ありふれた転生者は後ろにいる   作:新くさや

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タイトル回収できたので初投稿です

ちょっと特殊タグ盛りに盛りすぎて読みづらいかもしれません。作者が好きなのでご了承ください()


第10話 裏

 私、ミレーさん(分霊)。今、なぐもの後ろにいるの。

 

 後ろというか中だけどね……うん。虚しい。

 

 あの時。南雲の錬生のステータスの足しにと憑依した私(分霊)。完全に意識から外してたけど、まだあの時は本体と同期してた。

 ベヒモスの足止めをやめて走り出した後、南雲が魔法の直撃を受けても致命傷にならなかったのは憑依を継続してたおかげだと思うから、それはまあ良かったと思う。思ってた以上の速度が出てたから咄嗟に止まれなかったのかもしれないけど(小声)。

 ん゛んっ。問題はその後だな。

 ふと、今まで意識していなかった事を意識したような感覚が沸きあがったかと思えば、さっきまで意識していたはずの本体の意識が途絶して、南雲に憑依中の分霊の意識だけになった。

 な……何を言ってるのかわからねーと思うが以下略。

 

 まあ混乱するよね。落ちてる真っ最中だったし。その後水流に呑まれてさらに混乱したけど。

 憑依中の分霊だーって気付いてからはせめて生存確率上げてやるかって憑依継続したけども。これでも最後に助けるの諦めたの気にしてるのよね。今にして思えば鈴に障壁張ってもらってそれに摑まらせれば良かったかなーとか、檜山にちゃんと気を向けてれば防げたんじゃないのかーとか。

 まああの状況でパニクるのはしゃーないやろとも思うけど。

 

 ただ、いっこ気になるのは、本体どうなってるのかなあ……という事だ。

 どういうわけか今も本体と同期出来ないし、最悪向こうは植物状態。なんて、まあ悲観はしてないけど。

 むしろ生体オンリーの分霊の方の私に意識があるのが不思議なくらいだし、もう半分が残ってる本体なら、ステータスが常時半減で脱力状態が続くくらいじゃないだろうか。あれ、十分ひどいな? 頑張れ本体の私。

 まあなんだかんだ考えても、憑依解いたところで本体の下にワープ出来るわけじゃないし、しばらくは南雲に付き合う事にしよう。

 正直助けを期待できるような場所じゃないし、分霊のステータスが上乗せされたところで、この深層っぽい階層の魔物を相手に南雲が生き残れるかどうか。水はどうにかなりそうだけど、食べる物も持ってないだろうし……時間の問題な気もするけどねえ。

 

「うっ――痛っ~、ここは……僕は確か……」

 

 あ、南雲が目を覚ました。

 

「よく思い出せないけど、とにかく、助かったんだな。……はっくしゅん! ざ、寒い……ような、なんか妙に心地いいような……?」

 

『ほんと、あの高さから落ちてよく生きてましたね……現状ほぼ詰んでますけど。心地いいのは憑依の影響ですかね』

 

「そういえば、足止めの錬成中に急に魔力が漲るような感覚があったけど、誰かが支援魔法でもかけてくれたのかな? その時のがまだ続いてる気がする」

 

『これは魔法陣かな。何を描いてるんですか?』

 

「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、〝火種〟 ……う~、なんでただの火を起こすのにこんな大仰な詠唱がいるんだよぉ~、恥ずかしすぎる。はぁ~」

 

 むう。やっぱりこっちの声は聞こえないか。無視されたみたいで悲しい。しょんぼり。恵里にならかすかに聞こえてたみたいなんだけどな……鈴は全然駄目だったけど。同じ錬生(・・)師なのになんで南雲も駄目なんだろう。

 

「ここどこなんだろう。……だいぶ落ちたんだと思うけど……帰れるかな……――やるしかない。なんとか地上に戻ろう。大丈夫、きっと大丈夫だ」

 

 応援はするが……むう。最悪死んでも体だけは持って帰ってやる。

 

 

 

 うわあ。なんだあのウサギのような形容し難い魔物は。単騎で狼の群れを蹴散らしたぞ。文字通り蹴りオンリーで。

 ってああああああああああ南雲おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉベタな見つかり方してるんじゃない! 逃げるんだよォ!

 

 ッ! 身体借りるぞ南雲! 受け流……す!

 

「……は? え?」

 

 いい……から、呆けてないではよ逃げるか止めさすかしろや。無理矢理南雲操作したから生体めっちゃ持ってかれた感じがする。左腕もヒビ入ったっぽいし、もう何度も凌げんぞ。本体の()ならもうちょい完璧にやれたと思うんだが。

 ……やばい、後ろからもなんか来てる。それも大型。

 

 なんやこの顔だけ熊っぽいゴリマッチョは。

 ……あー、前門のウサギ後門のゴリ熊ですわ。万事休すかな……ぬ? ゴリ熊速いな……なんだあれ間違いなく爪は当たってなかったぞ。とにかくウサギ食ってる間に逃げろ南雲。完全にロックオンされてる気もするけど障害物でもなんでも使って逃げろ。

 

「うわぁああーー!!」

 

 

 

 ――ああ、これはもう……私は二度も南雲を見捨てる事になるのか。

 

 あのゴリ熊は不可視の爪を伸長する固有魔法を持っているらしかった。それに気付いた時にはもう遅く、南雲は左の肘から先を失う事になってしまった。錬生による身体操作の応用で出血を遅らせる事は出来るが、それでも失血死は免れない。

 せっかく南雲が錬生を用いて血路を開いたというのに……ああ、遂に意識を失ったか。……意識さえ無ければ操作するのに大した力は必要ない。今からでも出血を止めれば命は繋げるか? 分霊から生体を分けてやればいくらか回復もするやもしれん。まずは紐状のものを――ん、水?

 

 いやまってなんやこれとんでもない量の生体エネルギー感じんで!?

 これだけあれば出血を止めるくらい造作もない――ってもうとまっとるし! むしろ傷が塞がってる!?

 ……取り乱した。どうやらあまりにも濃厚な生体エネルギーが、結果として回復する作用を齎しているらしい。さすがに無くした腕を再生するほどの効能は無かったようだが。よくよく感じてみれば、南雲の魔力も回復している。なんなんだこれは、エリクサーか? まあ何にせよ命は取り留めた、か……失った血は腕同様回復していないようだから錬生して造血機能促進しとこう。

 

「あぐっ!?」

 

 む、起きたか。二度と目が覚めない事も覚悟していたが。

 

「な、なんで? ……それに血もたくさん…………まさか……これが?」

 

 エリクサー(仮)にも気が付いたようだな。ひとまずそれが確保出来れば、生存の可能性は飛躍的に高められる。魔力も回復するから今のように隠れ進んで出口を目指す事も出来るだろう。

 

 ぬ? 視覚的に感知したら目が潰れそうなくらいの生体エネルギーを感じる。この宝石のようなものから出てきてるのか……?

 原理は不明だがこのサイズなら持ち運びも出来る。本格的に生還の目が出て来たな。後は南雲次第だ。

 

 

 

 あれから何日経った? 光源が宝石しか無いから昼夜も分からんし、南雲は……完全に心が折れてしまった目をしてうずくまっている。孤児院(うち)で何度も見た眼だ。

 エリクサー(仮)で空腹が満たされている様子は無い。だと言うのにそのありあまる効果で死ぬ事が遠ざけられている。

 

――自分で自分の拷問をしているようなものではないか……――

 

「ッ!?」

 

 む?

 

「誰かいるの!?

 

 ここには私くらいしかいないが……もしや私の声が届いたのだろうか。

 

「ねえ、いるんでしょ!? 返事してよ!」

 

 ここにいますよ。南雲くん。

 

「誰か! 幽霊でもなんでもいいから! 出てきてよ!」

 

 南雲くん?

 

ねえ……! お願い……お願いします……!

 

 聞こえていないのか?

 

誰か……助けて

 

 

 

「――はは、あははは! そうだよ、こんな所に誰もいるわけない……! とうとう幻聴まで聞こえるようになったってわけだ……

 

 幻聴だったのか……更に増して追い詰められてるな。

 

「どうして僕がこんな目に……」

 

 

 

 また幾つの夜を超えただろう。最近では意識がある時もただうわごとを呟いてばかりだ。

 衰弱が酷くなったのか、エリクサー(仮)を飲めなくなってしまった南雲を意識が無い時無理矢理操作して飲ませていたが……これ以上苦しませてまで生かし続けるべきなのだろうか?

 

――私には分からない。南雲、お前はどうしたい……?――

 

「僕にも分からないよ。でも、こんな苦痛がずっと続くなら……いっそ……」

 

 時折誰かと話すような言葉を漏らす事があるが、南雲の他には誰もいない。

 

 

 

「なぜ僕が苦しまなきゃならない……僕が何をした……」

 

――お前は何も悪くない、出来る事を精一杯励んでいた――

 

「ならなんでこんな目にあってる……なにが原因だ……」

 

――大元を辿るならやはり――

 

「そうだ。神に理不尽に誘拐された……」

 

――それだけならまだこんな事にはなってなかったかもしれないが――

 

「クラスメイトに僕は裏切られた……そうだ、アイツには気を付けろって……アイツ……アイツって誰だっけ…………そうだ、卯代さん

 

――いやそれは私じゃないが。檜山だな檜山――

 

「そっか。卯代さんが檜山で……?」

 

――何故そうなる……あれ?――

 

「どうしたの? ああ……そういえばこの声、卯代さんの声に似てるなあ……」

 

――南雲くん、もしかして聞こえてます?――

 

「あれ、やっぱり卯代さんの声だ……どうして僕の幻聴が卯代さんの声なんだろう……」

 

――!? 幻聴じゃないですよ!――

 

「幻聴じゃなかったら何だって言うのさ……ここには僕しかいないのに……はは」

 

――ああやっぱり聞こえてる! 南雲くんは一人じゃありません! ずっと私もいました! 南雲くんの中に!――

 

「え? ……もしかして本当にっ?」

 

 はい! 錬生の派生技能で作り出した分霊ですが。ずっと南雲くんの中にいました!

 

「卯代さん!? ……卯代さん?」

 

 はい、私です。卯代です。

 

「……やっぱり幻聴か」

 

 あれ? また聞こえてない……? 何だろう。何か条件があるのか?

 

 

 

 あれから南雲に何度も話し掛けてみたが、聞こえたり聞こえなかったり……特に外に意識を向けていない時、より内に内にと意識が向かっている時、私の声が……と言うより私の思考が混ざりこんでしまう事があるらしい。

 もしかしてなのだが……飢餓による極限状態にある事で、いわゆるある種のトランス状態になっているのではないだろうか。昔の坊さんは神の声を聞こうとして極限状態に自らを追い込んだりしてたらしいし? いや、悟りを得ようとして。だったか? まあどっちでもいいけどだから何だと言う話である。

 ……もうなんか完全に幻聴と思われてしまったふしがあるのだ。

 まあ声を信じて意識を外に向けると、途端に聞こえなくなる。なんて事を何度も繰り返したらそりゃあ信じられなくもなるだろうな……なんかすまん。

 

 そのおかげというかそのせいというべきか、今では時々会話出来ている。

 なんだかんだ私も会話に少し飢えているからな……光源一つのせまっくるしい空間で、時間の流れも分からず南雲のうわごとを聞き続ける日々だぞ? 病むわ。

 

「どうして誰も助けてくれない……」

 

――死んだと思われてるんだろうなあ、普通あんな所から落ちたら助からん――

 

「でも、僕は生きてる……この苦痛がその証拠だ」

 

――そうだな、南雲はまだ生きてる。でも、それを知ってるのは私くらいだ――

 

「じゃあ助けてよ。はは…………分かってるさ、卯代さん(げんちょう)に期待してもしょうがない」

 

――否定出来ないのが悲しい所だ――

 

「この苦痛を消すにはどうすればいい?」

 

――……最も簡単なのは、永久の眠りにつく事だが……南雲、君はどうしたい? 何を望んでいる?――

 

僕は……僕は、〝生〟を望んでいる」

 

――! なら、そのために必要な事はなんだろうか――

 

「必要な事……ここを出る事。僕らの世界に帰る事」

 

――障害が多いな。どうしようか――

 

「邪魔する奴らを排除する……僕を食べ物としか見てなかったアイツ……僕らを誘拐して戦わせたアイツ……僕をここに落として死なせようとしたアイツ……!

 

 ん。そろそろ聞こえなくなったか? 少し(・・)意識を誘導してしまった感じもあるが。まあ生きる気になったならヨシ!

 

 

 

「卯代さん……卯代さん? ああ、また聞こえなくなった……でもいいや、どうせまたそのうち聞こえてくる。幻聴なんだから

 

 どうかな……外に意識を向けてしまったからには、もうあまり機会も無いと思うが。まあ、声が聞こえるような状態にならない事を祈っておくよ。少しばかり寂しい気もするけどね。

 

「でも、なんでだろう……卯代さん。あの日の手のひらのようなぬくもりが、ずっとそばで寄り添ってくれているような気がするんだ」

 

 




オリ主のペットとか召喚獣とか毛玉を奈落に落ちてくハジメにボッシュートする展開書こうかなーってのからこんな感じに。

なんでこんなややこしいやりとり書く事に・・・(遠い目
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