ありふれた転生者は後ろにいる   作:新くさや

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第21話 表

 ――はあ? そんな理由で私達は王宮に戻らされるのか。まあ色々と準備したかったし、丁度いいタイミングではあるのだけど。

 これまで顔合わせを先延ばしにされてた、王国の同盟国である帝国の皇帝とやらが、オルクス大迷宮の攻略階層を更新された事に興味をもったらしくて、いい時期だから了承したって。なんでそれに付き合わなきゃならんのだ。

 まあ勇者がいれば満足だろうし適当にばっくれよう。

 

 あ、王宮に着いたか。

 

「恵里、行くで」

 

「うん」

 

「香織! よく帰った! 待ちわびたぞ!

 

 なんかちっこいのとすれ違ったけど、白崎ちゃん目当てらしかったからまあいいか。とっとと部屋に戻って恵里と話し合おう。

 

「あら。御麗さん、恵里さん、お帰りなさいませ。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

 

 あー、ちょっとめんどくさい子に会ってしまった。

 

「これはリリアーナ姫。お気遣いいただき、ありがとうございます」

 

「そんな、リリアーナ姫なんて。リリィでいいと申し上げていますのに」

 

 やめろーわたしはしょうしみんなんだそんなことできるかー。だからって王侯貴族に対する正しい礼儀作法なんて知らないけどさ。

 

「いえ、そのような恐れ多い事、私にはとても……ご容赦ください」

 

「まあ。お気になさらないでよろしいのに……ひとまず、それはさておきましょう。お二人とも、お疲れ様でした。お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず」

 

「過分なご配慮に感謝します。では私は恵里と話し合う事がありますので、これで」

 

「あっ……」

 

 王族の割に私達の召喚に思う所があったのか、何かと交流を持とうとしてくるんだよねえ。金髪美少女だし良い子ではあるんだろうけど……ね。よし部屋に到着。とりあえず荷物を片付けて、と。

 

「ほんならちょっと待ってな――〝分霊錬生〟――〝憑依〟」

 

「ンぅッ!」

 

――その顔やめんか。とりあえず聞こえとるな? こっからは分霊越しの会話で頼むわ――

 

――んふふ……了解。それで、御麗がここまで警戒してるって事は、決めたのかな?――

 

――そ。こないだ霊体引っ張り出すん手伝ってもうたやろ? あん時は失敗した思とってんけどな、どうもそういうわけちゃうかったらしい――

 

――うん? ……ああ、あの時か。それで?――

 

――なんや一時的に隔離された迷宮に飛ばされとったみたいでなあ、同期が外れたんで失敗やー思てんけど、隔離された上で分霊の方にも意識が残っとって、そのまま攻略してもうてん――

 

――迷宮? あれ、待って。あの時確か神山に向かわせたって言ってなかったっけ?――

 

――合うとる合うとる。いかにもうっさんくさい部屋があってなあ。そこにある仕掛けを動かす事で迷宮に転移するみたいなんやわ――

 

――ふーん……それで、その話をするって事は、そこで動くことを決めるだけの何かを見つけたって訳だ――

 

――ん。まあこれも絶対確実な情報ってわけやないけどな。少なくとも恵里にも後で行ってもらうつもりや――

 

 先日のベヒモス討伐後、外れていたはずの同期がいきなり復活して記憶が統合されたもんだから、一瞬放心してしまったが、持って帰ってきた重要すぎる情報に思わず含み笑いを漏らしてしまった。

 

 ――〝神の遊戯〟に七人の〝解放者〟。そして〝神代魔法〟に〝七大迷宮〟。

 ラウス・バーンとやらが残した手記にはまあ色々と書いてあったが、私の出した結論としては、もはやどちらが嘘でも真実でもどちらでもいい、だ。

 あそこで得られた魂魄魔法と、他の大迷宮で得られるであろう神代魔法。それさえ得られれば、欠片の信用も出来ない神の言いなりになって救いを待つより、よほど帰還の可能性が信じられた。

 

――なるほどね。それじゃあ今後は他の大迷宮を攻略してまわって、神代魔法を手に入れていくって事でいいのかな――

 

――そういう事やな。ひとまず恵里には石像を自壊させられるようになってもうて、魂魄魔法を手に入れてもらう。問題はオルクス大迷宮やな……あっこはどうにも分霊で行けんエリアがあるみたいで、神山みたく監視の目を盗んでってわけにはいかんっぽいねん――

 

――そうなると直接本体で攻略しないといけないわけだ……どうするの?――

 

 オルクス大迷宮に関しては本当に悩まされる。

 解放者と神の関係性を考えると、とてもではないが騎士団を同伴させるわけにはいかない。

 ただそうなると、百層はあると見られている往復路の食料はどうするのか、という話がまず出てくる。実戦訓練で潜っている今のメンバー数でさえ、六十八階層まで行くのに二週間近くかかっているのだ。仮に私と恵里、そこに鈴を加えたとしても、二、三か月分は最低でも準備しておきたい。更にその食料はどう用意するのか、という問題も出てくる。

 いくらか金銭を渡されてはいるものの、現在私達は何から何まで王宮に用意されている身分で、それだけの金銭なり食料なりを求めたりしたら当然怪しまれるだろう。そしてそもそもどうやって持ち運ぶんだという話である。荷車を守りながら迷宮攻略などやってられるか。

 

 最善はクラスメイト全員説得して、秘密裏に役割を割り振って一気に迷宮を攻略。その後王国を離脱して各地の大迷宮攻略だろうか。ばれなきゃいいね。

 そもそも説得出来る自信が欠片もありませんし……天之河だけには話すわけにもいかない。あいつ絶対、神を打倒してこの世界の人たちを助けるんだ! みたいな事言うぞ。あの銀髪美少女すら倒せないであろう私達が何を救えると言うのか。

 その銀髪美少女修道女の事もなあ……正直レベル100になっても、生体エネルギーが一割届くかくらいじゃないか? 恐らくは手記に記されていた神の眷属だか使徒だかだと思われるんだが、あれ一体とは思えないし、あれ一体だけでも私達全員を打倒しうる可能性が高い。団体行動などしていたら、私達の動きなどあっという間に捕捉されるだろうに。

 

――まあそんなわけで、現状オルクスの完全攻略は後回しにせなあかんかなあ……まずレベルをなるべく上げる事。そして何らかの強化手段を増やす事。各地に分霊を放って、可能であれば攻略して神代魔法を手に入れる事。ほんで、勇者が十分成長したって判断されたら魔人族との戦争に投入されるやろうから、いつでも抜け出せるように準備しとく事。こうやって並べると、クラスでのオルクス攻略に同行しながらこそこそ動くっちゅうんが一番ええんかな思うわ。業腹やけど――

 

――分かったよ……鈴は、どうする?――

 

――うん……鈴に関しては私も迷っとんねんなあ……解放者らの話なんてしたら、あん子絶対白崎ちゃんとか八重樫ちゃんが心配で離れられなくなんで――

 

――だよねえ、僕もそう思う。あの二人は?――

 

――んー……あの二人に関しても、天之河が枷になるんちゃうかな……特に八重樫ちゃん。白崎ちゃんはそもそも南雲の件があるし。恵里、説得できる?――

 

――無茶言わないでよ。クラスじゃ僕、鈴くらいとしか接点無いのに。御麗が無理なら僕に出来るはず無いでしょ?――

 

――せやろなあ……しゃあないか。戦力不足は否めんけど、抜け出すんは二人でしよか――

 

――……うん――

 

――っちゅーても鈴ほっとくんも心配やからな。私と恵里で完全体の分霊一体ずつ憑けといたろ。そんなら天之河なんぞよりよっぽどつよなれんで――

 

――ふふ……そうだね、それくらいしとかないと寂しがって泣いちゃいそうだ――

 

――それどっちの話? はいはいごめんて。そろそろ風呂と飯済ましにいこか。細かい話はそん後で――

 

 抜け出した後は王国から捜索の手が回るだろうけど、魂魄魔法で誤認させれば、間接的な手段で見つけ出すのは困難になるはずだ。問題はあの推定神の使徒が追ってきた場合だが、とにかく今は魂魄魔法を磨いて捕捉されないようにするしかない。

 どのみち神の手を逃れるのなら、いずれはあれと相対しなければいけないかもしれないのだ。

 

 私達は絶対に、孤児院(うち)に帰る。邪魔はさせない。どこまでも逃げ切ってやるとも。

 

 




とりあえず今後の方針決定?
ノイントちゃんらしき銀髪美少女を認識してしまっているので、なるべく慎重にという感じ
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