ありふれた転生者は後ろにいる   作:新くさや

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天之河の思考トレス難しい。難しくない?


第13話 表

 

 んー……それなりに形にはなってきたと思うんだが、やはり同じ錬生師でも適正に違いがあるという事だろうか?

 人の形をした物、無機物でもそれこそ人形なら比較的簡単に分霊を憑依させて動かす事が出来た。ある程度人の形に似通っていれば、マネキン程度の造形でもぎりぎりイケる。動かす時に生体が目減りしていくから、あまり使い勝手は良くないが。

 そして不定形の無機物。南雲のように地面とか、水なんかに憑依させようとしても……こう、憑依対象として見れないのか、非常に長い時間が掛かる上、対象に憑依すると言うより、分霊に土やら水を取り込んで依代を作り出すような感じになってしまう。しかも土だと動かす度に関節から崩れそうになるし。

 

 うーん……ああいや、南雲はそもそも分霊を作ってるわけじゃないのだったか? えーと、あの時は確か……そうそう、力を宿らせて生物と仮定する事で動かしているのでは? って考えたはず。

 つまり……つまり? あー、そもそも生体エネルギーを人型に限定していないのか。考えてみればそこまで難しい話でも無かった気がする。最初に生体を視認した時に腕の形そのままだったせいか、思い込んでしまったという事だろうか。

 そもそも生体はあくまでエネルギーなのだから、分霊の形状も結局私のイメージ次第だったという訳だ。動かす物に合わせた形状に生体を形成すればうまい事いく……はず? ひどく遠回りをしてしまった。

 

 とはいえ、南雲のように錬生するのはやはり難しい。かなり習熟を重ねなければ碌に使い物にならないだろうな……というか、分霊を放って調べたところ、この国の錬生師のほとんどが南雲と同じような錬生方法をしているんだよなあ。私は一般的な錬生もうまく出来ていないのだろうか……まあいいけど。分霊便利だし。

 

 まあそれはそれとして、檜山の件がそろそろ動きそうだ。王都に戻ってこっち、日に日にクラスメイト達の檜山を見る目が険しくなっていった。元々、トラップにまんまとはまって全員を窮地にさらした張本人だからな。私が煽ってなくても時間の問題だったと思う。

 

 

 

「ごめん……本当にごめん……!」

 

 檜山が土下座している。クラスメイトと、天之河の目の前で。これだめかも。

 クラスメイト達が批難の声を浴びせていても、涙ながらに謝罪の言葉を繰り返すだけで、反論の一つもしないが……許され方を知っている人間の動きだなあ。

 まあ、トラップに関しては間抜けが引っ掛かって周りを巻き込んだだけだから、こうやって無事に帰ってこれた以上は謝罪をして許されればそれで終いだ。それは正しい。帰ってこれた人間に対しては、とつくが。

 そして、涙ながらに土下座して、謝罪している者を許せない人間もそうはいない。自身が重篤な被害を受けていなければ、その行いで故人が出ていたとしても、それが赤の他人であれば許せる。

 白崎ちゃんだけは唯一、南雲に執着しているが……自分の目で確認するまでは生きていると信じるらしい。鈴から聞いた。それが確定するまでは、檜山を責める事も許す事も出来ないのだろうな。

 

「……皆、檜山の事を許してあげてくれないか? 檜山だってわざとトラップを発動させたわけじゃない。少し気が逸ってしまっただけなんだ。それにこうして、涙を零すほど後悔して謝っている。俺達はこの先も一緒に戦っていく仲間なんだ、ミス一つでいつまでもわだかまりを残しておくべきじゃない」

 

 わあ……私は君らの仲間扱いしてほしくはないかなあ……

 

「南雲の事は残念だったけれど、こんな、事故一つで俺達がバラバラになるなんて事、南雲も望んでないはずだ!」

 

 せやろか。

 君がそう言うのならそうなんだろうな、君の中ではな。というやつか。

 トラップの件だけならこれで収まってしまいそうだけども……

 

――あれ、本当に事故だったのか?

 

「……は?」

 

 やったぜ。

 檜山も思わずといった感じで顔を上げてる。

 狙い通り天之河の執り成しで解決しそうだった所にこれだものなあ。いつもなら、さすが天之河! 優しい! みたいな事になってただろうけど、南雲に魔法を当てたのは檜山では? それも故意に。みたいな疑惑が出てるから、自分達の誤爆じゃなかったとも思いたい奴らからすれば、檜山を槍玉にあげるのはうってつけでもあるんだね。

 

「南雲に嫉妬して、事故に見せかけて消せたら、って思ったんじゃないの」

 

「朝からすげー睨んでたって話だし」

 

「あ、それ俺も見た。うわ、マジ?」

 

「でも、普通そこまでする? ありえなくない?」

 

「南雲が落ちてった時、檜山笑ってたって聞いたよ?」

 

え、じゃあなに。ウチら全員巻き添えになって死にそうになったって事? マジ最悪なんだけど」

 

「魔法当てたのもお前なんだろ? ほらどうなんだよ檜山

 

 うん……うまくいったのはいいんだけど、こわ。特に白崎ちゃんの目が怖い。何も言わないのがさらに怖い。

 

「ま、待ってくれ! 皆、落ち着くんだ! あれは事故だったろう!? 仲間を殺そうとするなんて、そんな事あるわけないじゃないか! 檜山は南雲にやりすぎな所はあったかもしれないが、それは南雲がいつまでも不真面目な態度だったからだろう? いくらなんでも殺そうとするなんて、ありえない。南雲に嫉妬したって言うけど、一体何に嫉妬したって言うんだ」

 

「それは……」

 

 うーん、ここまでかな? 檜山も顔真っ青にしてだんまりのままだけど、天之河に期待してるのかな?

 さすがに皆、原因までは言えないらしい。まあ自分の行動が原因で想い人を死に追いやった。なんて本人の前で言えるはずも無し。

 ひとまずうやむやにはなるだろうけど、これで皆の檜山を見る目は厳しくなるはずだ。それに、人殺しとパーティー組んで戦闘なんてしたくはならないだろうから、檜山が強くなる心配はあまりしなくても良くなると思う。

 

 

 

 最悪、分霊を寄生させて四六時中生体奪い続けようかとも思ってたけど、なんとかなりそうでよかったよかった。

 

 




ちなみにあからさまに噂を広げ過ぎて鈴が噂の発信源って事が明らかになっていると、こりゃいかんとオリ主ちゃんが名乗り出ます。そうなると
天之河「親がいなくて今まで人に傷つけられてきたからって、そんな人を傷つける嘘をついちゃいけない。厳しい事を言うようだけど、卯代さん、君のために言ってるんだ!」
みたいな事言って恵里にぶん殴られる展開もあったかもしれません
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