高度育成高等学校の異端者   作:ジラント

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この作品での腐れ縁たち(一部男共)は心が汚く足を引っ張り合い、腹を探り合っています。
後々になって読み返せば最低な奴らばかりで、設定を考えた私でも引いています。
ハーメルン至上最高のゲスを表現したいと思った私は少し後悔している。


足の引っ張り合い

1.

 

 俺はこれまでの脳内妄想をシャットダウンし、最古参の腐れ縁である石神 夜空(いしがみ やく)と向き合う。

 彼女とは幼稚園に通う前から一番付き合いが長く、遺憾ながら信用信頼ができる人物だ。

 夜空は自他ともに認めるくらい科学が好きだ。

 彼女の脳には膨大な知識が詰まっている。科学マニアで非科学的な存在が嫌いなのかと思いきや意外といける口で、彼女曰く知識を得るなら差別はしないとのことだ。ただ単に科学で解明したいだけだと思うのは俺だけではないと思う。

 俺は一番会いたくないランキング一位の、神童である石上夜空と先ほどまで会話をしていた二人の腐れ縁の元へと顔を青くしながら向かう。

 

 「おはようでござる。啓誠殿、良い朝でござるな!」

 「はよ、啓誠」

 「おはよう、夜空、秀雄、明人。たった今最悪の朝になった所だ」

 

 俺は挨拶をかわす。

 僅か一時間の青春が終了し、地獄の到来を察知すると、校舎に入った瞬間から気になっていた話題を出す。

 

 「何でお前らが()()にいる。まさかと思うがあいつらもここにいるのか?」

 

 俺は入口にあった入学案内板では不幸にも一発で自分の名前を見つけてしまったので詳しくは知らない、だとすれば最悪の展開だ。

 俺の疑問に答えたのは明人だ。

 

 「俺を含め、いつメンは全員ここに入学している。残りの二人は偶然にも隣のCクラスだ」

 

 明人の問いに俺の気分は地に落とされた。

 

 「さらば、俺の平穏と青春」

 

 お前だけ一人勝ちは許さん、と心の中で夜空の実験による被害ランキングが同率一位で、幼稚園からの腐れ縁が地を這うような声で俺に言う。しかも足を掴んで一緒に地獄へ行こうと下卑た笑みを浮かべているのが簡単に想像できる。

 

 「いや、夜空と出会った時点でないだろ」

 

 夜空の被害に遭ったことのない明人がきっぱりと言う。明人は強運の持ち主なのか神に愛されているのかで、夜空の実験結果を知ることがあっても実験台にはなったことがない。神がかったタイミングですり抜けるので夜空の被害者たちからは強者だと崇められている。いや、仏かよ。

 

 「言うな、俺が一番わかっている、知りたくもないが。それよりもお前らは何でここを志望したんだ? お前らならもっと良い高校選べただろ」

 「ん? 啓誠は知らなかったのか。担任から俺たち全員ここを志望していると聞かされてたぞ」

 「なんだと。聞いてないぞ」

 

 明人の発言に俺は全身を雷に打たれた気分になる。担任は一度も地元から試験を受ける生徒を教えてはくれなかった。それどころか俺は腐れ縁たちがどこを受けるのかさえも知らない。三年間外部との接触を禁じている高校だから、てっきり別の高校を受けるのだと勝手に勘違いしていた。

 明人の発言に俺は担任に()()()()と瞬時に理解した。

 

 「俺はあみだくじで選んだ」

 「おい」

 

 この男、明人は貴重な三年間をこともあろうかあみだで選んだ。かけている眼鏡のレンズがピシりと罅が入るような音がした気がする。

 

 「ちなみに拙者は自作の曲が制作できるかつ、缶詰生活ができる環境を探していたら明人殿にここを薦められたのでござる」

 「家でやれ」

 

 英雄の自由度の高さにこめかみに青筋が立つ。ふざけすぎだ、自分の人生をもっと大切にしろ、と言いたいが言ったところで腐れ縁どもは聞く耳を持たないのを自分は知っている。

 

 「夜空は? 前に夜空宛に海外留学声がかかっていたよな? それに親父さん海外で教鞭取っているから勉強するなら環境の整った向こうの方がメリットでかいだろ」

 

 日本で実験を続けるよりも海外の方が環境が整っている。いつか夜空がアメリカに家族が科学者として働いていると言っていたのを覚えている。

 

 「海外よりもここの方が面白いって言われたから選んだ」

 

 マイペースな夜空らしい答えだった。俺はもう、あぁ、うん、で終わらせてしまった。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を持ちかける。

 

 「それよりもお前らアレに気づいたか?」

 

 俺は三人にほのめかすように伝える。三人は俺の言いたいことに理解していたので三者それぞれ反応を見せる。

 

 「アレな。数が異常だよな」

 「いくらこの学校がいじめに対して敏感だとはいえ、常に見張られては気が滅入るでござる」

 

 秋人と英雄は顔をしかめる。そう、外部の境界線を越え、高度育成高等学校の敷地内に入った瞬間から監視カメラの数が異常だという事に気づいた。例えるなら高度育成高等学校はまるで学校と言う名の監獄だ。

 

 「そうだな。監視の目があるという事は、裏を返せば学校は何かを隠しているとも言える。それにカメラにも死角があるから気を付けないとな」

 「隠す? 何をだ?」

 

 夜空に訊ねてみると夜空は口角を上げ、

 

 さあな、それは後でわかるだろ、と意味深に挑発的に言う。

 

 夜空は頭の回転が速い。学業でもそうだが物事の核心をいつの間にかついている。恐らくだが高度育成高等学校の敷地を跨いだ時点で仕組みを全て理解しているに違いない。俺が自信を持って断定する理由は夜空が天才ではなく、神童だからだ。

 

 時間が迫ってきたので俺は自分の名前が書かれたプレートが置かれている席に座る。チャイムが鳴ったと同時にスーツ姿の女性が現れる。服装からしてクラスの担任なのだろう。女性は背筋をしっかり伸ばしたまま教卓に向かう。

 

 「新入生諸君。私はこのDクラスを受け持つことになった茶柱佐枝だ。担当科目は日本史だ。この学園では卒業までの三年間クラス替えはしない。お前達は私と三年間共に過ごすことになるがよろしく。今から一時間後に入学式が行われるが、その前に当校の特殊なルールについて説明をしたいと思う。まずはこの資料を配布したいので、前の生徒は後ろの生徒に回してくれ」

 

 茶柱先生は一番前の席の生徒たちに見覚えのある資料を渡す。目を通すと内容は合格通知と共に送られてきた資料だった。

 

 内容は確か、生徒は在学中学校が用意した寮で寝泊まりしなくてはならず、特例を除き外部との接触を禁じられているだったはずだ。俺は外部との接触を禁じている校則目当てで入学したが見事に裏目に出てしまった。折角苦い思い出しかなかった地元を離れたのに、スッキプと鼻歌歌いながら満面の笑みで地元を離れた俺がバカみたいだ。

 

 資料には校内マップが掲載されており、娯楽施設や生活用品店といった施設が充実していることと。

 

 最後に一際目を引く内容がSシステムの導入だ。

 

 「今から配る学生証カード。このカードにはポイントが振り分けられており、ポイントを消費することによって敷地内にある施設の利用や売られている商品の購入が可能だ。要するに学園専用のクレジットカードだと思えばいい。学校の敷地内にあるものなら何でも買える」

 

 茶柱先生が、何でも、とやけに気になる曖昧な説明内容に俺は昔夜空とアメリカで出会った軍人との出来事を思い出す。呼び起された野生の勘は俺にまるで学校側は、いや教師側から何か試されていると訴える。

 

 「ポイントの使い方は簡単だから迷うことはないだろう。それからポイントは毎月一日に振り込まれる。尚、1ポイント1円の価値があり、新入生のお前たちには10万ポイントが振り込まれているはずだ。無いとは思うが、もし足りなかった場合は申し出るように」

 

 茶柱先生の説明に教室がざわめく。入学して早々十万という大金を手に入れた生徒の大半は疑いもなく有頂天だ。

 

 「最初に言っておくが、当校では実力で生徒を測る。倍率が高い入試をクリアしてみせたお前たちにはそれだけの価値があるということだ。その評価のようなものだと思えばいい。ただし、卒業後には、学校側が全て回収する。どれだけポイントが残っていても現金化は出来ないので注意しろ。ポイントをどう使おうがそれは自由だ。好きに使ってくれ。仮にもし使う必要がないのならば友人に譲る方法もある。だがカツアゲはやめろよ? 学校は苛めに敏感だからな」

 

 茶柱先生は言いたい事を言い終わると教室から去って行った。と同時に教室は一層ざわめき始めた。だが、反対に俺はある悪魔的な発想が頭を過り、仮説が本当かどうか後で茶柱先生に個別で聞きに行こうと思った。

 

 教室ではポイントで何を買いに行こうか話合っている生徒でうるさい。俺からしたら怪しいことこの上ない。うまい話には裏がある。何より俺は生まれてこの方うまい話を経験しないどころか地獄な経験しかない。恐らくだがというか絶対に毎月10万ポイントを貰える事はない。

 一番近い席にいた明人にアイコンタクトを取ると、明人も分かっていて俺に頷いた。立ち上がり明人の席に向かって歩こうとした。

 

 「皆、ちょっと良いかな?」

 

 教室前方に大きめな声が発せられ思わず見ると、中学時代に散々世話になった先輩のような薄っぺらな笑みを浮かべた好青年が立っている。

 

 「僕らは今日から三年間共に過ごすことになる。だから自発的に自己紹介を行って、一日も早く友達になれたらと思うんだ。茶柱先生の言葉を信じるなら、入学式までに一時間はある。どうかな?」

 

 俺は明人に断りのアイコンタクトを送り席に戻る。サボりたいがこの先の学生生活を円滑に送るには些細なトラブルは避けておきたい。自分の番が来るまで支給された端末を弄りながら待つことにした。

 

 「僕らは今日から同じクラスで過ごすから、自発的に自己紹介をしてお互いの仲を深めようと思うんだ。入学式までまだ時間もあるし、どうかな?」

 

 入学式あるあるのお決まりのセリフを言った教卓にいる男子生徒を俺は必要最低限あまり関わりたくないと思っている。イケメンだからという理由で妬んでいる訳ではない、何というかどこか腑に落ちない感じがする、要するに生理的に無理。

 腐れ縁たちと一緒に濃い生活を送ってきたせいか人を見る目が大分養われ、初見で相手の性格を大体捉える事ができる。話して10秒あれば性格がわかるし裏も読める。師匠の、近所の川に住んでいるブラザー寄りのシスターは懺悔室に入れば100%嘘を見抜けるから俺はまだまだだ。

 自称詐欺師の叔父は言葉の使い方が上手い守銭奴。命より金を選び、俺を駒として使うヤバい叔父だ。

 

 「最初は言い出しっぺの僕から。僕は平田洋介、趣味はスポーツ全般だけど特にサッカーが好きかな。皆は気軽に洋介って呼んでほしいな。これからよろしく」

 

 平田、と名乗った生徒はスラスラと詰まることなく言い切った。観察してコミュニケーション能力と運動能力も高い方と見える。平田の後に続き、一人、また一人と自己紹介をした。途中、クラスに何人かいる人の前で話すことが苦手なタイプの生徒ちらほらいたが、周りの生徒のフォローをいれていたので順調に進んでいった。

 

 「俺は山内春樹。小学では卓球で全国に、中学では野球でインターハイまでいったけど怪我で今はリハビリ中だ。よろしくな~」

 

 お調子者で軽薄な男子生徒まで周り、次は明るそうな根明女子の番に回る。

 根明少女は元気よく席を笑顔で立つ。俺はその少女を見た瞬間背筋が粟立った。何故なら俺は根明少女の事を知っているからだ。

 

 「知っている人もいると思いますが私は櫛田桔梗と言います! 私の目標はここにいるクラスの皆と仲良くなる事です。是非私と連絡先を交換してください! 私も平田君と同じく一日でも早く皆と仲良くなりたいです。よろしくお願いします!」

 

 明るく紹介した少女、櫛田桔梗は周囲にいる男子の目線を一気に引き付けて人の好さそうな耳障りのいい言葉を並べて自分は友達が欲しいアピールを見せて紹介が終わると席に座る一瞬だけだが俺と目を合わせ微笑む。俺は目が合った瞬間内心舌打ちをした。

 櫛田桔梗とは小学校時代に出会った。きっかけは俺の地元の隣町にある喫茶店でだ。それからというもの事あるごとに出くわしてはすり寄ってくる。この様子を見た英雄がある日、俺と腕に抱き着く櫛田に「毒舌童話作家とそのマスター」と称した。誠に遺憾である。だが惑わされてはいけない。天使のような櫛田少女は表の仮面で裏の顔は悪魔のような少女だ。本人は隠していないから質が悪いし、はっきり言って鬱陶しい。

 

 「おぉ~! 桔梗ちゃん、俺もよろしくっ!!」

 「後でサインっ!」

 「連絡先教えて~~!!」

 

 櫛田の紹介が終わった途端クラス中が今日一番の喧噪で埋め尽くす。耳を塞いでいなければ鼓膜がやられそうだ。前と隣が特に野太い声で気持ち悪い。お前大人しそうなのにそんな声出せるんだな。

 

 「じゃあ次は」

 「今さら自己紹介かよ、ガキじゃねえんだ。仲良しこよしはやりたい奴だけでやれ」

 

 平田の言葉を遮った赤髪の短髪で、がたいのいい男子生徒は、平田を睨むと席を立ちあがり教室を去る。赤髪の生徒が立ち去った後の教室に静寂が生まれ、一部の生徒たちが場の空気を乱した赤髪の生徒を非難する。

 

 「はいはいっ! それじゃあ、気を取り直して次に行こう!」

 

 櫛田が場を仕切り直すと教室は元の状態に戻った。

 

 「それじゃあ、次は君だね」

 

 ようやくか、と面倒と思いながら気怠げに席を立つ。辺りの視線から緊張や興味といった視線が入り混じっている。

 

 「俺は幸村 輝彦。下の名前で呼ばれるのが嫌いだから幸村、もしくは啓誠と呼んでほしい。以上」

 

 伝えたいことだけ簡潔に伝えすぐに座る。なれあうつもりはないからだ。重要なのはこのクラスに使える奴は誰なのか、だ。

 この学校の異質さは足を踏み入れた瞬間に気づいた。そして担任の発言で確信した。

 

 ここは戦場。今から三年間無事に生き残るには周りを犠牲にしてでも生き残らなければならない。

 

 幸い、校則違反さえしなければ何をしても良い。という事は退学にさせるよう仕向けても何も問題はない。頭の中で予定を組み立てる。予想が正しければ鍵となるのは自身の能力で切り開いていくしかないのだから。




副題:お久しぶりですね、先輩。一緒に落ちましょう

南雲パイセン堂々と犯罪を犯している。流石ゲスどものパイセン、そこにしびあこ。

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