相克の“アンティーカ”   作:在処サクラ

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エピローグ “ラストルック”

 ―――TGC当日。

 『L'antica』は四人での出演となるはずだったが、霧子の強い希望によって当初の予定通り五人での出演を果たした。

 

 挫いた足首は適切な治療を受け、ランウェイを一度歩く程度なら問題ないだろう、という医師のお墨付きも貰ってのことだ。

 

 当日、霧子はファーストルックを結華に譲ると提案したものの、結華はそれを断った。

 

 そんな彼女の言い分は、

 

『昨日のリハで充分良い思いさせて貰ったしね。三峰的にファーストルックはきりりんだから!』

 

 と、そんなこんなで。

 結局、霧子が予定通りファーストルックとしてランウェイを歩くことになったのである。

 

 ……しかしながら、結華は“例のアイテム”だけは霧子に渡さなかった。

 それは、デザイナー網島更紗がアイドル三峰結華に渡した、たったひとつの想い―――

 

 そんな結華へ、『アンティーカ』のデザイナーである男性がひとつの提案を出した。

 

『……()()()()()()?』

 

『そうです。ファーストルックが最初に歩く事なら、ラストルックは最後に歩く人を指します。……実は、昨日のランウェイでの貴女のウォーキングを見て、社長がいたく気に入ってしまいまして―――』

 

 ―――ラストルック。

 アーティスト枠での重要なポジションを飾る予定だった他のユニットのアイドルも、『結華ちゃんになら是非!』―――と、その座を譲ることを快諾。

 

 『アンティーカ』社長の推薦ということもあり、結華はその任を喜んで受け入れた。

 

 そうして、当日―――本番。

 ファーストルックだった霧子は、足首の怪我など物ともせずに見事役目を果たし、ラストルックの結華もまた、これまでの練習の成果を遺憾なく発揮。

 

 その後のミニステージでは、ダンスを抑えた『L'antica』のライブが行われ、霧子も無事にそれを乗り越えた。

 

 東京ガールズコレクションは見事、大盛況で幕を閉じることとなったのである―――

 

  ◆◆◆

 

「オイ地味メガネ! ここのパターン、ズレてんぞ!」

 

「ええ、ほんとですか!? 今すぐ直します……!」

 

 TGC開催から一週間。

 私は相変わらず雑用係として『アンティーカ』で働いている。

 

 けれど、少しだけ変わったこともある。

 リーダーがたまに私のデザインを見てくれるようになったのだ。

 

「それと、さっき見たお前のデザイン。ハッキリ言ってクソだクソ。あん時のアレはやっぱ奇跡だったのかもな?」

 

「う……そ、それは……」

 

 その理由は薄々勘付いていたけれど、なかなか上手く出来ないのが現状だった。

 やっぱり、デザイナーというものは一筋縄ではいかないみたい。

 

 ―――誰かの為に描くこと。

 あの時の私はきっと、結華ちゃんの為に彼女に合う一番のデザインを思い描いていたと思う。

 

 けれど、当日になって思い知らされた。

 ファーストルックとして幽谷霧子が復活し、再び私の衣装を着て歩いている彼女の姿を見て感じたのだ。

 

 服は、誰かひとりだけのものじゃない。

 きっと誰もがそれぞれの個性を輝かせて、その服の魅力を自分のものにしていく。

 

 だから、あのデザインは結華ちゃんの為に描いたものだとしても、出来上がったあの服は、誰のものでもないのだ―――と。

 

「よお、網島。お疲れさん」

 

 声を掛けてきたのは先輩男性。

 あれからすっかり『L'antica』にハマってしまったようで、推しだという月岡恋鐘のTシャツを着て出社するという、なかなか勇気のある人だ。

 

「先輩、お疲れ様です」

 

「なあなあ、今日のツイスタ見たか? 結華ちゃん、自撮りアップしてんだけどよ―――」

 

「えっ! 結華ちゃんが!?」

 

「オイコラそこ! ぐちゃぐちゃ喋ってんじゃねぇぞ!」

 

 怒鳴り散らかすリーダーをよそに、私は先輩のスマホの画面に映っているツイスタの画面に目を向ける。

 

 そうして、そこには―――

 

「あ……、これって……」

 

「これお前の事じゃねーかって思ってさ。な、どうだ?」

 

 その写真には、結華ちゃんのいつも通りの奇抜なファッションと、私が彼女にプレゼントした『ワンポイントアイテム』―――

 

「はい……っ」

 

 あの黒縁眼鏡を掛け、笑顔を浮かべている姿が写っていたのだ。

 

 

 

 相克の“アンティーカ” 了




これにて初のシャニマス二次創作小説、完結です。
ここまで読んで下さった方々、本当にありがとうございます。
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