ありふれた転生者は後ろにいる   作:新くさや

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第29話

 

 

お、おお、おおおぉぉぉぉぉ! 素晴らしい! これが、祝福……!

 

 せっかくの綺麗なエルフの顔が台無しに……アヘ顔はやめろ。

 

 結局森人族にも南雲がある事無い事吹き込みやがって、長老が希望者募ったら半数近くが私の下に付く事になったんだよなあ。

 霊的な素質が高いせいか、無駄に分霊の魂魄量に畏敬を抱いたっぽい。

 

 うーん……下に付くって言われてもなあ……ハウリア族は生活基盤が無かったから、自衛出来る能力とある程度の食糧支援で特に不満も出てないみたいだけど……アルフレリックの一族である森人族の半数ちょっとだけでハウリア族の数倍いるこれはどう養えばいいの……?

 ひとまず国は離れさせず、一族の集落で今まで通り生活させながら、必要な時だけ人を出させるって感じでいけるかな? ああ、ついでにハウリア族の食料支援もさせられんかな。今や精霊の民()で仲間同士なんですし。

 

 ハウリア族は引き続き手元で面倒みつつ、大樹に行った後で大峡谷の迷宮を探させて……その後は……うーん……引き連れて歩いたらどう考えても目立つよなあ。一人二人なら奴隷って言い張れるかもしれないけど。四十人はさすがにおかしい。

 いっそ魂魄魔法で種族誤魔化しながら冒険者でもさせるか? ハウリア族は亜人族の中では比較的自制出来る奴らだし、人間族の中でも活動出来そう……かな? 私の労力さえ考えなければ……

 でも、冒険者として活動させる傍ら、他の大迷宮の場所も探らせるのは有りと言えば有りかな。ほぼ全員魔法適正無くてバランスくっそ悪いけど。

 ああでも、それならエルフもセットで運用させたらバランスも悪くないかな? 魔力は無いのに何でか魔法適正持ちがほとんどだったんだよね。正に画龍点睛を欠いてる感じ。流石に魔力操作は持ってなかったけど、南雲に魔法陣を用意してもらって分霊の技能を貸与すれば、いずれは習熟して無詠唱で魔法を放てるようになるはず。

 魂魄魔法を覚えてからこっち、ほんとやれる事増えて助かるわ。

 

――という感じの事を考えてたんだが、南雲としてはどういうつもりで精霊様なんて法螺話を広めたんだ?――

 

「うん? えっと、魂魄魔法でそこまで出来るようになってたのは知らなかったけど、ハウリア族は元々危機察知能力と隠密能力に優れてたみたいだからさ。卯代さんの分霊で強化してもらえば、人間族の街中でも忍者みたいな活動させられるかなって」

 

――そういえばそうだったか……? なんか今は脳筋みたいになってるが……――

 

「あー、うん。強すぎる力に振り回されてるってやつなのかな? それか、"卯代様"に授かった力を、こそこそと振るうなんて出来ない! って思ってるとか」

 

――ええ……いやまあステータス的にはそれでもごり押し出来るからいいけども。分霊剥がしたらあっという間に全滅するんじゃないか? これ――

 

「あはは。でも、折角の隠密能力を活かさないのももったいないし、どうにか軌道修正出来ないか頑張ってみるよ。というか、今まで戦闘を避ける事にしか使ってなかったから、隠密能力をうまく活かせてないだけかもしれないね」

 

「……残念ウサギ族」

 

――正しく。それで、エルフ、じゃなかった、森人族はどうする?――

 

「もうエルフでいいんじゃないかな。いっそ亜人国全部精霊の国に出来ないかなって思ってたんだけど」

 

――お い――

 

「えっと、ほら! 祝福を与える相手は厳選すれば負担も減ると思うし! 亜人じゃないと必ず迷う樹海っていう環境が、何かあった時逃げ込む場所に最適かなって!」

 

――……んー……まあそれは一理ある、かな。結局のところ、エルフ族の半数ちょっとしか釣れなかったわけだが――

 

「思ってた以上に警戒心が強かったよ。魔力が得られるってなったら飛びつくかなって思ってたんだけど、やっぱり僕が人間族っていうのがネックだったのかな」

 

――それもあるんだろうけど、まあこれまで魔力無しで生き抜いてきたって自負心もあるんじゃないかねえ。うさんくさいのも確かだし……というか精霊じゃないし!――

 

「ん……大迷宮の運用に組み込まれてるだけなのに……自惚れてる」

 

「ま、まあまあ。それはまだ僕らの予想に過ぎないし……それで、冒険者だっけ? うん、いいんじゃないかな? 彼ら自身で生活基盤を整えられるし、人に紛れて活動範囲を広げやすい。大迷宮の探索もしやすくなるね」

 

――そうか。ならひとまず人間族の常識を教え込むか。それと魔力を運用した戦闘訓練かね――

 

「うん。魔法陣とか装備の用意は任せて」

 

「……魔法教えるの、手伝う」

 

――頼んだぞ。ユエも、ありがとう。頼む――

 

 んじゃあとりあえず大樹に向かうまでの十日間、詰め込みますか。

 

 

 

「ウシロ様の祝福を拒むだけでなく、その道を阻む愚か者……生きる価値無し、ですぅ」

 

「かつては仲間であったせめてもの情けだ、楽に死なせてやろう」

 

「脆弱……脆弱ゥ! 熊人族とはこれほどまでに脆弱であったか……!」

 

「ウシロ様ッ! ウシロ様ァ! 貴女に勝利を捧げますっ!!」

 

 (白目)

 

 この十日間、こいつらの訓練をしている間に襲撃は無かったから、このまま何事もなくどうにか行けるかなあと思ってたんだけどな。

 大樹に向かう道すがら、前々から予想されてた通り、熊人族の長老が部下を率いてやってきてくれましたねえ。あるー日森のー中ー?

 南雲に蹴り倒されたから実力差くらい理解出来たかと思ってたんだが、速攻で昏倒してたから頭からすっぽ抜けたのだろうか? 長老衆からも警告がいってるはずなのに、どれだけ直情的なんだ。

 

「ハジメ殿! 熊人族他、百余名、制圧完了しました! どうなされますか!」

 

「あー……うん。本当に邪魔っていうほどの存在でも無かったな……まあでも、長老会議の決定にまで逆らって僕らに干渉してきたんだ。それって賊と一緒だよね? 首謀者の長老……いや、元長老か。それだけ残して他は処分していいよ。それだけは長老衆に引き渡そう」

 

「ま、待てっ! 待ってくれ!」

 

「ん、なに? ……ああ、遺言くらいは聞く時間をあげてもいいよ。ほら、さっさとして」

 

「……俺はどうなってもいい。煮るなり焼くなり好きにしろ。だが、部下は俺が無理やり連れてきたのだ。見逃して欲しい」

 

「なっ、長老!? 何を言っておられるのです!」

 

「ジン様、それは……!」

 

「だまれっ! ……頭に血が登り目を曇らせた私の責任だ。兎人……いや、ハウリア族の長、それに人間族の者よ。勝手は重々承知。だが、どうか、この者達の命だけは助けて欲しい! この通りだ」

 

 わあ殊勝。でも負けが決まってから今更冷静になったって、ねえ?

 

「いや駄目でしょ。お前だけ死なせて他を生かしたら、それこそ復讐に動くんじゃない? いちいち数を揃えられたら面倒だし。それにお前は長老衆に渡して、あっちで処分ささせないとね――遺言は聞かなくていいみたいだし、やっていいよ」

 

 まあ最悪、復権してもっと数を集めてくる可能性もあるけど……さすがに今回で力の差を思い知ったと思いたい。

 元長老はハウリアに持って行かせるとして、ようやく大樹とご対面だ。

 

 

 

「ハジメさん、お願いがあります!」

 

「え? シアさん? えっと、何かな?」

 

 んん? 何だろ。とりあえず大樹は後回しって事で、大峡谷の調査をしてもらうよう頼んだんだけど。

 

「ウシロ様はハジメさんに協力していて、その目的を果たすためには力がいるのですよね? ……私はどなたとも知れない精霊様の、祝福の残滓を授かっていたようですが、その分、他の精霊の民よりハジメさんの力になれると思います! もちろん御使いであるハジメさんと、巫女であるユエさんには及びませんが、どうか!」

 

「シア、お前……なんと羨ましい事を!」

 

「ふふん! これならウシロ様の濃密な気配の傍でご奉仕できるですう……!」

 

 ええ……(ドン引き

 

「いや、大迷宮の捜索も大事な役目なんだけど……うーん、直接的な戦力が増えれば助かるのも事実かなあ……卯代さん、どう思う?」

 

――えー……まあ元々魔力の素地があった分、分霊の許容量も多いから、戦闘についてこれない事もないんじゃないかねえ。戦闘経験の少なさに関しては、三人で鍛えてやればいいし。まあお前の好きにしろよ、このハーレム野郎――

 

「ええっ!? いや、その、卯代さん!? べ、別に僕はそんなつもりは……!」

 

 だって実質ハーレムみたいなもんじゃん。しかも美少女が二人。その上、もうじき本体(わたし)と恵里もこっち来るし……言っとくが恵里は渡さんぞ。ついでに私もな。

 

 




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