上杉とバナナと五つ子   作:フェンネル

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新しい力

実験からしばらく経った頃、目を覚ました戒斗。

 

「これは......」

 

ベッド横に置かれている錠前を見て、凌馬の発言の意味を理解した。

 

「·····フン。上等だ」

 

そのロックシードは、戒斗もよく覚えている。

使用したのは一度きりだが、恐ろしい危険性と、凄まじい戦闘力を得ることができた。

 

「なるほど。あの実験は......」

 

戒斗は一先ず、置かれている錠前について話す為、凌馬の元へ向かった。

 

「お、早かったね」

 

「それより......貴様の思惑がなんとなくだが読めた」

 

そして凌馬に置かれていた錠前を見せる。

 

「このロックシードは強力だが使える時間が短い。体力の消費、というよりヘルヘイムのせいでな」

 

「うん、そうだね」

 

「だから俺にヘルヘイムの毒を浴びせ、耐性を作ることでこいつを長時間使えるようにする......というのが俺の予想だ」

 

「君が考えている事で大方正解だよ」

 

「前に使った事でこの力については大体掴めている」

 

「それは重畳。ま、幸い時間はあるからね。後は何とでもなるさ」

 

主な準備は既に整った。

後は当日まで話し合いや細かな調整を繰り返し、できる限り万全の体制で戦いに挑む。

 

「本来ならばゲネシスドライバーを人数分作成する予定だったんだけど......情けない話、できそうにない。すまないが、君と上杉には戦極ドライバーで戦ってもらう」

 

「構わん。ひとまず俺は、このロックシードに慣れなくてはな」

 

「修学旅行の日も近い。今の内に戦い方を決めておいた方がいいかもしれないね」

 

「気に食わんが、俺と貴様の考えは大体同じだろう。あの三人には貴様が伝えろ」

 

「OK、任せたまえ」

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「さて、我々はこれから大きな戦いに挑む訳だが、作戦も無しに、とはいかない」

 

私はなんとかして予定の会う日を作り、作戦会議を始めた。

今この場にいるのは私と上杉、マルオと中野君の四人。

まずはヘルヘイムについて、今まで話していなかった部分を加えて話した。

オーバーロードという存在についてもね。

 

「こちらの人数が少ない以上、一人一人慎重に動く必要がある」

 

「チームでも組めってか?」

 

「それが望ましいね。ただ、固まり過ぎて一網打尽にされては敵わない。一応は距離をとるよ。互いにフォローできる距離を」

 

「俺の銃はそんなに攻撃力ねぇぞ?大丈夫か?」

 

まぁ、確かに無双セイバーの銃撃の威力は、ソニックアローに比べれば数段劣る。

でも、そんなことは分かりきっているのさ。

 

「そう言うと思って、決戦当日まで君達の武器を回収する事にした。アップデートの為にね」

 

「だが、その間にも被害は出るだろう?見過ごすわけには───」

 

「そこはバロンと僕に任せたまえ」

 

向かってくるインベス達は全員狩り尽くす。

あのアームズとレモンエナジーなら不可能じゃないはずだ。

 

「というか、今ここに彼がいないのもインベスを狩っているからさ」

 

リンゴアームズの練習も兼ねてね。

 

「......開発者たる君を信じない訳にはいかないね」

 

「あいつには世話になりっぱなしだな。マルオ、今度あいつに飯でも奢ってやろうぜ」

 

「上杉。そういうのは戦いが終わってからだよ」

 

マルオの方も、バロンを信用しているようだね。

安心安心。

 

「ま、君達は気にせず愛する者達と過ごすといいさ」

 

そう言うと、マルオと中野君は互いをチラ見した。

偶然にも目が合ってしまい、すぐに逸らしていたが。

上杉はそんな二人をみてニヤニヤしていた。

 

「少し話が逸れたね。大前提として、我々は五体満足でこの戦いを生き抜かなければならない。そのためには、生き残る気持ちが大事になってくる」

 

もし生き残れなかったら、とでも考えたのか三人は表情を強ばらせた。

 

「だからアップデート期間中、体が鈍らないようにしておいてくれよ」

 

「......つーことは、アップデートが終わってからはぶっつけ本番ってことかよ?」

 

「出来るだけ早く済ませるつもりでいるけど、変に急いで中途半端にする訳にはいかないだろう?なんて言ったって、死なないようにする為なんだから」

 

納得してもらえたようだね。

命大事に、だよ。

 

「さて、目的を整理するよ」

 

私はホワイトボードに最優先事項を書いた。

 

・全員が五体満足で生き残ること。

・敵の頭を倒すこと。

・自分の命を一番に優先すること。

 

「間違っても誰かを庇って致命傷を負うなんて真似はやめたまえよ」

 

それをしそうな奴がここには一人いる。

誰がとは言わないけどね。

 

「......あと、敵の親玉と戦う時は必ずバロンと一緒にしてくれ。そうでなくても、彼と親玉を一対一の状況にできれば何とかなるはずだ」

 

「敵の親玉ってのはどんな奴なんだ?」

 

「この写真を見て分かるとおり、全身緑さ。名前はレデュエ。ゲームで言うところの魔法タイプ的な奴さ。あと性格は外道だよ」

 

「戦闘力がどれ程のものかも、分かっているのですか?」

 

「間違いなく敵の中で一番だろうね。ゲネシスドライバーでも敵わないかもしれない」

 

「多対一にして手数で押し潰せばどうだい?」

 

「敵がレデュエだけならいけるかもしれないね」

 

「バロンと一対一にすればって言ってたが、あいつのベルトは俺と同じやつだろ?大丈夫かよ?」

 

「一応だけど、彼には強力な錠前を渡してある。加えて戦闘慣れしてるから大丈夫だと思うよ」

 

「......会ってからが一番の山場ですね」

 

「確かエネルギー弾のようなものを使うとか言ってたような......あと植物を操れるから気をつけてね」

 

戒斗くんの話によると奴は昔、植物を繭のように使って攻撃をガードしたらしい。

 

「ただ、こいつに拘り過ぎて他を疎かにはしたくない。極端な話だが、レデュエはバロンに任せるつもりでいるといいよ」

 

「つまり僕達は、敵の数を減らすことに集中すれば良いということだね」

 

「ああ。後は......早め早めに強い方から倒せたらいいかな」

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

四人が話していた頃、バロンはインベス討伐に精を出していた。

だが今は、助けた少女に泣きつかれてしまっている。

 

「(いつ泣き止むんだこいつは......)」

 

この少女は、バロンが駆けつけた際に上級インベスに襲われていた。

敵はバロンがすぐに一掃したが、その後堪えていた涙が溢れたのか泣きじゃくってしまった。

 

「(しかし、また狙われるとはな......インベスで良かった......と思うべきか)」

 

バロンは今、自分が助けた少女───一花の問題について頭を回す。

その中で、インベス達がそれほど遠くまで侵攻していない事に気づいた。

 

「(......それに、そもそもの敵の数が少ない。という事は、奴らは既に少数精鋭の形になっていると見た方が良いな。しかし......)」

 

「あ、あの......」

 

「む?」

 

「助けてくれて、ありがとうございます」

 

「ああ。気にするな」

 

バロンは何故か敬語の一花を気にすることなく、抱えながらどこか離れたところへ送り届けようと歩き出した。

 

「えっと......バナナさん?」

 

「バロンだ!」

 

「あっ、バロン......様は、えっと......」

 

「話すのは後だ。お前はここで待っていろ。いいな。絶対にだ」

 

「えっ?は、はい!」

 

一旦一花を避難させた後、バロンは元いた場所へ戻った。

 

「(それにしても......)」

 

こちらが総攻撃を仕掛けようとしている事を察しているかのように、敵の出現は小規模なものばかりた。

それとは別に一つ、バロンにとって妙な要素があった。

 

「(こちらの策を知っているのなら、わざわざ出現する必要は無いはずだ......にも拘らず同じような場所に出現し続けるという事は......)」

 

その時、バロンの後ろから飛びかかる影があった。

その影をバナスピアーで受け止めて弾き返し、その方向へ振り向きながら数歩距離を取る。

 

「この力......!」

 

否、弾き飛ばされたのだ。

バロンは慌てることなく敵を視界に捉える。

 

「奇遇......でもないな」

 

「前は取り逃したが......今回は仕留させてもらうぞ」

 

現れたのは、一花を攫ったインベスだった。

前回は二体一組だったが、今回は一体。

敵の喋り方から、バロンはあの知的な方だと認識した。

 

「前回と同じと思うなよ」

 

だがその見た目は以前とは明らかに異なっており、凄まじいパワーを感じさせるものに変貌していた。

と言うより、一花を攫った実行犯の方を取り込んだような風貌だった。

 

「(なるほど。あの映像のように殺し合いをさせたのか。そして強化......いや、進化したということか)」

 

進化前ですら逃げる事しかできなかったバロンだったが、それは過去の話。

 

「フン......試すには丁度いい」

 

凌馬から渡された新しい錠前を取り出し、開錠した。

 

《リンゴォ!》

 

慣れた手つきで戦極ドライバーにセットし、カッティングブレードを倒す。

 

《カモンッ!リンゴアームズ!》

 

変身が完了した時、バロンの姿は甲冑を纏った騎士に変わっていた。

 

《デザイア・フォビドゥン・フルーツ!》

 

アームズウェポンは二つ。

長剣「ソードブリンガー」盾「アップルリフレクター」を装備している。

攻守バランスの取れた形態。

その名も「アーマードライダー・バロン”リンゴアームズ”」

 

「(新しい姿か......油断せず、確実にだ!)」

 

敵はあくまで警戒したまま、攻撃するタイミングを伺う。

まずはバロン武器を注視する。

 

「(盾......ということは一度は弾かれると考えた方がいいな)」

 

敵は力を込めた最初の攻撃で盾を弾き、バロンが仰け反った瞬間に全力の一撃を叩き込む、短期決戦の作戦を立てた。

 

「(長引く可能性もあるだらうが、確実にダメージを与えてやる......!)」

 

そう考え、様子を見ようとした瞬間。

バロンは敵の方へ走り出した。

 

「(っ、この速さは!)」

 

以前よりも上がるスピードを見て、敵は防御を捨ててカウンターに狙いを絞った。

敵は拳を強く握り、盾ごとバロンを吹き飛ばすつもりで近づいていく。

 

「(狙うは攻撃の起こり目!)」

 

敵は必ず一撃を加えるため、バロンの動きに反応できるよう集中力を高め、長剣の動きを警戒する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───瞬間、視界が黒に染まった。

 

「なっ......ぐあっ!!」

 

それとほぼ同時に顔への衝撃を食らい、一瞬の隙を見せてしまった。

 

「っ......ハァアアアッ!!」

 

だがその隙を見逃すバロンではない。

必ず攻撃を仕掛けてくる。

だから敵は視界が不自由な中、生んでしまった隙を潰す様にバロンのいた方向に向けて攻撃を放った。

だがその拳は全て空を切った。

だかそれは、バロンが全て避けているからではなかった。

 

「(感触が無い......!ということは───)」

 

敵は後ろに向けて肘打ち、振り向きざまに回し蹴りなど、コンビネーションを繰り出した。

 

「(外したか......だが!)」

 

攻撃を外しても気にすることなく、バロンを近寄らせないことに思考を切り替え、視界が回復するまで待っていた。

 

「(視界が戻るまで、近寄らせはせんぞ!)」

 

その攻撃は凄まじいパワーで、空振りと言えども地面や壁を破壊しており、リンゴアームズでも大小問わず、ダメージは免れないような威力だった。

そんな中。

 

「っ、ガハッ!!」

 

───ドス、と。

敵の胸に勢いよく何かが刺さった。

不意打ちに思わず意識がいってしまい、視界が戻った時、一番最初に胸に目を向けた。

 

「これは、あの長剣か......!」

 

バロンは、ソードブリンガーを投擲したのだ。

 

「ということは先程の衝撃は盾を......!」

 

敵は、自分の考えの浅さを恥じた。

盾は防御以外に使わないと、そう思ってしまっていた。

 

「っ、まずい!奴の姿を───」

 

半ば反射的に辺りを見回すもバロンの姿は無い。

その時。

 

「どこを見ている」

 

そんな音が”上から”聞こえた。

 

「っ!上か!!」

 

敵が音のした方へ目を向けた瞬間。

バロンは既に蹴りの構えを出しており、反応する隙を与えず一直線にキックを繰り出した。

ソードブリンガーの柄頭へ向けて。

 

「(防御が、間に合わんッ!!!)」

 

敵が防御の構えを取ろうとするも、バロンはお構い無しに凄まじい力と勢いでソードブリンガーを蹴りつけた。

 

「ぐおっ!......貴様っ!!この剣ごと俺を......!!」

 

「このまま片付けてやる!!」

 

防御できずモロに蹴りを食らうも、進化した外骨格故かぶつかり合いながら火花を散らしている。

 

「ただではやられん!道連れだ!!」

 

敵は自分がこのままやられることを知ってか、少しでも深手を追わせようとバロンに手を伸ばす。

 

「ッ!」

 

その瞬間バロンは敵を蹴飛ばす形で距離を取り、カッティングブレードを三回倒した。

 

《リンゴ・スパーキング!!》

 

そして高く飛び上がり、足に赤いリンゴのオーラを纏い、狙いを定める。

 

「貴様に時間は与えん......一気にいくぞ!!」

 

敵は蹴飛ばされたことで仰け反るも、この後の事は全て捨て、瀕死になりながら、剣のダメージをものともせずぶつかり合う準備をする。

 

「来い!!」

 

これが最後の一撃になると、互いに理解していた。

そしてもう一つ、両者に共通の認識があった。

 

───勝つのは強い者、より力を持つ者だと。

 

「ハアアアアアアッ......!」

 

「ウオオオオオオッ......!!」

 

両者、この一撃に全てを込める。

バロンは超スピードで敵に向かって「キャバリエンド」を、敵は大きく振りかぶって全生命力を乗せ、天を貫くように拳を繰り出した。

 

「ハアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

「ダアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

互いに全ての力を乗せた足と拳が、思い切り衝突した。

 

「くっ......!」

 

「グウウウウウウッ!!」

 

先程よりも圧倒的に深手をおっているはずの敵だが、リンゴ・スパーキングを喰らいながら耐えている。

 

「俺が......この俺がっ!」

 

その正体は分からずとも、バロンは敵に対し、”力”を感じた。

 

「負けるはずが......っ、あるかあああっ!!!!」

 

敵は爆散する前の火花を身体中から散らしながらも、一歩も退く様子は見せなかった。

寧ろ、一歩踏み出そうとしていた。

 

「く......勝つのは......俺だあああっ!!!!!」

 

だがそれでもバロンが更に力を込めたことで、キャバリエンドはより深く突き刺さり、敵の拳を破壊し、やがて体を貫通した。

 

「グアアアアアアアアッ!!!!!!!」

 

それと同時に敵は雄叫びを上げ、爆散した。

戦い自体は、一瞬の出来事だった。

バロンは勝利を収めた。

一筋縄ではいかなかったにしても、敵の幹部と思しき相手を仕留めたのだ。

 

「......今日のところは、これで終わりか」

 

そして変身を解除し、凌馬の研究所へと戻ろうとした時。

 

「戒斗くん!」

 

何者かが戒斗に声をかけた。

 

「お前は......」

 

「えへへ、一花だよ!」

 

その声の正体は、一花だった。

戒斗は思わず目を見開く。

 

「何故ここに......」

 

「危なかったから、ちょっと離れたとこで隠れてたんだ。でも爆発があったからどうしたんだろって思って」

 

「待っていろと言っただろ」

 

「え?」

 

一花との会話に違和感を感じ、戒斗は眉を顰める。

 

「......さっき俺に会っただろう?」

 

「え?会ってないけど......」

 

「......なんだと?」

 

「でも、戒斗くんが来るって信じてたよ!」

 

二回目だからか慣れた様子の一花。

戒斗を強く抱きしめ、礼を述べた。

 

「ありがとう、戒斗くん」

 

なんでもない様子の一花だが、触れる手の震えを感じた戒斗は安心させるべく疑問を後回しにし、されるがままになっていた。

 

「あ、そうだ。戒斗くん、こっち来て!」

 

少しの間戒斗にくっ付いていた一花だが、大事なことを思い出した様で戒斗の手を引き、少し離れた、先程まで隠れていた場所へ歩き出した。

 

「ここは......」

 

「あのね戒斗くん。今日攫われたのって私だけじゃないの」

 

「お前だけじゃない?......っ!」

 

一花に連れてこられた場所には、一花と同じ姿をした少女が二人眠っていた。

 

「こいつらは?」

 

「私の妹の二乃と五月だよ」

 

一花曰く、攫われたのは自分と五月で、二乃は偶然見つけたらしい。

 

「戒斗くんがやっつけてくれた人に捕まってたんだけど、急にどこかに行っちゃってね」

 

「(......恐らく、俺への襲撃の為か)」

 

「急いで逃げたんだけど、途中で二乃が1人で寝てたから、五月ちゃんと一緒に3人で待ってたの。そしたら爆発があったから......」

 

「こっちへ来たということか」

 

「うん」

 

つまり、二乃が上級インベスに襲われるのと、進化した的に一花と五月が攫われるのは、同じようなタイミングで起こった出来事ということになる。

 

「チッ......そういう事だったか。そして読めたぞ」

 

「戒斗くん?」

 

「奴らは、お前達”姉妹”を狙っている。何故かはわからんが」

 

 

 

 

 

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