今日こそトリガーを手に入れてシンジに追い付こう。この階層のエネミーの行動は大抵把握した。問題はまだ戦っていない蜂型エネミーだけだ。あの先にトリガーはあるはず。
「そういや先生に竹刀を探してくれって頼まれてたな。あっちもついでにやっておこうぜ」
そういえばそんなお願いをされていた。竹刀がこんな場所に落ちていればすぐに見つかるはずだ。もしかしたら他の参加者が既に見つけているかもしれないけど、探すだけ探そう。
「今回はオレ達以外にアリーナには人が居ないみてぇだし、のんびり行こうぜ」
「うん」
昨日みたいな妨害がないのは有り難い。ゆっくり探索しながら…………ノービス? なんだか顔が青いけど。サーヴァントでも体調不良になるの?
「あ、ああ。魔力不足とかで性能が引き出せないのがサーヴァントでいう体調不良だろうな。だけど今は、そういのじゃなくてな…………行こう」
こんなにオドオドしているノービスは初めてだ。何かに怯えているような雰囲気だけど、逃げようとする気配は感じられない。私を守ってくれている? それにしては私との距離が離れている。あ、戻ってきた。
「マスター、隣に居てくれ」
「何かあったの?」
「あった。マスターに被害はないから安心してくれ」
その言い方だとノービスには被害があるようだけど。ノービスに問題があると私が困ってしまう。私の代わりに戦ってもらっているのだ。あまり無理はしないでほしい。何かあるなら言ってもらいたい。
「心配してくれてありがとよ。ちょっと気持ちが楽になった。あの人だって戦闘に支障が出るような事はしないさ」
「? 人が居るの?」
最初にノービスは私達以外は誰も居ないって言ったはず。途中からおかしくなったノービスの様子を考えるに私達が入ってから現れたのか、もしくはノービスが気付かないほどに完璧に気配を絶っていたのか。何より気になるのがノービスがまるで知り合いの事を言うように言った事だ。
「はっきり言うけど知り合いだ。知り合いなんてレベルじゃないくらいに知り合いだ。とても非常識な、うおぁっ!?」
飛ばされた!? 心霊現象みたいだったけど、おそらくノービスの知り合いらしき誰かのやった事だろう。漫画みたいに飛んでいったその様子は滑稽というかなんというか。でもサーヴァントを飛ばすなんて普通じゃない。流石はサーヴァントの知り合い。
「あたた…………おっ、これ竹刀じゃねぇか。こんなとこに落ちてたんだな」
藤村先生が無くした竹刀が、ちょうどノービスが落下したところにあった。虎のストラップも付いているのだから間違えようがない。私が触れるとデータ化してアイテムとして収納された。
「残りの目標はトリガーだけだな。あの蜂型エネミーの後ろにあるキューブに入っていそうだな」
他に比べたら強力なエネミーだというのは一目で分かる。でも負けるような相手ではない、と思いたい。
少し近付いていくと、大きな羽音を立てて私達を警戒しているようだった。しかしそんな事で退く事などしない。こちらに戦う意志があると判断したのか、エネミーは真っ直ぐに突撃してきた。かなり動きが速く、人の顔ほどと的も小さい。どうやって戦う?
「そう難しく考えるな。戦いなんてのは攻めと守りの2択だ。あんな虫けら、さっさと潰して帰ろうぜ」
そうだ、基本は変わらない。敵が少し変わっただけだ。慢心はしないけど、警戒しすぎる必要もない。周りを飛び回っているエネミーがノービスにその牙向けてくる。けど問題ない。作戦はただ1つ。飛び込んできたら迎撃する、だ。
「ホームラン!!」
エネミーは棍棒になったノービスの武器によって弾き飛ばされた。だがダメージは少ない。相当強度があるようだ。
「そりゃぁっ!!」
しかし体勢は崩れている。追撃には十分だ。ノービスは武器をハンマーに変化させてエネミーを叩きまくった。それはもう高速餅つきのように息もつかせぬ早業だ。エネミーのデータが擦り潰れるまで攻撃は続いた。
強めのエネミーだと思ったのだけれど、いつもより動きが軽快だったノービスの前では他のエネミー同様に雑魚だったようだ。
「よしよし、これで邪魔する奴は居ないなそれにこんなか感じなら
「俺が安心すると思ったかボケカスが」
「ひっ!?」
爽やかなのに異常なまでに恐怖を感じる、そんな声がアリーナに響き渡り、ノービスは今日一番の青い顔をした。そして何もなかったはずの空間から1人の男性が陽炎のように揺らめきながら現れた。頭が真っ白になる。体が震える。この人がノービスの言っていた人?
「ふん、この程度でビビるたぁ随分とちっぽけなマスターだな、ミコト」
「こ、こんなの大抵の生物が気絶しますって! 意識を保っているだけ優秀なもんですよ!」
「ミ、コト?」
「あっ」
「なんだ、名前すら教えていなかったのか? それほどまでに信用出来ない奴だったか。さっさと契約破棄しちまえ。いや契約破棄も出来ねぇくらいに弱体化してんのか。情けねぇなぁ。それでも一条かよ」
「これはマスターに情報の大切さを教えるためです! 後者ノーコメントで」
なんだか分からないけど、ノービスの真名がミコトというのだけは分かった。貴方は一体何者なの?
「! なかなか順応性は高いようだな。いいだろう、教えてやる。俺は一条光。そこのボケカスの伯父だ」
漫画家の?
「どうしてそう無駄話が好きなんだ、このボケカス!!」
「ひぎゃっ!?」
触ってもいないのにノービスが吹き飛ばされた!? アリーナを縦横無尽に飛ばされた後に地面に顔面から落とされるノービスの姿は悲惨の一言に尽きる。
「連れ戻す気だったが、やめだ。サーヴァントである限り死にはしねぇみたいだし、ここで朽ちてろ」
また揺らめいて消えた。連れ戻すって言っていたけど、それは…………
「いいんだよマスター。俺は最初からここに居るつもりだったんだ。それよりもう帰ろうぜ。おじさんのお陰で身体中が痛くてたまんねぇ」
「…………いつかちゃんと話してくれる?」
「そうだな。それなりに勝ち進んだら話してやる」
ちょっと大切(?)な話
今回出たミコト君の伯父、光(ひかる)君についての簡単な説明です。
見た目はミコト君に近いですが、ミコト君が長髪に対し、短髪で身長も175とミコト君よりも大きいです。今回やってきた理由はミコト君が心配だったからです。本編じゃ滅茶苦茶言っていましたが、ただのツンデレおじさんですね。
そして彼の力についてですが、コピーですね。一度見たものならば、例え画面越しでも完全にコピーして、更に自己流に強化します。ORT並みに特殊なものや、特別な道具なんかが必要な事はコピー出来ませんが、後者に関してはミコト君のイメージを現実化する力のコピーによりほぼ問題がなくなりました。ORTの力は完璧に使いこなしています。
実力は一条家トップと噂されていますが、本人は父である要にはまだ届いていないと感じています。もしやりあえば3割くらいの確率で勝てます。
漫画家をやっている理由は楽そうだったから。しかし売れてからは仕事が増えすぎて辞めたくなったとか。
Fate風ステータスに表すと
筋力:EX
耐久:EX
敏捷:A++
魔力:EX
幸運:A++