ありふれた転生者は後ろにいる 作:新くさや
いったいどこまで続いているのやら。
どれだけ月日が過ぎたかも分からないが、あのウサギと狼と熊の階層からもう五十以上は階層を降りているはず。
結局あの階層では上階への階段は見つからなかったし、最初に落ちてきた水流を逆進する事も出来なかった。ある程度の高さに至ると、魔力が霧散するエリアがあるのだ。分霊もしかり。折角ちまちま生体をかすめとって溜め込んで作った分霊が消え失せた時は泣きそうになったぞ。
今にして思えば、エリア全域を探索したのは最初にいた階層だけだったが、一旦下に降りないと上がれない別のルートがあったりしたのだろうか? それも確かめるには遅すぎる気もするが。
水流に流されないと来れないエリアなんてさすがに設計しないだろうし……いや、これはゲーム的思考か。ゲームなら隠しエリアとか裏ダンジョンとかあるけども。
そもそも迷宮とは自然物だったか人造物だったか……
「さながらパンドラの箱かな? ……せめて希望が入ってるならいいんだけどね」
む? ああ、遂にあの扉の中に入る事に決めたのか。
ここまでゴツゴツした岩肌ばっかりの所に、いきなりこんな扉があったんだものなあ。思わず私も南雲と一緒に呆然としてたね。
ようやく迷宮の最奥にでも辿り着いたのかと思えば、下に降りる階段があったんだよなあ……はっきり言って、中に何があるのか全く見当もつかない。
とはいえ、迷宮脱出の鍵になる何かがあるのでは? という期待もちらつく。南雲がパンドラの箱と言うのも頷けるところだ。
「何だろう、この魔法陣。結構勉強したつもりだったんだけど、こんな式見た事無い――相当古い、ってことかな……?」
ふむん。まあ、南雲が知らない式を私が知ってるはずも無いんだよなあ。
「仕方ない、いつも通り錬成で行くか――うわっ!?」
ぬっ! さっきまで敵の反応は無かったはずだが……この石像、敵か!
「敵……排除する」
あ。っと言う間に終わってしまった。いささか哀れみすら覚える。まあ精々糧となって役に立ってくれ。なむさん。
鍵は石像の魔石だったか。どういう仕組みになってるのか全然分からんぞ。
さておき、扉の奥には何が……?
「だれ……?」
ファッ!?
「
なんだ? 暗いが、〝夜目〟で……金髪ロリ? ぬう?
「なんだ、卯代さんじゃないのか……はあ……失礼しました」
いや、ええ……?(困惑
南雲は
「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」
「えぇ……嫌です」
うわ嫌そう。分かるけど。
「ど、どうして……なんでもする……だから……」
え? 今なんでもするって
「うーん……いや、だってこんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されてる女の子って……何で生きてるのかも分からないし絶対ヤバすぎる。見たところ封印以外何もないみたいだし……えっと、君、脱出手段とか知ってたりする?」
「え? わ、わからない……封印されて、気付いたら……ここにいた」
ふむーん。まあ、解放したら世界が滅びました。なんて事になっても困るしなあ。私達が帰還した後だったらいいけど。
「そっかあ……じゃあ、そう言う訳で。今後のご活躍をお祈り申し上げます」
お祈りメール……就職……面接……うっ、あたまが!
「こ、こんご? ……ハッ。ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……――裏切られただけ!」
む? 南雲は話を聞くつもりなのか。確かに金髪ロリ美少女だが。
まあ、実は人型の魔物で罠でした。なんて事もあるかもしれないけど……わざわざこんな怪しい置き方はしないかなあ。
生体エネルギー的には衰弱しきってるように見えるし、今の南雲なら対処はできるか。一応触手でいつでも弱体化出来るようにしとこう。
「どうしようか? 卯代さん……」
……ほーん。先祖返りの吸血鬼。高い不死性に魔法陣いらずかあ。めっちゃ衰弱してるように見えるけど、ほんとに死なないのかね? 今なら火付けたらそのまま逝っちゃいそう。
わあ、南雲助けちゃうのか。飢餓状態の吸血鬼からしたら御馳走になっちゃう気がするけど……あー……飢餓状態かあ。自分に重ねちゃったんかねえ。
魔力がごりごり減ってってるー……再生するなら腰から切り離したらそこから再生するのでは?
あ、解放された。さて、金髪ロリ美少女吸血鬼の選択は……――!?
――南雲、上ッ!!――
「!? ――ッ!」
これやべえやつだわ。
「……信じて」
ああもう、かったいな!
外殻に厚みがあるのか、錬生もほとんど届いてないっぽいし! 腕二本はしばらく使い物にならなくしてやったがな!
南雲何話しとんの!? しっかりしろー! ――あああああああなんか吸われてるうううぅぅぅぅぅ!
「んっ! く……ぅ、ふ、ぁっ、ん、ンンンン――っ!! ……ふぅ。ごちそうさま」
え、なんか南雲の血と一緒に私の生体も吸われたかと思えばビクンビクンしてツヤツヤになってるんですけどこの子。どういうことなの。
「〝蒼天〟」
あ、倒した。
開けちゃいけない箱を開けちゃった感