ドラゴンクエストⅦ エデンの戦士たち ~決意と運命~ 作:笹昏さいてぃ
運命
特別な身分に生まれたから、なんて理由でちやほやしてくる周囲の人間が嫌いだ。
俺は特別じゃない。
ただ一国の王子として生まれただけ。
生まれた理由も、自分の人生の意味もない。
でも、俺は国の人々から見れば特別な存在のようだった。
城の窓から海を眺めて、ふと思う。
俺の人生は一体何なのだろうと。
その答えはきっとこの海を越えた先にあるのではないか、と。
そう考えるだけで、ワクワクして、俺は窓の外へ飛び出した。
近くの木を掴んで飛んで、城門の兵士に気づかれないように城壁を登る。
今できる全速力で、俺はあの場所へと向かう。
もしかしたら今日、何か起こるかもしれない。
この島に、俺を変える何かがないのだから、
俺達はずっと、無限に広がる海の先を目指す。
*****
「で、結局何しようとしていたの?」
「さっきからずっとそう言ってるんだけど……」
「アルス、あなたと何年の付き合いだと思ってるの?」
「……十年以上、かな?」
「馬鹿。真面目に答えなくてもいいのよ。とにかく、あたしはあんたの顔を見るだけで、嘘を言ってるかどうかわかるの」
真夜中。
普段はあまり耳にしない波の音が、やけに鮮明に聞こえる時間帯。
緑色の頭巾と服を着こなす少年、アルスはある少女に何か言い寄られている様子だった。
茶色のくせ毛をオレンジ色の頭巾で覆う、アルスに比べて大人びた表情の少女だった。
漁村フィッシュベルの網元のご令嬢、マリベル。アルスの幼馴染の、ちょっとした腐れ縁。
この言い争いが起こるちょっと前に、アルスはある用事で家を抜け出し、フィッシュベルを出ようとしていた。
そこを丁度通りかかったマリベルが止め、フィッシュベルを抜け出す理由を吐かせようとしていた。
彼女の言う通り、アルスの言葉は嘘である。
アルスはこれから待ち合わせの場所へ向かう予定だった。
待ち合わせの相手は、グランエスタード王子キーファだった。
最近キーファが見つけてきたあるモノの真相を確かめるために、こうして真夜中に集まって活動をしている。
なぜ真夜中である必要があるのかというと、人目に付くと厄介な理由があるからで。
「だから本当に何もないから。真夜中に女の子一人外に出るのは危険だよ」
「あら、それはあんたも同じでしょ? そんな貧弱な身体で外に出る方が危険よ」
何度追い返そうとしても帰らない。
マリベルはそういう奴で、言っても聞かないワガママな女の子だった。
アルスはどうマリベルを追い返そうかと考えを巡らせる。
「ふふ。もういいわよ。好きにしなさい。お父様にも言わないでおいてあげるわ」
マリベルはすんなり、アルスの自由を認めた。
「ほ、本当! ありがとう!」
「あたしに感謝しなさいよ」
アルスはそのままフィッシュベルを飛び出していった。
笑顔なアルスの後ろを、またまた笑顔のマリベルが仲良く歩いている。
「……それで、どこにいくの?」
「なんでマリベルが付いてきてるの?」
「あら? 外に出ることは許したつもりだけど」
「やめてよ、マリベル! 今日はボクとキーファの秘密の待ち合わせなんだ!」
「いいじゃない。あたしが付いて行った方が色々と都合がいいんじゃない?」
「だからさー!」
「何してんだ、お前ら?」
喧嘩勃発寸前のところ、キーファが二人を力づくで離れさせた。
「ちょ、キーファ何すんのよ! 離しなさい!」
「話すから、ちょっと黙れよ。マリベルは声がでかいんだから」
「それがレディに対して、言うことかしら!!」
「アルス、お前もなんでこいつにバレたんだ。しっかりしてくれ」
「それがね、外出ようとしたらマリベルが待ち伏せしてたんだ」
「ふん、あんた達の考えてることなんてお見通しよ」
「女の勘か。とりあえず二人とも静かにな」
キーファは二人を離して、二人は静かに睨みあった。マリベルの一方的な睨みではあるが。
静かになったことを確認して、キーファはしょうがないと一言漏らして、森の奥へと進んでいった。
「で、何をするつもりなの?」
「どうせ検討はついてるんだろうけど、まあ一応話すか」
「キーファ、マリベル連れて行っても大丈夫なの?」
「どうせ言っても聞かないだろ。それに、なんだ。マリベルが家族に言いふらしたら、オレの命も危ないしな」
「そうね。お父様に言ったら、すぐに王様に伝わるだろうし」
キーファは国の王子ではあるが、いつも城を抜け出す問題児だ。
次期王の務めを果たさず、いつものらりくらりと過ごすキーファを問題視する声も多い。
キーファはそんなこと全く気にしていない様子だが、流石にと言うべきか、子は親には適わない。
「きっと次は牢屋行きね。国を背負う王子様が牢屋にいるとこ想像すると笑っちゃうから、見てみたいけど」
「一緒に連れてきたら、同罪だ。俺達三人仲良く牢屋で楽しく過ごそう」
「お母さんが心配するから、それだけは避けたいんだけどなぁ」
真っ暗な森の中を進んでいく三人。
ここには危ない動物がいないことを知っている三人に恐怖は全く感じられない。
会話が尽きることなく、楽しそうに森の奥へ歩を進めている。
「城に閉じ込められて、どうしても外に出れない時があってな。城の中を探索した時があったんだが、その時古文書を見つけたんだ。城の地下の宝物庫の中で」
「へー、見せて見せて」
「ほら」
キーファは懐から古文書を取り出した。
マリベルはそれを奪い取り、ジッと古代文字を眺めた。
「分からないわ……」
「だろうな」
古文書に書かれているのは、謎の古代文字と扉と女性の像の絵だった。
城の学者の知恵でも解けなかった古文書を、子供の三人が解けるわけでもないが。
「その扉と像ね、見覚えがあったんだよ」
「そうさ。この森を抜けた先の、ある場所でな」
「ねえ、ちょっと予想はついてるんだけど、あたしたち結構やばいことしてない?」
「付いてきたマリベルが悪いんだけど」
「アルス、そういうことするなら先に言っとくのが筋ってもんじゃない?」
「勝手についてきたのそっちじゃ……」
「それも含めて、同罪ってやつだな」
この島には掟があった。
フィッシュベルの先にある森、その奥には絶対行ってはいけないという掟。
その森の先に何があるのか知っているのは、ごく少数。
なぜ行ってはいけないのか、その理由を知る者はいない。
なぜか昔から語り継がれる侵されることのなかった掟。
「あたしはよくお母様から話を聞くわ。その先にいるのは怪物で、昔勇敢な兵士が食べられちゃったって」
「ボクは世にも恐ろしい魔王がいるって」
「オレは王家の秘密が眠っているとか聞いたことがある気がするな」
昔から語り継がれているというのに、その内容は様々であった。
「『禁足地』なんて言われているけど、そんな謎ばっかりの場所なんてワクワクしかしないよな!!」
「ほんと、バカな奴よね。ねえ、アルス。こんなのと付き合って、疲れない?」
「楽しいから」
「バカが二人いたわ」
「マリベルは初めてか。ようこそ俺達の秘密基地へ」
森を抜けた先、そこに広がるのは遺跡だった。
「久しぶりだな、何年ぶりだろうなここにくるのは」
「そうだね。まだ秘密基地残ってるかな?」
「ちょっと待って! あんた達、この場所に来たことがあるの!?」
「昔ちょっとな」
「キーファ、あの像ってどこにあったっけ?」
「確かそっちだな」
「ちょっと待ちなさいよ! あたしの話聞け!!」
怒るマリベルを他所に、アルスとキーファは遺跡の中に進んでいった。
真夜中の遺跡は真っ暗で、暗闇に慣れた目でも注意深く進んでいかないといけない。
キーファを先頭に、アルスが続く。マリベルは暗闇が怖いのか、アルスの裾を握って引っ張られる形で進んでいった。
「ちょっとからかおうと思ってただけなのにぃ……」
「なんだかんだ奥に進んでいくのは初めてかもしれないな」
「三年前から行かなくなったもんね」
「久しぶりに七色池にも行ってみたいな。今度はそっち見に行くか」
「あそこなら朝方行くのがいいかもしれないね」
「話してる余裕があるなら、松明でも持ってきなさいよ!」
文句ばかり言うマリベルを引っ張って歩くこと数分、三人は目標の像にたどり着いた。
古文書に書かれている像とはちょっと違いはあるが、書かれている像そのものであることは確かだ。
何かに祈っているような女性の像で、手と思われる部分では杖が握られている。
「恐らくこれだな。それっぽい」
「うん。記憶にうっすらあるのもこれだから、確定なんじゃないかな?」
「あとは扉だな。像と一緒に書かれているってことは、近くにあると思うんだがな」
「ねえ、なんか向こうから物音がしたんだけど!」
「もう少し探してみようか。手分けする?」
「そうだな。気を付けて扉を探そう。マリベルはどうするんだ?」
「キーファについていくわよ! アルスじゃ、襲われた時に助けてくれなさそうだもんね」
「それでいいのか?」
「いいのよ」
「分かったよ」
マリベルはアルスに悪態付きながら、キーファを引っ張って扉を探しに行った。
アルスはなぜマリベルからここまでされるのか、しっかりと悩みながら扉を探しにいく。
「マリベルともっと仲良くできないのかなぁ」
そんなことを呟きながら、遺跡の中を歩く。
キーファとマリベルが向かった先とは真逆の方向に進んでいく。
向こうから聞きなれた声が聞こえてくる。多分キーファがマリベルでも驚かしたのだろうと、アルスはちょっと笑った。なんだかんだ強気なマリベルも、怖いものがあるんだと実感できてちょっと嬉しいアルス。
「――っつぅ」
突然、アルスに頭痛が起きた。
一瞬の痛みだったが、思わず膝をつくほどの強さ。
痛みが完全に引くまでに数十秒、立ち上がるまでに数分を要した。
痛みは一瞬だったが、それ以上にアルスを鈍らせたのは頭を駆け巡った存在しない記憶。
地平線の彼方まで続く海をずっと眺めているだけの記憶だった。
漁村であるフィッシュベルで暮らすアルスにとって、海を眺めるのが日常茶飯事だが、今回見た記憶の中の海はフィッシュベルの海とはちょっと違っていた。
「なに、これ……」
存在しない記憶を見せられて、混乱するアルス。
痛みで瞑っていた目をゆっくり開くと、そこにはさらに驚きの光景が広がっていた。
「扉だ……」
さっきまでなかったはずの、扉がそこにはあった。
「さっきまでなかったはずなのに」
目的の一つである遺跡の扉を見つけた喜びと、さっきまでなかった場所に扉が現れたという謎に頭がさらに混乱するアルスは、キーファやマリベルを呼びに行くよりも先に扉に続く階段を登っていく。
遺跡と同じような岩を使って作られている扉。
押すと開くのか試すために、アルスは力いっぱい押す。
「あ、れ……?」
だが、岩で作られたはずの扉が思ったよりも軽く、開かれた扉の先にアルスは勢いのままツッコんでしまった。
ゴツン、と鈍い音を立てて、アルスは地面に頭をぶつける。
「ぐええ……」
「アルス、何やってんだ?」
「ちょっと扉見つけたじゃない! やるわね、アルス」
扉が開かれる音を聞いて、キーファとマリベルもアルスの下へ集まったようだった。
キーファは倒れたアルスを起こして、マリベルはそんな二人を他所に扉の中を見渡していた。
「古文書と同じ文字が至るところにあるわね。読めないから意味ないけど」
「心配してくれてもいいのに……」
「マリベルなんだから、仕方ないだろ。それよりも、アルス! 見ろよ! 見るからに怪しい地下へ続く梯子がここにあるんだよ! ワクワクするな!」
打った箇所を擦りながら、アルスはキーファが指さす場所を見る。
丁度中心の場所に、キーファの言う通り、地下へと続く梯子がある。
「あの爺ちゃんが言う通り、やっぱこの遺跡には世界の秘密が眠ってるんだよ!」
「ほ、ほんとかなぁ……」
「嘘かどうかはこの先に行って確かめようぜ!」
「待ってよ、キーファ!」
「ちょっと、そのお爺ちゃんって誰のことよ! あたしを置いていくな!!」
キーファに続き、アルスとマリベルも地下深くまで伸びる梯子を降りていった。
****
三年前。
アルスとキーファは禁足地の遺跡にある自分たちの秘密基地に集合していた。
近寄ることを禁じられたその遺跡には、世にも美しい七色に光る池に続く場所があった。
遺跡に近づいたのはキーファとアルスだが、この七色池を見つけたのはアルスだった。
これを報告し見に行った時のキーファはアルスが今まで見てきた中で一番光り輝いていた。
秘密基地と言っても、この七色池に続く穴を二人でようやく動かせる岩で隠した程度のもの。
中も秘密基地というほど整備はされていない。七色池の周りで何か話したり食べたりする程度だ。
秘密基地にしてから数か月ほどになるが、それでも飽きない美しさをその七色池は持っている。
暇があればここに集まり、面白い話を二人は交わす。そんな日常を送っていた。
ある日、秘密基地で話疲れた二人はいつも通り岩を動かし、秘密基地の外に出る。
そんな二人の前に、突然一人のご老人が話しかけてきた。
「お主達、禁じられた遺跡で何をしておるのだ?」
「げげげ! バレた!」
老人の言葉に、キーファはひどく動揺する。
アルスは驚いたまま、固まっていた。
「ま~、待て待て。別に兵士に報告もせん。わしもその禁じられた遺跡におるのだからな」
「ああ、考えれば確かにそうだな」
「び、びっくりしたぁ」
「して、お主はキーファ王子じゃな。隣の少年は、ふむ、その親友といったところかの」
「爺ちゃん、どっかで見たことある気がするんだけど」
「ふぉふぉ、私はしがない老人じゃよ。ちょっと気になったことは気になっちゃうおちゃめな老人よ」
「おちゃめって自分で言っちゃうのかよ……」
「え、とそのお茶目なお爺ちゃんがここで何を……」
「ふぉふぉ。ここの遺跡は最近調査を始めたのよ。ちょっと気になることがあったからの」
「なんだよそれ! おもしろそうだ!」
目をキラキラと光らせるキーファ。
アルスはそれを見て、笑いながら老人に質問をする。
「それで、何か分かったんですか?」
「探し物が二つあって、一つは見つかったんじゃが、もう一つが見つからんのよな」
「じゃあ、オレ達も探してやるよ!」
「王子に命令とはちょっと気が引けるの。今日はここまでじゃ」
「なんだよ、爺ちゃん! じゃあ、また今度来たら一緒に探そうぜ!」
「お主も大変じゃな。噂に聞く自由奔放な奴じゃよ」
老人はアルスの頭を撫でながら、逆の手に持っていた杖でキーファの腹を突いた。
「お主、名前は何て言うんじゃ」
「アルス、と言います」
「頑張れよ。大変じゃろうがな」
「そうですね!」
ワーワー騒ぐキーファを見て、ちょっとだけ笑うアルス。
「キーファ王子よ。頭の片隅にでもいい、これを覚えておいてくれい」
「なんだよ、爺ちゃん」
「あの城に昔私の忘れた古文書が眠っておる。それをもし探し出せたら、この遺跡でわしが探せなかったものを見つけてくれ」
「古文書…? 城の中にはいっぱいありそうだけどな、分かったよ」
「お主達、なぜこの島には何もないと思う?」
老人は二人に質問を投げかける。
「グランエスタードとフィッシュベルがあるだろ?」
「キーファ王子、世界はそんなに狭いと思うのかの」
「確かに。海はあんなに広いのに、この島以外は何もないです」
「む。お主、海に出たことがあるのか?」
「父が漁師なので」
「では、アルスよ。広い海に出たことがあるお主なら、この島の違和感に気づいているのだろう?」
「ちょっとだけ、ですけど」
「キーファ王子よ、よい相方を持ったものじゃ。お主達二人ならきっと、この遺跡の謎に辿り着けるだろう」
老人は感心しながら、アルスとキーファに背を向けた。
「いつかこの謎が解けた時、またわしに話を聞かせてくれ」
「まだよくわかんないけど、そんな面白そうな謎があるなら、絶対といてやるよ!」
「ふぉふぉ。頼もしいの。では、頼んだぞアルスよ」
「はい」
そういって、老人はこの遺跡を後にした。
この日から、二人の話題は遺跡と世界の謎についてばかりになった。
この日から三年後に、老人との約束はついに果たされることになるのだった。
****
梯子の下に広がるのは、洞窟というにはあまりにも荘厳すぎる場所だった。
岩の壁などが広がる地上の遺跡とは違う。
上が見えなくなるほどの高さがある洞穴で、梯子のあった場所の対角には、地上の遺跡と同じ岩でこれまた遥かに高い壁が聳え立っている。
二つの大きな戦士の石像が、手に持った青と赤の二つの炎でこの洞穴を明るく照らしている。
「つ、疲れたわ……。ちょっとジメジメしてるけど、なんか微妙な場所ね」
「そうだね……。なんかヒリヒリする感じがする」
「でっかい石像だァ! すげぇえ!」
キーファの声が木霊する。
「おい、向こうに扉があるぞ! 行こう、アルス!」
「うん」
「置いてかないでって!」
三人は走って扉の下へ向かう。
「開くかな?」
「男二人で頑張りなさい。女の子に力仕事はできないもの」
「というわけだ、行くぞアルス」
キーファとアルスは扉に手を置いて、力いっぱい扉を押した。
アルスが経験した地上の扉と同様、重そうに見えて実は軽いという扉だった。
扉の先は、上が見えない洞穴とは打って変わって、グランエスタードの城に似た、綺麗な廊下が続いていた。
「右と左の二手に分かれている廊下だな」
「この廊下だけ、なんか作られたみたいに綺麗だね」
「あら。ちょっといいセンスしてるじゃない」
「さて、また分かれて探索だな。俺は左に行くから、アルスとマリベルは右に行ってくれ」
「はあ!? なんであたしがアルスなんかと!」
「いいからさ。俺もたまには一人ではしゃぎたいんだよ」
「ちょっと、勝手にしないでよ!」
と、キーファはマリベルを無視して左の廊下へ進んでいった。
「……行こうか、マリベル」
「ええ、しっかりエスコートしてよね」
アルスの予想と裏腹に、マリベルはすんなりアルスについていくのだった。
「怒ってないんだね」
「怒る理由なんてないでしょ! 怒るわよ」
「怒ってんじゃん」
ちょっとずつの会話を挟みながら、右廊下を進んでいく。
今までの扉と比べて、ちょっと綺麗な扉を開ける。
そこに広がるのは、ちょっと広い部屋で、四つの台座が置かれている。
「なんかありそうな台座発見ね」
「凄い青い色の岩だ」
二人は今までに見たことのない台座を見つけて、驚いていた。
ただの台座とは違う。青色の台座だ。
近づいてみると、台座の上面には砕けた石板が置かれていた。
「パズルみたい」
「なんだろうこれ。一部は残ってるけど、他の箇所はどこにあるんだろう」
「この部屋の持ち主は忘れん坊なのね」
「そういうことなのかなぁ」
マリベルの回答に疑問を抱きつつ、二人は別の場所へと続く別の扉へと向かう。
その先にも同様に、大きな部屋と台座が置かれている場所だった。
さっきの部屋と違うのは、台座が五つあることと台座の色が黄色になっていることだ。
「ちょっと台座増えてる」
「あら、私はこっちの黄色の方がお気に入り」
「ありゃ、こっちも似たような部屋があるんだな」
別の扉からキーファが現れて、三人は合流を果たす。
「そっちはどうだった?」
「同じような部屋が二つと、四つの建物がある部屋が一つあった。その建物も扉はあったけど、開かなかった」
「台座に色とかあった?」
「ああ、そうだな。確か赤と緑だったかな」
「なんだろう。なんか関係性があるのかな」
考え込むアルスと、部屋を散策するキーファ。
「ねえ、ここの台座のパズル、ピースは揃ってるからやってみましょうよ」
二人を呼ぶマリベルの下へ向かうと、他の台座とは異なり、パズルが完成できる状態だった。
「石板、みたいだな。色も黄色、と。古いからちょっと汚いけどな」
「触るの嫌だから、あんた達やりなさい」
「壊れた訳じゃない。石板と石板がぴったりはまるし」
「石板は四つだから、四方にはめればいいとしてだな」
アルスとキーファは石板のパズルを組み立てて、マリベルはそれをただ眺めていた。
組み合わせては外してを繰り返すこと数回、ようやく石板のパズルが完成する。
「さて、これをはめれば完成だな」
「この石板、見た目とは違って、軽いんだね。小石みたいに軽いけど、どんな素材使ってるんだろう」
「そんな細かいことはどうでもいいだろ! 完成させれば、何が起こるか! いよいよご対面だ!」
キーファが最後の石板、最後のピースを組み合わせた瞬間、台座から徐々に輝きを放ち始める。
「ちょ、なにこれ! どうにかしなさいよ!」
「光り輝く台座だって! 始めて見たぜ!」
「アルス! このバカ、キーファどうにかしなさいよ――キャア!」
「マリベル!」
突如として台座から光が発せられ、三人の視界が真っ白へと変わった。
*****
勇気がないから、立ち上がれない。
優しさがないから、立ち上がれない。
きっといつまでも世界は変わらない。
変わらない世界なんて、滅んでしまえばいい。
少しずつ、少しずつ、世界から少しずつ奪っていこう。
最後消えゆく世界を見て、私はきっとこう思うのだ。
どうか私に、勇気と優しさをください。