【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!! 作:どうだか
ループ”主人公”くんは、悄然として俯いている。
「俺、そんなに嫌われてたのかぁ」
そうなるよね~。義姉”ヒロイン”さんはオロオロして、助けを求めるように私を見ている。いやいや、そんな目で見られましても。自らの行いの結果ですがな。
ループ”主人公”くんはゆっくりと顔を上げた。義姉”ヒロイン”さんは、さっきまでうろたえぶりが嘘のようにキリッとした顔をしている。
……ここまで話がこじれた理由、それかあ。ループ”主人公”くんは、義姉”ヒロイン”さんの令嬢然としたとこしか知らないのね。
「なあ、義姉さん。……義姉さんは、何が目的でこの一週間をループしてたんだ? ループの能力なんて使わなくても、俺にできることなら協力したのに……」
泣きそうな顔で微笑むループ”主人公”くん。記憶をいじられてるうえに、何回か殺されてることがほぼ確定しててこの対応。
かなり好きじゃん。
私はすごくドン引きしてるぞ。殺人は、恋や愛が理由でも、やっちゃいかんと思うぞ。
義姉”ヒロイン”さんは、厳しい表情のままだ。ただ、何かを言おうとして言えなくてを繰り返している。はは~ん、さてはこのヤンデレ、コミュニケーションがド下手クソだな??
ひっそりとため息をつく。
──わりと自覚はあるんだけど。
私は”ヒロイン”に甘い。
だってさ、たくさんエロゲをプレイしてきたということは、エロゲの本数以上のヒロインと出会ってきたということで。ヒロインという存在に、とてもとても思い入れがあるのだ。
もちろん、この世界は『男性向けエロゲみたいなことが起きる』というだけの現実で、ゲームじゃない。分かっている。けど、どうにも割り切れない。これもまたゲーム脳の一種かもしれない。
……
あとね、なるべく早く事態を解決しないとヤバい気がするんだ! 分かりやすく言うと義姉”ヒロイン”さんの目にハイライトがなくなってきてる!! やめなされ! 懐に手を伸ばそうとする*2のはやめなされ!!
「はい!」と元気よく手を挙げ、二人の注目を集める。
義姉”ヒロイン”さんに向かって「ちょっといいですか」と声をかけた。返事はない。沈黙は肯定だと判断して話を進める。
「何度繰り返しても、記憶をいじっても、望む結果は手に入らなかったんですよね? 自分の気持ちは伝わらなかったし、相手の気持ちも分からなかったんですよね?」
そんなスゴい顔でにらまないでください。イヤミじゃないです。事実を言ってるだけです。
「じゃあもう、方法が間違ってるんですよ」
「──方法、が?」
なんでそんな思ってもみないことを言われたって顔をしてるんだろう。諦めろとでも言われると思ったんだろうか。
そりゃあ、まったく脈がないなら「諦めた方がいい」って私も言ったと思う。ただ、
「別の方法を考えないと」
そう伝えると、義姉”ヒロイン”さんは小さな声で「別の、方法」と復唱した。
「そうだよ、義姉さん。そんな方法じゃなくて、もっと違う方法で、俺たちは分かりあえる」
ループ”主人公”くんは、決意に満ちた目で、しっかりと義姉”ヒロイン”さんを見据える。
「俺、義姉さんが何を考えてるか、分からない。──だから、話して聞かせてほしい。義姉さんのこと。それで、俺の気持ちもちゃんと話すから、聞いてほしい」
義姉”ヒロイン”さんの頬が赤らみ、瞳に光が戻った。小さく、でもしっかりと「はい」と答えたのが聞こえた。
さっすが”主人公”! きっちりバシッと決めてくれるなぁ!!
にやにやしながら、うんうんと一人で頷く。この感じだと大丈夫そうだ。二人の空気を邪魔しないように、コッソリと憩いの広場を抜け出した。
は~~! いいエロゲイベントだった……!!
──エロゲの類型として、別ルートのヒロインが攻略のサポートに回ることがある。登場させるキャラを減らすことができるし、キャラの掘り下げにもなる。まさしく一石二鳥。
まあ、これは例え話で、私はヒロインなんて柄じゃない。けど、誰かの助けになれたというのは普通に気分がいい。
……人を殺すことに抵抗がない人間を野放しにしていいものかという不安は残るけども。そこはもう、めっちゃがんばってくれ、ループ”主人公”くん。
──私もがんばるから。
素晴らしいエロゲイベントを浴びて、いい気分転換になった。なんだかスッキリした気分だ。
ここまで来たら仕方が無い。腹をくくって、”女主人公”になった後の対策に力を入れよう。さて、何から始めようかと思っていたら、見覚えのある黒づくめの男性がビルの陰からぬっと現れた。
「お、いたいた*3」
い、一人称『僕』おじさん!? 素晴らしいタイミングで現れたな!!
「ちょうどいいところに! また”アレ”をお願いしてもいいですかね!?」
あいさつもそこそこに頼み込む。なんで突然やってきたのか聞くのも後回しだ。だって、快楽耐性を高めるのは”女主人公”にとって必要不可欠なんだもん。
「たしかに、そろそろいいかもね。もう前の感覚は忘れてるだろうし」
おじさんは、上から下までしげしげと私を観察した。
「おお、すこぉーしだけだけど、”格”が上がってる*4」
「え?」
「僕とセックスするのは無理だけど、これならもっとキツくしても大丈夫だ」
「いや、ちょ、まっ……」
◆
──キツすぎて死ぬかと思いました。死んでないのが不思議です。
『エピローグ エロゲの世界は女主人公に厳しい編』に続く
エピローグ(”女主人公”のプロローグ+α)を先に書いた後に、別ルートの方を書きます。