【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!!   作:どうだか

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終盤にグロテスクな描写があります。苦手な方は「×××」以降を読まないようにしてください。該当箇所のあらすじは、次話の前書きに足します。


第三十六話 デジャヴを重ねる

 私とお坊ちゃんは、どうにかこうにか地下街を抜け、駅ビルの敷地にある憩いの広場へ移動した。ここまでくれば、もう大丈夫だと思う。

 

 お坊ちゃんは、無言で立ち尽くしている。不良に絡まれたのがそんなにショックだったんだろうか。心配になって顔を覗き込むと、どろりと濁った目をしていた。まだ若いはずなのに、老いを感じる。強烈な違和感に体が震えた。あまり関わり合いにならない方がいいかもしれない。さっさと別れて帰ろう。

 

 ブレザーの入った紙袋を手渡すと、お坊ちゃんは何も言わず頭を下げた。地下街からここまで、ひと言も話していない。ずいぶんと無口なお坊ちゃんだ。前に紙袋を渡した時は、ちゃんとお礼を言ってくれたのに。……ん? な、んだ今の?

 

「……前にも、こうやって紙袋を渡したこと、ありませんでしたっけ?」

 

 思わず口をついて言葉が出た。

 

 うっすらとした記憶が、幾重にも積み重なっている感覚。何千何万のぼやけた記憶の中、たまにお坊ちゃんと出会う私がいた。

 

「ぐっ」

 

 頭が痛い。目が回る。

 

 倒れそうになった私の肩を、お坊ちゃんが支えた。ビリッと首筋が痺れ、一瞬だけ左目の視界が赤くなる。目尻から涙が流れたように感じた。

 

 直後、至近距離で何かが破裂した。頬に液体が叩きつけられる。

 

「おい、どうしたんだ!?」

 

 お坊ちゃんの叫ぶような慌てた声。

 

「血がっ!」

 

 血? 頬についた液体を指で拭う。指先には、べったりと血がついていた。しかし、日光に照らされると、血液はしゅうしゅうと音を立てながら消えていく。私は、そんな異様な光景に心当たりがあった。

 

「ああ、いや、これは……大丈夫で……」

 

「大丈夫なわけないだろう!? ああ、くそ! 俺のせいで……!」

 

 どうしてだか、お坊ちゃんの方にも心当たりがあるようだ。なんでや。

 

 お坊ちゃんはポケットからハンカチを取り出すと、私の頬を荒っぽく押さえた。たぶん圧迫止血してくれているんだろう。けど、私の心当たりが正しければ、頬のどこにも傷はないはずだ。

 

 なかば錯乱している彼を落ち着かせるために、こっちの心当たりを話すことにした。

 

 

 ×××

 

 

「人助けをしたお礼に、お守りとして血液を飲まされた?」

 

 一人称『僕』おじさんとの”訓練”の部分は割愛して、そういう風に伝えた。間違ったことは言ってない。うん。

 

「あまりにも荒唐無稽で、信じてもらえないとは思うんですけど」

 

「……いや。信じるよ」

 

 ひどく苦々しい顔で、お坊ちゃんは頷いた。重々しく息を吐きながら「俺も、荒唐無稽なことには覚えがあるから」と絞り出す。

 

「ところで、どんなお守りなんだ?」

 

「たしか、いざという時に命を助けてくれるお守り、だったかな」

 

「それは、つまり……」

 

 つまり、ついさっき死にかけたってことになるな。いま気がついたわ。

 

 お坊ちゃんの顔から血の気が引く。私が死にかけた理由に、思い当たる節があるようだ。

 

「やっぱり俺のせいだ」

 

 虚ろな表情でそうつぶやいた後、必死な形相で「早くここから逃げてくれ! 今ならまだ間に合うかもしれない!!」と叫ぶ。

 

「それは──」

 

 ”俺のせい”。

 

 頭の中にある、重なりすぎてぼやけた記憶。記憶にあるお坊ちゃんは、今よりもマシな目をしていた。

 

「私があなたのことを知ってる……いえ、覚えていることと関係がありますか?」

 

 驚愕に見開かれる目。ひゅうと息をのむ掠れた音が、薄く開かれた唇から漏れた。

 

「な、んで?」

 

「これが関係があるかは分からないんですが、実は私、」

 

 会話を遮るように、どす、と足元に赤黒く染まったボールが落ちてきた。ボールは、べしゃべしゃと音を立てて地面を転がり、真っ赤な液体をまき散らす。

 

 本当は分かっている。理解したくないだけだ。人相が判別できないほどグチャグチャになっているが、それは──

 

「ひっ」

 

 人間の頭部だった。

 

「もぉ~、わたしの楽しみの邪魔をするなんて、無粋な方がいたものです!」

 

 声がした方に顔を向ける。少女のカタチをした何かが、血にまみれた手をひらひらと振りながら、こちらへ向かってゆっくりと歩いていた。

 

「えへ、えへへ……お待たせ、弟くん♡」

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