魔法少女まどか☆マギカ~絆の物語~   作:tubaki7

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Ep.06 -3人目-

 

眼下に佇む銀色の巨人。今は赤装飾と鎧のようなものが備わっており初見の時と違ってはいるが、それでも間違いなくあの時の巨人である。さやかは巨人を見据え、目線の高さまで降りると、巨人は彼女が立てるよう手で足場を作り、さやかも巨人の掌へと乗る。

 

 

「・・・・ねぇ、アンタさ。あたし等の味方なの?それとも、敵?」

 

 

さやかの問いに巨人は答えない。否、答えられない。もちろんその正体が英雄なのは誰も知らない上、喋ってしまったらばれる可能性がある為言葉も発すことができないからだ。ここで正体がバレたら、そう思うと思うように答えが出てこない。

 

 やがて、魔女の結界が徐々に晴れていく。それに伴って、巨人の姿も光となって消えていく。

 

 

「まぁ、一応まどかを助けてくれたし、この前の御礼も言ってなかったしちょうどいいや。あたし、美樹さやか!えっと・・・・名前、ないのかな?あるのかな?」

 

 

う~んと考えるさやか。巨人の姿をした英雄はそんな彼女を見つめ、答えを待つ。すると何か閃いたようで、ポンと手を叩いて笑顔で見上げてくる。

 

 

「名前、ないならつけていい!?」

 

 

この姿に元から名前などない。断る理由もない上、もう変身することもないことがしと頷いて見せる。すると、さやかは笑顔でビシッという効果音でもつきそうな感じで此方を指さして言った。

 

 

「〝ウルトラマン〟!あたしが小さかった頃見てたヒーローの名前だよ。見かけも似てるし、なんかヒーローっぽいし、どう?」

 

 

ウルトラマン・・・・。英雄は少し考えた後に頷く。それにさやかは気に入ってくれたのかと思い、笑顔になる。それを見た英雄は、胸を締め付けられるような思いになった。

 

 この笑顔も、いつかあの時のマミみたいになってしまうのだろうか・・・・。

 

 

「おっと、そろそろ時間みたいだね。じゃねウルトラマン。二度も助けてくれてありがとう!また逢えたらまどかにも紹介するね!」

 

 

さやかの声に英雄――――ウルトラマンは答えない。静かに、まばゆい光とともにその巨体を粒子の渦となって消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことがあったんだ…」

 

 

さやかの話を聞いてまどかはつぶやく。昨日の騒動も無事に解決した二人はその日の学校帰りに立ち寄ったいつもの土手でくつろぎながらさやかから自分が気絶していた間の話をまどかはしみじみと聞く。さやかが魔法少女になったことにも充分驚いたが、またあの巨人、ウルトラマンが現れたことにも驚いた。QBも知らないというその謎の巨人は一体どこから来たのか、魔女との関連性はなんなのかなど色々二人して思考してみるも、当然でることはない。

 

考えるのをやめて、別の話題へと変更する。

 

 

「そういえば、上条君腕が治ったんだって聞いたけど・・・・もしかしてさやかちゃん」

 

「・・・・うん。でも、後悔はしてないよ?あたしが一番叶えたい願いごとが叶ったんだもん。たしかにまだマミさんのこと、忘れられないけどさ・・・・でも、だからっていつまでもうじうじしてらんないし。戦えない全ての人の代わりに、あたしが魔女と戦う。この見滝原の平和は、魔法少女さやかちゃんがキッチリ守ってみせますとも!」

 

 

そう言って笑いサムズアップを浮かべて言い切る。その笑顔につられて笑顔になるまどか。

 

と、そこへ。

 

 

「さやか」

 

「ヒデ!あんたまた学校来ないでなにやってたのさ!?」

 

「・・・・少し、な。色々と整理つけたくってさ」

 

 

そう呟いてまどかのとなりに腰掛ける。その横顔は心なしか何かを吹っ切ったような顔で少しはマシになった様子にまどかは少しだけ笑顔になる。

 

 

「・・・・なぁ、さやか」

 

「ん?」

 

「…おまえ、死ぬのが怖くないのか?」

 

 

そう真顔で聞かれたことにさやかも真剣な顔つきになる。死という言葉は、もう以前のように日常の少し外側にある言葉とは言い難く、もはや常に隣り合わせの言葉となってしまった。魔法少女として生きていく以上、いつかは向き合うこととなる言葉ではる。それに対しての恐怖や失望、悲しみを知る英雄は、それに恐れはないのかと問う。

 

 

「・・・・あたし、魔法少女だからさ。そんなことで恐がってられないよ」

 

「・・・・死んじまうとな。好きな人にも逢えなくなっちまうんだよ…俺は、さやかにまでそんな風になてほしくない」

 

 

その言葉は、あまりにも重すぎて。この数週間の英雄の事を少しだけ知っているまどかは心が締め付けられるような思いで英雄の言葉を聞いた。さやかはそれを受けて少し俯く。「でも」と言葉を紡ごうとしたとき、突如ソウルジェムが光を放った。魔女の気配かもしれない。さやかはまどかと顔を見合わせた後立ち上がって走り出そうとする。そこへ、英雄が声をかけた。

 

 

「俺も一緒に行く」

 

「なに言ってんのさ、英雄は――――」

 

「たしかに俺には魔法少女の資格はない。でも・・・・頼む。俺も一緒に連れてってくれ」

 

 

根拠のない言葉にさやかは尚突き放そうと口を開くが、英雄の真剣な目に念をおされ、承諾してしまう。こういう押しに弱いところは少し情けないとおもうさやかであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気のない路地裏。そこに結界は発動している。到着してから間もなくしてその異空間は口を開き、3人を飲み込んだ。

 

 

「これは使い魔のものだね。魔女じゃない」

 

「だったらラッキーだよ。こっちは初心者だし、またウルトラマンが来てくれるとも限らないし・・・・」

 

 

まどかにああは言ったものの、実際のところ恐いものは恐い。いきなりさやかが初戦であそこまで立ち回れたのはウルトラマンがいたからこそのもので、毎回彼が現れてくれるとも限らない。弱い使い魔から徐々に慣れていくしかないとさやかはソウルジェムを掲げて魔法衣へと変わる。剣をその手に携え、使い魔目掛けて接近し振り下ろす。が、それはどこからともなく振ってきた攻撃に遮られ、こちらに気づいた使い魔が驚いて逃げてしまった。そのことに舌打ちするさやか。いったいなんなんだと攻撃がきた方を見上げると、突如赤毛の少女が舞い降りてきた。

 

 

「ちょっとちょっと、あんたなにやってんのさ?あれ使い魔だよ。見てわかんない?」

 

 

やれやれと言った感じで着地する少女。赤毛の魔法衣、胸元に輝く髪や魔法衣と一緒の真紅のソウルジェム。間違いない――――魔法少女だ。

 

 

「もう少し待ちなって。テキトーに2、3人食わせればあとちょっとで魔女になるんだからさ。そうなればちゃんとグリーフシード孕むんだし」

 

 

少女はたい焼きを頬張りながら言う。

 

 

「それって、関係のない人達を襲わせろってこと!?冗談じゃない、そこどいて!」

 

「ああん?なに言ってんだアンタ。勘違いしてんじゃねーよ。あたし等の目的はただ一つ、グリーフシード。それ以外はどうでもいいだろ?・・・・もしかして、正義の味方、なんて言うつもりじゃねーよな?」

 

 

浮かべた笑みに背筋を冷たい汗が伝う。一目見ただけでわかった。この子は・・・・強い!自然と剣を持つ手に力が入る。それを見て、赤毛の魔法少女―――――佐倉杏子は瞬時にさやかの技量を見切る。

 

 

(構え方からして素人、それも最近なったばかりってとこだな・・・・ん?)

 

 

と、その奥にいる存在に目が行く。すると杏子先ほどの歪んだ笑みとは打って変わって明るいものとなる。走ってきた杏子に警戒心を尖らせて構えるさやかだが、そんな彼女をスルーして駆けていく。なんとも拍子抜けしたさやかは頭にハテナを浮かべて振り返ると。

 

 

「英雄!英雄じゃんか!」

 

 

まるで久しぶりに再会する恋人同士のように英雄に抱き着く杏子。英雄は彼女をしっかりと受け止めると、あたふたした様子でくっついてじゃれてくる杏子から離れようともがく。

 

 

「杏子、久しぶりなのはいいけど、おまえ一体なにやって――――」

 

「いいじゃんか。それよか久しぶりじゃねーか!元気してたか?」

 

 

置いてけぼりを喰らうさやかとまどか。ポカーンとなっていること約数秒、さやかは被りをふって詰め寄る。

 

 

「ちょっとちょっと、いきなり現れたとおもったらなんなのさ!?てか、ヒデから離れろ!」

 

「ああん?まだいたのかよ。てか、何?おまえさては英雄の女か何か?」

 

「違う!絶対に違う!」

 

 

何もそこまで力強く否定しなくても、と思う英雄だが、この状況ではその方がありがたい。隙をついてようやく離れる英雄は杏子に問う。

 

 

「それより、なんでおまえが見滝原にいるんだよ?たしか、マミと――――」

 

「あぁ、そうだよ。でも彼奴が死んだって聞いて戻ってきたのさ。今なら英雄をアタシのもんにできるからね・・・・」

 

 

そういう杏子の顔は、先ほどの無邪気はものとは変わり、またあの歪んだ笑みへと変わっている。

 

 

「いや~やっとだよ。今まで彼奴がいて手出しできなかったからさァ。いい加減死んでくれて助かったぜ・・・・」

 

 

そう呟くと、何かを察知したかのように杏子は後方に跳ぶ。

 

 

「・・・・へぇ。スピードだけはいっちょまえってか?」

 

「・・・・今、マミさんのことバカにしたな・・・・!」

 

「だったら、なんだってのさ?」

 

 

挑発するような笑みにさやかは剣を両手に携える。沸々と湧いてくる怒りに身を任せ、真正面から突っ込む。

 

 

「ブッ飛ばす!」

 

「ハッ、上等!」

 

 

魔法少女対魔法少女。今だ想像もしたことのない図式にまどかと英雄は呆然となる。

 

 

「そらそら!ちんたら踊ってんじゃねーよトーシロがァ!」

 

 

杏子の猛攻撃はさやかを徐々に、しかもゆっくりと追い詰めていく。まるで戦いを楽しむかのような彼女の戦いぶりに英雄は唯々唖然とする。初めて逢った時は、まるで借りてきたペットのように人見知りだった彼女。それから色々あって疎遠となっていたが、逢っていない期間に一体何が彼女をそこまで変えたのか。

 

 

「おかしいよ…どうして二人がこんなことしてるの!?同じ魔法少女なのに!」

 

「いや、これは何も珍しい光景じゃないよ」

 

「どういうことだ?」

 

「つい最近まで、ここはマミの狩場だった。でもそのマミが不在になったことで彼女がここを狩場として定めた。でも、そこにはすでに新しい魔法少女としてさやかがいた。こんな風に狩場を求めてほかのエリアに来た魔法少女同士での争いなんて別段珍しいことじゃないんだよ」

 

「みんな、それほどグリーフシードがほしいってのか?」

 

「そうだね。魔法少女にとってはかなり貴重なものだから」

 

 

QBの説明と受け答えを聞いた英雄はその言動に少なからず違和感を覚える。なにかがおかしい。腑に落ちない。一件無難な説明だけど、あまりにも完結すぎる気がしてならなかった。

 

 やがて、杏子とさやかの争いは決着へと向かう。剣を片方弾かれ、一方的に攻められるでしかなかったさやかだが、ようやく慣れてきたようで杏子の攻撃も捌けるようになってきてる。でも、それもごくわずかで今は躱すのがやっとといったところ。杏子もいい加減飽きたといわんばかりに欠伸を一つすると、槍を静かに構える。さやかもそれに倣って剣を構えた。

 

 

「どうしよ、このままじゃさやかちゃんが…」

 

「止めたいのかい?ならまどか、きみが魔法少女になればいい。きみならこの争いを止めるどころかどの魔法少女にも負けることはないよ」

 

 

そこへすかさずQBがまどかに契約を促す。やはりおかしい・・・・。そう思った英雄はポケットの中でさっきから脈打っているエボルトラスターに触れた。

 

このままでは、二人とも危ない。そう思った英雄はエボルトラスターを取り出す。

 

 

「・・・・こうするしか、ないのか・・・・!」

 

 

毒づいて、英雄はエボルトラスターを引き抜く。まばゆい光にが路地裏を満たし、現れたのは昨日さやかとともに戦ったウルトラマン。だが、その躰はあの時みた巨人の姿ではなく、いうなれば人間サイズといった感じに小さい。二人の間に割って入り、得物を両手に握りしめる。

 

 

「なんだ、此奴…!」

 

「ウルトラマン…そこをどいて!此奴はマミさんを――――」

 

『もうやめてくれ!』

 

 

突如返ってきた声にさやかと杏子は驚く。

 

 

『…もう、こんな光景を見るのはたくさんだ・・・・!』

 

「その声・・・・もしかして・・・・」

 

 

ウルトラマンの躰が今一度光に包まれる。次に現れたのは、先ほどまでまどかと一緒にいた自分の友人である神田英雄だった。

 

 

「ヒデ・・・・あんた・・・・」

 

「オイオイ、何がどうなってんのさ?」

 

 

わけがわからないと槍を肩で担ぐ杏子。

 

 

「・・・・杏子。ここは退いてくれないか?」

 

「ハァ?嫌だね、先に喧嘩ふっかけてきたのはソイツだぜ」

 

「・・・・頼む」

 

 

杏子に向き直り、頭を下げる英雄。その光景が心底意外だったのか、さやかは驚いて英雄を見る。少し考える杏子。

 

だが。

 

 

「ヤダね。いくら英雄の頼みでもそれは聞けないよ。あーいうタイプは徹底的に叩き潰したほうがいいのさ。それに、なんだかマミと似ててムカつくし」

 

 

英雄の頼みを無視し、杏子は跳躍して槍を構える。さやかもそれに応戦しようとして剣を構えるが――――

 

 

「そうはさせないわ」

 

 

直後、杏子の視界からさやかが消える。一瞬の出来事に何がおこったのかわからないでいると、後ろに気配を感じて振り返る。そこには、先ほどまで目の前にいたさやかと、もう一人QBから事前に聞かされていた黒髪の魔法少女、暁美ほむらが立っていた。

 

 

「…テメー、そいつの仲間か?」

 

「いいえ。私は冷静な人の味方で、バカなことをする人の敵。佐倉杏子・・・・あなたはどっちかしら?」

 

 

挑発するような口調。だが、それに杏子は乗ることなく相手を分析する。先ほどの出来事、あれは間違いなく魔法によるものだった。一瞬ではあったが、たしかにそれっぽい感覚はあった。ということは、考えられることとしては二つ。一つは、身体強化に特化したもの。もう一つは、かなりヤバい時間操作系。どちらにしても、あまり相手に回してロクなことはない。相手の態度からしてもまったく恐れというものがない為かなりの実力者と見てまず間違いないだろう。

 

 

「・・・・ッチ、わーったよ。今日のところは退いてやる。・・・・英雄、また逢おうぜ」

 

 

そう言い残し、ビルの壁を伝ってどこかへと跳び去って行った。

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