ありふれた転生者は後ろにいる   作:新くさや

33 / 34
第33話

 

〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟

 

「……なにこれ」

 

「んー……これ、本当に?」

 

「まるでテーマパークの入場口だね……」

 

「まあそう言いたなる気持ちは分かるけどな。解放者にもイロモノがおったっちゅー事やろ。一応調べた上で大迷宮やって判断したからな?」

 

 私もさすがにこれはどうなのかと思って調べてみたが、奥の壁にあった仕掛け扉の先に分霊を進めさせた途端に分解された。大峡谷の分解特性に十分耐えうる生体の保護魔法をかけた上で、だ。

 保護魔法の強度を上げて再突入させたが、迷宮の全貌を掴む前に削られて霧散した。

 入口の文言はふざけているが、中で魔法を使う事は至難を極めるだろう。魔物の姿は見えなかったが、床や壁の中を見てみたらトラップが満載だった。大迷宮と言って差し支えない。

 

「なるほど、トラップに特化した迷宮か。しかもこっちは縛り有りと……」

 

「ついでに言うなら、どうも部屋ごとにブロック状になってるみたいでなあ。その上でなんも無い空間もあったんやわ。正直嫌な予感しかせえへん」

 

「……どういう事?」

 

「まさかとは思うけど、パズルみたいに組み変わる……とか? いや、まさかね、そんな……」

 

「一個一個のブロックかて十二分な大きさがあるみたいやから確信は持てへんけどなー……どっかで分断されたり、最悪攻略途中で入口に戻される事も覚悟しといた方がええかもしれんわ」

 

「解放者さんと言うのは随分と性格の悪い方なのですね……ウシロ様とは比べ物にならないですぅ」

 

 シアには遥か昔の精霊に近しい存在と説明していたが、これと同一視されたくはない。

 

「とにかく、そこにある仕掛け扉から中に入れるから。準備はええか? 中は真っ暗やから、それにも備えときや」

 

 

 

 うん、案の定。案の定だった。

 中は事前に調べた通りトラップ満載で、しかもやり過ごした後わざわざ煽りメッセージが表示される。ここを作った奴は絶対性格が悪い。

 まあなんだかんだステータスのごり押しで進めたし、前世でスルースキルを磨いた私にとっては微笑ましい煽りではあったが。

 

「ウシロ様にこのような不敬、許されないですぅ……殺ルですよぉ……絶対、住処を見つけてめちゃくちゃに荒らして殺ルですよぉ……フヒヒ」

 

 俗世の穢れに侵されていないシアには少々刺激が強すぎたらしい。ユエやハジメも大分イラついていたようだが、シアの様子を見て逆に落ち着いている。

 

「あれは相当キとるなあ……恵里は大丈夫か?」

 

「トラップにはちょっと驚くけど、それくらいかな。いちいち光ってアピールするとか、構ってほしい子供みたいだよね」

 

「あー……そやなあ。下手したら死にかねへんトラップって事さえ除いたら、チビどもがイタズラしてんの思い出すわ。さすがにこれにもそんな意図があるとは思わんけどな」

 

 恵里が入口でテーマパークの入場口のようだと言っていたが、実際今のところ私達にとってはアトラクションのようなものである。ステータスの暴力だな。

 液体系の罠には少々難儀するが、物理的な罠なら大抵ぶち壊して終わりだ。さて、次は何がくるか。

 

「ん? 騎士甲冑? なんか嫌な予感がするのは僕だけかな……?」

 

「大正解やなあ。ここにある甲冑全部、誰かしらの魔力が籠っとるみたいやで……となると、ゴーレムか? ふむん……」

 

 このサイズの甲冑を動かすとなると、もっと魔力……と言うより魂魄を籠めないと動かせないはずだが、技量の違いだろうか? それとも何かしら別の理由があるのか。まあいい、それより……

 

「南雲、私の方で中に籠っとる魔力追い出すから、順次宝物庫に入れてってくれるか? 後で再利用出来そうやし」

 

「さすが卯代さん……! 僕に出来ない事を平然とやってのけるッ……!」

 

「はいはいずきゅーん」

 

――あ、ちょっ! やm――

 

 ん? ……うん、空耳だな! 解放者の籠めた魔力だったなら、もっと抵抗があってもおかしくないと思ったが、それほどでもない。所詮は雑兵という事だろうか? はい次、はい次、もいっちょ、まだまだ――ぬっ!?

 

「こぉらああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「うわびっくりした。入ってくるならノックぐらいしなよ」

 

 でかいな。まだ距離があるのに見上げる程でかいゴーレムが喋ってる?

 

「あ、これは失礼しました」

 

「ん……許す」

 

「――じゃなくてぇ! 人ん家に押し入って強盗しておきながら、何たる言い様! 許さないのはこっちだよぉ!

 

「あー……もしかして、あなたがミレディ・ライセン?」

 

「ん? ……はっ、しまった! ゴーレムをぽんぽん持ってかれるあまりに焦って飛び出してきちゃったっ☆ おほんっ! ……やほ~、はじめまして~、皆大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

 

 やり直すんかい。しかしこれは……魂魄魔法か。本当に本人かどうかは分からないが、もし本当だとすれば、どれだけの間、こんな場所で一人過ごしていたのだろうか? あるいは、侵入者を感知した時だけ目覚めるようになっている?

 何にしても、遥か現代まで自我を保っているとは、どれほどの執念か。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

 

「えっと、お邪魔してます?」

 

「いらっしゃ~い。久しぶりのお客さんだからねぇ、歓迎するよぉ~? ……でも、私と会うべき場所はここじゃないんだよねぇ~。と、言うわけでぇ~、ちゃんと迷宮を攻略するように! それじゃあねぇ~」

 

 逃がさん。行け、分霊爆撃。

 

「へ!? ちょっ、ま、ぐえっ、ひぎゅ、やめ」

 

「う、卯代さん……ヨシ! 総攻撃!!」

 

「殺って殺ルですぅ!」

 

 

 

 いやあ、ミレディ・ライセンは強敵でしたね! 

 

「しくしく……しくしく……」

 

 本来の肉体じゃないせいか、分霊爆撃で魂魄を乱すのはすごく簡単だった。これミレディ本人は魂魄魔法にさほど習熟してなかったっぽいな。

 ゴーレムはやたら硬かったみたいだけど、砂浜に打ち上げられたクジラ並に身動き取れない相手だったし……なんかごめん。

 

「こんなのズルいよぉ~。迷宮もちゃんと攻略してないのにぃ~……久しぶりの会話を我慢して、期待を胸に待ってようとしていた私に、この仕打ち!」

 

「どうせこの先も性格の悪い罠がごろごろしているだけでしょ? 時間の無駄じゃない?」

 

「とりあえずボス戦だけ先に終わったっちゅう事で、そのコア持っていっちゃん奥までいったろか。ここには例の魔法陣も無いしな」

 

「そうだね、その間に色々聞けたらいいんだけど」

 

 




ば っ さ り カ ッ ト !
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。