ありふれた転生者は後ろにいる 作:新くさや
「――〝嵐波〟……ふぅ」
よし、クリア。
次で確か六十階層だったか? よくもまあ八日でここまで来れたものだ。先人が六十五階層までの記録を残していたおかげではあるが。
今のレベルは……50か。身の安全を確保するなら、せめて70は欲しいが……まだ今しばらくはかかりそうだな。
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卯代御麗 17歳 女 レベル:50
天職:錬生師
筋力:150
体力:300
耐性:150
敏捷:225
魔力:600
魔耐:488
技能:錬生[+生体精査][+精密錬生][+生体探査][+生体操作][+生体剥離][+生体増幅][+生体圧縮]・風魔法適正[+魔力消費減少][+効果上昇]・合気術・夜目・遠見・先読・気配感知[+生体感知]・魔力感知[+霊体感知]・言語理解
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生体の圧縮――分霊を作ってから本体の生体を増幅して戻し、作った分霊を詰め込む事でステータスの向上を狙ったものだが……なんとかうまくいっているな。気を抜いたら弾けそうな気配があるのが難点だが。
しかし今の状態が生体に馴染めば、更なる圧縮によって飛躍的な強化が見込めるはず。魔力の上昇に加えて、錬生の習熟も継続して進めていくべきだな。
うわあ……こりゃまた見事な吊り橋で。それにこの断崖絶壁も、あの日の奈落を思い出すくらい底が見えない。
……なんか全員立ち止まっちゃったけど、やっぱりあの日の事でも思い返してるのかねえ。とりあえずトラップ確認してもらっていい? 飛行型の魔物も怖いけど、こんな吊り橋で召喚型トラップなんかが出てきたらと思うとおちおち渡ってもいられない。
「香織……君の優しいところ俺は好きだ」
え? なんだこんな所で告白か? もうちょっとシチュエーション考えろよ。
「でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、南雲もそれを望んでる」
うわあ。
「ちょっと、光輝……」
「雫は黙っていてくれ! 例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。……香織、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」
んん? んー……なんだろう、なんというか……駄目だ語彙が出てこない。素直に気持ち悪い。好きだったけど恋人がいた想い人が、事故で恋人失って傷心中の所を口説いてるようにしか見えない。ドラマとか漫画でよくあるよね。現実でやられるとこんなに怖気が走るとは思ってなかった。
「あはは、大丈夫だよ、雫ちゃん。……えっと、光輝くんも言いたいことは分かったから大丈夫だよ」
「そうか、わかってくれたか!」
しかし後衛組だからってまとまってたせいでこんなものを間近で見せられるとは。かといって恵里と二人で隊列を崩したらどやされそうだし。今後が思いやられる。げんなり。
「よくもまあ、あれだけ気持ち悪い事をぺらぺらと素面で言えるね。僕鳥肌が収まらないんだけど」
「私も。テレビのヒーローに憧れるチビをそのままおっきくしたような気色悪さがあるわ」
「え、ええと。ごめんなさい。光輝もあれで真面目に言ってるだけで、変に格好つけたりしてるわけじゃないのよ。あまり悪く思わないであげて」
聞こえてたか。というか、真面目に言ってるから気持ち悪いんだけどな。
八重樫ちゃんもいつまで周囲との摩擦から守っているつもりなんだろうか。天之河が現実と触れる機会を奪って、結果としてただ甘やかすような事になってるようにも思える。
まあ所詮高校を出たら交流も無くなるだろう人間に言おうとは思わないが。
「いえ、八重樫さんに謝ってもらうような事ではありませんよ。こちらこそ失礼しました」
「カオリ~ン! 鈴は応援してるからね! いつでもカオリンの味方だよ!」
恵里ともそうだけど、鈴は白崎ちゃんと八重樫ちゃんとも特に仲が良いからなあ。
「うぅ~、カオリンは健気だねぇ~、南雲君め! 鈴のカオリンをこんなに悲しませて! 生きてなかったら鈴が殺っちゃうんだからね!」
「どっちにしろ死ぬんだね。かわいそ」
「細かいことはいいの! そうだ、死んでたらエリリンの降霊術でカオリンに侍せちゃえばいいんだよ!」
「鈴、君、デリカシーって言葉知ってる? というか、生存を信じてる白崎さんの事応援してるんじゃなかったの?」
降霊術で侍らせる、か。
霊体が残ってるならともかく、残留思念くらいしか残ってなかったら難しいんじゃないかねえ。それこそ恵里が〝降霊〟出来るようになれば別かもしれないけど、死後の魂魄がどうなるかは私達もまだよく分かってないからなあ……元の世界の話では天国と地獄に行くのが定番だけど。いずれにせよ現状では難しいと思う。
いやー、久々に遭ったベヒモスは強敵でしたね。
うん、まあメンバーは天之河組と永山組に一人欠けた小悪党組、それに私と恵里と、前回の半分くらいか? だっていうのに、思いの外割と苦戦する事もなく勝てたのは、ここまで順調にレベルアップしてきた賜物かな……
あんなん二十階層でトラップ踏んだからってぶつける相手ちゃうやろ。
――ん? あれ、なんか落し物見つけたような感覚が……って。
「……んふっ」
ベヒモス戦はばっさりカット
ぽかぽかしたりひやひやしたりする分霊がデバフ重ねたりバフばら撒いたりと原作より楽に終わってたもよう