最弱種族の世界征服 〜絶滅危惧種・人間〜 作:Nale I'm
「同盟ダト?そんなモノ結ンデ、我々に何の得がアル?」
「得も何も、僕はあなたのことを思って言っているんです。もしこのままあなたたちが人間の国に攻めてきた場合……あなたの種族、滅ぼされますよ?」
「ナニ?」
ゴブリンの王から向けられる、敵意と殺意の入れ混じった視線を受けてなお、人間の王は飄々とした態度でそれを正面から受け止める。
小さく、弱く、吹けば飛ぶような肉体を持つ目の前の王に対しゴブリン王は何もしない……いや、できない。
虚言だと笑い飛ばすことは簡単だ。だがしかし、人間の王が単独でここに来て同盟を結びたいなどと言ってきたということは、同じく『神の戯れ』のことを知ったのだろう。
そこまで考えてゴブリンの王は、内心でほくそ笑む。
つまりこの人間はこう言いたいのだ、「同盟を結ぶから命だけは助けてくれ」と。
その気持ちも分からなくは無い、人間のように力もなく数も少ない種族では、ゴブリンのような存在に襲われただけでひとたまりもない。
絶滅危惧種として今まで保護されてきたせいで、戦う技能も度胸も無いのだろう。
考えれば考えるほど、ゴブリンの王は生まれて初めて感じる「強者」としての優越感に己の本能が刺激される。
愉悦、愉悦、愉悦ーーそれがゴブリンの王を染め上げようとした瞬間、人間の王は空に向かって銃を放ち、轟音が響く。
「ナ、ナンダソレハ!?」
「これは銃という代物です。僕のように非力な人間でも簡単に命を奪える武器……このように、我々人間は肉体的に弱く、魔法も使えませんが、他の種族にはない『技術力』があります……そこでです」
人間の王は意味ありげに言葉を切ると、一瞬にしてゴブリンの王の肝を冷やした銃という武器を、なんと手渡してきた。
「我々人間は数が少なく、度胸も無く、戦うことには向いていない種族です。しかしあなた方ゴブリンには闘争心よりも信頼できる、残虐性がある。それはいざとなった時躊躇わず、結果として最善の結果を齎すものです。つまり、我々人間が武器を作り、あなた方ゴブリンがその武器で他の種族と戦って欲しいのです」
「ナ、ナルホド……」
ゴブリンの王は知らず知らずのうちに、完全に人間の王のペースに飲み込まれていた。
いかにゴブリンの知能が低かろうが、この武器を作るのにはとてつもない技術力が必要なのは用意に想像でき、もし人間という種族を滅ぼした場合、未来永劫自分たちがこれを手にすることは不可能である。
そう、これはゴブリンという種族にとっても損な話ではない。
「……ワカッタ、同盟を結ボウ」
「ええ、お願いします。それで早速ですが、お話があります」
ゴブリンの王が同盟を結ぶことがわかっていたかのように流した人間の王は、懐から取り出した地図を広げると、ある国に指を指す。
「ソレハ……オークの国カ?」
「ええ、この地図を見ればわかる通り、人間の国とゴブリンの国とオークの国は、三角形の形に存在しています。我々の国には「漁夫の利」という言葉があり、この中の2種族が争いを始めた場合、もう一つの種族が疲労した二つの種族に狩られるという危険があるのです。あなた方が我々の国を襲ってきた場合滅ぼされると言ったのは、このことがあったからです」
「ナルホド……ナラバドウスルノダ?」
「ーー僕に、策があります」
相変わらず笑顔を絶やさず、心の奥底が読めない人間の王は、ゴブリンの王へと一つの作戦を提示した。
♢
そして一週間が経ち、とある種族が動き始めた。
「お、王!大変です!」
「うん?どうしたんだい?」
「それがーー」
人間の王は慌てた様子で駆け込んできた部下からの情報を聞き、驚いた
そして命令を出し部下を退出させ、望遠鏡で窓の外を眺めるとそこには、鉄製の武具に身を包んだ緑の肌の群れがいた。
ーーゴブリンの襲撃が、始まった。
人間の王に名前はつけてないです。多分今後も名前は出ないと思います。