【完結】男性向け同人エロゲの女主人公だけは勘弁してください! 何でもしますから!! 作:どうだか
お父さんとお母さんに、ちょっと体調が悪いから今日は休むと伝えた。日ごろから無遅刻無欠席で良い子の私は、こういう嘘も信じてもらえる。まあ、あながち嘘ではないけれども。
「学校には連絡しておくね。でも、ママかパパがいなくて大丈夫? 顔色けっこう悪いみたいだけど……」
「うん、大丈夫。風邪っぽいだけ。薬を飲んで一日寝たら治ると思う」
「何かあったら、電話するのよ?」
「はーい」
お母さんに良い子の返事をする。騙しているのに心配してもらうと、ちょっと申し訳ない気持ちになってしまう。
「急にランニングをはじめたから、体がビックリしたんじゃないか?」
「もー! そんなことない、と思う……」
からかうように笑うお父さんにむくれて見せる。二人でじゃれてるだけだと分かっているので、お母さんも笑っている。
「いってらっしゃい」
手を振って、お父さんとお母さんを見送った。ドアを閉めるふりをして、細く隙間を開けて耳をすませる。けれど、二人が何かに驚くような声は聞こえなかった。
◆
マグカップを二つ持って部屋に戻ると、おじさんはベッドに腰かけていた。
「起き上がって大丈夫なんですか?」
「おかげさまでね」
──幸か不幸か。誰にも見つかることなく、血まみれのおじさんを自分の部屋に連れ込むことができた。
部屋に入って早々、おじさんは私の血液を求めた。前世の経験から全血献血には慣れていたので気軽に応じると、私の体重をめっちゃ詳しく聞いてきた。
抜いていい血液の量を計算するためらしいので素直に答えたけど、ちょっと恥ずかしかった。その、エロゲみたいなことが起きる世界らしからぬ体重なので。そういうところも”ヒロイン”じゃないんだよなぁ、私。
「ココアです」
「どーも」
右手のマグカップを渡すついでに、おじさんの様子をうかがう。服は大きく破れていて、痛そうな傷口が見えている。けれど、血痕が見当たらない。あれだけの大怪我だったのに。
玄関前の血だまりも、廊下や部屋の血痕も、私のジャージに染みた血も、消えてなくなっていた。なんとなく、おじさんが何かをしたんだろうことは察している。
「いやあ、慣れないことはするもんじゃないねぇ。お嬢ちゃんが招いてくれて助かったよ*1」
おじさんは、そうボヤきながらへらっと笑った。やっぱり顔がいいな。男前系の顔だ。
ココアをすする。血の気の引いた体に温かさがしみる。これまでのやりとりからなんとなく予想はつく。けど、いちおう聞いておこうかな。
「あなたは……その、吸血鬼、なんですか?」
おじさんは、喉の奥をクッと鳴らし、自嘲するように笑った。
「僕は、血をすするしか能が無いただのコウモリさ」
──その
あまりの興奮に思わず反芻してしまった。一人称『僕』おじさん……なんて味わい深い。
じゃなくて。
わざわざ”コウモリ”と口にするあたり、どっちつかずのポジションを取っているみたいなニュアンスを込めているのだろう。おじさん良いキャラしてんねぇ。
「まあまあ、そう怖い顔せずに。嘘はついてないから。言いたくないだけで」
おじさんは、私の沈黙を怒っていると判断したらしい。怒ってないです。一人称『僕』おじさんを噛みしめてただけです。
「さて、おじさんの話は置いといて。お嬢ちゃんの話をしようか」
すっと目を細めて、おじさんは私を見た。
「さっき言っていた、僕にしてほしいことって、何だい?」
◆血まみれおじさんについて。
吸血鬼の血液を体内で飼いならしている血液操作能力者。なので、肉体には吸血鬼が抱えている弱点(日光、流水、銀などなど)がほぼ無い。かつては、
男性向けエロゲで例えると、ルートによって立場が変わるサブキャラ(男)。主人公の師匠役からヒロインの拷問役、果てはラスボスまでできるポテンシャルを秘めているタイプ。
今回は”主人公”の友人として、彼らを逃がすために殿をつとめ、ヤバい少年と戦っていた。ヤバい少年は、この後、”主人公”と”ヒロイン”が何とかする予定。