チートじゃ済まないin月世界   作:雨期

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初日のダンジョンほどやる事はない。


1回戦 その3

 今私はアリーナの入り口前に立っている。見た目は渡り廊下への扉だが、この先にどんな世界が広がっているのか。

 

「緊張してんのか? なぁに、心配いらねぇよ。これから何度も行く場所だ。入るまでは安全だ」

 

 入るまではという言葉が気になるが、少なくとも1週間、勝ち進めば7週間はお世話になる場所だ。慣れなくてはいけない。

 扉に手を触れると一瞬にして景色が変わった。青い、まるで海のような、しかし電子的な世界。ここがアリーナ。

 

「情報じゃ知っていたが、実際はこうなってんのか。聖杯戦争はこのアリーナでだけ戦闘可能らしい。それと色んな場所にに変なプログラムが配置されているが、あれはセラフが放った敵性プログラム(エネミー)だ。戦いの練習相手には持ってこいだぞ。今回は…………あの蜂みたいなエネミーの近くまで行こうぜ」

 

 ではそうしよう。何かしらの目標があった方が行動しやすい。おや、この噴水はなんだろう。近くに居ると心地よい。

 

「それは回復地点だな。体力や魔力が全快する便利な代物だ。疲れたらここで休もう。それと回復手段としては道具もあるな。購買とかで買えるものは戦闘中でも使えるぞ。さあ近くにエネミーも居るし、肩慣らしにいくぞ」

 

 動き回っている2つの箱がバネで繋がったようなエネミーにノービスが近付いていく。それに気が付いたのかエネミーはノービスに向かって猛進してくる。

 

「オリジン、セット。マスター、指示を」

 

「うん…………えっ」

 

 エネミーの行動が読みきれない。これは…………

 

「落ち着け。ただの経験不足だ。相手は最下級な単純プログラムだ。僅かな情報からでもパターンは読みきれる」

 

「う、うん」

 

 そうだ。私は戦闘経験のないド素人だ。だったら全てを受け入れて、それを吸収しないと。まずは練習だ。何かあれば回復地点に逃げればいい。そう考えると余裕が生まれてきた。

 

「んじゃ改めて指示を」

 

 落ち着けば大した事もない。何度か打ち合えばエネミーの行動パターンも読めてくる。途中何度かエネミーの攻撃も受けてしまったけれど、大きなダメージもなく勝利する事が出来た。

 

「いい肩慣らしになったな。ただサーヴァント戦はこうはいかないぞ。指示する相手マスターとサーヴァントの性格も加味しながら作戦を立てなきゃならない。しかしなぁ…………」

 

「どうしたの?」

 

「本来なら使える技も使えねぇ。マスターに合わせて弱体化しているって感じだ」

 

 なんだかとても罪悪感がある。折角私の声に応えて契約してくれたというのにその力を十分に発揮させる事が出来ない。完全に彼の足枷となっている自分の未熟さが恨めしい。

 

「何俯いてんだよ。こっから伸びればいいんだ。最低の能力なら上がるしか道はない。分かりやすくていいじゃねぇか」

 

 ノービスは気を使ってくれたのかちょっと強めに頭を撫でてくれた。子供扱いしないでほしいと、その手を払い除けようかと思ったが、なんだかとても心地よくてそんな気はすぐに失せた。私に居たのか分からないけれど、兄が居ればこんな感じなのだろうな。

 

「エネミーは一定時間あれば復活する。今日は経験値を貯めるとしようぜ。っと、でもあの蜂みたいなエネミーに喧嘩は売るなよ。あれは初日にはまだ早い」

 

 ではノービスに相応しいマスターになれるように努力をしよう。ここの探索も出来るところまではやってしまいたい。

 

「ん? あれ見ろよ」

 

 そこにみ見えるキューブはアイテムが入っている宝箱のようなものだったはず。近くにエネミーも居るが、先程倒したものと同種だ。苦戦する道理はない。

 エネミーをすぐに片付けてからキューブを開けてみると、エーテルの粉末が入っていた。購買でも買えるサーヴァント回復用のアイテムだ。得した事に違いはないのだろうけど、欲を言えばもう少し良い物が良かった。

 

「まだキューブはあるぜ。ほれ進め。時間は待っちゃくれないぞ」

 

「でもここを出るまで1日が終わらないんだよね。ならのんびりしても大丈夫じゃない?」

 

「んむっ、これは一本取られたかな」

 

 でもだらだらと続けるのはよくない。目標はエネミー20体。それだけやって今日のアリーナは終わりとしよう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「おーおー、よく眠ってやがる」

 

 マイルームでぐっすりと眠っているマスターの毛布をかけ直してやる。今日はとんでもない事の繰り返しだったんだ。疲れたろうな。オレだってかなり疲れた。10分の仮眠は貰ったが、疲れすぎて眠れやしない。まあサーヴァントは眠る必要がないから無理して寝なくてもいいんだけど。

 

「しかしひでぇ話だ。マスターが弱いなら逆に強化してくれてもいいだろうに」

 

 魔法は勿論、体術に分類されるであろうおじいちゃん直伝の武装拳、更には神から貰ったイメージすら使えないときたもんだ。最初はおじいちゃんを転生させたあの金髪の神の仕業かとも考えたが、オレの持っている情報から察するにムーンセルの仕業だ。

 いくら雑魚とはいえ20体もエネミーを狩れば何かしらの変化があると思ったんだがなぁ。数が足りないのか、マスターの力量に変化がないのか。

 

「……………………筋トレしようかな」

 

 マスターの問題じゃないとすると悪いのはオレだ。だったら自分を鍛えよううならばどこを鍛えるべきか。いうとき時おじいちゃんならこう言うはずだ。筋肉が足りない、と。故に筋トレをするのだ。

 明日からが聖杯戦争本番だ。初戦はどんな奴と当たるのか。出来ればあんまり有名なのは嫌だな。サーヴァントの強さには知名度も関わってくる。有名なサーヴァントはそれだけ強いって事だ。初戦は弱いのが相手でいい。景気よく勝ってマスターに自信を持ってもらうのが一番大切だ。




どうでもいい情報。
ミコト君には3人の弟妹と9人の従兄弟が居ます。
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