ありふれた転生者は後ろにいる 作:新くさや
熊に狐に鳥? にドワーフっぽいちっさいおじさん。猫耳がいないにゃあ……虎耳はいるけどこれはちょっと違うんだよね。一応ネコ科のはずなのに何でこんなに違うんだろう? まあどちらにしろ、こんなむさくるしい男達に囲まれるのは御免こうむりたい。
エルフの長老だというアルフレリックがいるのだから、とハウリア達に手出しを控えさせたが……これは無理そうですねえ?
「何が精霊! 何が口伝だ! どちらも眉唾物のおとぎ話ではないか! フェアベルゲン建国以来一度も我らの前に姿を現したことなどないではないか!」
「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする……それに、私は精霊様について知りたい。お前は感じぬのか? あの眩いほどの生命の輝きを」
「……何を言っている? 耄碌したか、アルフレリック! いもしない幻想の産物を語り、風化寸前の掟を持ち出して人間に味方し、あまつさえ忌み子とそれを匿った裏切り者の一族を放置しておくなどと……!」
んー? なんだろう。そういえば虎人族に威圧した時はともかく、その時以外は分霊の存在に気付けなくてもおかしくないんだよね。
このエルフはどうして私の分霊を感知出来ているのだろう……というか、よく見たら長老だけじゃなくて他のエルフも少なからず分霊に意識を向けてるような気がする。
もしかしてエルフは亜人族の中で、比較的に霊的な素質に優れているのだろうか? 確かにゲームとかファンタジーな小説ではよく精霊と交流してるけども。
「もはや言葉を交わす必要もない! 資格者というのならば、今、この場で試してやろう!」
あー。さっさと威圧して抑えとけば良かったかな。流石に手を出されたらなあ。
「ふうん……じゃあ、お前は敵って事でいいんだね?」
いやあ、亜人族は強敵でしたね! まあ南雲が熊人の男を蹴り倒して威圧垂れ流しただけなんだけども。
――もう面倒だし互いに不干渉って事で収まらんかなあ――
「だね。どっちにしろ十日後まで目的地には行けないわけだけど……その間ずっとこんな雰囲気の中っていうのも居心地悪いし」
「精霊様はなんと?」
アルフレリックはもう、なんかずっと精霊様に興味津々って感じだなあ。
「え? ああ、もう互いに不干渉の方が良いのではないか、と」
「……何が精霊様だ! 我らの仲間に危害を加えておいて、そちらの要求が通るとでも思っているのか?」
「はあ……資格者かどうか試すと言って向かってきたのはあの男だよ? 僕はそれを返り討ちにしただけだ。それでも納得出来なくて掟とやらも守る気が無いって言うなら、もう長老やめたら?」
「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」
「国のことを思って行動した結果、わざわざ敵に回す必要の無い人間を敵に回してたら意味無いんじゃないかなあ……」
――まあ向こうからしたら、敵対してる人間族がうさんくさい掟の事を知った上で潜入してきてるように見えるだろうし、信用出来ないっていうのも分からないでもないけどな――
「あはは、確かに」
「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。ジンも死んだわけでも無し、それこそ彼を敵に回す必要はあるまい」
「確かに、この少年は、紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」
実力というほどのものはまだ見せてない気がするが。それでも敵対は避けたいくらいには思ったのかね。
でも、その程度の認識なら……この場での戦闘だけ避けて、裏で兵を集めて闇討ちとかしてきそう。狐人で腹黒そうだし(偏見
「南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える……しかし……」
「絶対じゃない……と?」
「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回昏倒させられたジンの種族、熊人族に関しては……目を覚ましたアイツ自身が率いて襲いに行く可能性すらある。アイツを除いた長老衆の決定を伝え、説得するつもりではあるが」
「えっと、それで?」
「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」
「……まあ、十日は動けないわけだし、邪魔というほどでもないけど……卯代さん、どうしようか?」
――殺意満々の相手に情けを掛けたところで、後々の禍根にしかならなさそうだけどなあ……聞かなかったら聞かなかったで、無駄に火種が増えそうでもある――
「そうなると全面戦争かな?」
――おい変なとこだけ口に出すな。念話使え念話。あいつらすごい戦慄した顔してるぞ――
「え? ああ、ごめん、どうぞお気になさらず」
「ど、どういうつもりだ? ……もしや、精霊様がそう言っておるのか?」
「アルフレリック……お主、いつまでそのような世迷言を」
アルフレリック完全に耄碌爺見る目で見られててウケる。
「卯代様とは今後の事を相談してるだけだよ。殺意ある者を生き残らせたところで、また僕らを襲いに来るだけなんじゃないかってさ」
「それは……しかし」
「――それが聞き入れられないと言うのならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな――ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」
――ほーん……? 仮にも私の配下に手を出す、と――
「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」
「シア! 止めなさい。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わないと、ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない――それに」
「そう、彼らは既に卯代様の精霊の民だ。あなた達が何と言おうと、差し出すつもりは無い」
お前まだその設定引っ張るんかい。差し出すつもりが無いってのは完全に同意するけどな。
「戯言を……既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」
「いや待て、ゼル。お前さん、精霊の民とは何だ? 何故ハウリア族が精霊様に認められた。この際だから精霊様について詳しい話を教えてくれぬか?」
「アルフレリック……!?」
「この際、ハウリア族は彼の奴隷ということにでもしておけばいいだろう……フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」
「……馬鹿馬鹿しい! いい加減にしろ、アルフレリック! まさか本当に耄碌したのか!?」
「ゼル。わかっているだろう。この少年が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑しようとすれば、確実に敵対することになる。それに、虎人族の部隊はハウリア族に容易く制圧されたのだぞ? その場合、どれだけの犠牲が出るか……長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」
「貴様は精霊とかいう幻想に惑わされているだけだろうが! 大体、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」
――おいこら南雲。お前が変な嘘つくからややこしい事になってるだろうが! どうにかしろ!――
「あ、あはは……えっと、シアさんを見逃すことについては今更だと思うよ? ――卯代様の使いである僕も、こうして魔力の直接操作が出来るし、固有魔法も使える。巫女であるこっちのユエもそうだし、祝福を受けただけのハウリア族は魔力操作は出来ないけど、全員が魔力を持ってる。あなた達のいう化物ってことだね。でも、口伝では〝それがどのような者であれ敵対するな〟ってあるんでしょ? 掟に従うなら、いずれにしろあなた達は化物を見逃さなくちゃならない。シアさん一人見逃すかどうかで議論したってしょうがないんじゃないかな」
――話を! ややこしく! するな!――
「え、ええっ!? ハジメさんとユエさんも私と同じだったんですか!?」
「ま、待ってくれ! ハウリア族全員が魔力持ちだと!? 祝福とは何なのだ、教えてくれ!」
うるせえ。
微妙に場が混沌としたけど、とにかく互いに不干渉という事で話がついた。
あと何故か森人族の半数以上が私の配下になる事になった……なんで?
ごめんね原作ハジメくん・・・大体君のせいにするとおさまりがええんや・・・
ちなみにシアはここまでの間全然絡んでなかったので魔力操作に関して初ウサ耳でした