ユーナの鍛錬20日目。熾天使ミカエルのおかげで、ユーナ、エリー
ゼ共に、徒手空拳、空手、柔道を覚えた。今日はユーナとエリーゼ
で組手をして貰っている。
ルナの退職金は、取りに行くのがメンドーなので、愚王の金庫から
『強奪』した。これで大物家電を買いに行ける。日々の生活費を稼
ぎに行くか。冒険者ギルド本部へ向かった。
「あぁ、ジョナサン。家庭教師の仕事があるんだが…」
グランドマスターからの指名依頼のようだ。
「俺はFランクですよ。そういうのはBランク以上が適任かと」
「ジョナサン以外に頼めない。いいか、普通高レベルの冒険者って
言うのはコミュニケーション障害持ちが多く、貴族に対して横柄な
んだ。その点、ジョナサンは娘達の教育に余念が無く、コミュニケ
ーション能力も高いだろ?」
まぁ、コミュニケーション能力が高く無いと、逃亡生活に支障が出
る。貴族に限らず横柄な態度はもっての他である。王族達は例外で
あるけど。
「で、誰の家庭教師ですか?」
「私の娘…クリスティーヌだ」
公爵家令嬢ですか…グランドマスターの娘であるので、武人だとは
聞いていたけど…
「わがまま?」
「これ、父親を前にして、訊くな!」
ビンゴらしい。
「性根をたたき直しても良い、出来れば、貴族や騎士の礼儀作法を
教えて欲しい」
貴族としての礼儀作法?セバスチャンかミカエルに頼むか。騎士の
礼儀作法だと、ルナだな。
「で、どこで?」
「公都の私の屋敷でどうだ?勿論、通いで構わない」
グランドマスターは俺が転移使いである事を知っている。と言う
か、グランドマスターの父親、現公国の王が、逃亡中の俺を助けてく
れた恩人であり、身分的には俺は、公爵家の養子で、グランドマス
ターの義弟になる。書類上だけであるけど。なので俺のことは、グラ
ンドマスターも薄らと知っている。
「じゃ、転移出来る部屋を用意してください」
「親父の館のジョナサンの部屋でいいだろ?まだ、残っているし」
まだ、残っているんだ。
「たまには親父に顔を見せてやってくれ。家族が増えたんだろ?」
そうだね。恩人だものな。家族を紹介しておくか。
◇
セバスチャンを先触れに出し、家族全員で公爵家本邸の俺の部屋に
転移した。部屋で簡易なドレスコードに見合う衣装になって、王で
ある公爵の居る応接室へとゾロゾロと向かった。
「ジョナサン、暫く会わぬうちに家族が増えたなぁ。ルナ、大きく
なったなぁ」
「お爺様…」
公爵とルナが抱き合っている。ルシアは姿がまるで変わらないし、
魔王であるから近寄らない公爵。身分をわきまえているのだろう。
「家族を紹介してくれないか、ジョナサンよ」
「えぇ…偶然なんですが、前世の妻と娘が、愚王に召喚されてまし
て…」
ナナとユーナを紹介した。
「あの国は未だに召喚の儀をしているのか?」
「愚王二世のアノスが王になったらしいので、今後に期待ですね。
後、新顔はエリーゼかな」
「うん?まさか…」
何かに気づいた養父。
「まぁ、深くは探求しないでください。我が家の長女ですから」
「そうなのか…で、聖女様…いや第四王妃様は?」
「聖王に殺されました。魂は解放して昇天させてあります」
「そ、そうか…」
公爵様が顔色は悪い。あの時、愚王と聖王の横暴を止められなかっ
たことを悔やんでいるのだろうか。
「三女のルナは前愚王のおかげで騎士団長を退職しました。次女の
ルシアは変わらずです」
「平和は続きそうかね?」
「まぁ、人間の悪意次第ですね。戦争であれば、1日で鎮火させま
すよ」
大賢者、剣聖、魔王、ハイエルフな聖女、大天使、悪魔公爵が、俺
サイドの現在の戦力である。後はユーナ次第だな。ナナはハズレジ
ョブの指導者で、伸び悩んでいるし。
場所を食堂に移し、晩餐会である。俺は公爵と例の家庭教師の件を
煮詰めていた。
「お孫さんですよね?」
「なんだが…諸国連合のとある国の王子と婚約していたのだが、婚
約破棄をされてな、現在、謹慎中なんだ」
前世のラノベによくある悪役令嬢の婚約破棄イベントが起きたらし
い。なまじ武に優れていたせいで、王子とその取り巻き達の男とし
ての心をへし折って帰って来たとか。
「う~ん…で、どうしたいんですか?」
「息子が伝えなかったか?貴族令嬢としての、騎士としての礼儀作
法をだな…」
「どこまでやって良いんですか?」
「勿論廃人にならない程度に…」
「う~む」
難しい。人類最高火力である剣聖である元騎士団長がいるんだぞ。
生半可な覚悟だと大けがすると思う。あと、見た目で舐めた態度を
取ると、魔王様の取り巻き達からの報復もあるだろうし。まぁ、死
んでも蘇生出来るし、ミンチにされても再生出来るので、問題は少
ないか。問題があるとすれば、精神へのダメージだな。度合いに因
っては懸念されている廃人化コースへ一直線である。
「最悪…どこまでオーケーですか?」
「貞操は心配していない。ジョナサンはその…アレだしな」
我が家には性欲魔人はいない。その点は安全であるが…百合への誘
惑はあるかもしれない。
「まぁ、会って判断して、断っても良いんですよね」
「そうしてくれると助かる…」
あぁ、心配だ…公爵家の力を以ても、更生出来ないお嬢様ってことだよな?