ありふれた転生者は後ろにいる   作:新くさや

18 / 34
裏も二話目


第18話 裏二

 

「……名前、なに?」

 

 ん? そういえば二人とも名乗りあってすらいなかったな。

 

「え? あ、ああ、そっか……ハジメ。南雲ハジメだよ。君は?」

 

「……名前、付けて」

 

 そうだな、ペットにはちゃんと名前を付けないと。いやもちろん冗談だが。

 

「もう、前の名前はいらない……ハジメの付けた名前がいい」

 

「えぇ…………あ、ごめんなんでもないです」

 

 重ぉ……南雲がんばえー。女の子のなまえきめるなんてせきにんじゅうだいだぞー……ある意味パパになるのでは? まだ未使用なのにパパ。

 

「どうしよう……助けて卯代さん(げんちょう)

 

 すまない。力になれない私をどうか許してくれ……!(笑

 

「えぇと……じゃあ、〝ユエ〟なんてどうだろう? あんまりネーミングセンスに自信ないから、気に入らなかったら別のを考えるけど……」

 

「ユエ? ……ユエ……ユエ…………んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

「うん。あー……えっと、その……取り敢えず、これでも着ててくれる?」

 

「?」

 

 ふむ。ユエちゃんか。眼福でした。どうもありがとう。

 

「……ハジメのエッチ」

 

「……ははっ」

 

 

 

「そうなると、ユエの年齢って……」

 

「……じー」

 

 ロリババアという事だな? ……うん、イケる。

 

「えー……っと、吸血鬼って、皆そんなに長生きするものなの?」

 

「……私が特別。〝再生〟で歳もとらない……」

 

 ふーん……二百歳。なんかこう……吸血鬼にしては短いと思ってしまうのは、日本文化の悪い所なのだろうか。

 そういえば、エルフに関してはもっとずっと長い寿命があるという話だったが、それだけ長い時を過ごしていたのなら、何か良い情報を持っていたりしないだろうか? 私達のような存在とか。それが帰れたのかとか。まあ期待薄かな……一応帰還出来た時覚えてたら訪ねてみようか。

 

「――……この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

 

 うん? 作った? ……この迷宮を?

 

「反逆者……神代に神に挑んだ神の眷属のこと。……世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

 

 ほーん……眷属に裏切られてやんのエヒトざまあ。

 にしても、七人の反逆者と七大迷宮ねえ……全部伝聞調だからどれだけ信用していい話なのか分からないが、迷宮の最奥にその者達の住処があると言うのなら、力の秘密の一旦でも残っているだろうか……? 反逆した神とやらがエヒトかどうかも分からないが、神に比する力があったと言うのならば、私達が日本に帰る方法も見つかるかもしれない……!

 

 ……まあ、期待半分程度に考えておこう。話のどこからどこまでが真実かも分からないし、今勇み足を踏むのも危ない。とらぬ狸のなんとやらだ。

 

「……そこなら、地上への道があるかも……」

 

「なるほど。奈落の底からえっちらおっちら迷宮を上がってくるとは思えない。神代の魔法使いなら転移系の魔法で地上とのルートを作っていてもおかしくないってことか」

 

 さっきは脱出手段を知らないと言っていたが、そもそもどこにいるのか分かってなかったなら、そりゃあ知らないよなあ。

 どっちみち進むしかなかったから最終的に結果は同じだったかもしれないが、少しでも希望が見えた事は望外の幸運だったかもしれん。南雲がユエちゃんを助ける事を決めて良かった。

 それに、こんな地獄のような場所で、独りでは無くなったという意味でも南雲にとっては良い事だっただろう。戦力的な意味でも心強いが。

 

「その……あんまりじっと見られてるとやり辛いんだけど……」

 

「……ハジメ、どうしてここにいる?」

 

 まあ、簡単に人が辿り着けるような領域じゃないからなあ。気になるのも当然と言えば当然か。

 

「……それは……ごめん。あんまり思い出したくない、かな」

 

「あ……ごめん、なさい

 

「あ、ああ、いや、こっちこそごめん……えっと、そうだね……色々……そう、色々あって、帰り方が分からなくなってね。今はそれを探してる途中だったんだ」

 

「……そう」

 

 空気が……重い……! 心なしかユエちゃんも怯えてるし。

 

「ハジメ……帰る?」

 

「え? ……うん。ここを出たところで、本当に帰りたい場所に帰れるわけじゃないけど……帰る。絶対に帰るんだ。こんな身体になっちゃったけど……故郷に……家に、帰りたい……!」

 

 そうだなあ。私も、あっちでやり残した事なんて、いくらでもある。必ず帰る……そういや本体どうなってるんだろう。多分大丈夫だろうと思って全然意識してなかったけど、もう二か月は軽く経ってるよなあ……

 

「? ……そう――……私にはもう、帰る場所……ない……」

 

「………………うーん……それなら、僕の世界に……いやでも、どうしよう卯代さん

 

 いやそこはかっこよく決めろよ。(げんちょう)に頼ってんじゃねえ。

 

「……?」

 

「あ~、うん……僕の故郷なんて、どうかな? まぁ、普通の人間しかいない世界だし、戸籍やらなんやら人外には色々窮屈な世界かもしれないけど……今や僕も似たようなものだし。どうにか誤魔化して……あくまでユエが望むなら、だけど、どう?」

 

「いいの?」

 

 あら可愛い。これは帰宅は恋人同伴かな? そんなにくっついちゃって。あらあら。

 

「……ハジメ……錬生(・・)師……?」

 

「え? 錬成(・・)師で合ってるけど?」

 

 うん?

 

「? ……錬成師、あってる?」

 

「錬成師、だよね?」

 

「……錬生師」

 

「?」

 

 これはあれだろうか。錬生師の事を聞いてるのだろうか? 日本語で表すと同じ音になるけど英語では違う、みたいな事になってる気がする。言語理解仕事しすぎ?

 でも何に気付いたんだろう。生体が見えてる様子でもないが。

 

「ハジメ……ぽかぽか……〝纏生(てんせい)〟?」

 

「てんせい……?」

 

「そういえば……ハジメ、濃い生体の味……した」

 

 うーん……? 所々よく分からないが、ぽかぽかってのは生体に触れた時に感じるという感覚の事だろうか。味は……あー、南雲が血吸われてる時一緒に吸われたなそういえば。

 口数が少ないから分かりづらいが……ふむん。吸血鬼の中には滅多にいないが、過去にいた錬生師の中に、私と同じような派生技能を持つ者がいたらしい。ちなみに降霊術師なら吸血鬼にも結構いたそうな。

 で、その錬生師は生体を増幅して、その生体の持ち主を強化するような使い方をしていたらしく、同じような感覚がする南雲も錬生師なのでは? と思っていたところで錬成ばんばん使ってるのが気になったらしい。聞き出すのにめっちゃ時間かかった気がする。

 

「生体……? それは……僕じゃ、ない。そうだ……あの時。あの時から、ずっと、あった……誰が……?」

 

「私も、くわしくない……でも……ずっと続いてるのは……へん」

 

変でもっ! なんでも、いい。ずっと……ずっと、助けてくれてたんだ。いつの間にか、当たり前になってたけど! ずっと、僕を支えてくれてた! この温もりが、僕を救ってくれていた! どうして……どうして、気付かなかったんだろう。僕は――」

 

――泣くな、南雲――

 

「――ッ!」

 

――私も奈落に落ち行く南雲を止められなかった身だ。分霊に過ぎないが、少しでも南雲を助けられていたなら本体の気も晴れよう――

 

「――……卯代さん(げんちょう)? いや、違う……そっか、そういう事、だったんだ……」

 

――私はほとんど南雲に宿っているだけで、ここまでこれたのも南雲、お前自身の力なのだ……自ら誇れ。前進め。私も南雲と共にある――

 

「うん……ありがとう、卯代さん。……ユエも、教えてくれてありがとう。ずっと、気付けないままだったかもしれない」

 

「どういたし……まして?」

 

 戸惑ってるユエちゃんも可愛いな。まあ傍から見ると幻聴と会話しだした怪しい人だからね。仕方ないね。

 ……ふいー。(げんちょう)を伝えるのも一苦労だぜ。

 

 ともかく、強力な魔法師も増えたし、意思疎通が出来るようになれば協力出来る事も増えるだろうし……油断は禁物だろうが、これなら――

 

 




分霊ちゃんなんでヒロインムーブしてるの??

ちなみに生体マシマシの南雲エキスはドーピングしたコンソメスープみたいな味わいだったとか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。