理由は勉強以外見当たらなかった。

 

「なんで分かんの?ストーカー?」

 

だが、二乃は何を言っても戒斗を悪人に仕立てあげようとしだした。

 

「大体察しはつく。それで、どうする?」

 

「むぅ......仕方ないから遊んであげるわ。感謝しなさい」

 

「よし」

 

「えっ、ちょ......何!?」

 

戒斗は素早く二乃をローズアタッカーに乗せ、思い切りアクセルを捻った。

 

「いやあああああっ!!!!」

 

相変わらずこのスピードには慣れていない二乃だった。

そんなことは露知らず、戒斗はノープランのまま走り続けていた。

 

「さて、何をするか......」

 

 

 

 

 

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