【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!!   作:どうだか

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第二十一話 目と目が合わない

 いつもの稽古のクセで、朝早くに目が覚めてしまった。のどがカッサカサに渇いている。うわ、冷房つけっぱなしでキャミとパンツだけで寝てたのか。

 

「ぁあ゛~~……げほっ」

 

 起きてキッチン行くかぁ。ついでに、朝ご飯の準備もはじめてしまおう。たぶん、眼鏡”主人公”くんと”ヒロイン”ちゃんたちはギリギリに起きるだろうし。

 

 そういえば、昨日の無差別媚薬事件、お孫さん師範代と私に中和剤を用意してたってことは、合宿前から準備してたのかな? なかなかに計画的な犯行だなぁ*1

 

 ……ふと思ったけど、4Pをこなす眼鏡”主人公”くん、体力も精力もヤバいな。いや、媚薬がスゴかったのかも?

 

「あれ?」

 

 キッチンに行くと、炊飯器のタイマーがセットしてあった。たぶん、お孫さん師範代がセットしてくれたんだろう。……だよね? メシマズ三人娘じゃないよね??

 

 ちょっと不安に思いつつ、冷蔵庫から食材を取り出す。今日の朝ご飯はハムエッグと納豆と玉ねぎのお味噌汁! ちなみに、明日の朝ご飯も同じ!!

 

 

 ◆

 

 

「すみませんでした──っ!」

 

「すまなかった!」

 

「ごめんなさい」

 

「ごめんなさぁ~~~いっ!」

 

 案の定、ギリギリの時間にダイニングルームへやってきた四人は、いっせいに頭を下げた。その後ろから、お孫さん師範代が顔を出す。どうやら、ギリギリに起きたのではなく、ギリギリまで叱られていたようだ。

 

「こいつらには、おれからもよく言って聞かせましたんで!!*2

 

 眼鏡”主人公”くんの謝罪を聞きながら、ずらっと並んだ四つのつむじを眺める。

 

 ──言いたい。

 

 四人に、「ゆうべは おたのしみでしたね」って言いたい。けど、この世界でそのネタは通じないし、今のタイミングで言ったら単なるイヤミだ! がまん!!

 

「謝ってくれたので許ーす! でも、もう同じことしないでね?」

 

 無難な落としどころを口にする。本音を言うと、今日の晩ご飯にも媚薬を盛ってほしい。私も乱痴気騒ぎに混ぜてほしい。口にも態度にも出さないけど。

 

 ちょうどいいタイミングでご飯が炊けた。陽気なメロディーがダイニングルームに流れる。パンと両手を叩いて、話を切り上げた。

 

「じゃあ、朝ご飯にしよっか」

 

 あ、そうだ。炊飯器のフタを開ける前に確認せねば。

 

「あの、炊飯器のタイマーをセットしてくれたのって……」

 

「……自分だ」

 

 やっぱりお孫さん師範代だった。よかった。

 

「……手は、しっかりと洗った……」

 

「えっ? あ、はい」

 

 まあ、料理をする前に手を洗うのは大事だよね? でも、なんでいま報告した?? 不思議に思いながら、お孫さん師範代の顔を見上げる。

 

 ……あれ? なんか、いつもの師範代と違う感じが?? ……でも、何がどう違うのか分からんな。

 

 

 ◆

 

 

 さて、気を取り直して朝ご飯だ。

 

 おっとり不思議系”ヒロイン”ちゃん以外の面々で、お皿をテーブルの上に並べていく。彼女のウッカリは、その、世界レベルだそうなので。朝ご飯をひっくり返されないよう、テーブルに着いてもらっている。

 

 私はご飯を盛る担当だ。無口クール系”ヒロイン”ちゃんからお茶碗を受け取り、ご飯を少なめによそう。

 

「このくらい?」

 

「うん」

 

 手渡すと、小さな声で「ありがとう」とお礼を言われた。

 

「──ねえ」

 

「ん?」

 

「からだ、大丈夫?」

 

 無口クール系”ヒロイン”ちゃんの顔を見る。ちょっと目が泳いでいる。たしか、媚薬も中和剤も、彼女が作ったんだっけ? 薬の副作用とかを気にしているのかな?

 

「うん、大丈夫だよ? 中和剤がちゃんと効いたみたい」

 

「えっ?」

 

 無口クール系”ヒロイン”ちゃんは驚きに目を見開いている。

 

 えっ、なに? 何に驚いてるの?? 中和剤に効き目があったこと?? あれって、そんなあやしい薬だったの???

 

「…………先生に、もう一回あやまる」

 

 へ? この話の流れで、なんでお孫さん師範代が出てきた? 理由を尋ねる前に、無口クール系”ヒロイン”ちゃんは師範代の方へ走って行ってしまった。

 

 ペコリと頭を下げる無口クール系”ヒロイン”ちゃん。顔色一つ変えず、何かを言うお孫さん師範代。その様子を眺めていると、不意に師範代と目が合った。目を逸らされた*3

 

 もう一度言おう、お孫さん師範代に、目を逸らされた。えっ、うそでしょ……あの師範代が?! 目を逸らした!?!?

 

 ──ハッ、さっき感じた違和感の正体、これだ!

 

 お孫さん師範代と、目が合わない!!

 

 えっ、なんでだ? 私、何かやらかしたっけ?? たぶん何かしたんだろうなぁ~~! お孫さん師範代と私だったら、どう考えてもやらかすの私だもんなぁ~~!! でも思い当たるふしがまったくない……!*4

*1
合宿一日目に仲直りして突発的に実行したので、計画性はまったくない。媚薬は、無口クール系”ヒロイン”ちゃんが他の二人を出し抜くために持ってきていた。

*2
”ヒロイン”ちゃん三人は、仲直りのキッカケになってくれた『私』への好感度がかなり高く、昨晩の乱交に混ざってもらう気満々だった。彼女たちなりのお礼も兼ねていたのだが、お孫さん師範代と眼鏡”主人公”くんから「自分が好きなものを他人も好きとは限らない」と説教されて反省した。

*3
媚薬の効果である性的興奮を鎮めるために、ほぼ一晩中、自慰していた。基本的に”無”だったのだが、疲れで油断した瞬間に、弟子のあられもない姿を思い出してしまった。しかも思い出したタイミングでフィニッシュしてしまい、死にたくなるほどの罪悪感に苛まれている。

*4
昨晩、お孫さん師範代から中和剤を渡されたとき、キャミとパンツだけしか着てなかったことに気づいていない。


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