最弱種族の世界征服 〜絶滅危惧種・人間〜   作:Nale I'm

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神の戯れ、狼煙が上がる

 二人の神が、暇つぶしのために世界(盤面)を創り、生物(手駒)を創り、どの種族が最後まで生き残るのかの賭け(ゲーム)をした。

 

 しかし結果は何億年経っても決着せず、それどころか絶滅しそうな弱い種族を強い力を持った種族が保護するという行動もあり、神はそれに対して大きな不満を持った。

 

 ーーそして神は、一つの案を思いついた。

 

 『それぞれの種族の「王」に、我々のゲーム内容を伝え、さらにこう言おう。生き残った唯一の種族以外、存在する価値なし、と』

 

 ゲーム(賭け)ではなく、観戦(戯れ)へ。

 

 ーー神というのは、気まぐれであるのだ。

 

 

 

 ♢

 

 少年はその感覚を、なんと例えていいかがわからなかった。

 

 人として生を受けた15年という時が矮小にも思える、莫大な時の情報。それらが一気に頭の中へと流れていき、脳を震わせた。

 

 「……王?」

 

 思わず、涙が溢れた。

 残酷な運命に、これから歩む茨の道に、かつてこの世界が辿ってきた歴史に。

 

 「これは……試練だ。僕が「王」として、全てを蹴落とし征服し、人間という種族を導くためのーー」

 

 【絶滅危惧種・人間】

   

 保護されるだけの対象だった最弱種族の王が今、最初の狼煙を上げた。

 

 「……さて、まずはどうしようか」

 

 人間の王は悩んだ。

 流れ込んできた情報の整理の為に使ったこの三日間、色々な問題が浮き彫りになってきたからだ。

 

 まず、神が始めたこの戯れのことを、人間の中では恐らく王しか知らないと言うことだ。

  

 そして最も重大な問題とは、戦力の不足だ。

 人間はかつての争いにより、その人口は一つの小国に収まるほどしかいない絶滅危惧種指定であった。

 

 「生き残った種族以外は絶滅させるなんて、そんなことを突然言われたら混乱してしまう。その間に攻められて終わるのが、まず考えられる最悪の道」  

 

 だがしかし、王はそう言いつつもさして悲観はしていなかった。

 

 王は机の上に地図を広げると、人間の国に印を付け、次いで一番近い国にも印をつけていく。

 

 「人間なんていう力も無い、数もいない、ましてや元々保護の対象だった種族を他の強い種族はまず狙ってこない、優先度が違いすぎる。だけど、この国に一番近くて思考も短絡的なこの種族は、そうじゃない」

 

 知能は低いが、動きが素早く数も多く、そして何より残虐性を持ち合わせた緑色の肌の種族【ゴブリン】は、近いうちにこの国に攻め込んでくると人間の王は踏んでいる。

 

 備えも力も無い人間には抗う術はなく、男は殺され女は苗床とされ、最後には全員殺されるのは目に見えていた。

 

 ーーだから王は、一つの案を決行することにした。

 

 

 ♢

 

 平野に集まる、ゴブリンの群れ。

 彼らは各々武器を持ち、その醜悪な顔を欲望という仮面で覆い隠す。

 

 「……?ナンダ、アレ」

 

 ゴブリンの群れへと歩いて向かってくる、一人の人間(獲物)

 光り輝くような白銀の髪の、女のような風貌のその人間は警戒するゴブリンたちの前で止まると、その場で優雅に跪き、こう告げる。

 

 「こんにちは、同盟を結びに来ました」

 

 笑顔でそう言った王に対して、ゴブリンたちが返したのは言葉ではなく、殺意。

 

 槍を向け、じわりじわりと周りを囲もうとするゴブリン。

 しかし、王はそれでも笑顔を崩さず、ただ静かに告げる。

 

 「あなたたちの王に会わせてください。話があります」

 「オマエ、アヤシイヤツ。ソレハダメダ、ヤレ!」

 

 他と比べてガタイのいいゴブリンが命令すると、槍を持った数匹のゴブリンが突撃する。

 

 それを見て王は「やはりこうなったか」と呟くと、懐から鉄の筒が付いた何かを取り出すと、ゴブリンに向けると、指を引いた。

 

 バンッ!

 

 「ア"!?」

 

 瞬間、破裂音が辺りに響き、気づいた時には一匹のゴブリンの指に穴が開き、青色の血が溢れ出してくる。

 

 「もう一度言う、僕はあなたたちの王に会いたいだけだ」

 

 鉄の筒ーー銃という武器を向けながら王は、余裕ある表情でそう言った。

 

 何が起きたか理解のできないゴブリンは、恐怖から動きを止め、自然と目線は群れの後方へと向いた。

 

 「成る程、そこですか。ありがとうございます」

 

 そして王は銃を見せつけるようにして持ちながら、堂々と群れの真ん中を歩いて行くのであった。

 

 

 ♢

 

 その日頭に流れ込んできた莫大な情報は、弱者として格付けられていた今の現状に怒りを覚えさせてくれた。

 

 力も弱く、知能も無く、そのくせ数だけはいるせいで保護の対象にもならず、虐げられていた。

 

 しかし、己は「王」であるというのにそれに対しての疑問も、屈辱も感じず、ただ受け入れていた。

 

 だが、かつての先祖は奪い、殺し、他の種族を苗床とし数を増殖させ、圧倒的強者に対しても臆せず立ち向かっていた。

 

 だからまず手始めに、近隣で一番楽に滅ぼせるであろう、最弱の種族である人間の国を攻めようと思っていた。

 

 「初めまして、ゴブリンの王」

 

 ーーしかしその人間の目の奥には、全てを焼き尽くし灰に還すような、巨大で深い野望があった。

 

 

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