【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!!   作:どうだか

13 / 66
挿話① コウモリの恩返し

 タイチとユウ*1には、生きていてほしかった。幸せになってほしかった。あの二人が笑って生きる未来の一助になれるなら、僕にとってこのうえない幸福だった。

 

 だから、僕が死んでも構わないと思っていた。

 

 ──まさか、命拾いするとは思わなかった。

 

 しかも、僕みたいな不審者(バケモノ)に、迷わず血を分けてくれる変わり者(愚か者)が、タイチ以外にもいるとは。世の中は広い。彼に出会う前の荒んでいた自分が馬鹿みたいだ。

 

 軽く助走をつけ、屋根から屋根に飛び移り、真っ直ぐ疾走(はし)る。僕はどちらかというと肉体派ではないのに、タイチに出会ってから走ってばかりだ。ひとまず、彼に付けた”血痕”に向かう*2。”血”を通して感知を行う。まだ異変はない。

 

 たしか、日中は”姉”とやらが起きているから自由に動けないとほざいていた。だからこそ、恩返しをする時間の余裕があったのだが*3

 

 脳裏の広域地図に点在する”血痕”。ついさっき増やしたばかりの”血痕”は、微動だにしていない。本人の望みとはいえ、だいぶ無理を強いたから、たぶん寝てるのだろう。

 

 それにしても、変わったコだった。

 

 移動しながら、二人目の変わり者(愚か者)について考える。タイチを取り囲む女たちに「常識が無い!」とキーキー言われる僕が、「変わっている」と思ったのだから、相当の変わり者だ。

 

 そうしなければならないという、強迫観念。

 

 タイチとは、また違う方向で揺るがない瞳と感情。まあ、さすがに、僕が正体をはぐらかしたときは怒ってたか*4。女ってやつは、ああいう受け答えをするとすぐ怒る*5

 

 それはさておき。あのコのしてほしいことが、短時間で済むうえに僕がすぐできることでよかった。命を救ってもらった恩返しが、きちんとできた。

 

『命を助けてもらってこれだけじゃ、釣り合ってない!』

 

 僕の目を見てそう言い切ったタイチの姿を思い出す。

 

「……ふ」

 

 なんとなくおかしくなって、唇の端が吊り上がる。彼に恩返ししてもらった僕が、誰かに恩返しすることになるなんて!

 

 ああ、本当にタイチの言うとおりだ。僕は、なんて狭い世界で生きていたんだろう。

 

 ”血痕”の感知に、おぞましい気配とそこから溢れる殺意が引っかかった。圧倒的な”死”の概念が叩きつけられる。怖ろしい。過去に置き去りにしたはずの恐怖が、じわりと胸に去来する。

 

 ──タイチとユウが、僕の世界から失われてしまうことが、何よりも怖ろしい。

 

 だから、僕は立ち向かう。

 

 それに──

 

「またね、と言ってしまったし」

 

 約束は、守らないと。

 

 そうだろう?

 

 命の危機にあるというのに、僕を見つけて破顔するトモダチ(愚か者)に、心の中でそう話しかけた。

*1
泰一(たいち)夕星(ゆう)。おじさんに関わりのある”主人公”と”ヒロイン”。他に四人の”ヒロイン”が存在するが、おじさんは二人の名前しかまともに覚えていない。ただいま個別ルートのクライマックスの真っ最中。おじさんをオタク的にたとえると『推しに幸せになってほしい』&『壁や天井になりたい』タイプで、二人のために命をかけることも厭わないし、見返りを求めていない。

*2
本当は、ヤバい少年に”血痕”付けて追跡したかったが、概念から自分の居場所がバレてしまうのでできなかった。

*3
どんな時でも、エッチなことをする時間は確保される。それが、エロゲみたいなことが起きる世界。

*4
一人称『僕』おじさんを反芻していただけです。

*5
個人の経験に基づく感想であり、普遍的な価値観ではありません。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。