上杉とバナナと五つ子   作:フェンネル

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駆紋戒斗という男

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ッ!」

 

男は、目を覚ました。

蘇るのはつい先程の出来事。

強き男と戦い、負けてその生を終えた時のこと。

己の最後の戦いのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃れた地方都市にて、多数の怪物を率いて相見える二人の男。

 

「やはり最後まで俺の邪魔をするのはお前だったか......葛葉紘汰」

 

「戒斗、お前は一体何がしたいんだ......?」

 

「強い者が弱い者を一方的に踏み躙ることのない......優しさのない者が存在しない......そんな新しい命で、この星を満たす。舞と一緒に......知恵の実を使って」

 

「今の世界じゃ......それは無理だっていうのか?」

 

「それが俺の生きてきた時代だ」

 

幼少期の彼が見たもの。

それは社会と金、人間に全てを奪われ、酒に溺れて人が変わってしまった父。

そんな父に暴力を振るわれ続けた末に命の灯火が消えてしまった母。

そして残った父も、幼い自分を残して自ら命を絶った。

 

「ッ......強くて優しい奴だって大勢いた!」

 

「そんな奴から先に死んでいった......優しさが仇になって、本当の強さに至れなかった!貴様もそうだ、葛葉紘汰......!」

 

戒斗が怒りを込めて告げた言葉に目の前の男、葛葉紘汰は思わず黙り込み、俯いた。

そして顔を上げ、決意を秘めた目を向ける。

 

「いいや。俺はお前だけには負けないお前を倒して証明してみせる。ただの力だけじゃない......本当の強さを!」

 

「それでいい。貴様こそ俺の運命を決めるに相応しい」

 

男達は変身し、戦士へと姿を変えて大将首を狙うべく一歩目を踏み出す。

互いに全てをぶつけ、最終決戦を繰り広げた。

 

「うおおおおおおおっ!!!!」

 

「ハァアアアアアアッ!!!!」

 

ぶつかる武器。散る火花。

幾百幾千の軍勢がぶつかり、戦いは波乱の連続だった。

 

「葛葉ァアアアアアアッ!!!!!!」

 

「戒斗ォオオオオオオッ!!!!!!」

 

どちらが最強の力を手に入れ、世界をどうするのか。

どちらが勝ち、どちらが負けるのか。

どちらが死に、どちらが生きるのか。

 

「フンッ!セアアッ!!」

 

「ぐあっ!うあああっ!!」

 

「ハッ!セアッ!」

 

「ぐはっ、があ......!」

 

熾烈を極める激闘。

勝敗は最後の一秒までわからなった。

 

「うああああああっ!!!!!」

「グ......ッ!」

 

永かった戦い。

負けたのは戒斗で、葛葉紘汰の信念の勝利だった。

致命傷を負い、地面に倒れこもうとする戒斗を、紘汰は支える。

そして涙を流して戒斗を見た。

 

「なぜ泣く......」

 

「泣いてもいいんだ。戒斗、それが俺の弱さだとしても......!」

 

「......!」

 

「俺は、泣きながら進む!!」

 

その言葉を聞いて、戒斗は負けたはずが安らかな顔になった。

そして紘汰の胸に拳をやり、最後の言葉を言い残して、息を引き取った。

 

「お前は......本当に強い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───はずだった。

 

「(なんだ、これは......)」

 

自らの両手を開いて閉じて、生きていることを確認する。

そして幼げで丸い両手を二度見して自分が子供であることを理解した。

 

「(奇想天外ではあるが、ヘルヘイムに比べればこんなもの......)」

 

そして鏡を探して顔を確認しに行こうとした時、不意に両親の顔が浮かんだ。

 

「(......いま、この体の子供の両親は......)」

 

そう思った時点で、彼は薄々察していたのかもしれない。

部屋中にある酒。大量の金が詰め込まれたアタッシュケース。

 

「...........」

 

そして彼は目にした。

今しがた首を吊り終え絶命したであろう父の亡骸を。

力なく垂れる四肢と首。

 

「フッ、所詮俺は俺か......」

 

それを見ても、戒斗は何も思わなかった。

感情が欠落しているのかもしれない。

戒斗は淡々と家の物を使って足りない身長を補い、父を縄から離した。

 

「大方、前と同じだろうな......」

 

ふと、机に置かれた紙を見つける。

何やらメッセージが綴られており、戒斗はそれを黙読していく。

 

 

『戒斗へ。

 

どうしようも無い父さんを許してくれ。もう耐えられない。

幼いお前を残していってすまない。お前は、父さんのようにはなるな。簡単に騙される人間には。全てを奪われる人間には。

母さんの件も、本当にごめんな。あの世でしっかり謝るよ。

お前にとっては短くてなんてことない時間かもしれないけど、父さんと母さんにとっては、何よりも楽しい時間だった。

 

生まれてきてくれてありがとう、戒斗』

 

 

「...........」

 

読み終えた後、戒斗は手紙を手で握り潰し、適当に放り投げた。

その日の天気は、清々しい程に快晴だった。

親子で遊ぶ声も所々聞こえる。

戒斗自身に感情の起伏はなく、ただ平然としているのみ。

 

「二十と少しも生きれば、何も感じなくなるものだ」

 

駆紋戒斗、七歳の出来事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───一年後───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駆紋戒斗君、久しぶりだね」

 

両親が死に、禄に学校へも通うことの出来なかった戒斗と出会ったのは、プロフェッサーこと戦極凌馬だった。

 

「戦極凌馬......そうか。貴様も」

 

前の世界で自分が殺した科学者。

最後に自分の破滅を示唆し、ビルから落命した男。

 

「驚いたね。もう少し感情的になると思っていたんだが......」

 

「この一年、この世界について調べていたが、ユグドラシルは創られていないらしい。ということは貴様も然程巫山戯たことはしていないとみた」

 

「正解。ところで、何故私が君に会いに来たかわかるかい?」

 

戒斗は凌馬の目を見る。

そこから読み取れる感情は一つだった。

 

「......まさか、ヘルヘイムか?」

 

「お、さすがだね。やはり君は察しがいい」

 

戒斗はすぐに詳しい話を求めた。

そして凌馬がかなり前からこの世界にいること、共に戦っている人間がいること。

 

「戦っているのは私を含め五人だね。しかも凄いよ。戦極ドライバーでゲネシスドライバーの性能とタメを張れる男がいる」

 

「......そんなことはどうでもいい。問題はこの世界にもヘルヘイムが存在するということだ。説明しろ」

 

戒斗の言葉に答えず、凌馬は戦極ドライバーを投げ渡した。

 

「君も戦ってもらうよ。本当はバナナロックシードが良かったんだけどね、如何せん出ないんだ。そこで......」

 

取り出されたのはヘルヘイムの果実。

 

「当然だ」

 

戒斗は戦極ドライバーを腰に巻き、見覚えのあるそれを無意識に手で取っていた。

そして植物から離れたその果実は、光ったかと思えばバナナをモチーフとした南京錠に変わった。

 

「......なんだい。私が何度やっても出なかったのに君は一回か。もうそのロックシードと運命で繋がっているんじゃないのかい?」

 

「さあな」

 

どこか嬉しそうな顔をしながらも、また戦うことを考えて顔を引き締める。

 

「インベス達の出現場所は目星がついている。すぐそこさ」

 

凌馬の後を着いてけば、インベスが大勢いた。

だが二人は、その勢力差に臆することなく変身した。

小さかった戒斗の背が、変身と共に大きく伸びた。

 

《ナイト・オブ・スピアー!!》

 

《ファイトパワー!ファイトパワー!ファイファイファイファイファファファファファイト!!》

 

「この程度で俺たちに勝てると考えているのか......舐められたものだ」

 

それから数十秒後、そこにはバロンとデュークしかいなかった。

凌馬は、衰えるどころか増すばかりな戒斗の闘志に、思わず冷や汗を垂らした。

 

「なるほど......さすが、私を殺した男だ」

 

「勝手に落ちていったのは貴様だろうが。ふざけたことを抜かすな」

 

「ははは。まぁ、感動の再会はここまでにして......来たよ」

 

デュークは視線を上に向ける。

連られてバロンも見上げてみると、三つの影が降ってきた。

バロンは近くで3人の姿を見た時、口を大きく開けた。

 

「驚いただろう?」

 

目の前にいるのはアーマードライダー斬月、斬月・真、マリカ。

バロンの思い出として、斬月には圧倒的な力を持って打ちのめされ、斬月・真には鎧武と共闘した後一時撤退した思い出がある。

だがマリカは、三人の中で一番縁の深い姿だった。

 

「(耀子には昔蹴られたりはしたが......あいつは物好きな女だった......)」

 

「ところで、そいつ誰だ?見たとこ俺たちと同じような感じだけどよ」

 

「ああ、彼はバロン。新しい仲間だ。ちなみに彼は誰にも自分の姿を見せないことにしているんだ」

 

斬月の質問を上手く誤魔化すデューク。

バロンが変身を解除したとして、正体が子供だと知られた際、変に干渉されないようリスクを極力減らした故の言い分だった。

 

「ふーん。まぁいいか。敵になるような感じはしねー。むしろ協力的な感じだ」

 

そう言った途端マリカと斬月はロックシードを外して変身を解除した。

 

「俺は上杉勇也だ。よろしくな!」

 

「私は中野零奈といいます。よろしくお願いしますね?」

 

ワイルドな金髪の男と知的な雰囲気の美女。

この二人は比較的友好的に接してしたものの、斬月・真はバロンへの警戒を解こうとしていなかった。

 

「おいマルオ。そんなに警戒すんなよ。あの化け物たちを倒してるんなら味方だろ」

 

事実、ソニックアローを手放そうとしない。むしろ弦を引く準備をしている。

バロンも槍をかまえる。

 

「はい喧嘩しない」

 

凌馬はバロンへ意識を向けていた斬月・真のロックシードを奪い、無理やり変身を解除させた。

 

「なっ、戦極!」

 

そこにいたのは頭の良さそうな青年で、凌馬からロックシードを取り返そうと躍起になっていた。

 

「彼は中野マルオ。マルオと呼んであげてくれ。こんなだけど戦う時は強いから。仲良くしてやってくれるかい?」

 

「......さぁな」

 

「ま、こいつ結構気難しいから気ぃ付けな!」

 

笑いながらバロンと肩を組む勇也。

出会って数分だが、微塵も敵意を感じさせなかった。

隣の中野零奈にも敵意はなかった。

 

「ともかく、今日は解散しようか。何も無い場所に五人でいてもね」

 

「そうだな。子供もいるし、帰るわ」

 

「私も。5人が待っています」

 

勇也はバロン達に背を向け、もう一度変身した後、スーツのスペックを利用して爆速で帰って行った。

 

「開発者視点であの使い方はありなのか?」

 

「ま、あれをあげたのは私だからね。今更そんなことは言ってられないよ」

 

そしてその場にバロンと凌馬だけが残ったのを確認し、駆紋戒斗は姿を現した。

 

「それにしても、幼い体とは不便だな。だが、変身した途端に背が伸びたのはどういうことだ?」

 

「実はこういうこともあろうかと、ベルトの中に強制成長装置を入れたのさ。体が成長するにつれて自動で消滅するようにしたから心配はいらないよ」

 

目の前の男は腐っても科学者。

しかも世界トップクラスの頭脳を持つ者。

戒斗は前の世界とブレることの無い凌馬の雰囲気を見てため息をこぼした。

 

「さて、まずはこの世界について説明しようか───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凌馬から聞いたことをいくつかに分けるとこうなる。

 

一つ、ヘルヘイムの被害は大規模に及んではいない。

 

二つ、インベスによる被害はあるものの、原因不明の怪物として世界から追われている。

 

三つ、オーバーロードには遭遇していない。

 

「あとはたまに私がクラックを開いたりするくらいかな」

 

「そこに関しては言及しないが......つまり俺達で、ヘルヘイムによる侵攻を止めた上で頭を潰すということだな?」

 

「ああ。君には頭との戦闘を頼みたい。まぁオーバーロードだろうね」

 

それを聞き、戒斗の顔が強ばる。

自分は前世で世界を滅ぼそうとした身。

今もその意思は変わらないが、最終的な決断は、自分が成長するにつれての世界の結末を見て決めることにした。

 

「あと、あの中野という女性には極力戦闘をさせないようにしてくれ。彼女は五つ子の母親なんだ」

 

「......父親はどうした」

 

「彼はろくでなしのクズでね。彼女のお腹にいるのが五つ子と知った途端姿を消したんだ。ちなみに消息不明だよ」

 

「ほう......」

 

「おー怖」

 

戒斗は額に青筋を浮かべる。

凌馬は茶化すような顔で肩を竦めていた。

 

「とりあえず、君は前世と比べて戦闘”力”が大幅に失われている。だから安全のためにも、これからは私の研究所に泊まりたまえ」

 

「とてつもなく気に食わんが、そうした方が良さそうだな。......どうやら今は、貴様を殺せなさそうだ」

 

「いや殺せたとしても殺さないでほしいんだけどね。研究所の設備は最高級のホテルを彷彿とさせるよ」

 

「寝床があればそれでいい。それで、研究所は───」

 

どこだ。そう言おうとした途端、戒斗はデュークに担がれ、空高く飛んで行った。

先程勇也が見せたスペック利用の高速移動を、生身の人間相手に平然と行うこの男。

 

「......帰ったら覚悟しておけよ」

 

「子供は危なっかしいくらいが丁度いいんだよ!」

 

そしてビルの屋上に着地して跳躍を一度、また一度と繰り返し、あっという間に隠れ家のような場所に到着した。

 

「トイレや風呂、冷蔵庫も完備してあるし、君用のベッドもあるから」

 

ドヤ顔で親指を立てる凌馬を見て、戒斗は今にも殴ろうと拳を固めた。

そして目の前の巫山戯た科学者を見て直ぐに毒気は抜け、拳を解いた。

 

「......どうやら、子供の体というのは脆いらしい。少しだけ甘えさせてもらおう」

 

 

 

 

 

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