最弱種族の世界征服 〜絶滅危惧種・人間〜 作:Nale I'm
「コレデ、ヨイノダナ」
立派な武具に身を包むゴブリンの兵を従え、ゴブリンの王は丘の上から眼下の城を見下ろす。
ここに来るまでの間、出来るだけ「目立つよう」に、そして足並みを揃えさせるようにゆっくりと進軍させてきた。
「オウ!ウシロ、イル!」
「……マサカ、本当に来ルトハナ」
背後を望遠鏡で確認させていた部下からの報告を受け、自分自身も後ろを見る。
そして一キロほど離れた草原に、ゴブリンと同じ緑色の肌を持つ、背丈が二メートルほどある巨体と、豚のような醜悪な顔の種族ーーオークの軍がこちらに向かってきているのが確認できた。
ーーそう、ここまでは作戦通り。
「全軍に告グ!方向を転換シ、オーク共を殺セ!!」
『リョウカイ!』
ここに来た時とは真逆に、ゴブリンたちは素早く、広く展開していき、三匹で1グループを作りオークの軍へと向かって行く。
唐突に牙を向けてきたゴブリンに対し、完全に背後から忍び寄っていたと思っていたオークは混乱、統率は乱れ目の前の敵へと各々が向かっていく。
しかしゴブリンたちは決して近距離戦に持ちかけようとはせず、鈍重なオークに対して素早い動きで一定の距離を保ち、人間が作り出した性能のいい弓で傷をつけていく。
そして出血により弱ったところを三匹で仕留める。その戦法で、確実にオークの数は減っていく。
その光景を見ながら、ゴブリンの王は人間の王に言われた策を思い出していた。
『おそらくですが、オークは漁夫の利を狙ってくるでしょう。そこで、あなた方は我々の国を攻め込んでくるフリをし、やってきたオークを今から言う戦法で倒してください。国というものを落とすためには、兵の数は相手の何倍も必要ですが、平地に誘い出して仕舞えばオークの鈍重な動きでは逃げることも難しく、素早いあなた方に分があります」
全てあの人間が予測していた通り、平地という地形ではゴブリンが有利であった。
多少の犠牲は出るが、それでも力で圧倒的に劣るオーク相手にここまで戦えるのはこの戦法と、人間から齎された武器のおかげだろう。
そしてしばらく時間が経ち、オークの数が目に見えるほど少なくなってきた頃、ゴブリンの王は己も剣を持ち、残っていた兵に命令する。
「王を殺セ!全員で突撃スル!」
そうしてこの戦争は、終わりを迎え始めた。
♢
「何故ダ!何故ダ何故ダ何故ダ!!」
オークの王は、目の前の光景が信じられなかった。
厚い脂肪と巨体によって凄まじいタフネスを持ち、膂力などもゴブリンなどには到底負けるはずもないはず、更にはこうして背後を取り、完璧な勝利は必然であった。
ーーこの策なら、簡単にゴブリンを殺せます。
オークの王の脳裏に浮かんだのは、数日前に単独でオークの国にやってきた王の言葉だった。
その王はオークに知恵をもたらし、手を組むことでゴブリンという種族を滅ぼそうと同盟を結んだ。
それなのになんだこの光景は、まるでゴブリン共はオークが来ることがわかっているのかのように動き、それどころか戦い方も熟知しているようだ。
そして何より不可解なのは、ゴブリンが不相応な装備を身につけていることである……いや、ここまで材料があれば、答えに辿り着くことは容易である。
「裏切ッタナ、人間の王!!」
そしてオークの王が最期に見たのは、自分の元に全軍で突撃してきたゴブリンとーー丘の上に集まる、