ありふれた転生者は後ろにいる 作:新くさや
「へぇ~、なるほどねぇ~、別の世界からかぁ~。それに、オーちゃんとラーくんの迷宮を攻略したんだ? オーちゃんのところはともかく、ラーくんの迷宮は神山にあったはずだけど、よく見つけたねぇ~?」
「ほぼ完全に偶然でしたけどね。あの頃はステータスも貧弱でしたし、本当に綱渡りだったと思います。神山の迷宮が戦闘能力を求められないものだったのは、幸いでした」
何故私がこのバカでかいコアを担いで進まねばならないのか……いやまあ、乱れに乱れたミレディ・ライセンの魂魄を整えられるのが、私か恵里しかいないから仕方ないけどさ。本来の肉体なら自然と治るものなんだけどなあ。
勝負はついたと思うけど、一応魔力を外に出せないように封印しとくか。巨大ゴーレムは南雲達がバラして宝物庫に回収したから大丈夫だとは思うけど、治した途端魔法使って暴れられても面倒だし。
それはそれとして、折角だから今のうちに聞ける事を聞いておこう。貴重な生き証人だしな。
……ふむん。グリューエン大火山にシュネー雪原の氷雪洞窟、ついでにハルツィナ樹海も大迷宮で確定か。しかし……
「メルジーネ海底遺跡、ですか……?」
「そうだよん。海上の町エリセンから西北西にだいたい三百キロメートル。月のでてる夜にグリューエン攻略の証が導いてくれる。いやぁ~、まさか迷宮の場所がわからなくなるほど、長い時が経ってたとはねぇ~。お姉さんも歳をとったもんだぁ~」
お姉さん(笑)
にしても、シュネー雪原は魔族側の大陸にあるから後回しとして、樹海も攻略の証と再生魔法?がいるらしいからなあ。自動的に今度はグリューエン大火山を先に攻略するって事になるのか。で、そのままエリセンに行ってメルジーネ海底遺跡、と。
実は神山の攻略の証は持ち出せてなかったから、メルジーネまで攻略してやっと四つ目なんだよね。ここかこの先のどっちかで再生魔法を手に入れられるなら、樹海の開放条件も満たせるから丁度いいと言えば丁度いい。
「ん~、でもそっか、世界を超えて転移する神代魔法が欲しいんだねぇ~」
「そうですね。ライセンさんは神代魔法でそれが可能になるか分かりますか?」
「ん~ん~、知りたい? そんなに知りたいのかなぁ?」
時々勿体ぶるのが無かったらなあ……おら吐け、分霊爆破するぞ。
「ちょ、やめ、やめてぇ~話すからぁ! ……ふぅ~。できるよぉ~、君達が本当にそれを望んでいるのなら、必ずね」
精神論かな? まあ確信がある様子だから何らかの根拠があるのだろうけど、全てを話すつもりは無いらしい。
エヒトについて聞いたらとにかく愚痴が多い。やれ性格が悪いだの陰湿だの、ブーメラン投げるのは楽しいか? いくらかやり口について知れたのと、エヒトがクソ強いのは分かった。分解魔法を使う無数の神の使徒の軍勢がいる上に、同じく分解魔法がメインで、それ以外にもあらゆる魔法を自在に使いこなし、白兵戦も尋常な腕前では無いらしい。
数がいて本人もぶっ壊れってもうこれわかんねえな。まあ下手すれば万単位の時を重ねた存在なんだからおかしくないかもしれないけど。
ん、馬鹿みたいに広い空間に着いたな。ここがボス部屋か?
「ふ、ふふふ……この場所に着いたからには、もはや囚われのままの私ではない! ここは私のフィールド! 今度こそきちんと試練を受けてもらうんだからねぇ!」
「ッ!?」
ぬっ!?
「…………?」
「……あれぇ? な、なんで? うごけ、うごけぇ!」
何をしようとしているのかは分からないが、魂魄魔法〝縁切〟はうまく働いてくれているらしい。
魔力を体外に出す事を出来なくし、魔力で紐づけられた縁を遮断する魔法なのだが、かける相手の魔力が多いと抵抗によって燃費が悪くなるんだよね。今回はまだ魂魄の乱れを治しきってないから抵抗も弱々しいけど、ミレディ・ライセンの魔力量からして、万全だったらもう破られていてもおかしくない。
まあそれはさておき。
「……覚悟はいいですか?」
「え、え~とぉ……やさしくして☆」
なむさん。
「しくしく……しくしく……」
「これで試練突破やな。ほんなら先進もかーほらいくでー」
「あ、あはは……」
「……無残」
君達もミレディ・ライセンにイラついてたでしょ! 引かないの!
ん、奥の壁の一部が光ってるな。罠でなければ、あれがこの迷宮の最終地点か? 妙に高い位置にあるけど、魔法はロクに使えないし、足場は……ジャンプしていくしかないか。
「わわっ、勝手に動いてますよ、これ。便利ですねぇ」
「……サービス?」
「んん? なんでぇ?」
何でお前が不思議そうにしてるのか。お前ん家の仕掛けやろがい。
「やっほー、待ってたよ! 私が本当のミレディちゃんだ!」
「あー……」
「あー……そっかぁ」
あー。縁切で前の私みたいに同期が外れてるのか。 このちびゴーレムのミレディ・ライセンの様子からして、ここまでの経緯は見られていたらしい。
「それでぇ、白髪ちゃん、そのぉ……ゴーレムのコア返してぇ~。あとついでにボディと騎士達も☆」
「嫌ですよ。またさっきみたいに暴れようとされたら面倒ですし」
「しないしない、しないからぁ~! それ持っていかれたら次を用意するのが大変なんだよぉ~。もう試練は合格! ほらほらこれが攻略の証! お土産に珍しい鉱石もあげるから! そっちの白髪くんは生成魔法が使える錬生師なんでしょ? きっと重宝するよぉ~。あ、そうだ。ほらほら、この魔法陣に乗れば神代魔法が手に入るよぉ~。それならもう安心でしょ? さささ、乗って乗って!」
これも罠じゃないかと疑ってしまうのはもはや病気かねえ? まあ全部は分からないけど魂魄魔法らしき記述もあるし、おそらく他の神代魔法の魔法陣と同じで、魂魄に神代魔法が刻み込まれる魔法陣で合ってると思うけど。
「これは……重力魔法?」
「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、白髪くんとウサギちゃんは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」
「あはは……まあ今更だよね」
「まぁ、ウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は……生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。白髪ちゃんと黒髪ちゃんの適性は並くらいかな。どこまで使えるかは修練次第だね。金髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」
ふむん……現状触れている物の重さを増減出来るくらいかな? 分霊越しでも出来るから距離の制限は無いに等しいけど。
「んー……ライセンさん。しばらくここに滞在させてもらってもいいですか?」
「御麗?」「えっ」「……えー」「ウシロ様!?」
「えぇ~? なになにぃ、そんなにミレディちゃんが気に入ったのかなぁ? 離れたくないってぇ?」
「ほら、南雲もオルクスで色々準備しとったやろ? 重力魔法も手に入ったし、新しいアーティファクト作るにしろ、重力魔法に習熟するにしろ、町に戻ったら人の目ぇ気にせなあかんやん。エヒトの目もどこにあるか分からんし、それにここには重力魔法の先達がおんねんから、扱い教えてもらってもええし」
「スルーはひどいよぉ~。でも、あのクソ野郎共の目を避けたいなら協力してもいいよ。目を付けられたら最後、ねちっこくいやらしく追い込んでくるからねぇ~……あとゴーレムは返してね!」
「……そうだね。生活空間は錬成で整えればいいし、僕も色々作ってみたい物もあるから、いいんじゃないかな」
うむ。
あとは……シアも神代魔法を手に入れた事だし、いい加減本当の事を説明しておくか。ここに来るまでの会話で、ある程度察してもいそうだし。なんとかなるだろう。たぶん。
ちなみにゴーレムは返却されました