魔法少女まどか☆マギカ~絆の物語~   作:tubaki7

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Ep.02 ―魔法少女―

ワイワイガヤガヤと賑う大型ショッピングモール。フードコートやアミューズメント、雑貨やファッションなどありよあらゆるものが混在し自店の売り上げ向上の為顧客獲得に精をだしている。騒がしいのはそれだけではなく、今日が週末だということもあってか学生や仕事帰りのOLやサラリーマン。そして買い物に来た主婦など、その客層は様々だ。

 

そして学校帰りに立ち寄った買い出しも、このショッピングモール内にあるスーパーである。買い物籠をカートに納め、その中に鞄を入れてカートを押しながら本日の夕食の材料を吟味する。やっていることはさながら主婦のようだが、彼女はれっきとした女子中学生。そういう雰囲気はあっても着用している制服がそれを打ち消している。精々母親の手伝いをする親孝行な娘、といったところだろう。

 

が、そうは見えないのが神田英雄からみた巴マミの印象である。

 

 

中学生どころか大人もびっくりなそのプロポーションもその要因の大きな一つだ。正直言って、いったい何を食べたのならそこまで育つのだろうか。出逢ったばかりはまだそこまで大きくなかったはずだが、これは一体どういうことだろうと不思議に思う。女子でなくとも、これには驚きだ。そういえば、以前またカップ数が大きくなったと嘆いていたのを思い出す。自分は男だからわからないが、女子はそういう部分をかなり気にするらしく、その時言った一言が原因でちょっとした喧嘩にもなったっけと軽く懐かしく思う。

 

 

「どうかしたの?ひとのことジーッと見て」

 

 

視線に気が付いたのか、自分の躰を隠すようにして抱くマミ。別にやましい気持ちなどこれっぽっちもなかったのだが弁解しようにも見ていたことは事実な為、それも無駄だろうと正直に話すことにする。

 

 

「いや、まだ成長してんのかなと」

 

「・・・・エッチ」

 

「どう弁解してもこうなるだろうと思って言い訳しなかっただけいいじゃないか」

 

「それとこれとは話が別。もう、くだらない事やってないでさっさと行くわよ?」

 

 

すっかり機嫌を損ねてしまったようだ。このままだとひょっとしたら今晩の食卓に影響を及ぼすかもしれないと何か打開策を考える。

 

その時、ふと目にとまったものを英雄は掴んだ。

 

 レジにて会計を済ませ、スーパーを出る。帰ってさっそく夕食の準備だと意気込むマミの後ろを歩きながら英雄は内緒で購入した物をポケットのなかに忍ばせる。これで機嫌を直してくれるかどうか微妙なところだが、それでもやらないよりはマシだろう。

 

そう思って声をかけようとした時。突如として頭の中で声が聞こえてきたことに立ち止まる。誰かが自分を呼んでいる。とても弱弱しい声だが、距離はそこまで離れていないということだけはなぜかわかった。どうしたものかとどんどん距離が開いてくマミの背中を見て、決心したように声をかける。

 

 

「マミ、悪い。買い残したものあるからそれ買って帰る!」

 

「夕飯には戻ってきてよ!?」

 

「わかってるよ!」

 

 

手を振って別れ、英雄は声のする方に走る。おおよその方向からして、居場所はたぶんさっき通りがかったCDショップ付近の改装エリア。どしてかはわからないが、直感的にそう確信した英雄は迷いなく足を進める。

 

 

「ヒデ君!」

 

 

聞こえてきた声に足を止めて見回す。いつの間にか、かなり深いところまで来ていたようだ。立ち入り禁止の札をも振り切って来たとなると、それほどまでに集中力と思考を使っていたらしい。

 

 

「まどか、さやか!」

 

 

友人二人の姿を認め、駆け寄る。

 

 

「今こっちの方から声が・・・・って、なんだその生き物?」

 

「わかんない、でも私、この子に呼ばれて。そしたら、ヒデ君も呼んでて・・・・」

 

「とにかく、今ちょっとやばいみたい。早くしないとまたアイツが…!」

 

 

アイツ?そう問いかけようとした口を閉じて、全身の警戒心をマックスにまで跳ね上げる。それまでいた空間が、突如歪みだしたからと〝お守り〟が脈打ったからだ。

 

 改装途中だった空間が一瞬にして違うものへと変わる。景色はまるで花園に来たようだ、といったほうがいいのだろうが、実際見ているものはそこまで綺麗なものではなく、むしろ禍々しいものがびっしり広がっている。そして、物陰からこちらに出てくるコットンに足と髭をはやした謎の生物たち。それらは明らかに、友好的でないとわかるくらいに敵意と殺意を持って現れた。

 

 

「ねぇ、私たち、悪い夢でもみてるんだよね?」

 

 

さやかが取り乱し始めた。こういう時、冷静さを欠いたらいっかんの終わりだとわかっていてもこんな空間内で冷静でいろという方がおかしい。

 

だが、たった一人。英雄はまどかとさやかほどパニックにはなっていいなかった。むしろ落ち着いていると言っていい。

 

 

(知ってる・・・・此奴ら。使い魔・・・・でも、どうして?どうしてそんなこと知ってる)

 

 

どこで仕入れたかわからない知識が記憶の引き出しから出てきたことに驚く。名称も、どんな奴らかもわかる。この空間の事も、何もかも。でもそれがなぜかはわからないでいた。

 

 

「ちょっと、取り囲まれちゃったわよ!?」

 

 

ハッとなって辺りを見回せばもうすでに逃げ場などなかった。いや、この空間そのものにもう逃げ場などなかった。三人が死を覚悟した、その時。突如足元が光輝き、使い魔たちを一掃した。今度はなんだとさらにパニックになるさやかだが、直後響いた声にそれも止まる。落ち着かせるような柔らかな物言いや雰囲気は自分もよく知る人物のものだった。

 

 

「危ないところだったわね。でも、もう大丈夫よ・・・・って、英雄君!?」

 

「マミ!おまえ、たしかさっき帰ったはずじゃ…」

 

「それはこっちのセリフよ!買い忘れがあるって言うからどうしたのかと思えば…まさか魔女の結界に巻き込まれてたなんて…」

 

 

自分たちの知らないところで話が二転三転していくことにどうしていいかわからないでいるまどかとさやか。そうこうしているうちに空間も元にもどり、危ないからとマミに連れられて人気のな場所まででる。

 

 

「えっと…貴女がその子、QBを助けてくれたのね。ありがとう、治療するからそこに置いてもらえないかしら」

 

「は、はい」

 

 

おっかなびっくりに従ってまどかはQBと呼ばれた白い生き物を床に置く。マミが傷ついて息も絶え絶えのQBに向かって手をかざすと、先ほどまで瀕死の状態にまで追い込まれていたQBが一気に回復し、傷もまるで最初からなかったかのように消えた。

 

 

「ありがとうマミ。おかげで助かったよ」

 

「あの、あなたはいったい…?」

 

「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私は巴マミ。あなた達と同じ見滝原中学校に通う三年生で、QBと契約した、〝魔法少女〟よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界には、希望と絶望という概念が存在する。その二つは相容れぬもので、互いに滅しあうものだという。先ほど三人が巻き込まれた空間は結界といい、魔女が人間を喰らう為に作り出す空間のことだという。襲ってきたのは使い魔達で、そんな使い魔たちから助けてくれたのが魔法少女である巴マミ、ということになる。言葉からはまったく想像もつかない世界に軽くポカンとなりながらもようやく事態が飲み込めたようで納得したように頷いた。

 

 

「それじゃ、本題に入るけど二人とも、僕と契約して魔法少女になってよ!」

 

「契約って、いきなり言われても…」

 

「だよねぇ。なんせ一度っきりだし」

 

 

魔法少女になる条件としてQBが提示したのは二つ、一つは、契約の際に対象者の願いをなんでも一つ叶えるというもの。この〝なんでも〟というのは制限のようなものがあり、契約者本人の才能、この場合、魔法少女としての素質の高さのようなものがイコールとして叶えられる願いの大きさに比例し、その点ではまどかはとんでもない素質を備えているという。この中ではマミの次にさやか、といった感じだ。

 

 

「えっと、俺は?」

 

「英雄の場合は魔法少女ではなくて、元々持っている〝力〟の素質が桁外れに強いんだ。それがなんなのかまではさすがに僕でもわからない。でも、きみはかなりの素質の持ち主だ。まどかと同等かそれ以上だろうね。正直英雄が女の子でないのが非常に惜しいくらいだ」

 

 

そこまで言われて気恥ずかしくなったのか頭を掻く英雄。それを見て微笑むマミ。そんな二人の構図を見てさやかはまどかに耳打ちする。

 

 

「ねぇまどか。この二人ってもしかして…」

 

「うん。私が見てもわかるくらい仲良しの姉弟だよね、私も見習わなきゃ」

 

 

そう言って意気込むまどか。それに「マジか」とか、「此奴、やっぱり天然か」などと心の中で呟く。どうしてこう自分の友人たちは距離が近しい者に限ってこうなのか。中学二年、もう春も終わり夏がやってくる季節になろうという時に恋の一つや二つ浮いた話もないとはなんとも嘆かわしい。

 

 いや、それが普通なのかもしれないが。

 

ともあれ、契約の件は一旦保留とし、今度マミが魔女退治に出かける際に見学し、その後でどうするかを決めればいいということで落ち着いた。二人が帰宅していったあとを見送り、英雄はマミの部屋へと戻る。

 

 

「はぁ・・・・腹減った」

 

「フフフ、色々あったものね。今すぐ準備するから、ちょっと待っててね」

 

 

エプロンをつけてキッチンに立つマミ。英雄はリビングに行き、先ほどまでまどかが座っていた位置に腰掛け、ソファを背もたれにして寄りかかる。ヒョイっと膝の上に乗ってきたQBをいじりながら遊びつつ、英雄は問いかける。

 

 

「そういえば、マミはいつから魔法少女なんてやってたんだ?」

 

「…3年前、からかな。大体そんな時期だった気がするけど、もう結構長いことやってるような気もするわね」

 

「ふ~ん…じゃあさ、マミの願いってなんだったんだ?」

 

 

ふと、それまでリズミカルに聞こえていた包丁の音が止まった。それを不思議に思った英雄はQBをおろし、後ろを振り返る。遠目越しにだが、確かに肩が震えていた。立ち上がってマミの隣まで行き顔を覗いてみると、瞳からは大粒の涙が流れていた。

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

「へ、平気よ。ちょっと玉ねぎが目に沁みただけだから・・・・」

 

 

嘘だ。すぐにそう直感した英雄は手でマミの涙をぬぐう。

 

 

「平気なわけねーだろ。そうやってすぐ嘘つくの、よくないぜ」

 

「…ハハ、やっぱりわかっちゃうか」

 

「当たり前だろ?姉弟みたいなもんじゃんか。ねーちゃんの嘘が見抜けない弟なんていねーよ」

 

 

そうやって笑うと、マミもつられて笑顔になる。こんなやり取りが、凄く愛おしく感じた。そして、ゆっくりと語りだす。

 

 

「…私、ね。昔ちょっと危険なめにあったの。結構大きなことで、ニュースにも取り上げられるくらいの出来事よ。それに巻き込まれて、死にそうになってもうダメかもって時にQBと出逢って。もっと生きたい、死にたくないって願ったの。・・・・パパとママのことなんか頭になかったわ。ただ、自分が生きたいってことだけで私は契約したの。私、見殺しにしたのよ。家族を」

 

「・・・・そっか」

 

「どう?幻滅した?」

 

 

マミの言葉に英雄ははっきりと首を振る。そしてまっすぐな目で見据え、マミの肩を掴む。

 

 

「そんなことない。マミの願い、絶対に間違ってなかったって言い切ることはできない。でも、それ以上にマミは魔女から多くの命を救ってきたんだろ?だったらいいじゃんか。きっとおじさんもおばさんも天国でそう思ってる。だからマミは胸を張って生きていけばいいんだよ。もしそれを否定する奴がいるなら、俺がぶん殴る」

 

「・・・・コラ、弟のくせに生意気だぞ?」

 

 

一瞬、ほんの一瞬だけ、胸がときめいた。今の高鳴りを形容しようとしたらそういう感じになるだろうとマミは思ういながら、ドキドキする鼓動を抑えて聞こえてしまわないようにいつものように振る舞う。そう、この子にとって自分は姉、そして自分にとっては弟のようなものなのだから。

 

 

(…この子の心にまで、嘘はつけないものね)

 

 

それは、マミにしかわからない秘密。でも、いつの日にか。魔女のいない、平和な時間がくればいつか打ち明けてみよう。私の本当の気持ち。そう心に願いながら、マミは目の前で笑う少年を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ今日か・・・・なんだか緊張する。ね、さやかちゃんは願いごと決めた?」

 

「それがなんにも。…あたし達ってさ、バカなんだろうね」

 

 

昼休みのひと時。放課後に魔女退治見学に行くことになったさやか、まどか、英雄の3人。緊張するまどかに、さやかが意味深に呟いた。

 

 

「どういうこと?」

 

「平和バカってことだよ。あたし等の知らないところで、あんなことが起きててさ。それを知らないで、普通に過ごしてるあたし達って、ホント平和バカになっちゃってるってこと」

 

「…魔女や結界は普通の人間には見えない。それは仕方のないことだよ」

 

「だとしてもさ、あたし等とそんなに年齢も変わらないマミさんがあんな連中と戦ってるってことでしょ?しかも、たった一人で…それって、あまりにもなんていうか――――」

 

「かわいそう・・・・そう言いたいのかしら?」

 

 

さやかの言葉の続きを、突然現れた黒髪の美少女――――暁美ほむらが続ける。英雄は知らないが、昨日の一件以来彼女達はほむらの事を警戒するようになっている。

 

 

《大丈夫よ。ちゃんと見えてるから》

 

 

そしてそんな二人を安心させるかのようにマミの声が脳内に響く。魔法少女のみが使うことができる、直接言葉を用いらないコミュニケーション方法。念話というものである。この場合、素質があるものであってもそうでなくてもQBを介すことでその会話の内容を聞き取ることができる。英雄には魔法少女としての才はないので、彼のみQB伝いということになる。

 

 

「・・・・忠告はしたはずよ」

 

「忠告?いったいなんだよ、それ」

 

「・・・・これ以上魔法少女と魔女の戦いに首を突っ込まないことね。でないと、いつか大事なものを失うことになるわ…」

 

 

そう意味ありげなセリフをのこして消えていくほむら。彼女の言葉の意味がなんなのかいまだわからないでいるまどか、そしてさっぱりわからないと首を傾げるさやか。英雄はというと、その奥に垣間見えた何かに引っかかりを覚えたようでほむらの去って行ったあとを見続けた。

 

 いつか、大事なものを失うことになる。

 

はたして、この言葉の意味はいったいなんだったのだろうか・・・・?

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