筋力:C
耐久:D
敏捷:E
魔力:E
幸運:E
初めて入るアリーナの第二階層は、第一階層に比べかなり広いようだ。透き通った壁からは上下に走る道も見える。
「新しいアリーナには当然新手のエネミーも居る。いくらオレが強化されたからって油断すんなよ」
気を付けるよ。ついでに聞きたいのだけど、シンジの気配はする? 分かれば行動がしやすいのだけれど。
「居るな。コードキャストで身を隠してもいねぇ限りバレバレだ」
過去に説明してもらっていたら悪いのだけど、コードキャストって何?
「ありゃ、言ってなかったか。コードキャストはマスターが使える補助行動だ。戦闘中にサーヴァントの能力を上げたり、相手サーヴァントを妨害したり、アリーナで足が早くなったりと様々だな。腕のいいマスターなら自力で色んなコードキャストが使えるが、そうじゃないマスターは礼装の力を借りる事が多いみたいだ」
そういえば購買部にも礼装って書いてある棚があったね。その礼装とはどんなもの?
「マスター専用の装備アイテムだな。コードキャストが使えるようになる他に、マスターの能力を上昇させたりもするみたいだな。なんでか知らんが、礼装は2つまでしか装備出来ないようだ。アリーナに落ちてる事もあるみてぇだし、余裕があったら探そうぜ」
2つまでしか装備出来ないのは公平を保つためかもね。まあ元々のマスターの差が大きいとあんまり関係なさそうだけど。でも重要そうなアイテムだし、お金が貯まったら購買部で漁るのもいいかも。
話もこれくらいにして、シンジの隠した情報とトリガーを探そう。どちらも簡単には見つからないと思うけど、シンジに見つかる前に探さないと。
アリーナを道なりに進んでいると何体かエネミーと遭遇した。どれも第一階層で見つけたのと同じ種類だったから対処も簡単だったのだけれど、強化されたノービスはこれまで以上に手早くエネミーを倒していった。
「全開には程遠いが、楽に動けるようになったぜ。よっ!」
警戒対象だった蜂型エネミーも回し蹴り一発で簡単に粉砕してしまう。目に見えて強くなっている。これならシンジのサーヴァントの実力を引き出す事が出来そうだ。
「ん、新手だぞ」
確かに今まで見た事のないエネミーだ。なんというか、頭でっかちな海蛇といった感じだ。ノービス、いけそう?
「当然。こんな奴スキルを使うまでもねぇ」
おお、頼もしい。でもノービスがどんな技を使うのか見てみたいなぁ。今後の作戦を立てる参考にもなるし。
「じゃあやっとくか? 武装拳・剣(つるぎ)!」
目に見えるほどにノービスの腕に魔力が集中する。エネミーも危険と判断したのか防御に回った。それに対してノービスは何か対策をするわけでもなく、ただ腕を振り下ろした。ノービスの腕はまるで豆腐を切る包丁かのように、エネミーを音もなく両断した。
「どやぁ」
あ、なんか冷めた。早く探索に戻ろう。
「おいおいおい! 今のはオレが悪かったから何か訊いてくれ!」
それじゃあ今のスキルはどんなもの?
「武装拳は強化の魔術の亜種みたいな武術だ。自分の肉体を武具防具に見立てて戦うもので、その気になれば銃火器だって真似出来るぞ」
あくまで武術なんだ。こんな武術が出来るなんてノービスは凄いんだね。
「武装拳はコツさえ掴めば、魔力を持つ生物全てが使えるさ。マスターだってやろうと思えばやれる。それにオレの武装拳はまだまだ未熟だ。期待してもらったら困る」
未熟? 新手のエネミーを一撃で葬れるだけの威力があるというのに?
「あんまり話すとオレのへっぽこっぷりが露呈するから止めよう。それより面白いものがあるぜ」
わっ、道が赤い半透明の壁で塞がれている。触ってみたけれど開けられるような仕掛けは見当たらない。こういうのって大抵は離れた場所に開けるための何かがあるものだよね。
まだ探索していない場所を歩いていると明らかに怪しいスイッチがあった。絶対にこれだ。もし罠でもノービスと一緒にどうにかしよう。というわけでポチッと。
「あの壁が開いたみたいだ。分かりやすくて助かる」
それには同意する。これだけ分かりやすい仕掛けだと今後も楽なのだけれど、そうもいかないだろうなぁ。
これまで以上に複雑で、まさにゲームのダンジョンのようなアリーナ内を歩いていく。途中海底深くまで進んでいく隠し通路があったのだけれど、長い道を降りた先にあったのは多少の金銭であった。シンジが隠した情報くらいあると思ったんだけど、世の中そう簡単ではないらしい。
「! あれ隠し部屋じゃね?」
「えっ?」
「ほらあそこ。隠蔽されているけど、ここから繋がる隠し通路がちょっと見えてる。ワカメ君ならあそこに隠すんじゃねぇか?」
分かりにくいけれど、確かに部屋があるようだ。さっきみたいなハズレではないといいのだけれど。
特に妨害プログラムがあるわけでもなく、部屋にはあっさりと入る事が出来た。あっ、またあのスイッチがある。とりあえず押しておこう。さて、部屋には2つのアイテムキューブ。1つは片眼鏡? 不思議な力を感じる。
「それが礼装だな。ラッキーじゃん」
これが礼装なんだ。こうやって見つかってくれるなら、わざわざ購買部で買う必要もなさそうだ。残り1つのアイテムキューブに入っていたのは羊皮紙に書かれた古びた手記だった。かなりボロボロで読めない部分も多い。
「どれ…………これは島の名前、こっちは船の積み荷…………黄金の(ゴールデン)鹿号(ハインド)? 船の名前か」
海賊の航海日誌ってところかな。ボロボロなのはシンジが削除しようとした痕跡なのかもしれない。でもよほど強いプログラムだったからか、ここに隠すしかなかったのだろう。
「こりゃ大収穫だぞ。真名は分からねぇけど、絞りこみは出来そうだ。ってワカメ君に気付かれたか。こっちに来るぞ」
シンジが!? どうしよう、今から隠れて間に合うかな。
「何を弱気な事言ってんだ。真正面からぶっ潰すぞ」
そんな悠長な。でも弱気がいけないのは確かだ。シンジが来るまでどっしりと…………
「来たぞ」
早すぎ!! コードキャストでも使ってるの!?
「ははっ、かもな」
「ハァハァ、ず、随分と必死じゃないか。こんな場所まで探しに来ちゃってさ。その手記、返してもらうよ」
「見つけられるかって言ったのお前じゃん、ワカメ君」
「誰がワカメだ!! ここで叩きのめしてやる!!」
「さあマスター、情報の大切さってもん、身をもって教えてやろうぜ」
! 少しだけど相手の行動が読める! 完全に有利とはいかなくても、これなら!
「ぶち抜くよ!!」
「見え見えだぜ?」
はシンジのサーヴァントの素早い攻撃も読めているのならば対処出来る。ノービスは銃弾を最低限の動きで避けると、武器を槍にし、最速の突きを放った。しかし完璧なタイミングで放たれたと感じられた突きも脇腹を掠めるに留まった。
「驚いた。この前とはまるで動きが違うじゃないかい」
「そりゃどうも。でも駄目だな。まだイメージと動きにズレがある」
「大した向上心だね。面倒だからここで撃ち砕かせてもらうよ!! 砲撃よーい!!」
「はぁっ!?」
何もない空間にいくつも船の砲門が現れた!? ここからどんな攻撃をされるかなんて想像するまでもない。ノービス逃げて!!
「無理!」
「藻屑になりな!!」
とても一個人に対して行われるようなものではない砲撃がノービスに降りかかる。逃げてとは言ったが、こんな砲弾の雨、抜ける隙間もない。ノービスは…………
「やってくれたな。鎧が砕けちまった。これの修復にどんだけ時間が掛かると思ってんだ」
「あ、有り得ない!! 何やっているんだよお前!! 本気でやれよ!!」
「少し静かにしてなシンジ。鎧が砕けてダメージがほぼ無いってのどういうこったい?」
「手の内を晒せと? 馬鹿言ってんじゃねぇよ。んなもん自分で考えろ」
「ははっ、あんたの言う通りだ! ならその体に直接聞いてみるかね!!」
ノービスはシンジのサーヴァントの連撃を、避けない!? 真正面から突撃した!?
「なっ!? アタシの弾が通らない!?」
「真正面から…………ぶっ潰す!!!」
「チィッ!!」
ノービスの拳は避けられたものの、その衝撃波は後ろに居たシンジを巻き込んだ。そしてここでセラフからの介入によって戦闘の強制終了が入った。
「ひいぃぃぃ!? ぼ、僕に傷が!! お、覚えてろ! 今はセラフに邪魔されて無理だけど、決戦場での本番では容赦しないからな!!!」
「へっ、逃げたか。一昨日来やがれ。ん? マスターどうした?」
まさか圧倒してしまうなんて思わなくて、頭が、追い付いていないの。一体何をしたの?
「武装拳さ。守りを重視した武装拳・鎧。あの時俺は二重の鎧を着ていたから大丈夫だったんだよ。とはいえあばら骨が殆ど逝ってるみたいだ。痛覚を遮断しているけど、これもいつまで持つか。今日の探索は終わりって事で頼む」
「うん、分かったよ。今日もありがとう」
「サーヴァントとしての勤めさ。そうそう、ワカメ君のサーヴァント。今回の手記やあの船による攻撃からクラスが分かったぜ。あんな風に乗り物を使って戦うクラスはただ1つ、ライダーだ」
戦ってくれるだけでなく、情報を集めてくれる。本当にノービスには世話になりっぱなしだ。感謝してもしたりない。彼に相応しいマスターになれるよう、私も努力を怠らないようにしないと。
今回出たスキル
武装拳・剣
筋力上昇+防御貫通のブレイク攻撃
武装拳・鎧
耐久上昇+ガード効果
どっちも使いやすく最初のスキルにしては破格の性能かな? 次回は後書きで要の娘、叶とすみれの紹介をしようそうしよう。