偽ルフィが本当にモンキー・D・ルフィに似ていたら 作:身勝手の極意
改めて、覚醒したら滅茶苦茶強そうな悪魔の実って何だろう?
それ考えた時、ボムボムの実が思い付く。ボムボムって、最初の方に出すぎて残念だよなぁ。
シャボンディ諸島付近の海域に、海軍元帥と海軍大将を乗せた艦隊が待機している。
本来ならほとんど前線に出ることのない元帥までいるこの状況は天変地異の前触れのようにすら思え、非常事態であることが容易に想像できてしまう。
しかし、元帥を乗せて尚……海軍の艦隊はそれ以上先には進むことができずにいた。
「ッ…ここまで届くなんて…ありえないでしょ」
「い、忌々しいのうッ…ブラックゥ!!」
艦隊が停泊している場所まで届く
"赫猿"デマロ・ブラックと元海軍大将"黒腕のゼファー"による激戦の余波がこの場所にまで……いや、これは戦いの余波ではなく
「邪魔するなってか…ゼファー先生」
二つの覇王色の覇気は明らかに海軍の艦隊に向けて放たれている。
これほどの広範囲にまで放たれる覇王色の覇気の強大さに、さすがの元帥もここから先へ進むことに躊躇せざるを得ないだろう。もし、邪魔に入ったらどうなるか……五皇の一角と全盛期の強さを取り戻した元大将が同時に襲いかかってくる最悪の事態になりかねない。
「おいクザン! 何を躊躇しとるんじゃ!」
「ちょっと黙っててくんない?」
それでも突撃しようとする大将赤犬は、もはや狂犬か…。
すると、その狂犬の存在を見越してなのか、再び覇王色の覇気がこちらに向かって放たれる。まるで、手綱をしっかり握っていろとでも言われているかのような……クザンにはそう聞こえていた。
「はあ…胃に響く覇気だ」
狂犬とかつての恩師、そして赫猿。その3人の板挟みにあう元帥クザンは、改めて元帥の大変さを痛感する。
「クザン、サカズキ…邪魔してくれるなよ」
かつての教え子達の覇気を感じ取りながらも、ゼファーは今……この戦いに執念を燃やしている。
ゼファーにとって、この戦いは己の人生の集大成のようなものだ。
これまでの人生で培った己の全てを拳に乗せて叩き込み、その全てを新時代に託す。
たとえ、託す相手が海賊であろうとも…。
海兵としてではなく、信念を持った漢として、ゼファーは拳を振るうのだ。
「うおらアァァァ!!」
「ぬんッ!!」
もう何度目か…。
覇王色の覇気を纏った拳同士の激突。触れることすらなく、海面を大きく揺らしている。
ブラックも、託される者として全身全霊を込めてゼファーの拳を真っ向から拳で迎え撃つ。恩師とは拳のみで戦うつもりなのだろう。
これは、漢と漢の真剣勝負だ。
誰一人として、この勝負を邪魔してはならない。
ブラック海賊団の面々も、NEO海軍の面々も、ただ黙って勝負の行く末を見守っている。この戦いに、感動を覚えている者すらいる。ブラックとゼファーはただ殴り合っているだけだが、2人の戦いはそれ程までに激しく、素晴らしいものだ。
「やっぱ…かっけェな、ゼファーさん」
ただ、この素晴らしい戦いも永遠に続くことはない。
決着は必ず訪れる。
ゼファーの拳が赤黒く染まり、全力全開の覇王色の覇気が大気すらも威圧する圧倒的な力にて、ブラックへ最後の攻撃を仕掛けようとしている。
「随分と男らしくなったものだ…ブラック。
これで最後だ。逝くぞ…"赫猿"デマロ・ブラック!!
(お前のその"信念"…決して折ってくれるなよ)」
これまで数多の海賊を葬ってきた"黒腕"の
その拳は、億超えの海賊ですら一撃食らっただけでお陀仏となるだろう。端から見たらただ殴っているだけだが、身のこなしは速く、無駄も一切なく、洗練されている。武装色の覇気の達人とまで謳われたゼファーが覇王色に目覚めてしまい、昇華した力なのだ。
海賊を滅ぼすまで、止まることのない拳。
彼の"赫猿"デマロ・ブラックが成す術なく殴られた続けている。ブラックがここまで一方的に殴られるなど、これまで一度もなかったのではないだろうか…。
ゼファーの拳撃は速く、重く、五皇の一角だろうと反撃の隙すら与えない。
「!」
しかし、ゼファーの拳が徐々にブラックに当たらなくなっていく。最初は、辛うじて防御する程度で防戦一方に変わりはなかった。
どうやらゼファーの攻撃に慣れたのか……いや、慣れたのではなく、ブラックの動きにも無駄がなくなっていき、より洗練されたものへと進化している。
辛うじて防御していた状態から、ゼファーの拳を余裕を持って受け流す常態となり、そしてついにブラックはゼファーの本気の拳を掌で受け止めた。
それもいとも簡単に。あまりにも容易く。キャッチボールでもしているかのように…。
「ぐはッ!?
(なッ、なんて奴だ!!)」
そして気付くと、ゼファーは吹き飛ばされてしまっていた。
ゼファーの拳を受け止め、ブラックは目にも止まらぬ速さでカウンターの拳を叩き込み、ゼファーを殴り飛ばしたのである。
今のゼファーは、アインの悪魔の実の能力で若返っているのもあるが、覇王色の覇気を開眼し、
そのゼファーの本気の拳を簡単に受け止めるどころか、ゼファーを殴り飛ばすとは…。何よりも驚きなのは、ゼファーを殴り飛ばした瞬間を目で捉えられた者が誰一人としていないことである。殴られたゼファーですら、殴られた感触はあってもその瞬間を捉えられなかった。
「な…何…あれ…」
ブラックの姿に誰もが目を奪われる。
ヤマトですら、初めて目にするその姿に唖然としている。時間が止まったかのような錯覚すら覚えている。
だが、そうなってしまうのも無理がない。
ブラックの姿は、あまりにも神秘的なのだ。
まるで、太陽の光が反射して白く光る月のように、その身から迸る覇気が白銀色に染まっている。
「まだまだ完璧には程遠い。
けど、足首くらいまでは踏み込めたかな?」
より強い相手と戦うことで覇気は更に洗練され……覇気は全てを凌駕する。
"三叉の御業"は、ブラックが辿り着いた覇気の新たな……より高次元の領域だ。
この男──"赫猿"デマロ・ブラックはその領域に僅かばかりではあるが踏み込んでしまった。
「黒吉っちゃん、君は気付くと…どんどん先に進んでるね。君を追いかけるのは本当に大変だよ。
けど、そんな君だからこそボクは追いかけ続けるんだ」
それは、意識と肉体を切り離し、全てを無意識に任せる力。
肉体が勝手に未来視を行い、攻撃を防ぎ、躱し、払いのけ、ゼファーの攻撃を避ける行動一つとっても身を捻って躱す動作がそのまま覇王色の覇気を纏った回転蹴りへと繋げられ、より最適化された攻撃となっている。
攻撃を防ぐ場合もただ防ぐのではなく"流桜"で弾くことで体勢を崩させており、その都度込められる覇気の度合いも敵の攻撃に合わせて自動的に行われている。
無駄な動き全てを削ぎ落とし、一切の無駄を失くした完璧な動きだ。誰もが出来る可能性を秘めた御業。その反面、この領域に至れるのはほんの一握りの強者のみだろう。
だが、ブラック本人はこれでも完璧ではないと口にした。
その証拠に、無尽蔵な体力を持つブラックが珍しく肩で息をしている。恐らく、この完璧な御業は消耗が激しいのだろう。消耗が激しいのも、ブラックが完璧ではないと口にする要因だ。
とはいえ、ブラックが三叉の御業を発動してから一撃も与えることのできていないゼファーも満身創痍。
この戦いもいよいよ終焉の刻が迫っている。
「ゼファーさん。
これが今のオレの全力だ」
すると、白銀色の覇気をその身から迸らせながら、ブラックは右腕に全力……全身全霊の覇王色の覇気を纏わせ黒く染め上げた。ただ、これまでとは色の度合いが明らかに違う。全てを黒く塗り潰さんばかりだ。
「来いッ──デマロ・ブラックゥゥゥ!!」
ゼファーは全ての力を振り絞り、ブラックに向けて自身の心を乗せた全力の拳を連続で放つ。
ゼファーの全力の拳撃を全て難なく防いだブラックは懐へと入り、全力の黒拳を叩き込んだ。
これぞまさしく、全てを覆い尽くす漆黒。
けたたましく鳴り響く覇王の黒き雷。
その一撃は、不本意ながらも海の皇帝に上り詰めたブラックの強さを表していた。
「見事…だ…ブラッ…ク…」
伝説の海兵をも、漆黒で覆い尽くす。
☆
その独特の香りは、"すべての海兵を育てた男"が好きなシェリー酒から放たれるものだ。
「お…目が覚めましたか」
「どれくらい…気絶していた?」
その香りに釣られ目を覚ましたゼファーは、悪魔の実の能力による若返りが解け、高齢な
しかし、傷だらけで老いたゼファーの姿は、信念を貫き通した漢そのものだ。
「まだ数分しか経ってませんよ。
相変わらずというか、さすがですね…ゼファーさん」
「くく、オレを負かしたお前がそれを言うか」
そして、シェリー酒を片手にゼファーの隣に腰を下ろした海賊──"赫猿"デマロ・ブラックも信念を貫き通す漢である。
決着は着いた。
ただ、勝ったブラックだけではなく、負けたゼファーも清々しい表情を浮かべている。
己のすべてを出しきったのだろう。
だからこそ、ブラックとゼファーはこうして落ち着いていられるのだ。
「飲みます?」
「頂こう」
先程まで、海をも揺るがす大激闘を繰り広げていた者達とは思えぬ落ち着きぶりだが、これは、教え子と師が酌み交わす
「本当に強くなったな、ブラック」
「多くを経験しましたから。
けど、信念を貫き通すことはあなたから教わりました。これから先もそれは変わることはない。俺は支配などすることなく、支配もされず、己が思うがままに進みます」
ゼファーの旅はここで終わりを迎える。だが、その信念はしっかりと受け継がれ、ブラックが繋いでいく。
「旨いな」
「オレも大好きな酒です」
ゼファーは悔いのない笑みを浮かべながら、大好きなシェリー酒をブラックから受け取り口にする。
本来、海賊と海兵がこのように酒を酌み交わすなどあってはならない。しかし、今の彼らは違う。ゼファーは元海兵で、ブラックはゼファーの教え子だ。
「ブラック…ゼファー先生」
そんな
2人の姿を眺めていると、彼女の脳裏には短くも幸せで、奇妙な関係だった頃のかつての記憶が甦る。そして、幸せな思い出が彼女の涙腺をさらに弱らせてしまう。
すると、その青髪の美女の流れ落ちる涙が手で拭われる。
「…ブラック」
いつの間にか自身の目の前に立っていたブラックは優しい手つきで彼女の涙を拭い、彼女をゼファーのもとへと連れていく。
甲板に倒れる満身創痍のゼファーを目にし、彼女はさらに涙を流してしまう。
「泣くな、アイン。
ゼファーさんが信念を貫き通したんだ。最ッ高にカッコいいじゃねェか」
それでも、大切な恩師の為にと、彼女──アインは気丈に振る舞おうとした。
だが、どうにか立ち上がったゼファーの……アインの頭の上に乗せられた
「お前には世話をかけたな…アイン」
「ゼ…ゼファー先゛生゛ェ!!」
ゼファーとアインの関係も恩師と教え子だが、今の2人はまるで父と娘にしか見えない。
幼子が泣きじゃくるように、アインはゼファーにすがりつき大号泣している。これまで抑えていた感情が爆発してしまったのだ。
父と娘にしか見えない温かくも切ないその光景を、ブラックは今にも泣き出しそうな、それでいて優しい笑みを浮かべながら見守っている。
ゼファーは己の思うがまま、好きなように行動した。その結果、多くの悲劇を生み出してしまった。だから、これからそのツケを払わなければならない。
「アイン…生きてくれ」
「え…ゼ────」
アインに手刀を落とし、気絶させたゼファーは大切そうに抱え、ブラックにアインを託す。
ゼファーはこれから1人、死地へと向かうのだ。
「お前が作り出す新時代を…地獄の果てから見守らせてもらうぞ、ブラック」
「さよなら…ゼファーさん」
アインを託されたブラックはゼファーに背を向け、オーロ・ジャクソン号へと帰還する。
新しい時代を託されたブラックは、恩師に恥じないように──新時代を築き上げることを己に誓いながら、ゼファーに別れを告げた。
新世界のとある島──五皇"ビッグ・マム"シャーロット・リンリンが支配するホールケーキアイランドにて、30歳を迎えようかという年齢の長身の美女が新聞を片手にうっとりとした表情を浮かべている。
「最盛期の力を取り戻した"黒腕ゼファー"に勝利…ハ~ッハハ、ママママ! それでこそ、おれが惚れた男!
しかし、その美女は御年68歳。"赫猿"デマロ・ブラックとの激戦にて懸賞金が更新され、存命する海賊達の中で
彼女こそ、ホールケーキアイランド及び近海の34の島とその周辺海域──"
そのビッグ・マムがどういうわけか若返っており、ブラックを夫にすると口にしている。いったいビッグ・マムの身に何が起きたのだろうか…。
体格がスリムになり、
「ブラックゥ、あんたの拳が忘れられない。
生まれて始めてだよ。 おれが男に惚れるなんて」
どうやら、ビッグ・マムはブラックとの激闘をきっかけに、この歳にして初めて恋をしたのだそうだ。つまり、ビッグ・マムの若返りも激痩せも、ブラックに恋をしたから──恋煩いである。
御年68歳にして、食べたいと思ったお菓子を食べられなかった際に癇癪を起こしてしまう暴食家が、1週間も何も口にせずに部屋に閉じ籠り、出てきたと思ったらこの変化。
息子と娘達が困惑するのも当然だろう。
その一方で、生まれて始めて恋をしたことで若返り、激痩せし、美しくなったビッグ・マムに、年頃の娘達は色めき立っている。
「おれは必ずあんたを手に入れる。
そしたら夫婦揃って海賊王だ」
同じ海の皇帝に恋する海の皇帝。
"
☆
"赫猿"デマロ・ブラックと"黒腕"ゼファーの激闘から数日。
ゼファーはブラックとの激闘後、けじめをつけるべく海軍元帥クザン率いる艦隊との戦いに身を投じ、この世を去った。
元帥クザンにとっても苦渋の決断だっただろう。
かつての恩師をその手で葬るなど…。
だが、実にゼファーらしい最後であり、ゼファーらしい生き様だった。
だからこそ、ゼファーは今ですら慕われているのだろう。
「まさか…お前がゼファー先生の教え子だったなんてな──"赫猿"デマロ・ブラック」
「カッコいい人だったよ…ゼファーさんは」
とある島のとある丘にて……ゼファーが葬られた墓の前にて、ゼファーを慕う2人の男が酒を酌み交わしている。
片や五皇。片や海軍元帥。
本来なら、決して相容れない存在同士だ。これがブラックと赤犬だったならば、このような穏やかな墓参りにはなっていなかった。ブラックとクザンだからこそ、ゼファーとの想い出を語り合うことができているのである。
だから今だけは、同じ男を慕った者同士、その男が好んだ酒を酌み交わすことくらいは許されてもいいだろう。
「さて…それじゃあオレはそろそろ行くぜ。
クザン、アンタとゼファーさんとの想い出を語れて良かった。ありがとな」
「相手が五皇ってのが複雑で、本来ならあり得ちゃなんねェんだろうが…お前で良かったよ。 こちらこそありがとな」
この島を出たら、彼らは己の立場に戻る。
追われる身であり、追う立場だ。
「アインのことは頼んだぞ」
「ああ。
ゼファー先生との約束でもある。任せておけ」
ただ、どちらも同じ男の信念に魅せられ、受け継いだ者だ。
ゼファーの信念はこれから先も色褪せることなく、新たな世代達へと受け継がれていく。
どうもです。
とりあえず、FILM Z 編はこれにて完。
とりあえず何度も書き直して書き直して……疲れましたので、後書きはこの辺でww
ああそれと、感想でもありましたが、また何やら未来視が的中っぽくなり、自分が怖いです。