偽ルフィが本当にモンキー・D・ルフィに似ていたら   作:身勝手の極意

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ONE PIECEで一番の名言とは何だろうか?



敗北者は誰だ?

 

 

 "火拳"ポートガス・D・エースの奪還に成功した白ひげ大艦隊。正確には、エースを奪還したのは傍迷惑な問題児ルーキー海賊"麦わらのルフィ"と、孤高のルーキー海賊"赫猿"デマロ・ブラックだ。

 

 この2人が海軍をとにかく引っ掻き回し、王の資質まで覚醒させ、海軍に想定外の甚大な被害を与え、エース奪還という奇跡を起こしたのである。

 

 マリンフォードで勃発した世紀の大決戦にて、世界最強の海賊"白ひげ"エドワード・ニューゲートがまだまだ健在であることを証明したと同時に、ブラックとルフィの活躍に多くの者達が世代交代の時を感じ取ったことだろう。

 

 それも当然で、それだけブラックとルフィの成し遂げたことは大きく、それだけの力を海軍に知らしめた。白ひげだけではなく、白ひげ海賊団の隊長達の他、傘下の海賊達も新たな世代の台頭をその目で見たのである。

 

 大海賊時代が幕を開けて22年。一つの伝説(白ひげの時代)が終わりを迎え、新しい時代が到来しようとしている。

 

 そして、旧時代に決着(ケリ)を…。

 

 

「これが最期だ。

 オレの旅の集大成──いっちょ派手にやるかァ、海軍。

 グララララ!!」

 

 

 エースの奪還に成功した白ひげは、もうマリンフォードに用はないと、仲間達に撤退を宣言した。

 

 生きて新世界に帰還する───これが、白ひげの最期の船長命令。

 

 ただ、新しい時代へと乗り込む船に白ひげは乗らない。

 

 きっと、白ひげは最初からこのつもりだったのだろう。エースを奪還し、己が殿を務め仲間達を無事に新世界へと帰還させる。己の命が尽きるその時を悟っていたのだ。

 

 新たに自分の座に君臨できる可能性を秘めた者とも白ひげは出逢い、その人生に後悔などないだろう。いや、()()()()残っているが、白ひげの未練は大切な息子達がどうにかしてくれるはずだ。だからこそ、白ひげは逝ける。

 

 

「さっさと行かねェか!アホンダラァァァ!!」

 

 

 海軍本部マリンフォードで、白ひげが破壊の限りを尽くす。己の武勇伝を派手に締め括る為に…。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 炎の拳とマグマの拳が衝突する寸前、赫い猿がその間に割って入る。

 

 

()()()って言ってんだろうがッ──バカッ!!」

 

 

 その赫い猿はどちらの拳も防ぎ、堂々と逃走宣言をしながら片方に叱責した。

 

 マリンフォードは今、逃げる海賊達とそれを追う海兵達で大混戦の状況だ。

 

 白ひげから最期の船長命令が下され、その聞き入れ難い命令をエース含む白ひげ海賊団の者達、傘下の海賊達は白ひげの命令だからとどうにか遂行するべく、逃げることにのみ専念しているのである。

 

 白ひげがたった1人、マリンフォードに残り暴れ回るなか、白ひげの息子達は新世界へと帰還する。

 

 これが意味するのは白ひげとの別れ。あまりにも辛い最期の船長命令だ。

 

 だが、海軍がそう簡単に逃がしてくれるはずもない。

 

 エースの公開処刑は失敗に終わり、白ひげがマリンフォードを破壊するなか、海軍はまだ諦めていないのだ。まだ逃げ切れていないエースを殺せる機会(チャンス)が辛うじて残っているからだ。

 

 海軍の意地とプライドをかけた最後の猛攻。

 

 何としても排除するべく、海軍はエースを執拗に追っている。

 

 その中でも特に執拗なのが大将・赤犬だ。徹底的な正義を掲げる赤犬が、海軍の敗北など受け入れられるはずもなく、何としても排除しようと、エースのみならず目の前の海賊達を次々とマグマで焼き尽くしている。

 

 その様はあまりにも過激。

 

 しかも、赤犬はエースの間近まで迫ると鬱憤を晴らすかのように白ひげ海賊団を罵った。

 

 ただ、赤犬のその罵倒は聞く者によっては愚痴を溢すかのような、ストレス発散とも取れるかのような、己の思い通りに事が運ばなかった苛立ちを白ひげ達を罵ることで発散しているかのような、まさしく負け犬の遠吠え。

 

 エースを奪還して退散する白ひげ海賊団及び傘下の海賊達を腰抜けと罵り、白ひげを先時代の敗北者と罵倒した赤犬。しかし、誰がどう見ても白ひげは敗北者などではない。白ひげは海賊王になれる器でありながらも、海賊王にならなかった偉大な男で、この戦いもエースを奪還した時点で白ひげの勝利だ。

 

 敗北者が白ひげではなく海軍なのは一目瞭然。それに、逃げは逃げでも、敗走ではなく、勝ち逃げだ。

 

 挑発にも取れない赤犬の言葉(負け犬の遠吠え)になど、誰も怒りを示すことはない。

 

 しかし、そこで想定外の事態が起きてしまった。いったい誰が想像できただろうか…。挑発とも取れない赤犬の負け犬の遠吠えに、白ひげをバカにされたとエースが怒り狂ってしまうなど…。ここに来て、エースの悪癖が出てしまった。

 

 元々、エースが黒ひげに敗北し、海軍に捕らえられてしまったのもその悪癖が原因でもあった。悪癖というよりも、長所でもあり短所でもあると言うべきか…。

 

 己にとって大切な者達の為に自分のことのように───それ以上に怒り、相手が誰であろうとも挑む。

 

 エースのそんな姿に、海賊王ロジャーを知る者には姿が重なって見えただろう。だが、決定的な違いはエースがロジャーほど強くなかったというところだ。エースの行動は大切な者達の為に怒りを露にし、仲間想いで勇敢に見えるかもしれないが、相手が格上だろうと挑む姿は無謀で愚か者にも見えてしまう。

 

 そして、煽られることに対する耐性がエースにはまったくないのは明らかなる短所だ。

 

 人間、時には我慢も大切で、逃げることも必要だ。

 

 その点に関しては、まだルフィの方が賢いかもしれない。

 

 エースを救い出す為に、いったいどれだけの血が流されたか…。ルフィも死にかけた。

 

 せっかく救い出されたその命を無下にするかのようなその行為は、愚かでしかない。

 

 

「どけよブラック!

 オレは絶対に逃げッ──ぐあッ!?」

 

「この親不孝もんがァァァ!!」

 

 

 その愚かなるエースに、ブラックが鉄槌を下す。腹に一撃を叩き込み、エースが膝を突いたところで首に手刀を入れて気絶させる。かなり乱暴な手段ではあるが、このまま逃げずに戦われるよりは遥かにマシだろう。

 

 

「ブラ男!!エースに何すんだ!?」

 

「逃げる為だ!誰かコイツ連れてってくれェ!

 ついでにルフィも担いでやってくれ。コイツ、もう限界だ」

 

 

 唖然とする一同だが、我に返りエースとルフィを抱えて再び逃げることにのみ専念する。この場をブラックに任せて…。

 

 ブラックと赤犬の戦いが再び始まろうとしている。

 

 

「赫猿ゥ、何度も邪魔してくれおって!」

 

「もう負けを認めろ赤犬。それにこれ以上、血を流す理由はねェだろ」

 

「海賊を排除してこその海軍じゃ!

 儂が貴様等海賊を逃がすと思うなァァァ!!」

 

 

 正義が殺意へと変わり、ブラックを何としても殺さんと赤犬が牙を剥く。赤犬がブラックに向ける憎悪はとてつもなく大きい。エースを救い出した立役者の1人でもあるブラックは、海軍にとって最大の敵。赤犬も苦渋を飲まされた。

 

 

「貴様を殺し、その後に火拳じゃあ」

 

 

 今この場に於いて、極悪人はいったいどちらなのか…。ブラック(海賊)赤犬(海兵)か…。その答えに一瞬悩んでしまう。

 

 

「ったく、どんだけ海賊のこと恨んでんだよ」

 

 

 海兵としてではなく、海賊への恨みという私情で動いているかのようにすら見えてしまう。ただそれが理由で、何の罪もないオハラの住民達が殺されてしまったと思うと、他にも被害者が存在すると思うと、ブラックの内で怒りが沸いてくる。

 

 

「アンタは、オレが何言ったって聞く耳持たねェんだろうな。アンタにとっちゃ、オレは海賊だからなァ。

 けどな、オレを海賊にしちまったのはアンタ達海軍と世界政府だ。この恨み──アンタが身を持って受けやがれ」

 

「海賊という"悪"を儂は絶対に許さん!!」

 

 

 最初から、言葉など不要なものでしかない。

 

 赤犬にとってブラック達海賊は絶対悪。この世から消し去らなければならない存在なのだ。

 

 

「この世から消え失せんかァァァ!!」

 

「そう簡単に消されるかよッ!!」

 

 

 白ひげが暴れ、逃げる海賊達を海軍が執拗に追い、ブラックと赤犬の壮絶な戦いまでもが再び始まってしまった。

 

 いったい、この戦いはいつ終わるのか…。どれだけの血が流されれば終わるのだろう。

 

 最早、エースを処刑すれば終わるものではない。血で血を洗う惨劇だ。

 

 

「!」

 

 

 しかし、()()()がそれを許すはずもない。

 

 

「あ、赤犬さんッ──後ろ!!」

 

 

 赤犬の背後に現れたのは最強の海賊。"覇気"と"振動"を纏わせた最強の海賊の拳が、赤犬へと振り下ろされた。

 

 

「息子達に手ェ出してんじゃねェ!

 テメエら海軍の相手はオレ1人だッ!!」

 

 

 白ひげの強烈な不意討ちが赤犬の顔面に叩き込まれ、地へと叩きつけられる。さすがの赤犬も、この強烈な一撃に一瞬だけ意識が飛びかけてしまう。

 

 

「ぐウゥッ!ゲホッ…こ、この…死に損ないの老いぼれがァ!!」

 

 

 だが、さすがは海軍の最高戦力。白ひげの強烈な一撃を受けようとも、必ず立ち上がる。白ひげの一撃を受けた赤犬は直ぐ様反撃した。白ひげにマグマと化した腕で掌底を放ち、そして顔半分を焼き抉る。

 

 

「オヤジィ!!」

 

 

 顔を半分抉られたその光景に、誰もがゾッとした。

 

 それでも、白ひげもまた決して倒れることなく、腕を振り抜いて赤犬へと強烈な一撃を叩き込み、海軍本部に大きなダメージを与えた。

 

 まさしく怪物。

 

 

「誰に似たんだか──手のかかるバカ息子だ。世話かけたな、赫猿。それと、オレのどうしようもねェバカ息子を助けてくれてありがとよ」

 

「白ひげ」

 

 

 ただ、白ひげは己の息子達を守り抜きたいだけ。その為に戦っている。究極の親馬鹿だ。

 

 親として、息子の失敗に謝罪と、助けてくれたことに感謝を述べ、偉大なる男がブラックに背を向ける。

 

 

「おら、テメエもさっさと行きやがれ」

 

「ありがとう、白ひげ」

 

 

 どこまでも大きな背中をブラックはその目にしっかりと焼きつける。ブラックが生まれて初めて心から憧れた男───エドワード・ニューゲートの最期の勇姿をその目にしっかりと…。

 

 

「さようなら──エドワード・ニューゲート(世界最強の海賊)

 

 

 それから間もなく、"白ひげ"エドワード・ニューゲートがこの世を去った。

 

 死の間際に、"ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)"がこの世界に実在することを言い遺し、ロジャー同様に世界に業火を放ち散っていった。その散り様は見事の一言に尽きる。

 

 死してなお、その体は決して屈する事なく、頭部を半分失いながらも敵を薙ぎ倒すその姿は"世界最強の海賊"として未来永劫語り継がれ、多くの海賊達の心に残る。

 

 その身に受けた刀傷、実に二百六十と七太刀。受けた銃弾、百と五十二発。

 

 その誇り高き、数々の伝説を打ち立てた姿(背中)に、七十二年の生涯に───海賊人生(エドワード・ニューゲート)に一切の逃げ傷なし。

 

 あるのは、勝者であり続けた伝説のみ。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 "白ひげ"エドワード・ニューゲートが死んだ。

 

 マリンフォードを破壊し尽くさんばかりの勢いで暴れ回った白ひげにトドメを刺したのは、何度も殺り合ってきた海軍元帥センゴクでも、"英雄"ガープでもない。

 

 突如、マリンフォードに現れた海賊──"黒ひげ"マーシャル・D・ティーチと、その部下達だ。

 

 火拳のエースを手土産に七武海入りを果たした無名の海賊だが、この男はエースに勝つほどの力を持っており、しかも白ひげ海賊団の古株だった男だ。そして、この男が全ての元凶でもある。白ひげ海賊団に長い期間、平隊員として目立たず所属していたこの男は、人知れず己が長年欲していた"悪魔の実"を仲間が手に入れてしまったことで凶行に走り、その仲間を殺して悪魔の実を奪い取り逃走したのである。

 

 その凶行がきっかけとなり、運命は大きく動き出したのだ。

 

 白ひげや仲間達の制止を振り切り、エースは黒ひげを追ってしまい、エースが黒ひげに敗北してしまった。

 

 その結果、マリンフォードで白ひげ大艦隊との全面戦争が勃発したのである。

 

 だが、それもこれも全ての元凶は黒ひげで、誰もが黒ひげの掌の上で踊らされてしまっていた。白ひげですらもそうだ。

 

 七武海に加盟しながら、この男だけがマリンフォードにいなかったのだが、この男はあろうことか、七武海の権限を利用して大監獄インペルダウンへと正面から乗り込み、決して世に再び出してはならない囚人達数名を引き連れて、マリンフォードに堂々と姿を表したのである。

 

 七武海に加盟したのも、これが目的だったのだろう。

 

 この男は七武海の地位を剥奪されるも同然の大罪を犯しながらも平然としている。

 

 そして、マリンフォードに現れた目的は白ひげの暗殺。いや、正確には違う。黒ひげは、マリンフォードに到着した時点で白ひげが死んでいる可能性も考えていた。

 

 黒ひげにとっては、死んでれば良し、死んでなくとも殺せば良しといったところだったのだろう。黒ひげの真の目的は、白ひげを殺した(死んだ)先にあるのだから…。

 

 その目的が果たされ、世界に絶望をもたらそうとしている。

 

 

「ゼハハハハ!手に入れたぜ!!

 全てを呑み込み、無に返す闇の引力!そして全てを破壊する()()()()!!」

 

 

 いったい何をしたのか、それは誰にも分からない。

 

 ただ一つだけ明らかなのは、黒ひげが世界最強の海賊の力を手に入れてしまった。

 

 

「これでオレにもう敵はいねェ!

 オレこそが最強──オレ(黒ひげ)の時代だァ!

 ゼハハハハハ!!」

 

 

 世界が闇に覆われようとしている。

 

 

「テメエにその力は不釣り合いだ──黒ブタァァァ!!」

 

「あ!?

 て、テメエはデマロ・ブラッ──ぐあアァァァァァ!!」

 

 

 しかし、どんなに闇が濃くとも、必ず光は射す。

 

 一筋の雷公が眩く光、けたたましい雷鳴を轟かせながら、白ひげがやり残したことを引き継いだかのように、白ひげが長年愛用した薙刀が黒ひげの肩に突き刺さる。

 

 

「よォ、黒ブタ野郎。会いたかったぜェ!」

 

 

 黒ひげと因縁があるのはこの男も同じ───デマロ・ブラックのリベンジが今、始まる。

 

 

 






あとがき……書きたいことはなし……かな?

とりあえず、グラグラの実の能力は原作通りに黒ひげに渡ります。けど、世界最強の海賊の力はそれだけではなく、最上大業物"むら雲切"をその手に掴んだ者がおり…。

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