ありふれた転生者は後ろにいる 作:新くさや
――月曜日。それは学生からしてみれば中々に憂鬱な気分になる始まりの日だ。
前日まで自堕落な生活をしていた者であれば殊更にそうだろう。
まあ私に関してもやはり、それは当てはまっているのだと思う。ただ憂鬱なばかりではない事が救いか。
「おはよー……
「ん、恵里。おはよう」
内心気だるげに登校の支度をしていれば、同室の恵里も起きて抱きついてきた。いつもの事ではあるが柔らかな肢体の感触が素晴らしい。ありがとうございます。ふにふに。
「もうじきご飯の時間。はよ着替えーよ?」
「はーい……」
離れていく暖かな体温は名残惜しいが、職員さん達も朝食の準備を始めているはず。手伝いにいかねば。
遅くとも再来年には私も恵里も
あ、院長先生だ。丁度玄関の掃除をしていたらしい。
「行ってらっしゃい二人とも。気を付けてねえ」
いつも通り朗らかな顔で送り出してくれる院長先生に恵里と二人挨拶を返す。
「行ってきます。院長先生」
「行ってきまーす」
……院長先生、白髪増えたな。私がここに来てから十数年も経ってるから当然と言えば当然だけど。
バイト代は貯めとけって言って受け取ってくれないし、大学も結局勧められたとこに行くって事になっちゃったし、いつになったら恩返し出来るようになるのやら。頑固者め。
さておき、学校へ向かおう。
恵里が指を絡めてくるがいつもの事だ。にぎにぎ。
二人で他愛もない話をしながら歩いていれば、後ろからタタタッと聞こえる軽い足音。衝撃。
「っど~ん!おはよ~!エリリン!レイレイ!今日も仲良いね~」
一瞬投げ飛ばしてしまおうかと思ったが、案の定鈴だった。最近は通学中見つかる度に突撃してくるちびっこに慣れてきてしまっている自分がいる。
こんなにちっこいのに元気ありあまりすぎじゃろ、この子。
「鈴、おはよー。まあ僕らは
「うん?……まぁ、うん。おはよう、鈴」
なんか知らないけど妙に背筋がゾクッとした。
姉妹……まあもう何年も一緒に暮らしてるし恵里に限らず皆家族みたいなものだね。兄姉も弟妹も何人いるんだって話だけど。
しかしまあこの二人、よくぞここまで持ち直したな。
恵里は誰かとある程度仲良くなると、急に突き放すような暴言を吐く悪い癖がある。それ以上仲良くなるのを恐れるかのように。
……きっと根っこに父親の事があるんだと思う。
『……その年で一人称が自分の名前って有り得なくない? いや、ホント』
とか恵里が言い出した時はああまた駄目かって思ったけど、その後もある事無い事好き放題罵る恵里に鈴が言い返したのは結構意外だった。半泣きだったけど。ぺろぺろ。
今まで喧嘩別れした子達は皆そのまま仲直りする事も無かったんだけど、鈴にはどうしてかその後もちょっかいかけるように恵里が口論仕掛けて……なんかいつの間にか仲直りしてたんだよね。なんでや。
特別親しげって感じでもないけど、なんか前よりも気安い感じ? まあ何でもいいけど恵里の友達第1号を祝っておこう。ぱちぱち。
わちゃわちゃと騒がしいちびっこを恵里と二人であやしたり弄んだりしながら歩くことしばし。とうとう学校に到着。同時に誰かを見つけたのか鈴がそちらに突撃していった。
「おはよ~!カオリン!シズシズ!」
「あん子はほんま忙しないな」
「ふん……ようやく静かになって清々するね」
つまらなさそうな顔で言うセリフか、この寂しんぼめ。
「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」
……またか。毎週毎週よくやるなあの
男の嫉妬は見苦しいし聞き苦しいんじゃぼけなす。というかむしろエロゲは私もやりたい。さすがに孤児院でやるわけにはいかないからね、うん……南雲んち行っていい? 行かないけどね。しくしく。
「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
うーん、白崎ちゃん相変わらずのKY。容姿はほんといいんだけどなあ……いや性格もいい子なんだけど、なまじ容姿が良すぎる分そのせいで逆に気になる人を追い詰めてる事に気が付いてないのがこう……もういっそ哀れですらある。なむさん。
南雲は……うーんまた
八重樫ちゃんは終わってから三人のフォローするくらいなら白崎ちゃんもうちょっとどうにかできないのかな。いちいち教室の空気悪くなるのほんと鬱陶しいんだよね。しかも南雲と私の席近いから尚更。
迂遠かもしれないけど秘密裏にメールでやりとりさせるとか、なんかこう……あると思うのよね。言い出しっぺの法則? 知らないな。
孤児だからってごたごたから天之河の独善に恵里の反感、からの女子の敵視。もうやってらんないねえ。男子からも腫れもの扱いで突っかかられない分、南雲よりましだけども。あ、チャイム鳴った。
さて、今日のお昼は職員さんに教えてもらいながら作ったお弁当。そろそろ慣れてきたから一人でも作れるかな? 帰ったら相談してみよう。
「うん、おいしい。腕を上げたね、御麗」
ん、作るのは恵里の分もだし聞いておくか。
「ありがと。そろそろ一人でもイケるかな思っとんやけど、どう?」
「大丈夫じゃないかな。僕が太鼓判を押すよ!」
ふむ。それなら――
「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」
うわあ。いつも昼は南雲がどこかに行ってるから大丈夫だと思ってたんだけどなあ……
「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」
「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」
「うわあ」
恵里は我関せずだがつい声が漏れてしまった。これはひどい。
「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
うわあ……気持ちわる。
「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」
せやな。でも漫才はよそでやってほしい。鬱陶しい。
「――御麗!!」
ッ!? 何だこの光! 逃げるべきか!?
「恵里――!」
うおっまぶしっ!!
オリ主ちゃんの紹介
・TS転生者
・孤児
・ネットで培ったごちゃまぜ方言
・肉体的百合性癖
・AIKIDO初段
・あとなんかあったかな・・・?
【挿絵表示】
もっとももいろね式美少女メーカーにより作成オリ主ちゃんイメージ画像