村娘の師匠   作:もっち~!

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村娘の師匠
家族が増えました


仕事場で魔物の解体をしていると、

 

「お父さん、いる?」

 

娘のルナが仕事場から帰宅するなり、そんなことを言う。その傍らには知らない少女が一人。まさか、同性結婚でもしたいのか?娘ももう20歳である。この世界では15歳で大人だし、結婚適齢期は18歳くらいだったか?

 

「あぁ、おかえり」

 

動揺しないように心がけながら返事を返した。

 

「お父さんに頼みがあるの」

 

結婚したいとでも言うのか?少し覚悟を決めるか。

 

「この娘を、お父さんの弟子にしてくれないかな?」

 

娘の頼みは、俺の想像のはるか斜め上だった。俺の弟子?なんで?俺はチーターだから、教えられる事はチート関連だぞ…

 

 

居間に場所を移し、ルナに事情を訊く。落ち着いて見ると、少女は黒髪に黒い瞳である。これは俺の生前の世界の者か?そうなると勇者召喚された者か?

 

この世界では、禁忌とされる勇者召喚の儀式があり、他の世界から勇者候補達を拉致誘拐することがある。人道的に禁忌とされるのだが、手柄を焦る、もしくは手柄が欲しい魔導師達は、懲りずに行っていた。禁忌ではあるが、禁忌を破っても刑罰は無し。魔導師の道徳に任せるのが、国のトップの大方の考え方である。

 

「魔導宰相が禁忌を犯したのか?」

 

ルナが士官した国で、あの儀式を行えるのは魔導宰相と呼ばれる魔導師だけだろう。俺の言葉に頷くルナ。

 

「そうなんだ。あのジジィ…でねぇ、この娘を含む40名程度が拉致誘拐されたんだけど、この娘だけ戦力外通知を受けて、今後を私に丸投げしてきたのよ」

 

ルナはあの国で騎士団長をしている。それは素人を騎士に育ててみろっていう嫌がらせであろう。全く、あのジジィは…

 

「問題なのは、この娘のジョブは村娘なの…」

 

少女の頭を優しく撫でながら、俺に戦力外の理由を伝えて来た。

 

「村娘か?問題は無い。その子が望むなら、鍛えてやる。最強の村娘になぁ。それよりも、お前は元の世界へ帰りたくないのか?」

 

チーターである俺は、大抵の事が出来る。出来ないことは、子作り及び、それに付随する行為だけである。チーターになる為に、俺は男として終わってしまったのだ。

 

「えっ?帰れるの?」

 

「帰りたいなら、修行は無しで送っていくぞ」

 

修行に付き合うより、送り返した方が、俺的には楽である。余生は娘達とスローライフと決めているからな。

 

「でも…お母さんも連れて来られちゃったし…戻っても、お父さんはいないから…」

 

話を訊くと、彼女の母親は教師で、今回の拉致誘拐事件で一緒に巻き込まれたそうだ。じゃ、奪い返すかな。彼女の頭に手の平を翳し、彼女の波長を読み取り、彼女の母親を『強奪』で、引き寄せた。

 

「えっ?ここは?」

 

突然少女の目の前に現れた女性。

 

「おかあさぁぁぁぁぁ~ん」

 

少女が母親らしき、女性に抱きついた。

 

「これで二人を返せば解決か?」

 

残りの勇者候補者は知らん。ジジィが囲っているなら、こちらの世界で食いっぱぐれることは無いだろうし。ふと、母親の顔が目に入った。どこかで会ったような…いや、今日の儀式で誘拐されたんだよな。会うなんってことはあり得ないか。

 

 

母子の感動の再会をしているので、俺ともう一人の娘のルシアと二人で、夕食を料理していく。たまには、あちらの世界の料理もいいかな?牛肉を冷蔵庫から取り出し、すき焼きの準備をしていく。

 

実はこの俺も、あちらの世界の出身者である。拉致誘拐の被害者ではなく、あちらの世界で死んで、こちらの世界に転生した転生者である。神様転生特典って言う物も無く産まれたが、後天的に無属性魔法を得てから頭角を現した。僅か9歳で勇者パーティー入りし、僅か15歳で勇者パーティーを追い出されて、今は娘二人と辺境で暮らしている。独居老人にならないで良かったっと、胸をなで下ろす今日この頃である。

 

「ささやかな食事ですが、口に合えば良いなぁ」

 

と、5人で食卓を囲んだ。テーブルの上にはカセットコンロがあり、その上ですき焼きがグツグツ鳴っている。

 

「この世界でもカセットコンロってあるんですか?」

 

少女に訊かれ、

 

「無いです!それはお父さんが、あちらの世界で買って来たの!なので、常識と思わないでね」

 

速攻でルナが答えた。不便なのは嫌だから、俺があちらの世界へ行き、買い込んできた。電子レンジ、冷蔵庫などもあるし、食材も買い込んで来ている。俺の無属性魔法は異世界間転移も出来るのだ。ルナの長期休暇の時など、娘二人とあちらの世界へ遊びに行ったりもしている。

 

「それって、私達と同じ世界の人?」

 

母親に訊かれた。

 

「同じかどうかわからないけど、俺の前世の名前は『ゆうきゆうき』だよ。漫才コンビみたいな名前だろ?」

 

メモ帳にボールペンで俺の名前『結城有紀』を書いて見せた。その文字を見るなり、母子の目が俺を見つめ固まっている。なんだ?どうした?

 

「私は結城菜那、娘の名前は結城有那、今は亡き彼の名前は結城有紀です…」

 

母親の言葉を聞いて固まる俺。それって?神様のイタズラ…おいおい。

 

「おとうさん?」

 

少女、ユーナに声を掛けられた。俺はスキル『高速演算』を使って、目の前の事象を理解しようとしていた。

 

 

結婚式…神父の前での宣誓…その最中に事件は起きた。彼女の元彼が俺をナイフで刺し殺したのだ。彼女の顔はベールで隠され、最後の表情を見ること無く、俺は闇に沈んでいき気が付いたら、この世界に転生していたのだ。

 

「結婚式…あの時、身籠もっていたのか?」

 

「うん…」

 

ナナの顔は笑顔だけど、涙塗れである。

 

「なんで、結城姓なんだ?」

 

「式の前に、入籍したでしょ?忘れたの?」

 

すまん。忘れていたよ。俺とナナを見つめる娘達。

 

「お父さんの前世の奥様?」

 

ルナに訊かれ、頷く俺。こんな偶然ってあるのか?

 

「私…妹が出来たのかな?」

 

ルナは20歳、ユーナは16歳…ルシアは年齢不詳なので、長女の座は揺るぎ無いはずだ。

 

「ねぇ、ユーキ君って、今何歳?」

 

23歳で結婚式だったから、ナナは39歳か。ナナは俺のことをユーキ君って呼んでいた。

 

「俺は…15歳の時に年齢3倍のペナを受けて、永遠の45歳だけど…実際は、25歳…」

 

同い年だった俺達は、俺が歳上になっている事実…

 

 

こうして、俺に家族が増えた。

 

 

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