【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!! 作:どうだか
住宅街を抜けると河川敷に出る。ここから少し先の橋まで行って、Uターンしてくるのが、私のランニングコースだ。
早朝の河川敷には、ぽつぽつと人がいる。毎朝同じ時間にランニングをしているので、だいたい同じ顔触れになる。
犬の散歩をしているお姉さん。ガチ装備でランニングしているお兄さん。のんびりと歩いているおばさん。そして、ゆったりとした動きで体操をしているおじいちゃん。
おじいちゃんの体操は、たぶん何かの武術や武道の型だと思う。しかも、なんかこう、スゴい。ゆっくりとした手さばきや足さばきなのにキレがある。
言葉では説明できないけど、あのおじいちゃんはゼッタイに強キャラ。間違いない。
そう、今日の目的はランニングじゃない。このおじいちゃんに話しかけることだ。
先日のおじさんの”訓練”を通して分かったことは、『エロゲみたいなことが起きる世界のヤバさ』だけじゃない。『教えてくれる相手がいると成長が早い』ということだ。
あの”訓練”を経験して、たった数日。私は、多少の”刺激”に対して動じなくなっていた。タンスに小指をぶつけても、痛いとは思ったけど悲鳴をあげたりしなかった。どういう理屈かサッパリ分からないけど、”訓練”はたしかに効果があった。
たった一年しかない。自分一人でどうにかするには明らかに時間が足りない。
ならばこそ、技術で時間を補えるレベルの人に首を垂れて、教えを乞う。それしかない。
「お願いします……!」
「──ふむ」
芳しくない反応に頭を上げる。おじいちゃんは、指でアゴ髭をしごきながら思案していた。全てを見通すような静かな目で見つめられ、なぜだか首筋がチリッと痺れた。
「あっ、あの、自分でも、都合がよすぎることを言ってるなと思います」
やっぱり、おじいちゃんはこの近くで道場を開いている人だった。そんなおじいちゃんに私がお願いしたのは以下の二つ。
①逃げる・避ける方法を中心に護身術を学びたいこと。
②両親には内緒にしたいので、道場ではなく朝のこの時間に、この場所で学びたいこと。
どう考えても、今日はじめて話す相手にお願いすることじゃない。特に②。図々しすぎる。
でも、これは譲れない条件だ。お父さんとお母さんにバレたら、何かあったのかと心配され、いろいろとやりにくくなる。
ぶっちゃけ、おじいちゃんには断られるだろうなぁと思って言っている。
私の目的は、断られた後で「お知り合いに、この条件で引き受けてくれる人はいませんか?」と尋ねることだ。知り合いからの紹介なら断りにくい度が上がるだろうという、こすい作戦だった。
「──かわいそうに*1」
「え?」
風に紛れるように、おじいちゃんのつぶやきが聞こえた。いま「かわいそうに」って言った? 言ったよね??
きょとんとしていると、おじいちゃんは取り繕うように首を振る。
「ああ、いや、何でもないんじゃよ。大変だったのう……」
んんん? なにが??
今までの話に、『かわいそう』とか『大変』とか言われる要素あった? …………あったわ。
危機回避のために護身術を学びたい。両親には内緒にしたい。なんかめっちゃ必死で切羽詰まってる。羅列すると、何らかの犯罪被害者感がスゴい。特に、両親には内緒にしたいってところ。性犯罪っぽさがにじんでいる。
なんか勘違いされてる気がするけど、訂正はしない。まあ、将来的にそういう目に遭うかもしれないから、あながち間違ってないし。
おじいちゃんは相好を崩した。それまでの落ち着いた雰囲気はどこへやら。ウキウキした様子で呵々大笑する。
「いや~、こんな若い娘さんが武術に興味を持ってくれるなんて、うれしいのう! 儂、ばっちり教えちゃう」
好々爺然とした様子に、ホッと肩の力を抜く。ていうか、え? あの条件で引き受けてもらえるの? マジで??
「ただし、儂の稽古は厳しいぞ~? あと一時間は早起きせんとな!」
「あ、ありがとうございます! がんばります!!」
やった────っ!