ありふれた転生者は後ろにいる 作:新くさや
ふうん……王が教皇に傅く、か。
まあ地球でも似たような光景を見なかったわけではないから不自然ではないが、戦争中ともなれば尚更、教会の権勢は強まっているとも見れる。
反対派などはいないのだろうか……ぱっと見たあたりでは王の態度に不満を持っているような臣下の様子は見えない。まあこんな所で不満を見せるような反乱分子など、いたところで何のあてにもなりはしないな。
そもあのイシュタルの言う事を信じるとするなら、この国は神の眷属とやらが建国した国である。王族からして聖教教会の言いなりと見ていいのかもしれない。
仮に違うのであれば秘密裏に接触してくる事もあるかもしれないが……それもこちらの不穏分子を炙りだすための罠かもしれない。
――駄目だな。疑心暗鬼に陥っている。
私が元々疑り深いせいもあるが、この世界そのものを信用する事が出来ない。どうするべきか……
国が変われば食も変わると言うが、世界が変われば美意識も変わるのだろうな……日本であれば食に用いるべきではない色鮮やかな料理が並んでいる。
王族の人間も食している事から、毒や妙な薬物の警戒は必要ないと見るべきか。遅効性でないことを祈るが、どちらにしろ寄る辺の無い私達は食の提供を受けざるを得ない。
それにあまりに警戒しすぎる様子を見せてしまっては無用な注目も集めかねない……自分を納得させる言い訳ではあるが、歯痒いな。
ん、ノック? 部屋を与えられて間もないが、このタイミングで来るとなると……
「どなたですか?」
「僕だよ、御麗。入っていいかな?」
メイドかも知れないと思ったが、やっぱり恵里か。
「なんや恵里か。ええよ入り」
部屋に入ってきたかと思えば、なにやらごちゃごちゃと持っていた物を備え付けの棚やらにしまいこんでいる。
「ここ、一応私の部屋なんやけど……なにしとんの」
「え? 朝の身支度用品。僕の分置いとかないと」
はい。
「まあええけどね……恵里の部屋はどないすん?」
ずっと同じ部屋で過ごしてきたんだし、一人寝が落ち着かないのだろう。
「物置でいいんじゃない? 隣だし」
一部屋一部屋が無駄に広いし、普通に同室にしてもらえばいい気もするが……まあいいか。
ひとまず寝るまでにある程度の方針を共有しておこう。むにゃむにゃ。
「エリリン~エリリ~ン? あれ~?」
さて、今日は訓練と座学が始まるとの話だったが……ステータスプレートにアーティファクト? まるでゲームやライトノベルの世界だな。
血……遺伝子を取るのか。これで変な契約が成立したりとかしないよな?
いかん、また疑心暗鬼になっている気がする。ええい、ままよ!
===============================
卯代御麗 17歳 女 レベル:1
天職:錬生師
筋力:20
体力:40
耐性:20
敏捷:30
魔力:80
魔耐:65
技能:錬生・風魔法適正・合気術・夜目・遠見・先読・気配感知・魔力感知・言語理解
===============================
天職に技能、レベルにステータスねえ。
聞けばどの天職や技能も大体全て確認されているらしい。それって私達を召喚する必要あったのか? 私達のような一般人をわざわざ上位世界から引きずり落とすより、その力をこの世界で生まれた素質ある者に全部注いで鍛え上げた方がいいのではないのか?
いや、あの教皇は「勇者様、そしてご同胞の皆様」と言っていた。勇者の存在だけが必要だったのかもしれない……なんで外の世界の勇者である必要性があるんですかね。
ああもう、考えても仕方ない事ばかり考えてしまう。
しかしヨモツヘグイでは無いが、こうやってこの世界のステータスを見せられた事で、まるで自分がこの世界に組み込まれたようで正直気持ちが悪い。
「御麗、どうしたの?」
顔には出してないはずなんだけどなあ……
「これ。なんや自分が自分じゃあらへんみたいで気色悪いなって」
「それは……そう、だね。でも大丈夫だよ」
「うん?」
「御麗は御麗のままだ。ずっと一緒にいた僕が言うんだから間違いないさ」
あー。内面的な話じゃなくて肉体的な話だったんだけど……まあ、いいか。恵里がそう言ってくれるのなら、例えどれだけ元の肉体からかけ離れても、きっと私は私のままなのだろう。
「く、くふふっ。そやね……それやったら間違いないわ。ほんで、恵里の方はどうやったん?」
「ん? こんな感じ」
「降霊術師ねえ」
天職作った奴絶対性格悪いわ。
あれから二週間か。
基礎訓練に座学に実戦訓練とやらされてきたが、レベルが上がったり魔法を覚えたり技能がいくつか派生? したくらいで、あまり情報的な進展は無かった。
まあ仮に神に頼らずに帰還しようとするならば、まず間違いなく魔法的な手段が必要になるだろうから無駄ではないはずだけど……結局のところ、積極的に教えられるのは私たちに求められる役割である戦闘に関わる魔法や情報が主になる。教会、あるいはこの国の監視下にある限り、求める情報は手には入らないのだろうな……
何かしら理由をつけて外に出たい所だけど、護衛という名の監視がつく未来しか見えないし、まだ逃げ出して心象を悪くする段階かどうか。
さておき、だ。ひとまず王国外の事について調べてみるとしよう。
座学でもいくらか触れられていたが、もう少し詳しく知っておきたい。騎士連中に聞くのと本で調べるのはどちらが正解だ? いや、調べてから聞く方が建設的か。王国内にある本など、十中八九教会の検閲を受けているだろうから、どれだけ情報が正しいのか怪しいものだが。
「恵里。私今から図書館行ってくるつもりやけど、どうする?」
「うーん……訓練までには戻ってくるんでしょ? なら部屋で待ってるねー」
実戦訓練があった日から、恵里は少し沈みがちだ。
まあ無理もない。それが獣とはいえ、魔法で間接的にだとはいえ、命を奪ったのだから。直接剣で切り裂いていた八重樫ちゃんなんて、一目で分かるくらい顔を真っ青にしていたしな。
斯く言う私も思う所はあるが……まあ、今はいい。
躊躇いも後悔も、帰還のためには全て些事と踏み越えて行かねばならない。そう決めた。帰ったら院長先生に思いっきり愚痴ってやるのだ。うむうむ。
……着いたか。司書は、と……ん? 南雲がいる。
オリ主ちゃんひねくれすぎでは?
ステータスは大体適当な感じ。まあ原作でもそうだったしね!(言い訳)