ありふれた転生者は後ろにいる   作:新くさや

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第23話

 この迷宮の最深部に辿り着いてから、はや二か月かあ。人工太陽のおかげで久しぶりに時間の感覚を思い出せた気がする。

 

「さて、卯代さん、ユエ。僕らはこれから待望の地上に出るわけだけど……僕の武器とか、僕らの戦闘能力は、地上でははっきり言って異常だと思う」

 

 だなあ……

 

「ん……」

 

「出来るだけ隠していくつもりだけど、いつかは絶対ばれる時が来ると思うんだ」

 

 隠す事に気をまわしすぎて危機に陥っても馬鹿らしいしな。

 

「ん……」

 

「その時は、国や教会が何か理不尽な事を強要してくるかもしれない。でも、僕はそれに応じるつもりは無い」

 

 死にもの狂いで手に入れた、南雲自身の力だ。誰に憚る事も無い。

 

「ん……」

 

「それに加えて、僕らが神代魔法を集めていくうちに、神やその手下に目を付けられるかもしれない。きっと、数え切れないくらいの障害が、僕らの前に立ちはだかるんだと思う」

 

――なんだ、今まで通りじゃないか――

 

「今更……」

 

「はは、そうだったね。今まで通り、僕がユエを、ユエが僕を守る。そしていつでも卯代さんが二人を手助けしてくれる。これで僕らは何にも負けない。これから立ちはだかる障害――全てを排除して、世界を越えよう」

 

――随分と期待が重い気がするが、応えて見せよう――

 

「んっ!」

 

 

 

「せっかく待望の地上に出れて感動に浸ってたのに、水を差さないでほしいよ」

 

 転移先が洞窟だとわかった時は、目に見えて肩を落としていたからな。さもあらん。

 私も久々の地上には感慨深いものがある……が! 転移した瞬間、憑依させてへんかった分霊が全部弱体化したんなんなん!? こんだけの数揃えんのに、どんだけ南雲の生体と時間が掛かったと思ってんだおるるぁぁん!

 

 くっそー。洞窟から出て分かったけど、ここライセン大峡谷っぽいんだよなあ。魔力は分解されるって話だったけど、まさか生体もそうだったとは。

 なんとか気合で分解を遅らせて無理矢理南雲とユエに詰め込んだけど、やっぱ大分分解されてるなあ……かなしい。

 

「うーん……?」

 

「……どうしたの?」

 

「うん、ライセン大峡谷の魔物って、かなり凶悪だって聞いてたからさ。その割にあっけなく終わっちゃったから、別の場所だったりしたのかなって」

 

「……ハジメが化け物」

 

「ひどい! ……でもまあ、奈落の魔物が強すぎたって事なのかな……卯代さんもそろそろ落ち着いた?」

 

――私はずっと落ち着いてますけど――

 

「あっはい」

 

――まあいい。いやよくないが……それで、これからどうする? まさかこんな所に繋がっていたとは思ってなかったが――

 

「えっと、うん。この峡谷もだけど、抜けた先の砂漠と樹海、どっちにも大迷宮があるらしいんだよね。ただ、食材だけなら山ほど備蓄しておいたけど、調味料も欲しいし、いい加減まともな料理も食べたいかなって……だから、ひとまず町を目指すとして、どのルートがいいのかって話になるんだけど」

 

――ふむん。まあそういう話なら二人の好きにするといい。私はそういった生理的欲求を感じなくなって久しいからな。ユエはどうだ?――

 

「ん……ハジメにまかせる」

 

「了解。じゃあ、そうだね……峡谷の大迷宮が無いか、探索しながら樹海側に向かおうか。さすがに砂漠横断はね……」

 

 一応断崖も登れない事も無いだろうが、方角は分かっても現在地は分かってないからな……町を見つけるには少し面倒だ。

 

 

 

――んー……? なんか魔物に追われてる奴がいるな――

 

「え? あ、ほんとだ。人がいないと思って魔動バイク出してたのにな……しょうがない。ユエ、降りて」

 

 分霊は分解されてしまうから偵察に出せないが、遠見のおかげでなんとか先手が取れるな。拡視とかいう派生技能も生えて、より詳細に分かるようになったのは助かる。

 

「……むう」

 

「あはは。まあしょうがないよ。隠せるうちは隠しておいた方が、面倒事もある程度回避できるはずだし」

 

――私も基本的にそう思うが、今回はすごい勢いでこっちに向かってきてるぞ。いっそそのまま通り過ぎていた方が良かったかもな――

 

「えぇ……何だろ? あれ」

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

 うわあ。美少女っぽいのにひでえ表情。

 

「あ、ウサミミだ。兎人族かな? とりあえず話聞くついでにちょっと助けてくるね」

 

「……えー……」

 

 私としてはどっちでもいいけど、ユエは嫌そうだねえ。まあ第一村人()だし、土地鑑あれば助かるかな? 魔物から逃げ回ってる時点で、ここに住めてるようには見えないけど。

 おー……徒手空拳も一応様になってるな。普段は銃使ってるから蹴りがメインか。手が空くんなら合気も仕込んでみようかな。ステータスで圧倒できる相手ならいいけど、拮抗するなら技術が勝負を分ける事になるし。

 ああいや、拮抗するような相手なら銃使うか。まあいいや。

 

「助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

――うわあ……――

 

「……図々しい」

 

「えっと、とりあえず、離れて……?」

 

 ウサギではなく、スッポンだったのだろうか。南雲にしがみついて離れない。

 姓に卯と入っているからといって、これの仲間になりたくはないなあ……

 

 

 

 ほーん……忌子に生まれて亜人国を追われ、帝国の奴隷狩りに追われてライセン大峡谷に、か。

 恨みに目を曇らせちゃってる感じだなあ、亜人国。忌子というか、どちらかと言えば神子として祀り上げられていてもおかしくないだろうに。

 人間族から差別視されてるのは、亜人族が魔力を持たないのが、神に見放されているからという理由だったはずだ。ではその中に生まれた魔力持ちは、唯一、神に愛されている者という事になるのではないのか。あるいは、これから亜人族に魔力持ちが生まれてくる希望となったかもしれない。

 ……まあそもそも、これまで手を差し伸べてこなかった神に対する信仰心なんて、欠片も無いんだろうけど。

 

「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

「うーん……二人とも、どうしようか?」

 

「二人とも、です?」

 

 この世界の事は二の次だと言っていたが、さすがに目の前でこうも縋られると思う所があるのだろうなあ。

 複数の勢力に狙われていて、しかも集団とか、どう考えても厄ネタでしかないが……

 

「……私達に、助ける理由……ない」

 

――私も似たような意見ではあるが、南雲が助けたいと言うなら、理由くらい作れるぞ――

 

「んー……卯代さん、一応聞かせてくれる?」

 

――そうだな……まず、私達の目的地の一つに、樹海の大迷宮があっただろう? あそこは迷いの森と言われているが、私達はなんとでもなると考えていた――

 

「うん。通った所を更地にしながら進んでもいいし、錬成で道を作りながら進んでもいいかなって」

 

――私も分霊をばら撒いて山狩りよろしく探せばいいかなとも考えていたのだが……亜人族以外では必ず迷うという話。必ず、だ。逆に何故亜人族でなければいけないのか不思議に思わないか?――

 

「それは、確かに。天職持ちなら僕と似たような事も出来るだろうし、技能次第で亜人族以上の五感を持つ人間だっていてもおかしくない。人海戦術を使えば迷うも何もなくなる……もしかして、解放者が……?」

 

――まあ他に何かの理由があるかもしれないが、私は解放者の手が入っているのではないかと考えている――

 

「あのう……あの方は何とお話してるんでしょうか……?」

 

「……だまってて」

 

――となれば、亜人族の案内は必須になってくるわけだが、はたして人間族と敵対している奴らが、素直に私達を案内してくれるだろうか? 別に力で従えてもいいし、何なら奴隷を買って案内させてもいいが、どうだね?――

 

「そっか。どの手段をとっても、結局亜人国とは敵対関係になる。それなら、恩を売って協力的な案内を味方につけた方がいいって事だね?」

 

――うむ。ついでに言うなら、集団である事を活かして、この大峡谷の迷宮を探させるという事も出来る。小分霊程度でも憑けてやれば、ここの魔物には十分通用するだろうしな――

 

「……うん。ありがとう、卯代さん。決めたよ。えっと、シアさん、だっけ? 僕らに君達ハウリア族を雇わせてくれるかな? その間は君達の安全を保障するよ」

 

「あ、ありがとうございます! うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~。 やっぱり、守ってくれるって見えたとおりでしたぁ」

 

「……むぅ? ……どういう意味」

 

「え? あ、はい。〝未来視〟という固有魔法を持っていまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ! 〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし! 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」

 

「そんなすごい固有魔法を持ってたのに、どうしてバレたの? 危険を察知できるなら、フェアベルゲンの人達にもバレなかったんじゃ?」

 

「うっ……じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」

 

「バレた時、既に使った後だったと……タイミングが悪かったんだね。一体何に使ったの?」

 

「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして……」

 

「ただの出歯亀じゃないか……! ……卯代さん、僕、間違えたのかな……?」

 

――ペットは拾い主が責任もって面倒見たまえ。私は知らん――

 

「そんなー」

 

「ハジメ……がんば」

 

 美少女は美少女でも残念美少女だったか……今は薄汚れているが、磨けばユエ並に輝きそうな素材なのになあ。

 

 

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