上杉とバナナと五つ子   作:フェンネル

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面倒事

学校が終わり、一花から逃げて校門の外に出た戒斗は、トランシーバーである相手と話していた。

 

「......それで、今日はどこに出た?」

 

『そこから少し行った所に大きなマンションがある。そこの屋上にいつもより大きいヤツがあるよ』

 

「マンション......」

 

『それじゃ、健闘を祈るよ。そうだ、1つ言い忘れていた』

 

「何だ」

 

『最上階に「中野」という男がいる可能性がある。そいつには見つからないように任務を遂行してくれ』

 

「......分かった」

 

通話を切り、地図を見てマンションの場所を確かめる。

 

「......近いな。これならロックビークルを使うまでもない」

 

トランシーバーと地図を鞄にしまい、そのマンションに向かって戒斗は歩き出した。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「......ん?」

 

道中、横からやけに視線を感じたので見てみると、顔出しパネルで遊んでいる風太郎と目が合った。

 

他人のフリをしようと素通りしようとしたが、風太郎があまりにも頼み込んだので仕方なく用件を聞いた。

 

「何だ」

 

「実は......あそこにいる五月を何とか1人だけにして欲しいんだ」

 

風太郎の視線の先には、2人の友達と思しき女子と仲良く喋る五月の姿が。

 

「理由を教えろ」

 

「あいつに謝りたいんだけど、その機会がまったく来ないんだよ」

 

「今から謝れば良いだろう」

 

「あいつ無視してくるんだよ。話しかけたらそっぽ向いて早足でどっか行くし」

 

「止めれば───」

 

「あの2人が絶対邪魔するだろ」

 

「詰んでるじゃないか」

 

「そうなんだよ」

 

話が振り出しに戻った2人の元に、五月と一緒にいた1人が来た。

前髪が長く、目がよく見えない。ヘッドホンを首にかけている。

 

「......楽しい?」

 

「まあね、こういうのが趣味なんだ」

 

「女子高生を眺める趣味......予備軍が2人」

 

「おい、誰が予備軍だ」

 

無言で通報しようとする五月の友達を戒斗が止め、風太郎が友達の五月には言わないでくれと頼む。

 

「......わかった。それと───」

 

「?」

 

「───あの子は友達じゃない」

 

そう言って去っていく五月の友達の背中を見ながら、風太郎は戒斗に問う。

 

「どう思う?」

 

「何がだ」

 

「仲良く見えるんだけどな......」

 

「さあな」

 

「やっぱ人付き合いってめんどくせーわ」

 

「それを俺に言うか」

 

「お前は例外な。ていうかこの通りは......」

 

3人について行くと、とてつもなく高いマンションの近くまで来た。

戒斗は目的のマンションはここか、と思うと同時に風太郎と同じことも考えていた。

 

「あそこが五月の家じゃねーだろうな......マジモンの金持ちじゃねぇか」

 

3人が角を曲がり、風太郎と戒斗もそれについて行って角を曲がると、ヘッドホン女と、ツインテール女が待ち構えていた。

 

「なに?君らストーカー?」

 

「げっ......」

 

風太郎がヘッドホン女に言うなと言ったのに......という目線を向ける。

 

「五月には言ってない」

 

「......確かに」

 

「五月は帰ったよ。用があるならアタシらが聞くけど?」

 

「お前達じゃ話にならない。どいてくれ」

 

「おい───」

 

強引に進もうとする風太郎に、ツインテール女はきつい口調で告げる。

 

「しつこい。君モテないっしょ。早く帰れよ」

 

これ以上の問答は無駄だと思い、風太郎は何食わぬ顔であのマンションを自分の家だと抜かした。ツインテール女はそれを信じて謝罪した。

 

だが、ここで思わぬ横槍が入った。

 

「......焼肉定食焼肉抜き。ダイエット中?」

 

それを聞き、風太郎はダッシュで逃げた。

置いていかれた戒斗は特に何も言われずジーッと見られるだけ。

 

「何?アンタもここが家だなんて言うつもりないでしょうね」

 

「ああ。俺はあいつに用はない」

 

「次来たら通報するわよ」

 

「勝手にしろ」

 

なども言いながらマンションに入ろうとする戒斗に、ツインテール女は怒鳴った。

 

「何してんのよ!」

 

「俺はこのマンションに用がある」

 

「話聞いてた!?」

 

意地でも入れたくないのか戒斗を押し返そうとするツインテール女。

だが殆ど動かず疲れているだけだった。

 

「はぁ、重いわねアンタ......」

 

そんなことを言われているが、今の戒斗の耳には入らない。

どうにかして屋上に行かなくてはと手段を考えているのだ。最上階まで行ってから昇降口で行かなければ、と。

 

中に入らず行く以外は、空を飛ぶくらいしか方法はない。

 

空を飛ぶくらいしか。

 

(......空を......そうか!)

 

踵を返してマンションから離れる戒斗。ツインテール女はしてやったり顔でもう来るなと大声で叫んでいる。

戒斗は近くのデパートに入り、立ち入り禁止の屋上へ向かった。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「......ここなら良いか」

 

戒斗は黒いベルトのバックル、「戦極ドライバー」を取り出し、装着する。するとベルトの黄色い帯が戒斗の腰に巻きついた。

 

「変身」

 

そしてバナナがデザインされた錠前、「バナナロックシード」を取りだし、開錠する。

 

《バナ〜ナ!》

 

すると戒斗の真上に巨大なジッパー「クラック」が出現し、一回りして開いたかと思えば、大きなバナナが降ってきた。

そしてバナナロックシードを手元で回転させ、戦極ドライバーのバックル中央に嵌め込み、施錠した。

 

《ロック・オン!》

 

そしてファンファーレのような待機音が聞こえ、横に付いている小刀「カッティングブレード」を倒し、ロックシードを開いた。

 

《カモンッ!バナナアームズ!!》

 

すると、大きなバナナは戒斗の頭に一直線に落ちていき、戒斗の体に赤と白を基調としたアンダースーツが纏い、バナナが開いた。

 

《ナイト・オブ・スピアー!!》

 

開いたバナナは甲冑の形へと変化し、マスク部分は鉄仮面に、目の部分にスリットが入っている。

右手には大きな槍が握られており、その姿はさながら西洋の騎士だった。

 

戒斗は「アーマードライダー・バロン」に変身し、別のロックシードを取り出した。

 

「こいつがあって助かったな」

 

タンポポロックシードを開錠し、空に放った。

するとホバーバイク型のロックビークル、ダンデライナーに変化した。

戒斗はダンデライナーに乗り、マンションの屋上まで飛んで行った。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「さて、クラックは......あそこか」

 

上空から屋上を見ると、中央地点に2m程のクラックが出現していた。

ダンデライナーから飛び降り、屋上に着地する。

クラックのサイズは大きいが、インベスが出てこないところを見るとまだ安全なところかと胸を撫で下ろす。

 

そう思った瞬間、大きな針が飛んできた。戒斗はそれを避け、クラックから距離を置く。するとクラックが大きくなり、インベスが1体飛び出てきた。

 

「このクラックに近づいた隙に攻撃しようと考えていたとは......少しは知性があるようだな」

 

そのインベスはチョウの姿をしており、羽根で戒斗を切り裂こうと攻撃を仕掛けてきた。

避けて迎撃しようとすれば、クラックの方から先程の針が飛んできた。

射出元を見ると、ハチの姿をしたインベスがいた。

 

「ということは、あれは毒針か!」

 

不用意に距離を詰めず、遠距離から針を連続で飛ばし、冷静にチョウインベスの援護をしている。

 

「チッ......弾数が多いな」

 

針を弾きながらハチインベスを仕留めようとする戒斗だったが、更にもう1体のインベスが戒斗に襲いかかった。

そのインベスはアリの姿をしており、その顎は強靭なのだろうと見て分かるほど発達していた。

 

「なるほど、相性のいい戦い方だ。恐らく針でかく乱、顎で動きを止め、羽根で切り裂く......といったところか。だが───」

 

感心している戒斗を狙い、3体同時に攻撃を仕掛けてくる。

戒斗はバナスピアーを構え、インベスからの攻撃をいなす。

 

「分かってしまえばどうということはない」

 

ハチインベスが両腕の針で突き刺そうと腕を振るうが、バナスピアーに弾かれる。

間髪入れずにアリインベスがバナスピアーに噛みついた。そして顎に力を込めてバナスピアーを砕こうとしている。

戒斗は噛みつかれた瞬間に、バナスピアーを振り下ろしてクラックの中に投げ込もうとした。

 

だが、アリインベスは地面に叩きつけられただけで、クラックには入らなかった。

 

「何......?どういうことだ?」

 

クラックの大きさを見誤るはずもなく、戒斗は驚いて動きを止めた。

だが、こうして驚いている隙にアリインベスは今にも復活し、バナスピアーに噛みついて粉砕しようと顎を大きく開いている。

そうさせる前に戒斗はカッティングブレードを1回倒した。

 

《カモンッ!バナナ・スカッシュ!!》

 

「貴様の敗因は、武器ばかり狙ったことだ」

 

バナナスピアーの穂先にエネルギーを一点集中させている隙に、噛みついているアリインベスを蹴り上げる。完全に油断していたアリインベスは空高く飛んでいき、身動きの取れぬまま降ってくる。

 

「ハアアッ!!」

 

戒斗は落ちてくるアリインベスの開いた大顎にバナスピアーを思い切り突き刺した。その時、バナスピアーの先から極太のバナナ状のエネルギーが出現し、アリインベスの胴体を勢いよく貫いた。

大きすぎるエネルギーに負け、アリインベスは爆散していった。

 

「まずは1体......フンッ!!」

 

3体の内1体を撃破した後、戒斗はバナスピアーを後ろに突き刺した。

 

「ガ、ガ......!」

 

不意打ちを狙ってきたハチインベスは、予期せぬ攻撃をもろに食らい、大きく仰け反った。

 

「ハッ!」

 

そして突き刺したバナスピアーをすぐ引き抜き、横に一閃。

 

「ガグアッ!」

 

勢いよく転げていくハチインベス。バナスピアーをまともに2度食らい、立つのがやっとになっていた。

 

「何故遠距離攻撃に特化したお前が近距離で向かってくるのか......感情的になったか」

 

そして、ダメージを食らいつつもハチの飛行能力でチョウインベスと共に逃げようと飛んでいく。チョウインベスが粉を撒いてくるが、バナスピアーで何とでもなる。

 

「逃げるなら、クラックの中にすれば良いものを。この粉は......」

 

所々床やクラックの周りに落ちたりしているが、何も起きない所を見てとくに効果は無いのだろう。

 

「大したことなさそうだ」

 

《カモンッ!バナナ・オーレ!!》

 

カッティングブレードを今度は2回倒し、ダンデライナーに乗って2体のインベスを追いかける。

チョウインベスは元から飛行速度があまり出ず、ハチインベスはかなり弱っていたので飛ぶにもフラフラしておぼつかない。

速度ではダンデライナーが勝っていたので追いつくのにそう時間はかからなかった。

 

「ハアアアア...........ッ!!」

 

先程と同じ形でバナスピアーにエネルギーを溜め、インベスの目の前に回り込んだ瞬間、凄まじいエネルギーを持ったバナスピアーを、突き刺すのではなく、そのまま振り下ろした。

 

「ハアアアアアッ!!!!!」

 

バナスピアーのエネルギーは、飛んでいるハチインベスとチョウインベスの体を一刀両断した。

 

 

「「グ、グギャアアアアアアッ!!!」」

 

 

大きく断末魔を上げ、チョウインベスとハチインベスは轟音と共に爆発した。

空中で爆発したので下から一般人に見られる前に屋上へ戻った。

3体のインベス全てを撃破した戒斗は変身を解除し、クラックの方へ向かう。

クラックを近くで見た時、戒斗は違和感に気づく。

 

「小さくなっている......?」

 

先程見た時より、クラックが明らかに小さくなっていたのだ。

少なくとも、戦っている最中は目測でも3体同時に出てこられると思う程大きかった。

だが今はどうか。精々1体出れる程度だ。

 

「あのチョウのインベスが撒いていた粉は、幻覚を見せるものだったのか......」

 

それなら3体同時ではなく1体ずつ出たり、アリインベスがクラックに入らなかったのも納得がいく。

 

「......あの時の俺なら、敗れていたかもな」

 

そんなことを考えつつ、戒斗はクラックに手をかざす。

人間の手ならばクラックは拒否反応を起こし、触れた者を消そうとする。そのエネルギーに当たれば、人間は消滅する。

 

だが戒斗にはその攻撃が来ない。否、来ているが、ダメージはない。

彼はちょっとした理由で、クラックのダメージを抑えられるのである。

ただ、抑えられるといっても腕にダメージは入る。

だがそれはクラックに触れた場合の話。

 

その気になれば触れずとも、手をかざしただけですぐにクラックを閉ざせるようになる。そうすればダメージは来ない。

ならば何故わざわざ触れるのか。それは戒斗自身がその痛み、犠牲を忘れないためである。

任務を遂行し、トランシーバーで相手に連絡を入れる。

 

「終わったぞ」

 

《早かったね。ご苦労様。報酬はいつも通りに》

 

「ああ」

 

最低限の言葉だけ交わし、通話を切る。そしてトランシーバーを鞄にしまい、屋上の出口からマンション内へ戻る。

この時の戒斗は完全に忘れていた。

 

自分が空から来たということを。

 

そして戒斗は知らなかった。

このマンションの最上階が───

 

「え」

 

「は?」

 

「あ」

 

「あれ?駆紋さん?」

 

「なっ......」

 

「か、戒斗!?」

 

風太郎の家庭教師先だったことを。

 

 

 

 

 

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