【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!! 作:どうだか
二週間に一回くらいの頻度でデートを重ねる。流行りのスイーツ店に並んだり、水族館へ行ったり、映画館へ行ったり。まるで絵に描いたような学生デートだ。少女漫画を読んでいるようで、年甲斐もなくドキドキしてしまう。
学生だから、あんまりお金のかかったご飯や遊びは無理だ。けれど、TS予定イケメンくんは話が上手いのでいっしょにいてまったく飽きない。特に、彼の親友くんトークがめちゃくちゃ面白い。
そもそもの発端は、親友くんのご両親。彼らはワケアリのお仕事をしていたらしく、駆け落ち同然で結ばれたんだそう。しかし、最近になって、それぞれの元上司が部下を送り込んできた。毎日がてんやわんやでしっちゃかめっちゃかになんだとか*1。
──そうだね! 親友くん、確実に”主人公”だね!! しかもイベントが現在進行形で起きてるタイプ!!!
手をつないで公園をブラブラお散歩しながら、親友”主人公”くんトークで盛り上がる。昨日も部下さんたち二人がハッスルして大変なことになってたらしい。
は~~! 直接的に危害が及ばない状態で聞くエロゲイベントめちゃくちゃ楽しい~~!!
近くのカフェでお茶しようかと話している時に、TS予定イケメンくんのスマホが鳴った。TS予定イケメンくんは、画面に表示される名前を確認する。
「ちょっと出るね」と言って通話ボタンを押すと、すぐに耳を離した。
爆発音。爆発音。ビーム音。男の絶叫。
スピーカーモードにしてないのに、あまりの音のデカさに通話音声が筒抜けになっている。
『おに、い、ちゃん! た、すけ、てぇ~~~っ!!』
「ええ……」
TS予定イケメンくんの妹ちゃんとおぼしき悲鳴が、爆発音に紛れて聞こえてくる。さすがのTS予定イケメンくんも絶句している。「僕、ここに飛び込まなきゃいけないの?」という顔だ。でも、行かないという選択肢がないあたり、彼らしい。
「じゃあ、今日はここでお開きということで」
つないでいた手を離し、TS予定イケメンくんにそう声をかける。私の対応も慣れたものだ。残念だという気持ちはあんまりない。むしろ、次に会った時にどんな話が聞けるのか、ワクワクしている。
ふと、視界が陰った。唇に柔らかな感触。
「またね」と手を振りながら走るTS予定イケメンくんに、呆然としながら小さく手を振り返す。
走っていく彼の後ろ姿を見送って、なんかまあ、気がついたら自宅の玄関に立っていた。ドアにもたれてズルズルと崩れ落ちる。頭を抱えてうずくまった。
──なんだあの流れるようなキス。パーフェクトカレシサマかよ。
「ぐわあああああ────ッ!!」
湧き上がる感情を抑えきれず、雄叫びを上げる。廊下に転がって、水揚げされた魚のようにビッタンビッタン暴れる。
「す゛き゛に゛な゛っ゛ち゛ゃ゛う゛……!」
ダメですダメダメそれはマジでダメ! 振るもしくは振られるまでが計画でしょ!!
あーもー自分がチョロすぎてイヤになる!! だからヤだったんだよ誰かとフツウに恋人になるの!!!! やーい恋愛クソザコなめくじ!!!!
「うぎぎぎ……」
いつかは分からないけれど、TS予定イケメンくんは性転換して”ヒロイン”になる。何がどう転んでも、最終的には別れるのだ。
ならば、自分の目的をしっかり果たして、後腐れなく別れなければ。──自分のために。
「そうだ。粗探しをしよう」
TS予定イケメンくんの良くないところを探そう。なんかもう人としてどうかと思うけど、やらないといけない。自分の中のTS予定イケメンくんに対する好感度を下げていこう。
寝ころんだまま腕を組み、しばらくうなる。
「……思いつかない」
さすがパーフェクトカレシサマだ。
◆
──と、私は思っていたのだけれど。
「ないわ~……」
残念なコを見る目で、お昼ご飯の会*2会長にしみじみとそう言われた。周りのみんなもうんうんと頷いている。
あれ~?