【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!!   作:どうだか

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第一章 エロゲの世界はモブ女子に優しい編
第一話 エロゲの世界ではモブ顔


 満員電車でドアの隣というベストポジションを確保し、ホッと息を吐く。ふと見ると、電車の窓ガラスに、真新しいブレザーを着た美少女が映っている。くるくると体の角度を変えて身だしなみを確認。うむ、今日も私は最高に可愛い。

 

 自分で言うのもなんだけど、前世ならば美少女アイドルとして脚光を浴びたに違いない可愛さだ。ただまあ、このエロゲみたいなことが起きる世界では、私の顔はいたって普通なモブ顔。だって顔面偏差値の平均がめちゃくちゃ高いんだもん。

 

 ……美男美女ではない顔を意図的に描くよりも、整った顔の方が描きやす……げふんげふん。

 

 さて、顔面偏差値の平均が高いのなら、どうして自分がモブ顔だと分かったのか。答えは簡単。見れば分かる。

 

 電車がゆっくりと止まり、目の前のドアが開いた。ワッと通勤通学客が乗って──くることはなかった。すさまじいオーラが風となって顔面へ吹きつける。風は、待機列の先頭に立っていた少女から吹いていた。

 

 少女は、プンプンと肩を怒らせながら足を踏み出した。彼女のツーサイドアップがふんわりとなびく。

 

「もぉ! このわたくしが電車で移動する羽目になるなんて!! あなたのせいよ!」

 

 小さな唇をつきだし、ムッと頬をふくらませる。なんて可憐な表情。思わずほうと息を吐いた。

 

 周囲の乗客は一人残らず彼女に見とれている。けれど、その乗客の顔が分からない。彼らには、目鼻口がない。髪型と服装でしか区別がつかない。

 

 チラッと窓ガラスで自分の顔も確認する。ガラスに映る私にも顔がない。というか、自分の顔が認識できない。

 

 ”モブ化現象”と、私は勝手に呼んでいる。現実とは思えないような美女や美少女、いわゆる”ヒロイン”に遭遇すると、そのオーラに圧倒され、普通の人は自分や周りの人の顔を認識できなくなるのだ。とまあ、自分がモブかどうかは、こんな感じで見れば分かる。

 

 この現象に影響されないのは、”ヒロイン”と”サブキャラ”、そして──

 

 

「そんなに怒るなよ」

 

 

 ”主人公”だ。

 

 この”主人公”くんは、顔が分かるタイプだな。ちなみに、”主人公”の顔は見えたり見えなかったりで、顔の系統もいろいろ。共通点は、一人以上の”ヒロイン”と関わりがあること、かな。

 

 ”主人公”くんと”ヒロイン”ちゃんの二人は、やいのやいのと楽しそうにおしゃべり*1している。制服からして同じ学校のセンパイっぽい。

 

 ……彼らを取り巻く環境が、普通の学園物エロゲでありますように。

 

 なお、”ヒロイン”ちゃんから離れるまで、周りの人の顔は消えたままだ。

 

 こんな風に、エロゲみたいなことが起きる世界で背景にいる顔なしモブ女子として生きている。けれど、自分がモブであることを残念に思ったことはない。

*1
”ヒロイン”ちゃんがキャンキャンと突っかかり、”主人公”くんがのらりくらりとあしらっていて、端から見るとカップルがイチャイチャしてるように見える。

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