【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!! 作:どうだか
──そして、また春がやってきた。
両親はそれぞれ海外出張へ。私は一軒家で一人暮らし。……うん、準備万端って感じだ。
いつ来るか、いま来るか……できるなら来ないでほしいとソワソワしながら始業式を終え、帰り道。晩ご飯の買い出しにスーパーへ寄ったところ、空から振ってきた赤と青、二つの水球に衝突され、私は死んだ。十数年ぶり二回目の死だった。
しかし、青い水球の中身と同化することで、辛うじて命をつなぐことができた。水球の中身は、エリザベティナ・クロモドーリスと名乗る宇宙人。同化してるから見た目は分からないけど、たぶん、ウミウシ。語尾がウミかウシだから。
……私、いま、お腹の中にウミウシがいるのかぁ。
お腹、とオブラートに包んで言ったが、子宮だ。いちばん損傷が少なかった内臓を起点に、私の体を修復しているそうな。……子宮が無事だったのは当たりどころの問題で、腹の脂肪が厚かったからじゃないよね? ね??
(もろもろの説明は後でするウミ! いまは戦ってほしいウシ!)
どうやら、エリザベティナさんは追われているらしい。彼女(?)と同化している私も、これからは追われる対象になるわけで。
──そっかぁ、私、変身ヒロイン”女主人公”だったのかぁ。
しみじみしていると、赤い水球から現れたヒトデのバケモノが襲いかかってきた。チュートリアル戦闘ですね。分かります。逃げることは難しそうだ。言われるがまま、変身の掛け声を叫ぶ。
「セット・セイル!」
まばゆい光に包まれたかと思うと、私の姿は瞬時に変わっていた。
……まあ、そうなるな。男性向けエロゲみたいなことが起きる世界だもんな。基本はピッチリしたボディースーツよな。
あ、でも、袖や裾がフリフリしてて可愛い。変身ヒロインと魔法少女とウミウシを足して割った感がある。
体の奥から力が湧いてくる。グッと拳を握り締め、ヒトデのバケモノに対峙した。
◆
(……あの、エリザベティナさん?)
(ベティでいいウミ)
(じゃあベティさん。なんか、ものすっっごく、疲れてるんですけども……)
ちょっと危なかったけど、ヒトデのバケモノを退けることができた。ただ、戦闘後の疲労感がヤバい。歩くのもやっとだ。買い物をして帰る余裕はない。晩ご飯は冷凍野菜と袋ラーメンにしよう。
(いま、アナタの生命維持と肉体修復に、ウチの持つほとんどのエネルギーを使ってるウミ。だから、戦いで使えるエネルギーがギリギリなのウシ)
(つまり?)
(戦いでエネルギーをいっぱい使うと、生命維持と肉体修復にも影響が出ちゃウミ)
これ、疲れてるんじゃなくて死にかけてるのか。なるほどなぁ。なるほどじゃない。
(でもでも、安心してほしいウミ! ウチは、触れた相手からエネルギーを回収することができるウシ)
(ちなみに、相手に触るって私が触ればいい感じ?)
(ウチが直に触らないとできないウミ)
いや、あなた今お腹の中にいますやん。直に触るの無理ですやん。その点を指摘すると、ベティさんはすっかり慌てふためいてしまった。
(あわわわ! ど、どうしよウミ!! エネルギーを回収できないウシ~!!)
──私には分かる。どうすればエネルギーを回収できるか、前世の記憶が知っている。
セックスやな。
よし、今からエロゲの設定としてこの状況を理解していこう。
追手は、どうやらベティさんの身柄を確保したいようだ。さっきの戦闘でヒトデのバケモノに捕まりかけたとき、私の体内からベティさんを取り出そうとしていた。今回は未遂で済んだけど。
つまり、戦闘で負けると、ベティさんを取り出すためになんやかんやを突っ込まれる。これが、敗北エロ
ベティさんを取り出すためには、ベディさんに触らないといけないからだ。敗北エロ
まとめると、戦闘に負けても追手の撃退はできる、と。そりゃあね。変身ヒロインにはじわじわと堕ちていってもらわないと困りますからね。戦闘回数は多かろうよ。
ただ、負けても大丈夫だけど、勝ってもうまみがあまりない。エネルギーが消費されるだけで、エネルギーを回収できないからだ。どんどん負ける可能性が高まっていく。
最終的には、敗北エロ
──いや、待てよ。
そうだよね。ここは男性向けエロゲみたいなことが起きる世界だもんね。
(ベティさん、ベティさん。エネルギーの回収って、追ってきてる相手からしかできないんですかね?)
(そんなことはないウミ。生命体が相手だったら大丈夫ウシ)
セックスやな。
つまり、敗北エロ
ちなみに、勝ってもセックス、負けてもセックスは、商業向けの変身ヒロインエロゲで見られる王道展開であり、同人エロゲの定番からはズレている。
同人エロゲの”女主人公”じゃなかったんだ~~! よかったよかった!! 何もよくないが? どうあがいても変身ヒロイン”女主人公”はえげつない陵辱と隣り合わせだが??
……まあ、人間とのセックスでもエネルギーが回収できるだけマシかぁ。
(うん、エネルギーの回収についてはなんとかなると思う)
(ほんとウミ!? スゴいウシ!!)
ベティさんの声が弾む。どうにかこうにか、戦い続ける算段がついた。けれど、なぜ追われているのか、追ってきている相手は何者なのかは聞けていない。
というか、聞いたけれど、ベティさんは教えてくれなかった。(ウチが追われている理由は聞かない方がいいウミ)と言われた。
(──何も知らなければ、アナタは巻き込まれただけの被害者で済むウミ。でも事情を知ってしまえば、向こうもアナタを放っておけないウシ)
そ、そんなに重たい事情なんですか。
(迷惑をかけて、ほんとにごめんなさいウミ。アナタの体の修復が終わったら、ウチはすぐこの星から去るウシ。だから、少しの間だけ、アナタといっしょに居させてほしいウミ)
ちなみに、少しの間がどれくらいになるかは、回収できるエネルギーの量次第だそうな。最短で二ヶ月、最長で一年らしい。
(うん、よろしくね、ベティさん)
(よろしくウミ! ええっと……あっ、アナタの名前を聞いてなかったウシ!)
(私の名前は──)