早いもので今日で1回戦も3日目。7日目は決戦のみだから、今日が終われば1回戦が半分終わった事になる。濃密なのに時間が過ぎるのが早く感じるなんて不思議な感じだ。
そうそう、携帯端末に対戦相手のサーヴァントの情報を記録しておける便利な機能があった。一先ずクラスの欄にアーチャー(?)と記入しておいた。まだ情報は少ないけれどこれから集めていけばいい。
「マスター、アリーナに行く前に学園内の探索も忘れんなよ。どこに情報が落ちてるか分からないからな」
うん、この学園内には図書館という形の情報検索の場だってある。使えるものはなんだって利用するつもりでいこう。
「おい岸波、ちょっといいか」
マイルームを出ると予選で同じクラスだった参加者に話し掛けられた。
「お前の対戦相手って間桐なんだろ。なんか遠坂と話し合ってたぞ」
シンジが凛と…………まあ予選でもシンジは何度も告白して振られるのを繰り返していたみたいだし、不思議じゃないかな。見に行ってみよう。あまり広くもないこの学園内だ。探せばすぐに見つかるだろう。
『居たぞ』
「…………近いね」
階段を降りてすぐの廊下にシンジと凛の姿があった。ここから様子を見させてもらおう。
「君はもうアリーナには入ったのかい? もっとファンタジックな場所かと思えば、意外とプリミティブなアプローチだったね。神話再現的な静かな海ってとこかな。さっきアームストロングをサーヴァントにしているマスターも居たしね」
プ、プリミティブ?
『幼稚な、素朴なって意味の言葉だ。まあプログラミング用語では基本的な構造って意味もあるらしいな』
へぇ、詳しいんだねノービス。
『おばあちゃんがその手の仕事をやっていたからな』
「海っていうのはいいテーマだ。このゲーム、結構よく出来てるじゃないか」
「あら、その分だと、いいサーヴァント引いたみたいね。アジア圏有数のクラッカー、マトウシンジ君?」
「ああ。君には何度か煮え湯を飲まされたけれど、今回は僕の勝ちだぜ。僕と、彼女の艦隊はまさに無敵。いくら君が逆立ちしようと、届かない存在さ」
『馬鹿だねぇワカメ君。簡単に乗せられやがった』
「ふぅん、サーヴァントの情報を敵に教えちゃうなんてマトウ君ったら、ずいぶんと余裕なのね」
あっ、凛が一瞬こちらを目で見た。私に気が付いていたんだ。いま彼女の言った敵はきっと私の事だろう。しかしなんというか、まるでシンジの保護者のような余裕だ。
対してシンジはこちらには気が付かず、自分の失態に顔を赤くしている。
「そ、そうさ! あまりに一方的だとつまらないからね! ハンデってやつさ! で、でも大したハンデにならないかな? ほ、ほら、僕のブラフかもしれないし、参考にする価値はないかも…………」
「そうね。さっきの迂闊な発言からじゃ、真名は想像の域を出ない。ま、それでも艦隊を操るクラスなら候補は絞られるようなものだし、どうせ攻撃も艦なんでしょう。艦での攻撃となると物理的なものでしょうし、物理防壁を大量に用意しておこうかしら」
「うっ…………」
シンジの顔がみるみる青くなる。サーヴァントの情報が知られれば対策を立てるのも容易だ。強力な英雄同士の戦い、一方が対策を立ててしまえば、戦いの結果は明らかだ。情報が重要いうれ例をまざまざと見せつけられた。
「あ、1つ忠告しておくけど、私の分析(アナライズ)が正しいなら、『無敵艦隊』はどうなのかしらね。それはむしろ彼女の敵側のあだ名だし、サーヴァントも機嫌を悪くしちゃうわよ」
無敵艦隊。知らないけれど重要そうなワードだ。後で図書館で調べよう。
「ふ、ふん…………知識だけあっても、実践出来なきゃ意味ないよ。それに君が僕と必ず戦うとは限らないから対策するだけ無駄じゃないかな」
シンジはそんな捨て台詞を吐いて立ち去ろうとした。しかし、たまたま去る方向がこちらだったのか、私の姿を見て目を丸くしていた。
「お前…………! まさか、そこでずっと見てたわけ!? ま、まあいいさ。お前じゃ僕の無敵艦…………いや、サーヴァントは止められないさ。どっちにしろ僕の勝ちは揺るがない。じゃあな。お前もせいぜい頑張れば?」
長居したくないのか。シンジは普段より少なめな小言を吐いてから立ち去った。
「緊張感のないマスターが多いわね。あんなに近くに居る対戦相手に気が付かないなんて。それより岸波さん、私の手に入れた情報を盗み聞きした事になるわよね?」
「…………はい」
いくらシンジの口が軽く、いつかは私も知るかもしれなかった情報とはいえ、今回の情報を引き出したのは彼女だ。文句を言われても仕方がない。
「それなら情報料が欲しいわね。流石にマトウ君のようなものは望んでいないわ。ただ私が納得しないようなものは駄目よ」
これは困った。彼女が求めているのがサーヴァントの情報なのは分かるが、私のサーヴァントはノービスというイレギュラーなクラスだ。下手な事を言えば怪しまれるかもしれない。
『マスター、ここはな…………ごにょごにょ』
えっと、本当にそれでいいのだろうか。まあ伝えるだけ伝えてみよう。
「え、クラススキルに騎乗がある? はぁ、貴女ももうちょっと考えて発言しなさいよ。ま、今回はそれでいいわ。じゃあね」
立ち去る凛の背中を見ながら本当にこれで良かったのか考えた。彼女が納得したのならいいのだけど。というかこの情報にはどんな意味があったの?
『本来クラススキルで騎乗を持つのはセイバーとライダーだけだ。対魔力でも良かったが、それじゃあ該当クラスが多すぎて彼女に悪いしな』
でも該当クラスが少なくても絶対に分からないよね。イレギュラークラスだし。
『嘘じゃなきゃいいんだよ。それより無敵艦隊だ』
うーん、良心が痛む。
『彼女を痴女呼ばわりしていた奴が言うな』
…………シラナイヨー。
ーーーーーーーーーーーー
えーと、無敵艦隊についての情報はどこだろう。艦隊ってくらいだから海に関係あるんだろうけど…………ノービスってシンジをワカメ君って呼ぶよね。まさか海産物繋がりで海に関係する英霊が呼ばれた?
『下らん想像はいいから探そうぜ』
そ、そうだね。あっ! 見つけた!
ーー無敵艦隊について
大航海時代におけるスペイン海軍の異名。
千トン級以上の大型艦100隻以上を主軸とし、合計6万5千人からなる英国征服艦隊。
スペインを「太陽の沈まぬ王国」と謳わしめた無敵の艦隊である。
ーー
シンジのサーヴァントはスペイン海軍の出身なんだ。でも海軍に女性なんて入れるのだろうか。特に昔は男尊女卑が比較的顕著なのに。
『事実は小説より奇なりって言葉もあるだろ。どっかには男装した女性海賊も存在したって聞いた事もある。女性の海軍が居ても不思議じゃねぇ』
ノービスって色々と詳しいけど、それも聖杯からの情報?
『いや、これはおじさんの漫画のネタの資料の中にあったやつだ』
…………ノービスのおばあちゃんはプログラム関係の仕事をしていて、おじさんは漫画家? 英霊ってなんだっけ?
『そんな事言われてもなぁ。そうだ、こっちは聖杯からの情報だが、保健室で配給アイテムが貰えるみたいだぞ』
聞いても教えてくれそうにない。まあ保健室でアイテムが貰える情報も大切だし。じゃあ保健室に行こう。
『おう、そんでさっさとアリーナに行っちまおうぜ』
取れるなら早めにトリガーを取っておきたいからね。
「きゃっ!?」
図書館から廊下に出ると誰かにぶつかってしまった。
「大丈夫ですか?」
「あっ、岸波さん。大丈夫ですよ」
ぶつかったのは桜だったみたい。これなら保健室に向かう予定だったからちょうど良かった。ぶつかった拍子に落としてしまった桜の荷物を集めて持ってあげる。このまま保健室に向かおう。
「そんな、持ってもらうなんて悪いですよ」
「そうだぞマスター。ここは俺が持ってやる」
「「えっ」」
「女の子に荷物を持たせるのは男の恥だ。それと桜ちゃん、今度暇ならデートしない?」
「ごめんなさい。そういうプログラミングはされていませんので」
荷物の中身は配給アイテムだったらしく、保健室に持っていったら特別に2つ貰えた。これで学園でやる事は終わっただろうし、フラれて凹んだノービスを引っ張ってアリーナに向かおう。
どうでもいい話。
作者が考えていたオリジナルサーヴァント、清姫ちゃんのステータスとかを書いてみる。
クラス:キャスター
真名:清姫
ステータス
筋力:E
耐久:D
敏捷:C
魔力:A+
幸運:D
スキル
陣地作成:C
道具作成:D
炎術:B・・・文字通り炎を操る術。魔術のスキル代わり。
狂愛:A++・・・愛する者がいればステータスが強化されるスキル。A++ならば全てのステータスがかなり上昇するが、愛する者が僅かでも彼女を裏切るような行為をすれば心中も厭わない。ヤンデレ。
変化:B・・・炎を操る大蛇へと変化するスキル。ある種のバーサーカー状態となる。
宝具:D
道成寺の鐘
結界宝具
丈夫な鐘で相手を閉じ込める宝具。男性に対してはワンランクほど高い効果を発する。更に愛する者の場合にはAランク相当の宝具となる。一応身を守る事にも使える。