【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!!   作:どうだか

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第三十六話 バッドエンドのその後

 私とお坊ちゃんは、どうにかこうにか地下街を抜け、駅ビルの敷地にある憩いの広場へ移動した。ここまでくれば、もう大丈夫だと思う。

 

 お坊ちゃんは、ベンチに腰を下ろしグッタリしている。助けた謝礼をせびるつもりもないので、ブレザーの入った紙袋を渡して帰ろう。

 

「まっ、待ってくれ!」

 

 お坊ちゃんの手が、私の手をつかんだ。ビリッと首筋が痺れ、一瞬だけ左目の視界が赤くなる。目尻から涙が流れたように感じた。しかし、頬は濡れていない。

 

 パチパチと瞬きをする。何だったんだと首を傾げている間にも、男の子は話を続ける。

 

「君はいったい何者なんだ! このループする一週間と関係があるのか!?」

 

 ──ループ? なにそれ??

 

 えっ、もしかして……この人、ループものの”主人公”なの?? あっそういえば、ヤンキーに囲まれてる時に「ループしたくない!」的なことを叫んでいた気がする。

 

 ──ループものかぁ。

 

 ノベルゲームというジャンルは、ループものと相性がいい。そもそも、ノベルゲーム自体がループものみたいなものだと思っている。違うルートを見るために、プレイを繰り返したり。トゥルーエンドを見るために、特定のエンドを見なければならなかったり。ノベルゲームとループものの違いは、登場人物たちにループしている自覚がないかあるかだけかもしれない。

 

 しかし、彼がループ”主人公”くんだとしたら、周りにヒロインがいないのが気になる。先ほど会った親友”主人公”くんのように、いつでもどこでも”ヒロイン”が隣にいるのが、主人公の常なのだ。

 

 堰を切ったようにループ”主人公”くんは話し続ける。

 

 ふむふむなるほど。なぜループしているのか分からない。ループするキッカケも分からない。けれど、誰かの意図を感じる、と。

 

 ほうほう。メイドサークルのメンバーといるとループが早まる、ねぇ……。

 

 ふと思いつくことがあったので、ループするより前のことを細かく聞かせてもらう。そして、気がついた。

 

 ──ああ、これ、バッドエンドだ。

 

 そりゃ、”ヒロイン”が周りにいないはずだ。

 

 ループするより前の話に出てくる”ヒロイン”の頻度から察するに、義理の姉”ヒロイン”ルートに入ってたけど何かの選択肢をミスったんだな、彼。で、延々と同じ一週間を繰り返すバッドエンドに入ってしまった、と。

 

 ループし始めてから、不自然なくらい義理の姉”ヒロイン”の名前が出てこないんだもんなぁ。そういうことなんだろう。

 

 エロゲには多種多様なバッドエンドも実装されている。選択肢をミスした結果、ヒロインとの恋愛に発展しませんでした! バッドエンド!! なんていうのは微笑ましい方で。

 

 主人公やヒロインが悲惨な目に遭うバッドエンドも多い。けっこうな確率で死んだり殺されたりする。ヒロインはそれに追加して陵辱されたり寝取られたりする。グロテスクだったり鬱展開だったりなバッドエンドもある。

 

 ……ここは、男性向けエロゲみたいなことが起きる世界なわけで。

 

 ”主人公”とか”ヒロイン”ってマジで大変だなぁとしみじみ思う。え? これが私に待ち受ける未来?? ……ハハ。

 

 コホン。

 

 幸か不幸か、ここはゲームじゃなくて現実なので、バッドエンドになったらタイトル画面に戻されるなんてことはない。他のバッドエンドならともかく、ループ”主人公”くんはまだ取り返しがつくのでは──いや待て。

 

 バッドエンドで”主人公”を無限ループにぶち込む義理の姉”ヒロイン”てなんやねん!! どう考えてもクレイジーでサイコなヤンデレやんけ!!!!

 

 慌てて周囲を確認する。それっぽい人の姿はないけど、たぶんどこかで見ているのだろう。ヤンキーの次はヤンデレとか、聞いてませんけど!?!?

 

 これまでのループから察するに、私はたぶん義姉”ヒロイン”さんの許容範囲をすでに超えている。このまま何もしないでいると、ロクなことにならない気がする。

 

 どうする? まずは相手がどんな感じなのか分からないと対応ができない。とりあえず、お義姉さんについて情報を集めてみよう。

 

「え、義姉さんの話? いいけど……ループに関係あるのか?」

 

「まあまあまあ、聞かせてください」

 

 ループ”主人公”くんは義姉”ヒロイン”ルートに入ってから失敗しただけあって、かなり義姉”ヒロイン”さんに心を惹かれているようだった。本人は気づいてないけど。

 

 ちなみに、義姉”ヒロイン”さんは、素晴らしいご令嬢で、名家の跡取りに相応しい品格の持ち主だそうな。しかし、両親の再婚でループ”主人公”くんが跡取りになってしまった。ループ”主人公”くんが跡取りに指名された理由は分からないらしい。

 

「だから、俺は義姉さんに嫌われてるんだ」

 

「いや今までの話を聞くに、そのお義姉さんはあなたのことがす「わ────っ!?」

 

 私の声をかき消すような大声を上げながら、真っ赤になった女の子が草むらから飛び出してきた。

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