昨日の怪我は大丈夫かとノービスに訊ねたところ、足の指の力だけで天井の出っ張りに掴まるという離れ業で無事を伝えられた。ノービスのお爺さんは何もないツルツルな天井でも足の裏の力だけで張り付くらしい。人間?
「父方のおばあちゃんの話だと、12歳くらいに既に人間を卒業していたとか」
そ、そうなんだ。人間を辞めるのって意外と若いうちから出来るんだね。それより今日の方針を決めよう。まずは図書館で昨日手に入れた手記に記されていた船の名前について調べてみよう。
図書館へ移動するまでの間に他の参加者達から、シンジが朝から慌ただしく動いていたという話を聞いた。また昨日みたいな嫌がらせでもするつもりなのだろうか。どうせ私ではどうしようも出来ないのだから情報集めに専念しよう。
きっと船の情報は以前無敵艦隊について調べた辺りにあるはず……………………見つけた。
ーー「黄金の鹿号について」
十六世紀、英国のガレオン船。
当初はペリカンという名がついていたが、世界周航を行う際、出資者の家の紋章にちなんで、黄金の(ゴールデン)鹿号(ハインド)と改名された。
スペインの貨物船を多く襲撃した逸話が残っている。
ーー
平たく言えば海賊船という事だね。でも十六世紀に世界周航なんて、かなり凄いよね。もしかしたら世界初なのかな?
『いや、世界周航はマゼランが成し遂げている。世界初ではねぇな。だが大した偉業だ。英霊に相応しい』
私もどこかでマゼランという名には聞き覚えがある。その人が世界初の世界周航を成し遂げた人なんだ。
『途中で死んでマゼラン自身が世界周航したわけじゃねぇけどな。しかし今日は誰にも合わねぇな。さっさとアリーナに行ってトリガーをゲットするか?』
賛成。青子さん達に強化してもらおうにも経験がまだ足りなさそうだしね。シンジが学園で何かをやっているのが気になるけど、それはつまりアリーナでは邪魔が入らないという事だしね。シンジに見つからないうちにアリーナに行ってしまおう。
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アリーナの入り口に入ろうとした瞬間、何かにぶつかったような感触がし、体が弾き飛ばされた。どうやら見えない壁があるみたい。
『コリジョンが書き換えられてる? ワカメ君の仕業だな。いやはや、これには驚いた。軽くセラフに干渉してるじゃねぇか。色々と残念でも天才には違いねぇってわけだ。おっと、噂をすればなんとやら』
「やあ。アリーナでの修行に精を出しているみたいだね。悪いけどさ、この辺りにちょっと細工をさせてもらったよ。岸波みたいな弱いマスターにアリーナで会うとイジメになるからね。僕なりの優しささ」
何が優しさか。ただの嫌がらせではないか。どうしたものか。アリーナに向かわなくてはトリガーは手に入らない。トリガーがなくては聖杯戦争敗退確定だ。
「どうしてもアリーナに入りたいって顔してるね。2個…………この学園に隠した僕の魔法陣(アンテナ)を探せばぁ? ただし、アリーナに入ってきたら、今度は全力で君を潰すからね。覚悟が出来ているなら入ってくればいいよ。じゃあね。魔法陣(アンテナ)の場所? それは自分で探さなくっちゃ!」
『低レベルな奴だな。まあ今朝から不審な動きをしていたって話はたくさんあったし、色んな人に聞き込みをすればすぐに見つかるさ。っとマスター、端末にある有効な機能を知っているか?』
有効な機能?
『他のマスターがたまに消えるのを見るだろ。あれは端末にある機能で、学園内の好きな場所に瞬間移動が出来るものだ。試しにワカメ君が行きそうな場所に行ってみな
えっと、端末の…………これだろうか。シンジが行きそうな場所は、シンジの教室かな。
シンジの教室を選択し、端末を弄ると本当に瞬間移動した。これは便利だ。
『アリーナじゃ使えねぇけど、アリーナにはリターンクリスタルって学園に一瞬で戻れるアイテムもある。まあ当然1日は過ぎちまうけど、ヤバい時には便利だぞ』
分かったよ。じゃあシンジの隠した魔法陣(アンテナ)を探そう。おや? シンジの席の近くから何か感じる。あっ、机の裏に何かある。これが魔法陣(アンテナ)か。消去(デリート)っと。
『まずは1つ。滅茶苦茶簡単な仕組みだな』
私でも処理出来るくらいだしね。それだけ急いで作ったって事だよ。次の魔法陣(アンテナ)はどこにあるのだろう。聞き込みをしながら地道に探していこう。
どうにもシンジは学園内をとにかく走り回っていたようで、目撃情報が多すぎるのだ。これではどこで何をしていたのかが絞れない。ん、あれは凛? 保健室前で何をしているのか。配給アイテムを貰いに来たのかな?
「何よこの魔法陣(アンテナ)。邪魔臭いわね。消去(デリート)」
……………………ありがとう、凛。手間が省けたよ。ではアリーナに向かおう。
アリーナへの入り口にはシンジが立っていた。流石にまだ来ないと思っていたのか、私の姿を見て驚いていた。
「もう終わったのか!? これじゃあアイツもあんまりお宝を取れてない可能性が…………」
逃げるようにアリーナに入っていったけど、最後に呟いていた言葉はどういう意味だろう。
『ワカメ君の近くからはサーヴァントの気配がしないな。アイツはおそらくサーヴァントの事だろうが、宝ってのが分からんな。まあこれは確実に言える。答えはアリーナにある』
間違いないね。私達もアリーナへ乗り込もう。
まだどうでもいい話
ミコト君の母である叶と伯母であるすみれの説明です。
一条叶
一条家の長女にして非常識。元管理局員の専業主婦。要からは一番潜在能力があると言われているが、本人はどうでもいい模様。とにかく親馬鹿で子供は甘やかしまくって育てるタイプ。あまりの甘やかしっぷりに子供がこれではいけないと危機感を覚え、自立するほどに甘やかす。
戦闘は一通り何でも出来る万能タイプ。要から受け継いだORT以外に特殊な力は無いが、避ける事に才能があり、相手が攻撃をした時には、既に避けていたなんていう未来予知染みた回避が得意。
一条すみれ
一条家の次女。職業はレースクイーン。彼女の所属するチームは必ず勝つと言われるほどの幸運の女神。実際に彼女がレースクイーンとして参加した大会では負けはない。これは彼女の能力のためである。よく恋愛はするが、あまり長続きはしない模様。誰か貰ってやって下さい。上から92、61、85です。と言って要が婿探しをしている。
特殊能力は幸運を操る力。本人の戦闘能力は低い(と言っても聖杯戦争でセイバーに選ばれてもおかしくないくらいのステータスはある)が、この能力のお陰で要と光となのは以外に負けた事はない。相手の幸運を完全に無として、相手が勝手に自滅するのを笑って眺めるのが主な戦法。ちなみに別にチートでもないなのはに負ける理由は、幼い頃に流れ砲撃を喰らったのがトラウマになり、力を発揮出来ないため。