【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!!   作:どうだか

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第二十六話 どことなく似ている

 ──さて、どうやってお付き合いまで持って行こう。

 

 そんな当たり前のことに頭をひねる。

 

 昨日は”モブ化現象”の有無を確認しただけだったからなぁ。TS予定イケメンくんの周りで”モブ化現象”が起きてるのを見て、テンション上がりすぎて何もせずに帰ってきてしまった。ウッカリ。

 

 とりあえず、今日もTS予定イケメンくんの様子を見に行くことにした。やることはストーカーそのものだ。放課後、急いでTS予定イケメンくんが通う学園へ向かう。校門の周りを見渡せるファストフード店に陣取り、TS予定イケメンくんが出てくるのを待つ──

 

 待っていたのだけれども。

 

 ──当の本人が近くの席でド修羅場を繰り広げていらっしゃる。

 

 ファストフード店のボックス席スペース。そのいちばん奥まったところに私は陣取っている。私の斜め前の席に、男の子と女の子が向かい合って座っている。

 

 私からは、男の子──TS予定イケメンくんの顔しか見えない。彼は平然とした顔をしているが、ボックス席まわりは気まずい空気でいっぱいだ。だって、女の子のすすり泣く声が聞こえてくるんだもの。

 

「別れる」

 

 女の子の震える声。ざわめく店内で、そのひと言はハッキリと聞こえた。

 

「うん、わかった」

 

 TS予定イケメンくんの声に動揺は無い。ちらりと彼の顔を見る。えっ別れ話を切り出されてそんな顔できる?? と、思うくらい落ち着いていた。

 

「どうしてっ」

 

 女の子はかすれた声を絞り出す。そこには、怒りと悲しみが入り混じっていた。別れると言ったのは女の子の方なのに、まるで彼女が振られているみたいだった。「どうして」の後に続くのは「引きとめてくれないの?」なのかもしれない。

 

「……ウソ、だったの? ぜんぶ……」

 

()()嘘をついたことは無いよ」

 

 まるで、別の()()に嘘をついたような言い方。

 

「~~っ!」

 

 あっと思った瞬間には終わっていた。女の子が勢いよく立ち上がり、手を振りかぶる。TS予定イケメンくんはそんな女の子の姿をじっと見ていた。ばちん、とものすごく痛そうな音がした。

 

 女の子は、荷物を抱えると走ってお店から出ていった。すれ違いざまに彼女の横顔を見たけど、”モブ化現象”のせいで私には顔が認識できなかった。視線をTS予定イケメンくんに戻す。バッチリ目が合った。

 

 ひえ。

 

 ──TS予定イケメンくんの鼻から、血が垂れている。

 

 目が合ったことよりも、そっちにビックリしてしまった。思わず立ち上がる。

 

「は、鼻血でてますよ!?」

 

 持っててよかったティッシュとハンカチ!

 

 

 ◆

 

 

「ありがとう、助かったよ」

 

「いえいえ」

 

 鼻血の止め方って、昔は上を向くように言われてたけど、今は俯くのがいいって言われている。上を向くと口や喉に血が流れちゃうからダメなんだそうな。

 

 なので、TS予定イケメンくんも俯いてじっとしている。鼻の付け根をつまみながら鼻の下にティッシュをあてて、血が止まるのを待つ。

 

 柔らかそうな前髪が、TS予定イケメンくんの顔に影を落とす。親しみやすい優しそうな面差しは、腫れて赤くなっている。めっちゃスナップ効いてたもんなぁ、あの女の子のビンタ。

 

「──君さ」

 

「うぇっ、はい!?」

 

 急に話しかけられて変な声が出てしまった。

 

「昨日もここにいたよね」

 

 も、目撃されてらっしゃる~~~~っ!

 

 でも、言われてみればたしかに、『ファストフード店から校門が見える』ということは『校門からもファストフード店が見える』というわけで。

 

 動揺を隠せない。イヤな汗が背中を流れる。挙動不審が止まらない。TS予定イケメンくんは俯いたままだ。彼が、どんな顔をしているか分からない。ただ、優しげな声で話を続ける。

 

「目立ってたよ、この近くで見たことない制服だったから」

 

 だって! 学校終わってすぐ行かないと間に合わないんだもん!! 着替える余裕とか無いんだもん!!!!

 

 TS予定イケメンくんが顔を上げた。

 

 目が合う。

 

 ──私に似ている(何か目的がある)目だ。

 

 するりと言葉が出た。

 

「カレシになってください」

 

「いいよ」

 

 こうして、私はTS予定イケメンくんと恋人になった。

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