ありふれた転生者は後ろにいる 作:新くさや
ぬをっ!? 寒っ!
「恵里、やめて。寒い」
――えぇー。折角御麗に訓練の成果をお披露目しようとしてるのにー――
「いやもう分かったから。マジで背筋ゾクゾクすんねん。あと身体操ろうとすんな、はよやめろ」
――ちぇー、御麗だって僕の身体弄んだのにぃ……分かったよ――
人聞きの悪い事言わんといてくれます? ようやっと霊体を使っての分霊が作れるようになったからってはしゃぎおってからに。
にしても、やっぱり私も霊体憑依の適正? あるんだな。霊体も見えるし声も聞こえるし感情ガンガン伝わってくるし。いやこれ恵里がぶつけてきてるだけか? やめんか。
「どうだった? 御麗。うまくいったと思うんだけど」
「あー、うん。めっちゃ背筋ゾクゾクすんのと鳥肌びっしりなるん以外は私と同じやと思うわ。ステータスも上がっとったし」
「くふふ。それは良かった! ねえ、御麗。ところでさ……霊体と生体って、合わせたらどうなるか気にならないかい?」
ぬるくなるんじゃないですかね。
いや、温度の話してるわけじゃないのは分かってるが。
「反発するんか、混ざり合うんか……気にはなるけど、ちょっと怖い気もするわ」
「僕はねえ、合体して僕らとは別の存在になったりしないかなって期待してる。それってもう僕らの子供だよね?名前をつけるとしたらなんてつけようか一文字ずつ取って
背筋がゾクゾクした(本日二回目)正直吝かではないけども。
そんな簡単に新たな生命が生み出せてたまるか。後私の名付けはダサくない。ほんとに(念押し
まあでも……
「そんなに気になるんやったら、合わせたるからちょっと恵里の生体剥がしてみよか」
「あ、ちょっそんな強引にっ! あっ、アァーッ!」
はい。
うんまあ、恵里の霊体分霊と生体分霊はしっかり合体した。どっちもステータスの五割ずつ抜き出してしまっては、本体やばいのでは? とも思ったけど、恵里のステータスは五割減のままだった。じゃあ合体した分霊はどうなったのか? って思ったら、なんか霊体と生体と
うーん……とりあえず魔力持っちゃったら情報収集には使えないし、これは無しかな。魔力感知持ちはそれなりにいるからね。
とりあえず恵里には霊体の扱いに習熟してもらうとして。
「はーい。あ、そうだ……んふふ。待ってなよお、鈴」
私が今やるべきことはなんだろうか。
目標を再確認するとすれば、恵里と私、鈴が全員無事に日本へ帰る事だが……そのための前提条件として、まず強くなる事。
これは期待薄だが、教会に示された条件を達成する上でも、あるいは自分達でなんらかの帰還手段を見つける上でも必要な事だと思う。
強くなる度にこの世界に順応していって、ついには帰れなくなる、なんて事が無ければだが。これは考えてもどうしようもない。餌を待つヒナのように、誰かに救われる事を待っていたところで救われるほど、現状は私達に優しくない。
ではその手段はどうするか。
今現在知っている情報においては、訓練で基礎を固め、迷宮などで実戦を重ねてレベルを上げる。という至極堅実な手段しか思い浮かばない。後はアーティファクトとやらを集めるくらいか。
……こんな悠長な事をしていて帰れるのか。という焦燥感も覚えるが……無事に帰ると願うのならば、堅実である事に間違いは無い。と思う。
はあ……とりあえずは、またクラスメイトでオルクス大迷宮に実戦訓練に行くという話があるので、それに同行する事にする。不穏分子に警戒は必要だが。
この間畑山さんが教会に抗議したとかで戦闘メンバーが減ってしまったので、より一層身の安全には気を付けなければ。
それから別の帰還手段を見つける、という事だが。正直な所、王国内での情報収集には行き詰まりを感じている。少しずつ国外にも分霊を放っているが、まだ意識を同期したまま動かせる数はそう多くない。大体は待機状態だ。
そういう訳で王国内に放っている分霊を他に回したい訳だけども……一か所、まだ手を伸ばしていない場所がある。
――神山だ。
教会には降霊術師も多くいると聞いて、こちらの動きが覚られないようにあまり近付いていなかったが……もしかしたら私が気付いていなかっただけで、あそこに私達を召喚するための何かがあった可能性もある。
それを調査すれば、逆に帰る手段を見つける事も可能になるかもしれない。
神と、それを崇める教会のお膝元に潜入するなど、本当に心臓に悪いが……可能性が一番ある場所でもあると思えば、調べないわけにもいかない。
「ぴゃああぁぁぁぁぁ!」
ん? 遠くから鈴の悲鳴が聞こえたような……気のせいか。
さてやってきました神山。聖教教会総本部。
それなりに人がいるので、壁の中やら天井の中を通って……うわなんやあの銀髪美少女修道女。ちょっとありえないくらい生体エネルギーを感じるのだが……? まさかあれが神だったりするのだろうか。クラスメイトとか勇者と比べても隔絶したエネルギー量の差を感じる。怖い。
「……?」
やばい、逃げよう。
ひとまず壁も床も無視して距離を取ったから大丈夫だと思うが……なんだこの通路……なんというか、薄暗い。掃除は行き届いてるようだが……人気も無いようだし、何やら後ろ暗い事でも隠されてるのかもしれん、調べてみるか。
ぬ? 何か今、違和感を覚えたような……? ……とりあえず部屋に行き当たったが、エヒト像? 非常に精巧な作りをしているが……これだけ、か。禁書庫的なものでもあれば、と思ったのだが。
うーむ……壁の中を調べても隠し通路なんかも無いし、なんなのだこの部屋は。エヒト像……触れるのも何か嫌だが、調べてみるか。
んん、台座の底に何か書いてあるな。なぜこんな所に……?
〝神の似姿に不遜を働きし者〟
〝汝の過ちに、神はお嘆きになるだろう〟
〝神の許しを得たいのなら、神の似姿をお浄めし、過ちを悔いるがいい〟
〝神罰を恐れぬのなら、似姿を打ち壊し、試練への道に挑むがいい〟
なんだろうか。信仰心矯正部屋? うーん……そりゃあ信仰の対象の像を打ち壊したら大層試練だらけの人生になるだろうけど。
わざわざ"打ち壊せ"なんて。少し、気になるな。
原作では試練挑戦の条件ははっきり示されてないんですよね
映像体が出現して案内する条件は二つ書かれてましたけど
なのでうちでは試練挑戦の条件をゆるく捏造しておきます