シンジを追うようにアリーナへと入った私達。しかしシンジの姿は見えない。撒かれてしまったようだ。
「完全にアリーナから逃げやがったな。気配も何もありゃしねぇ。マスターも無しにワカメ君のサーヴァントはここで何をやっていたんだ?」
分からない。サーヴァントのために何かをやっていたとは思うのだけれど。でも今はチャンスだよね。1日に一度しか入れないアリーナを出ていったって事は、シンジはもう邪魔出来ないのだから、今日は思う存分探索が出来るね。
「ああ。ワカメ君が何をやっていたか痕跡が残っているかもしれん。そっちも探してみようぜ」
アリーナはいつもやる事いっぱいだ。その上トラブルも多い。今回はそのトラブルは無さそうだから有り難い。レベル上げものんびりやれそう。
雑魚エネミーを狩りつつ、昨日シンジと戦った隠し通路のところまでやってきた。ここまでは何も変化はない。
「ブオォォォォッ!!」
「おっと危ない」
「えっ?」
獣のような唸り声がして、前方から巨大な角を持った雄牛のようなエネミーが突撃してきた。驚きで体が硬直した私をノービスが抱えて逃してくれた。今までのエネミーよりも強力な気配がする。深層へ進むほどにマスターの選別も激しくなるんだ。
「やるぞマスター」
指示は任せて。初めてのエネミーだから行動パターンが読みづらいけれど、僅かに読める行動パターンからどのようなエネミーか推測する。防御を貫通しようとする大振りな攻撃が多そう。ならそれをさせない素早い攻撃を中心にしていこう。
「ブルルルッ!」
「遅いな」
武器を双剣にしたノービスが、エネミーに攻撃をさせないほどの猛攻をする。しかし想像以上に強度のあるエネミーはなかなか怯まない。ここはスキルを使って大ダメージを狙う。
「了解した。武装拳・剣!!」
鋭い蹴りがエネミーの角を切り落とす。続けて速い貫手がエネミーよりも頭部を穿つ。それでもまだ暴れるエネミー。暴走しているのか行動が全く読めない。どう指示を出せば…………ノービス、近付かないようにして戦える?
「俺のクラスはノービスだ。どんな戦いだって並み以下にこなせる」
なんとも不安な返事だが、気にする必要はない。彼の声からは確実に勝てるという自信しか感じない。彼なりのお茶目だろう。
ノービスがエネミーから距離を離し取り出したのは、拳銃だ。あんなのも持っていたんだ。
「おばあちゃん特製の銃だ。受け取れ!」
銃からはただの弾丸ではなく、レーザーが放たれエネミーを貫通していった。もはや武器というより兵器だ。ノービスのおばあちゃん怖い。
「出力上げすぎだろおばあちゃん。銃身が一発で使い物にならなくなっちまったよ」
それじゃあ今後それは使えないの? せっかく隠し玉になると思ったのに。
「いや、修理すれば使える。まあ1日1回が限度だな。だけどあんまり道具やスキルに頼んなよ。便利なものに頼りすぎたら成長なんて見込めねぇしな」
うっ、分かったよ。さっきの戦いでもあんまり攻撃が通らないと思ったらすぐにスキルに頼っちゃったし、私のためにもスキルはなるべく制限しておこう。
「理解してもらえたなら何よりだ。しかしまだ深くなるのか。これで1回戦だろ。決勝戦までにはマリアナ海溝の最深部くらいまで行きそうな勢いだな」
流石にそれは言い過ぎじゃない? ちなみにマリアナ海溝ってどれくらい深いの?
「10000mは超えていたはずだ」
うん、確実に言い過ぎ。
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第一階層に比べて圧倒的に長い道のりを進んできたけど、まだトリガーは見当たらない。藤村先生に頼まれたみかんは落ちてた。
「ん、またレベルアップだ。こうやって成長を見る事が出来るのが電子世界のいいとこだな」
いくらレベルアップしても、魂の改竄をしないと能力に変化が見られないのはだけどね。次の改竄は決戦当日くらいがいいかな。
「当日に時間があるかわかんねぇし、前日でもいいんじゃね」
それもそうだね。あ、またアイテムボックス。広いと落ちてるアイテムも多いね。近くに居るエネミーの掃除お願いね。
「あいよー」
このアイテムは、何だろう? 財宝データ? サーヴァントや自分に使用する類のアイテムでもないし、トリガーやみかんのように誰かに指定されたアイテムでもない。ちょっとノービスに見てもらうとしよう。
「んだこのアイテム? セラフが用意したようなもんじゃねぇな。まあ邪魔にもならねぇなら貰っちまえ。それなりに高く売れそうだぜ」
セラフが用意したアイテムじゃなくても売る事が出来るんだ。なら貰おう。そもそもここで拾ったなら私のものだ。
「なんか、色々と染まり始めたなマスター。あっちにもアイテムボックスがあるぜ」
よーし、とことん漁るぞー。
この後普通にトリガーも見つかった。ただ広すぎただけみたい。
どうでもいい話
ミコト君の家庭科スキルはA+++。小さい頃から弟妹や従兄弟の世話を任されていたためである。しかしあくまで家庭科レベルなのでプロには敵わない。